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新選組・土方歳三を中心に取り上げるブログ。2004年大河ドラマ『新選組!』・2006正月時代劇『新選組!! 土方歳三最期の一日』……脚本家・制作演出スタッフ・俳優陣の愛がこもった作品を今でも愛し続けています。幕末関係のニュースと歴史紀行(土方さんに加えて第36代江川太郎左衛門英龍、またの名を坦庵公も好き)、たまにグルメねた。今いちばん好きな言葉は「碧血丹心」です。
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 第32話の山南さんについて考察する前に、第4話で初登場の山南さんをまたも録画再生して見ている。第30話の放映以降、何度も見ている。



 堺さんのインタビューで何度か「明里との出会いで、今まで歴史に名を残したいと考えていた山南が、そうじゃなくてもいいと考え始める(『TVぴあ 8/13-8/29』)」などに、ちょっと違和感があったのだ。山南さん、今まで歴史に名を残したいと思っていたのだろうか、と。



 だが、第4話で桜田門外の変で山南さんが熱っぽく近藤さんに語りかける言葉に、まず、その片鱗があった。

「天地がひっくり返りましたね。これで日本は変わります。歴史が動き出した瞬間に、我々は今立ち会っているんです。我々と齢の変わらぬ一介の浪人が身を犠牲にして歴史を動かしたんです」

「あの雪の上に転がっているのは、何も格別な人間じゃない。我々と同じ名もなき侍なんです」

 時代の変わり目に、名もない侍の自分でも歴史を動かすことができるという確信に、この時点での山南さんは心を躍らせたのだろう。



 時代を動かす人物を輩出した千葉道場を飛び出して試衛館に押しかけ入門したのには、山南さんには山南さんの目算や思いがあったのだと思う。そして、自分も関わっていた清河八郎たちが幕府を動かしてつくった浪士組に試衛館一門を巻き込んで、上京する。

 だが、上京した山南さんが時折口にする言葉は、そういう時代に立ち会わせて壬生浪士組を経て新選組を立ち上げた同志たちの中にいながらも、時代の流れに関われないという焦燥感だ。

「時代は動いているのに、我々は何をしているのか」



 こういう時代に何かをなし遂げられる人間とは、桂小五郎のように大藩のバックアップを受けている立場を除いては、自分自身のビジョンを持ち、めげずに人を説得し、人に自分の身を危険に曝すリスクを負わせるほどに納得させ、動かせる人間だろう。思想や方法論は違うが、清河八郎しかり、坂本龍馬しかり。そして、近藤土方のペア(このふたりは、少なくとも京都時代においては、互いに補い合ってその力を発動できるのだと白牡丹は思う)。



 山南さんは、そのタイプではない。おそらく、自分自身でもわかっているだろう。自分自身にめげずに何かをしようというがむしゃらさがないことも、めげずに相手を説得しようとする強さがないことも、他人を命の危険に曝しても自分の目標を達成しようとする強引さもない。だから、自然と、知恵袋タイプとなる。

 第30話で、山南さんは建白書という方法を永倉さんに助言しつつ、その中には加わらない。土方さんとの直接対決を避けたいという配慮があったのだろうが、第31話では自分が巻き込んだ葛山武八郎を巻き込んだために死なせてしまったという心の痛手を負ってしまう。



 ここまでは白牡丹目線だが、以後、山南さん目線で第32話を分析してみたい……なるべく。



☆★☆★



 近藤さん不在の幹部会議。伊東甲子太郎の挨拶。

「また俺の苦手な男が現れた」と土方さん、総司に耳打ち。



 この土方さんの発言、山南さんへの当てこすりと解釈する方がブログで散見されたが、白牡丹は武田・谷のことではないかと思った。

 確かに山南さんとは意見が対立する場面が多いが、葛山さんの切腹処分を巡って「奴を殺したのは、俺とお前だ」と共犯者になることを強要しているし、後で伊東せんせの山南さんの発言に山南さんを悪く言われるのは気分が悪いと言ったし、総司君の「けっこう買ってるんだ」と発言に「悪いか」と応じている。第30話の時点では試衛館生え抜きの4人と山南さんの間に境界線があるようなところを見せていたが、土方さんの中では試衛館生え抜きの4人という中核に最も近いところにいる相手だと。

 だって、土方さん、その証拠に、近藤さんの信用があることをいいことに場を仕切ろうとする武田観柳斎には「腰巾着」呼ばわり^_^;。隊を大きくするためには観柳斎も谷三十郎も使いこなさなくてはならないが、信用はしていないのだ。

 間違っているかも知れないけど、白牡丹は、土方さんは山南さんを当てこすったわけではないけど、山南さんはそう取ってしまった、という解釈。今回は本当に擦れ違いばかり。

 ……山南さん、自分のことだと思って、きっと睨んでいた。



 そして、ただでさえ武田観柳斎も含め、実戦部隊を率いる土方さん以外に、局長のブレーンが増えているところに、伊東甲子太郎の登場。門人を引き連れての加盟だし、山南さんの言葉の隙をつく議論上手で、蘊蓄好きは山南さんを超える……西本願寺の成り立ちについては、山南さんが知らなかったのか、知っていたとしても伊東せんせに蘊蓄を披露されて今さら自分が対抗するのも見苦しいと思ったのか、対抗すれば山南さんが一番嫌う内輪もめを増やすと思って自重したのか、そのいずれも考えられると思う。



 そして、西本願寺の移転に反対する自分に同調してくれた永倉さんは、山南さんの主義主張に同調したというよりは、山南さん個人への信頼でもって同調したことを、山南さんは感じたかも知れない。

「京都では飲む相手がいない」と明里さんにこぼしていた山南さんだが、隊内で孤立感を募らせつつも、「主義主張でなく、人と人とのつながり」と思ったのはこの時ではあるまいか。



 だが、総司君の「山南さんの負け〜」で、ますます傷つく山南さん。ここで笑って「これは参った」なんて冗談めかして言えるほど、山南さんは強くない。ますます、自分の居場所が狭くなったと感じるだけ。



 鬱々として愉しめない山南さん、龍馬くんのところに足を運んだのは、前回で自分の信じるところに従って徒手空拳で時代を動かそうとする龍馬くんに元気をもらいたかったからではないかと白牡丹は思う。

 だが、そこで見たのは、凹んで自棄になっている龍馬くん。本当は自分が力をもらいたかったのに、自分が気丈になって励まさねばならなくなった。

「つまるところこの国を動かすのは主義や主張ではなく、人と人のつながりではないでしょうか」

 自分の理想はあるが、主義主張をそんなに主張して来なかった山南さん。人との関係づくりが不器用で、弱みをさらけ出すことも相手を積極的に巻き込むこともなく、自分の限界を知ってますます自分の殻に閉じこもる山南さん。

 凡人であることを知っている人間の、居場所がなくなったと感じる山南さんの、発見。



 でも、山南さんはすぐに頭を切り換えられる人じゃないんで、江戸に帰って、新選組とは距離を置いて考えたいと土方さんに申し出る。

 土方さんは、伊東せんせに理屈で対抗できるのは仲間うちでは山南さんしかいないから、にべもない。

「あんたの進むべき道は俺が知ってる」

「局長は許しても副長の俺が認めない」

 土方さんは、山南さんにも泥をかぶって共犯でいて欲しいのだ。「あんたが必要だ。共にいてくれ」と素直に言えないのだけど^_^;。



 明里さんとの場面。珍しく山南さんが声を荒げたのは、明里さんが自分の教えたことを覚えてなかったことに加えて、伊東さんに言い負かされたことが本願寺の成り立ちで、太閤秀吉と徳川家康の話を引き合いにされたから余計にだったかも知れない。

 それでも、素直にぶつかってくる明里さんには、山南さんは素直になれる。



 脱走が明るみになったら切腹処分になることを覚悟しても、歴史を動かしたいという野心を捨てても、明里さんというかおすずさんと穏やかな暮らしをしたいと決心する山南さん……はい、白牡丹は、江戸まで逃げおおせるかどうか、その見込みは危ういながらも、あえて命を懸けてもやってみると決意する山南さんを、ようやく、発見したのでした。

 そして、その一念を実現するために、永倉さんや左之助を集めて、彼らにとっては命がけとなるかも知れない協力を求める。



 ……山南さん、もっと前からそれができていたら、こんなに追い詰められなかったのに(嘆息)。



 命を懸けても自分の選んだ道を行くと決めてしまった山南さんは、案外にさばさばしている。その、自分の弱みを隠すためではない微笑みは、悲しいほどさばさばしている。



☆★☆★



追記。本文に関係はないが、この記事はちょうど600目のエントリー。
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