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新選組・土方歳三を中心に取り上げるブログ。2004年大河ドラマ『新選組!』・2006正月時代劇『新選組!! 土方歳三最期の一日』……脚本家・制作演出スタッフ・俳優陣の愛がこもった作品を今でも愛し続けています。幕末関係のニュースと歴史紀行(土方さんに加えて第36代江川太郎左衛門英龍、またの名を坦庵公も好き)、たまにグルメねた。今いちばん好きな言葉は「碧血丹心」です。
 今朝、書店で売っていたのを買いました。



『月明星稀』第10巻 盛田賢司(小学館) リンク先はamazon.co.jp



私は1月21日の記事「『月明星稀』連載終了」で感想をあらかた書いてしまっているので、あまり書くことはありません。



 でも、やっぱり一言。伊東先生の描き方が……髪型も含めて……orz。
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 平日の通勤時間が長くないので読書ペースは遅いのだが、『未完の多摩共和国 新選組と民権の郷』佐藤文明(凱風社)―リンク先はamazon.co.jp―、たった今読了した。



 一言で言えば、実に面白かった。



 新選組の通史を多摩の歴史の中から見るだけでなく、明治期の多摩における民権運動の展開が多摩の幕末維新史と切り離せないことがよくわかる。そして、多摩の地方史は、徳川家康が江戸に幕府を開いた時に、腹心の大久保長安が開発した甲州街道(ちなみに、近藤勇が名乗った「大久保剛」の大久保はこの人ゆかりの苗字。また、土方歳三が名乗った「内藤隼人」の内藤も、大久保長安に次ぐ腹心の内藤清成であり、甲州街道に沿った新宿御苑付近「内藤新宿」に屋敷があった)と創設した八王子千人同心の存在が切り離せない。



 八王子千人同心の歴史をさらにさかのぼれば、源頼朝を支持した板東武者にいきつく。関東の武士は「一所懸命(goo辞典: 武士が、生活のすべてをその所領にかけること)」という言葉に表されるように、所領を与えられ、平時はその地を開墾し、戦時にはその所領を根拠として主君に武力でもって忠節を尽くす存在だった。時代が下って織田信長の時代には農民と武士がそれぞれ専門化し始め、徳川幕府の時代に分離は完成する。しかし、全国で唯一、平時には土地を耕し、招集がかかれば武士として戦う者たちとして保存されたのが八王子千人同心である。彼らは、板東武者の子孫に武田家遺臣を加えた者たちから成り立っており、韮山代官の江川家の配下にはあったが、江川代官が治める所領は広大であるために支配はかなり緩く、江戸時代を通してかなりの自治権を得ていた。



 その多摩独特の歴史が転換点を迎えたのが、幕末、横浜の開港である。街道を通じて横浜とつながっていた多摩は有数の生糸の産地であり、八王子の地名にちなんだ八茶の産地でもあった。幕末から明治に入っても二大輸出商品であった生糸と茶は江戸ではなく横浜の方に流れ、一部の商人と富農層は輸出で儲けたが、急激なインフレによって多摩の経済は混乱する。また、多摩の富を狙って流れてくる犯罪者も増え、多摩の人々は自衛の必要性を感じるようになる。幕臣きっての開明派であり開国派である韮山代官江川英龍の影響下で、多摩の人々は土地の自衛のみならず徳川幕府維持のために農兵の組織化を手がけていく。



 そうした背景下で、多摩の中でも有力な名主層のひとりである日野の佐藤彦五郎や小島鹿之助らが登場する。さらに、彼らと義兄弟を誓っている天然理心流宗家の近藤勇が、門人や食客を率いて浪士組に参加する。



 以下、新選組ファンにはお馴染みの新選組史となるが、この本の出色は、近藤勇らが浪士組に参加する経緯には江川代官家が関わっていたこと、また浪士組で近藤らと行動を共にして壬生浪士組に加わった神道無念流(江川英龍坦庵の親友であり右腕でもあった斎藤弥九郎の「練兵館」門下)の芹沢鴨らも江川代官家の意向で加わっていた、という説である。実証は難しいだろうが、清河八郎らの不穏な動きを封じるために江川代官家が彼らを送り込んだという説は、道場経営に行き詰まって浪士組に参加したという従来の近藤勇像と違う視点なのが面白い。



 ここから歴史に登場してくる土方さん(やっぱり「土方さん」と書いてしまう^_^;)については、既に読書メモその3で雑感を書いているので、詳しくは取り上げない。ただ、名主であるために義兄弟の近藤勇と行動を共にできない佐藤彦五郎が自分の思いを託した相手として、「われ、日野・佐藤に対し、なにひとつ恥ずることなきゆえ、どうかご安心を」という伝言を市村鉄之助に託して戦火に散ったということが、佐藤彦五郎と土方さんの絆、佐藤彦五郎と近藤勇の絆を顕していると思う。この本では、他にも、甲州勝沼戦争に加わった佐藤彦五郎の件を巡って、流山であえて西軍に投降した近藤勇と見送った土方さんの心境について新たな解釈を試みているところも、目を引かれるのだが。



 少しさかのぼるが、日野を中心として、多摩の有力地主によって組織された日野農兵隊は、経済混乱によって発生した武州世直し一揆を鎮圧する。京都で新選組が活躍したのと同じ時期に、多摩の彦五郎たちも幕府の側に立って体勢の維持に貢献しようとしていた。これを歴史的にどう評価するかは歴史家ではない白牡丹には難しいが、新選組にも共通する、八王子千人同心に象徴される多摩の徳川幕府への忠誠心の発露と見たい。



 しかし、歴史は急転し、多摩では「瓦解」と呼ばれる明治維新が成立する。近藤や土方たち、新選組を創った多摩出身の幹部たちも歴史から姿を消した(涙)。



 多摩に残った人々とその子弟は、明治新政府の中央集権的な政治に異を唱える自由民権運動の旗手となっていく。その中でもいろいろな事件があるのだが、首都東京に隣接しながら根強い反政府の風土を形成する多摩の文化圏を切り崩すために、多摩を分割し、一部は東京に、一部は神奈川県に編入させる。さらに、横浜を中心とする神奈川のネットワークと多摩のネットワークが結びつくことを警戒した中央政府は、三多摩を東京に編入する。



 もともと藩を持たずに江戸時代を過ごしてきた多摩には、その土地の象徴となる藩主もなく、無数の人々のネットワークによる緩やかな自治によって歴史を築いてきた。しかし、明治期に入って、多摩は段階的に分断解体され、首都東京の近郊の地区に成り下がることを余儀なくされた。著者は、幕末から明治維新、さらに自由民権運動という歴史を通観して、多摩の地方史を見直そうという視点でこの本を書いた。



 真っ先に多摩から分断された地区に生まれ育った白牡丹は、しかし日野や八王子といった多摩の文化圏の中心とは遠すぎて一体感を持たずに成長してきたわけですが……この本を読んで、東京よりも多摩に近しさを感じた。多摩の自由民権派の人々が目指した共和制とは、どんなものだったのだろうか、もう少し勉強したくなった。
 すでに拙ブログでは10月7日付記事「『新選組 永倉新八のひ孫がつくった本』杉村悦郎・杉村和紀(柏艪社)」にて紹介していますが、北海道のニュースサイトBNNにて記事がアップされていましたので、再び取り上げます。



ひ孫コンビが共同編著、『新選組 永倉新八のひ孫がつくった本』



 「『新選組 永倉新八のひ孫がつくった本』が、10月27日、札幌の出版社「柏艪舎」(はくろしゃ)から全国発売される。永倉のひ孫で札幌市在住の杉村悦郎氏(1950年生まれ)と杉村和紀氏(1967年生まれ)が、編著にあたった」。



 「盟友の近藤勇、沖田総司、土方歳三らの血縁者も登場するほか、初公開の資料も掲載される」……初公開の資料、楽しみです。



 「NHKの大河ドラマ『新選組!』は、アイドルやお笑いタレントの起用で往年の大河ファンには背を向けられた節もあるが、若手の熱演と青春群像ドラマとしての作りから、20〜30代には高い支持を得た」「なお、『新選組。永倉新八からの伝言』は、11月20日午後2時からの再放送が決定(北海道文化放送)。大河ドラマ『新選組!』は、番組終了後も絶えない視聴者からの要望に応え、来年のNHK正月時代劇での続編の放送が決まっている」。



 『新選組!』への言及、おおむね好意的です(^^)。

 

 『新選組。永倉新八からの伝言』再放送は北海道限定のようですね(汗)。でも、嬉しいことです。



☆★☆★



10/26追記。サイト「北海道人」の「続・北海道を知る100冊」にも選ばれました。



続・北海道を知る100冊

<066>『新選組 永倉新八のひ孫がつくった本』杉村悦郎・杉村和紀著




☆★☆★



10/28追記。北海道新聞にも記事が掲載されました。



ひ孫2人で「永倉新八伝」 新選組テーマに本出版 札幌の杉村さん 
 ……ううう、途中まで書いていたのに、誤ったキーを触って、消してしまった(汗)。エディタソフトに書き込んでおくべきだったなぁ(涙)。



 『未完の多摩共和国』を読みつつも、直接に本の内容に触れているようないないような雑感、続けます。あと少しで読了しますので、その時には本の内容に触れる感想を落としたいと思います。



☆★☆★



 ずっと以前から、気になっていたことがある。創作作品では、近藤さんと土方さんが同郷でもあり、幼なじみで親友という描かれ方が多いけれど、史実でのふたりの関係はどうだったんだろう、と。浪士組で上京する前のことだけど。



 はっきりしていることは、近藤勇、土方歳三の義兄である日野の佐藤彦五郎、小野路の小島鹿之助の三人は義兄弟の契りを結んだ間柄だということ。そして、その輪の中に、土方さんは入っていないということ。



 近藤勇は天然理心流の宗家の当主、佐藤彦五郎は日野の寄場名主、小島鹿之助も小野路の名主と、いずれも一家の当主というだけでなく、門下であったり、村の人々であったり、多くの人々に対して責任を持つ身。



 それに対して、上京前の土方さん(すみません、史実であっても「土方歳三」とはなかなか書けません^_^;)は、土方家の末弟であり、姉の夫である佐藤彦五郎の家に入り浸り、薬の行商もしたりはしているけど一家を構えることのない、フリーターのような身。お琴さんのところに婿養子に入るという話もあったけど、これは本人の希望で婚約というレベルで話を収めてしまっているから、世間的には半人前と見られても仕方なかったんじゃなかろうか。



 あくまでも白牡丹の想像なのだが、そういう立場であった上京前の土方さんが、近藤さんと親しく話したり親友になったりするということは、なかったのではないだろうか。年齢はひとつしか違わないが、一家の主であるだけでなく天然理心流の一門に対して責任を持つ近藤先生は、尊敬し、眩しくもあり羨ましくもあり、しかし自分が対等に付き合うことはできない、複雑な思いを抱く存在だったのではないかと思うのだ。



 土方さんが一人前の男として扱われるようになるのは、義兄である佐藤彦五郎の代理として、浪士組に参加した時から。そして、試衛館一派の中にあっても、たとえば兄弟子である井上源さんよりも重い立場につけたのは、もちろん本人の資質や実力もあるけれど、やはり佐藤彦五郎の代理という立場もあってのことではないかと思う。



 そして、新選組の鬼副長として頑張れた根底には、生まれて初めて一人前の男として自分の能力を試せる立場に立てた、新選組が立ちいかなくなったら自分もまた足場を失ってしまう、という気持ちがあったのではないか。佐藤彦五郎の代理として近藤勇を立て、ナンバー2に徹した土方さんは、その立場で初めて近藤勇と佐藤彦五郎との関係に準じた関係を結ぶことができたのではないだろうか。



 だから、『未完の多摩共和国』にて初めて見た、市村鉄之助に託した彦五郎への伝言が重い……「われ、日野・佐藤に対し、なにひとつ恥ずることなきゆえ、どうかご安心を」」。
 今日は全部読み切れなかったが、思うことがあって、ちょろっと続き。読書感想といいながら、実は読んでいる本に直接言及しないかも知れないのだが(爆)。



 新選組に関心を持って、かれこれ5年ぐらい? 初めての出会いはマンガだったが、マンガ・小説など創作から入ったのに、史実を学び始めると、自分なりのイメージができてきて、自分のイメージに合わない創作は受けつけなくなってきた、今日この頃(汗)。



 そうやっていろいろと読み漁っていた時に出会った新選組の評論で、引っかかっていた言葉がある。実は原典を読んでいない(汗)のだが、歴史家の服部之総が新選組について書いた文の一部。孫引きになるが、お許しいただきたい(文藝春秋のサイト PICK UP 「本の話より」 特集 浅田版「新選組」 侍にも優る気概を持った女たち 縄田一男)。
かつて歴史家の服部之総(しそう)は、近藤勇の試衛館道場を支えている土壌とは「江戸にありながら、実質上は武州の多摩郡一帯の、身分からいって『農』を代表する、農村支配層の上に築かれた」ものであり、その地盤は「手作もするが『家の子』も小作も持ち、一郷十郷に由緒を知られ、関八州が封建の世となってこの方数知れぬ武家支配者を送迎しながら、『封建制度』の根元的地位に座して微動もせずに存続して来た特定社会層」であると規定、そこから生まれた新選組を「それはさしずめ『長州』の、やがては『薩長』のくらやみの使徒に対して現制度を死守する、特別警備隊の仕事であった。ブルジョア的要素に一筋の連結も持たぬ、多摩農村の封建的根底部分を百パーセント武装化した、試衛館独裁の新撰組ほど、この任務のために不敵、真剣、精励たりうるものが他に考えられようか」と位置づけている。

 服部之総の原典に当たっていないので、歴史の素人がこんなことを言っていいものか迷いながら言うのだが、この「ブルジョア的要素に一筋の連結も持たぬ、多摩農村の封建的根底部分を百パーセント武装化した」という表現に出会った時から、凄い違和感を持っていた。



 なぜなら、新選組の核を形成した近藤勇・土方歳三・井上源三郎・沖田総司の四人は、多摩の富農層・支配層の子弟だから。土方歳三の義兄が日野の寄場名主である佐藤彦五郎だったり、井上源三郎の兄が八王子千人同心の井上松五郎だったり、富農層というだけでなく、武士階級がほとんどいない多摩では実質的に幕政の末端に属する人々の家族・親族である(沖田総司の出自や肉親関係は不明な点が多いが、井上家と関係が深いようだ)ということが、「ブルジョア的要素に一筋の連結も持たぬ」という表現に対する非常な違和感を覚えた。



 たぶん、服部之総が定義する「ブルジョア」の内容と、私がイメージしていた(定義できるほど、私は歴史の専門家ではないので、あくまでもイメージ……)「ブルジョア」の内容が違うのだろう。「ブルジョア」とは何か、ということについても、歴史的な変遷があるように思うし。



 で、『未完の多摩共和国』に戻る。まだ読み終わってないが、ここで描かれる、江川代官家と密接な関係を持ちつつ、一方では新選組を産み、もう一方では農兵隊を産む佐藤彦五郎など多摩の富農層は、まさしく私がイメージする幕末期の多摩のブルジョアだった。幕末の動乱期にあって、その時代にあってはかなり先進的な外国の情報も手に入れつつ、開国に伴う経済の混乱と治安の悪化に立ち向かい、貧農の反乱を鎮圧し、幕府の側に立って啓蒙的に多摩の人々を指導し、結果的に幕府の瓦解と明治新政府の弾圧によって分断されていった富農層。これこそが多摩的なブルジョアの姿だと私は思うのだが……。



☆★☆★



10/20追記。書くという作業はありがたいもので、昨夜「わからない」と思いながら書いていたことが、朝目が覚めたときに「そういうことだったのか」と氷解した(笑)。



分かったことについてどう思うか、それはまた書ける時に書きたい。今夜は予定が入っているので無理かも知れない……。
『未完の多摩共和国=新選組と民権の郷』佐藤文明(凱風社) リンク先はamazon.co.jp



 昨日今日で前半を読み終わったところ。まだ、まとまった感想を書くほど読んではいない。けど、読書中のメモを書き留めておきたい……読みさしの本について途中でメモをブログに落とすのは余りないので、それだけ入れ込んで読んでいるということは伝わると思う。



 歴史上で尊敬する人物を上げるとすれば保科正之だったのだが、最近は江川太郎左衛門英龍も加える必要があると思っている。『風雲児たち』みなもと太郎でも目玉グリグリの江川太郎左衛門英龍はペリー来航当時の韮山代官として八面六臂の活躍をしているのだが(そして、激務がたたって55歳で病死してしまうのだが)、武蔵国から伊豆半島までの広い地域を所領とする「世直し大明神」は多摩の名主たちにも大きな影響を与えている。



 しかも、坦庵こと英龍の下で、佐藤彦五郎や小島鹿之助など、当時十代前半だった若い世代に名主を引き継がせ、彼らをネットワーキングすることによって、新しい世代による進歩的な改革が進んでいた。



 司馬遼太郎の『燃えよ剣』では「マムシ臭い」と書かれてしまって(汗)、江戸の近くにありながら草深い農村地帯というイメージを抱かれてしまう多摩。が、幕閣きっての開明派である江川太郎左衛門英龍の治世下にあって、八王子を中心に、長崎や江戸に続くほど、洋学は早く広められていた。考えてみれば、地政学的に、多摩は江戸を経由せずに横浜と直結する「絹の道」があり、開港直後は蚕糸の値段が暴騰するような土地柄だ。



 一方で、江戸時代が成立する前後には、豊臣秀吉の検地や刀狩りも及ばない、土着武士による自治が進んでいた土地。徳川家康も根本的な統治体制には手をつけず、鎌倉武士以来の気風を継ぐ土着武士と武田・北条氏の旧家臣団を合わせた半農半士に土地を治めさせた。それが、多摩の名主層や八王子千人同心に受け継がれていく。国政の中心となった江戸に近いところにありながら、武士と農民の分化が進まず、身分の差が余り意識されない気風だ。



 著者は、新選組の核となった近藤勇や土方歳三らが「武士になりたい」という上昇志向を持っていたと解釈することに対して、多摩の固有の背景をもって、懐疑的。これはこれで、面白いなぁ。新選組という組織の中の意外なほどの近代性と懐古的な部分とを、多摩という土地の特殊性から、どこまで理解できるか。後半を読み進めるのが楽しみ。
 windowheadさんのブログ「ウエストコースト日日抄」の記事「新選組のバックボーンを理解するならこの1冊!」にてご紹介の本『未完の多摩共和国=新選組と民権の郷』を読もうと、冒頭を読み始めました。



 いずれ感想を書くつもりで読んでますが、今回はそれに先だって、新選組と多摩のつながりについて白牡丹が特に強い印象を受けた作品についてご紹介します。いずれも絶版なのが残念なのですが。



『土方歳三 「剣」に生き、「誠」に殉じた生涯』松永義弘(PHP文庫)――リンク先は復刊ドットコムリクエスト情報。



 小説です。書かれた当時わかっている限りの史実に沿っている、という点に加えて、この作品の魅力は「歳さん」と呼びたくなる、怒ったりすると多摩弁が出てくる無骨な土方さんです。



「ちったぁ、苦労されるがいいだ。道場さ来る者は、皆、はじめっから若先生と奉る者だべえ。世の中にゃ、とんでもねえ野郎がいるもんだってこと、知っておくのも悪くはねえ」



 ……これ、先番宿割りであたふたしている近藤先生について、土方さんが漏らしたコメントです。『新選組!』の土方さんとは、だいぶ違う印象を持つかと思います。



 他にも為次郎兄さんに問いつめられて「三つだ!」と叫ぶエピソード(詳しくは語るまい^_^;)とか、北に転戦しながら「ついてねぇなぁ」とぼやく場面とか、策士だけど地は無骨で格好良すぎない「歳さん」が満載。ヒロイックな土方歳三像にも惹かれつつ、ここに出てくる多摩の「歳さん」もまた大好きです。



『歴史ライブ 土方歳三』福武書店所収 架空インタビュー「歳三との対話」童門冬二



 この本、福武書店創立30周年の記念本ということで、市販されていなかったようです。ネット書店で何とか入手したのですが、この架空インタビューが出色でした。



 作家の童門さんが時空を超えて、下総流山の土方さんにインタビューに行くという異色の設定なのですが……この架空インタビューでも、土方さんはぶっきらぼうで無骨な多摩の男です。



 その中で、旧武田家臣団をルーツとする多摩千人隊の精神が、土方さんたち新選組を創ってきた幹部たちの精神風土にあると語られていきます。半農半士として、クワを握って土を耕しながら一朝ことある時は徳川家の先兵となるという気概が先祖代々受け継がれてきたのだと。そして、童門さんが「新選組は京都の千人隊ですね? いや、京都の防人といったほうがいいかな」と言うと、歳さんは「京都の防人とは、また嬉しいことをいってくれるじゃねえか」と相好を崩します。



 さらにまた、このインタビューの歳さんは、自分の武士道のルーツには、侍が堕落した時には土に帰れといった荻生徂徠や田中丘隅にも通じるものがあると、語ったりします。



 これらのふたつの作品は創作ですが、史実の土方さんと多摩の人々や風土との結びつきを考える時、このふたつの作品をイメージします。多摩の土の匂いがする男、それもまた史実の土方さんの一部であっただろうと思っています。



 『未完の多摩共和国』を読み進める中で、土方さんたちと多摩の関係をさらに深く理解すると共に、明治の自由民権運動などで多摩の土地柄・人柄を歴史から読み取れるようになれればいいなぁと思います。
 先月16日の記事「『新選組。永倉新八からの伝言』民放連の優秀賞受賞」への書き込みで、永倉新八改め杉村義衛のひ孫である杉村和紀さんがご案内下さった『新選組 永倉新八のひ孫がつくった本』に関する情報を発見。



 見つけたのは番組でナレーションと音楽を担当した坂本サトルさんのファンである、あきはさんのブログ『The Key』の下記の記事。

「新選組 永倉新八のひ孫がつくった本」発売



 柏艪社サイトのオンラインショッピングサイトは下記。

『新選組 永倉新八のひ孫がつくった本』

 10月27日発売予定だそうです。10月20日までに申し込むと1,300円に割引きになります(送料200円は別)。オンラインショッピング注文では、本と一緒に届く郵便振替による支払いという仕組みになっています(注文済)。



 関連記事として3月17日付「『新選組。永倉新八からの伝言』を見た」にもリンクを張っておきます。

 
 最近読んだ新選組の登場する小説・コミックス雑感。感想というところまでは行きませんが。



『地虫鳴く』木内昇(河出書房新社) リンク先はamazon.co.jp

 『新選組幕末の青嵐』も読んでますが、『地虫鳴く』は何というか重苦しくてなかなか読み進めませんでした(汗)。

 従来の新選組小説では主人公になっていない阿部十郎や尾形俊太郎の視点を通じて、油小路の辺りまで新選組を描く作品。

 尾形俊太郎、つい『新選組!』で飯田基祐さんが演じるビジュアルイメージと声で読んでしまうのですが……と、公家顔だとか、目が細いとか、そういう設定で木内さん設定に引き戻されることを何度か繰り返して、ようやく作品世界に入り込めました。

 尾形さんの視点で見ていて、一番面白かったのは山崎丞。腕利きの監察でいて、結構な毒舌家。身元がバレたら命がなくなるかも知れない監察現場でも、シニカルな視点を持ち続けるタフでしぶといところが好みでした。あと、斎藤一も印象的。

 阿部十郎の視点で面白かったのが、伊東甲子太郎・三木三郎兄弟。谷三兄弟とも比較しつつ、特に兄の甲子太郎を英雄にするためなら暗躍する三木三郎の、表面的には暗くて茫洋としたキャラクターを装っているところが、妙に印象に残りました。



『人斬り龍馬』石川雅之(SPコミックス)  リンク先はamazon.co.jp

 短編集のコミックス。

 表題作については白拍子泰彦さんのサイト「ひとりで勝手にマンガ夜話」の評論「人斬り龍馬」ほどのことは書けないので、こちらをご紹介するにとどめておきます。

 白牡丹が感銘を受けたのは、むしろ「二本松少年隊」の方でした。二本松攻撃隊を率いる長州藩士・木村は京都にいた時に新選組の御用改めから身を守るために我が子を手にかけていた。その木村が二本松で、わずか12-3歳の二本松少年隊と対峙し、「何故子供達を戦場に出した!」と叫ぶ。二本松藩士が、絶命しつつ「そなた長州か……萩が戦場になれば自ずと分かろう……」と言い残す。

 その会話に、アフガニスタンやパレスチナやイラクなど、今も戦火が絶えない紛争地帯を連想しまいました。時代は変わり、装備や状況は違っても、故郷をかけた戦争には戦闘員と非戦闘員に明確な区別はなくなってしまう……だからこそ、やりきれないのです。



『秘密の新選組 1巻』三宅乱丈(太田出版) リンク先はamazon.co.jp

 昨日、書店で買うかどうか、二分迷いました(爆)。何しろ、あの『ぶっせん』『ペット』『大漁!まちこ船』の作者による新選組作品……しかも、表紙は、青ざめて近藤勇にしがみつく土方歳三の図(那智の滝汗)。腰帯の紹介によると、何やら、秘薬でオナゴのような乳房ができてしまった新選組の幹部という話ではないかー(イグアスの滝汗)。

 ……昨夜は、これを読んで、爆死しました。好きとか嫌いとかいう判断をする以前に、圧倒されたというか。たとえていえば、いつも和食しか食べてない日本人が、いきなりインド人のカレーを手づかみで食する状況を経験したという、まか不思議な状況に追い込まれたようなもの。

 いやー、三宅乱丈さんって女性だったのね(汗)。今さら知ってしまいました。

 設定はトンデモですが、案外、新選組関係の本は読んでおられるようです。原田左之助と藤堂平助が美男で、沖田総司がヒラメっぽい顔してるとか。

 ……いやもぉ、それ以上は踏み込めないですわ(汗)。三宅乱丈さんのインタビューによると、集団生活はエロいという話から生まれたそうでして……撃沈。



☆★☆★



 新選組は出てきませんが、昨日は『風雲児たち 第7巻』(リンク先はamazon.co.jp)も出ました。今日の「ほぼ日」今日のダーリンでも紹介されたのが嬉しかったりして。
 ブログ検索していたら、日野市郷土資料館で発行していた『山崎丞取調日記』について最新情報を書かれているブログさんの記事に出会いました。



みみぃさんのブログ「pale blue」

山崎丞「取調日記」(追記あり)



かよこさんのブログ「黄昏時に…」

山崎丞「取調日記」について



 おふたりの記事を総合すると、無償配布していた『山崎丞取調日記』300部は品切れ、増刷を検討(その場合には有償配布となるかも知れない)しているが、その可否も決定の時期も未定だということですね。



 日野市郷土資料館さん、どうか増刷の方向でご検討をお願いしますm(_ _)m。



☆★☆★



6/14追記。数箇所変換ミスっていたので「丞」に訂正しました。
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