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新選組・土方歳三を中心に取り上げるブログ。2004年大河ドラマ『新選組!』・2006正月時代劇『新選組!! 土方歳三最期の一日』……脚本家・制作演出スタッフ・俳優陣の愛がこもった作品を今でも愛し続けています。幕末関係のニュースと歴史紀行(土方さんに加えて第36代江川太郎左衛門英龍、またの名を坦庵公も好き)、たまにグルメねた。今いちばん好きな言葉は「碧血丹心」です。
 アンジーさんのコメントもあって、前回の記事「法度の番人ということについて」に補足する必要を感じた。まず断っておきたいのは、大河ドラマ『新選組!』第38回「ある隊士の切腹」での土方さんの取った行動――最終的に河合さんを切腹に処断したことを含めて――が悪かったと白牡丹は思ってはいない。



 本当に悪いのが誰かわかっていても、隊の公金から50両も説明できない形で欠損させた河合さんを、何らかの処分にしなければならないのは、新選組を経営する立場では避けられなかったと思っている――それが切腹に値する罪かどうかについては議論の余地はあるのだけど、複数のブログさんで見る「なぜ救ってやれなかったのか」という疑問は、白牡丹は持っていない。むしろ、隊の公金を私用に都合させて借用書も書かない観柳斎(観柳斎が伊東先生たちの台頭に自分の立場を守るために本を独り占めしなければならないと思っていなかったら、本は新選組の経費から出すという手もいったはずで……ぶつぶつ)の方が悪いとわかっていながら、観柳斎は処断できず、河合さんを処断しなければならないという状況に、土方さんの苦悩があったのだ。



 アンジーさんのコメントを読んだ後でぴっと閃いたことだが、白牡丹がもやもやしていた原因は、隊の公金が50両帳簿と合わないとわかった場面での言動が、白牡丹がイメージしている土方さんにちょっと合わなかったのだ。



 土方さんがまず、誰かに融通したのではないかと追求し、河合さんが自分が紛失したこととしてその穴埋めに実家から都合してもらって隊の穴を埋めると提案したこと、それを受けて10日の猶予を許すが金が届かない時には切腹だという遣り取り。土方さんが言ったことの内容は、別に違和感はない。問題は、その順序だ。



 白牡丹は、土方さんにまず、説明のつかない欠損を出したことが、隊規に照らして、あるいは士道に照らして、不覚悟、重大な落ち度だと宣言して欲しかった。それが、法度の番人であるはずの土方さんに期待していた言葉だった。その上で、誰かに融通したのではないか、欠損の後始末をどうつけるのか、という話に入って欲しかった。



 法度に照らした時に、例外はないという原則の前に不本意な切腹を命じなければならない土方さんの苦悩は、第33話「友の死」でも今回でも十分すぎるほど描かれている。白牡丹が悶々とするのは、不本意ながら隊規に背いた以上は同志の死を命じなければならないという結論ありき、の土方さんが隊規に置いている価値観であり、思いである。



☆★☆★



 この大河ドラマ『新選組!』の、三谷脚本・山本耕史演じる土方さんは映像ものの土方さんの中で今やデフォルトになっているほど好きだ。が、『新選組!』を見る前から土方ファンだった白牡丹には、史実本や創作からイメージしている土方さん像があって、そのイメージに合わない時には「あれれ?」という時がある。たとえば、浪士組出立の時に、捨助くんから50両巻き上げて「悪く思うな」と捨助くんを昏倒させた場面とか。



 今回のもやもやに一番近いのは、第32話「山南脱走」での土方さんの一言。自分の留守に葛山さんを切腹させたと知って、土方さんを殴る近藤さんに、土方さんが反論した言葉。

「逆だろ。これで俺たちに逆らうとどうなるか、他の隊士も分かったはずだ」

 くすん……白牡丹は「俺たちに逆らうとどうなるか」ではなく「法度に背くとどうなるか」と言って欲しかった。自分たちに隊士たちを従わせるために法度があるのではなく、元来は武士の生まれではない近藤さんや土方さんが武士よりも武士らしくありたいという切ない思いを込めて立ち上げた新選組の中心には、近藤さんや土方さんという人間が中心でいるのではなく、一度新選組に加入したからには武士として誰をも扱うが代わりに命を懸けて守るべき士道・誠の象徴として法度があり、その番人としての土方さんが居て欲しいわけで。

 一方では、よく描かれていると思っているのだ。なんで葛山さんや山南さんを切腹させなければならなかったのか、自分の心情とは関係なく新選組を組織として維持するために守らねばならないものが法度であり、それに照らして処断しなければならない苦悩は、今回も河合さんの処断をめぐって十分に描かれていたと思う。

 ただ、他方では、新選組にとって法度とは、土方さんが新選組を仕切るための手段と取られかねないのがもやもやの原因なのだ。局中法度が新見さんを陥れるための手段として導入される、という時から違和感があったのだが、法度に雁字搦めになっていると指摘されかねない第38話の土方さんを見ていると、何だかなー……出自を問わず武士として扱うからには、武士の理想としての士道や誠があり、最低限のスタンダードとしての局中法度がある、という法度の位置づけがないと、自分の理想を実現する手段としての局中法度に足下をすくわれている土方さんの図が、矮小化されて見えてしまうのが、嘆息。



 河合さんの失態の背後に観柳斎がいることを薄々気づいていて、それを先に追求したいという『新選組!』の土方さんの心情はわかるつもりなのだが、白牡丹は、まず、局中法度と法に照らして河合さんの行為がどういう意味を持つのかを明らかにしてから、河合さんを追求して欲しかったんだなぁ……。



 不本意ながら同志に切腹を命じなければならないほど、局中法度を守る価値があるのかどうか。その点が、物足りないのだ。



☆★☆★



 直接は言及しませんでしたが、ふたつのブログさんのご感想に触発されたコメントです。



 れいこさん「baddreamfancydresser」「38話追記」

> 今までの切腹は、土方か本人か、どっちかが強く押し切ってしまったってのがあるけど、今回はほんとに誰も望んでないんですよね。途中から(恐らくみんなにバレてしまってから)は、確かに「山南さんの死を無駄にしない為」に土方がああせざるを得ないってのはわかる。でももっと前に、いくらでも打つ手はあったんじゃないのかな。あそこまで悔やむなら、なんでもっとうまくやらない?土方らしくない。

 れいこさんのご感想と微妙に違うのかも知れないんですが(^^ゞ、違和感を感じたというところが、近い感覚だったので。



 ykさん「水川清話」の「東映/NETの「新選組血風録」続 おもっしれええ!」。栗塚旭さん主演の『新選組血風録』と『新選組!』がお互いを補完し合う作品だというのは、結束信二さんの『新選組血風録』『燃えよ剣』が映像作品のデフォルトで、それと無意識に対比して『新選組!』を楽しんでいる白牡丹にはすごーく納得。しかも、今回のご感想で

> たとえば4話の「胡沙笛を吹く武士」。鹿内薫がなんで法度違反で斬られなきゃならないのか、原作は原作でもちろん伝わるんだけど、ドラマ版はさらにもう一押し、疑問の余地がないほど説得力を与えて、映像的にもわかりやすくしている。例によってネタバレは控えるけど、ドラマの鹿内は、さすがにそれをしたら、やっぱまずいだろうようって私も思ったくらいのことをするわけだ。それをやったら、そりゃ斬られるよおっていう説得力がある。

↑ここの部分が、『新選組!』第38話の土方さんにちょっと違うかなーと思う白牡丹には、うんうんと頷けるところ……ただ、第38話のykさんのご感想を読む限り、白牡丹の感想と一緒だとされたら「違う!」と言われそうなんで、こちらの記事へのリンクにとどめておきます(^^ゞ。
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