第32話「山南脱走」……届かぬ真意

　初っ端の解説で「そこでやむなく土方は、隊の結束を守るため」と「やむなく」の四文字を入れてくれたのが嬉しい、土方贔屓の白牡丹である。まぁ、この大河ドラマ『新選組！』では汚れ仕事をすべて引っ被る土方さん像だから、「土方ムカツク〜」とか「やな奴〜」という感想が出るのも仕方ないだろう。土方贔屓の白牡丹は、近藤さんを立てるために修羅の道に自分を追い込みながらも、迷いや苦悩、やりきれなさをちらちらと見せる山本土方さんが好きだ。今回も、自分が最も厳しいことを言う立場にいなければ新選組を引き締められないと信じて、でも不器用さゆえに山南さんに本音を言えてない土方さんが描かれていたと思う。



　江戸から戻ってきた近藤さんが葛山武八郎を切腹に処断したと知って、土方さんを殴る。雑誌で、香取慎吾さんが本気で山本耕史さんを憎んだと言っていた、それ聞いて「本望だ」と山本さんが言った、曰くつきの場面。

　睨み合うところに割って入る沖田くん、その場を取りなそうとするなんて、キミも大人になったね(^^)。ただ、そういう場面にまだ慣れていないし、焦っているから、喋り過ぎる。それが却って近藤さんを苛立たせるんだな……。

　「うるさいっ」と一喝する近藤さん。怒りがどれだけ大きいか、感じられる場面。

　しかし、土方さんも譲らない。

「新選組は烏合の衆だ。結束を固めるには、法度で縛るしかねえんだ」

　三白眼で近藤さんに迫る(あの山本耕史さんの童顔を知っていると、別人に見えるなぁ)土方さん。

「脱走すれば切腹だ」

「総司でもか」

「……総司でもだ。上に立つ者ならなおさらだ」

　ここの「……」という間が、土方さんが総司くんにはちょい甘いところをうまく表現していると思う。

「俺でもか」

「当たり前だろ」

　……ここに、土方さんの組織観の特徴があると思う。上に対して甘い組織は、崩壊が早い。土方さんは、新選組を組織として大きくするためには、例外を認めないだけでなく、上に立つ者にはより厳しい。



ｸﾏ ｷﾀ ━━━（・(ェ)・）━━━ !!ｸﾏｰ

　これがわかる人は、多分、2ちゃんねるの大河ドラマ板を見ている人だろう(笑)。白牡丹は書き込まないけど、ちょこっと読んでいる^_^;。2ちゃんねるの大河ドラマ板では、伊東甲子太郎を演じる谷原章介さんがテディベア収集を趣味にしていることから、伊東先生は「クマ」「クマ太郎」と呼ばれている。白牡丹もたまに「クマ」とか「クマ太郎」とか「クマ先生」って呼ぶかも知れませんので、ご理解をお願いしたく。

「この度は、名高き(ここ傍点)新選組に加えていただき、恐悦至極。この伊東大蔵改め甲子太郎、身命を賭して尽忠報国に勤める所存でおります。共に手を携え、上様のご恩に報いましょう」

　相変わらず難しい言葉がお好きな伊東先生。文武両道のエリートだからね。「この伊東大蔵改め甲子太郎」と「この」をつけるのは、多くの門人を引き連れて加盟した自分の影響力に自負するところがあるからだろう。

　気になったのは「上様のご恩に報いましょう」という一言。まぁ、伊東先生、結果的に新選組から出るわけだけど、反幕府ってわけじゃないですからね。

　谷原さん、お顔も素敵ですが、声がいいですね。羽織がまた紫系なのが、紫好きだと伝わる史実の伊東甲子太郎さんにちゃんと依拠している。中に着ているお着物は小紋でしょうか。

　クマ先生の話はこのぐらいで。いずれ、野間みつねさんががしがし分析して下さると思いますので(笑)。

「また俺の苦手な男が現れた」と、総司くんに耳打ちする土方さん……土方さん、可愛すぎる(^^)。「また俺の」ということは、観柳斎とか谷とかも苦手だと白状しているんですか(笑)？



　伊東先生の門人達の前に出ると、伊東先生、さっきまでお愛想売っていた時とまるで顔つきが違う(笑)。門人達の前では師匠としての威厳が必要ということかな。

　加納さんの向いに座る一際若いのが、実弟の三木三郎くんらしい。



　幾松さんから包みを預かる捨助くん。桂先生に会わせないことで、長州系の浪士に対して優位を確立している。そして、幾松さんから金を引き出す(苦笑)。苦々しげな長州系の浪士たち。

「調子に乗るんじゃない。天狗になりやがって」

　出た出た、伏線。しかも、新選組に遭遇して、顔隠すし(捨助くん、新選組の何人かには面が割れてるから隠すのは当然なのだが)。相変わらずのヘタレっぷり。身体を張って捨助くんを守る浪士たち。

「天狗逃げろー」

　……やはり、捨助くん、いずれ○○天狗と名乗ることになるのか(ぼそ)。スタパ情報から、そんな気がしていたんだが。



　近藤さんが黒谷に呼ばれている最中の幹部会議。あれ、谷さんがいない。大坂にでも行っているのかな。

　土方さん、引っ越しを提案。山南さん、八木さんや前川さんに迷惑をかけていることから、ここを出ること自体には反対していない。

「お待ち下さい。屯所の引っ越しは新選組の重大事。そのようなことを近藤局長のおられない時に決めるというのはいかがなものか」としゃしゃり出る武田観柳斎。

　そして、予想通りに(笑)、観柳斎と対決するのは土方さん。

「腰巾着は黙ってろ」

　うわー、言ったわな^_^;。

「引っ越しすると言っても、場所のあてはあるのか」と土方さんに聞く永倉さん。ぎくしゃくしているが、永倉さんが土方さんに話しかけることはあるわけだ。

「素晴らしい。本願寺なら、新選組の新しい屯所にふさわしい」

　……伊東先生、一流好みだから(笑)。「素晴らしい」という一言を聞いた瞬間、白牡丹の頭には『王様のレストラン』で松本幸四郎さん(当時)演じる一流ギャルソン、千石武のセリフとダブって聞こえたが(汗)。

「よろしいですか。腰巾着というのはあまりにも失礼じゃございませんか」と観柳斎。扇が笑える。しかし、近藤さんの威を借りる発言はやはり腰巾着(笑)。

　西本願寺移転に反対する山南さん。それに賛成する永倉さん。

　そこで口を開くのは伊東先生。

「これは異な事を申されますな、山南殿。あなたは今穢すとおっしゃった。あなたは、新選組の使命を穢れたものとお考えか」

　ディベートさせたら強そうな伊東先生。賛意を示したのは、加入直後で幹部たちに参謀としてふさわしいと、印象づけたいという意図なのかなぁ……。

　しかも、山南さんを超えるトリビア蘊蓄魔(爆)……土方さん、苦手そう。でもいつかは、観柳斎に見せるようなツッコミを、伊東先生にして欲しいものだ(笑)。

「山南さんの負け」……おいおい、沖田君、そんなこと言ったら、ますます山南さんの居場所が……(以下略)。



　お薦《こも》さんの格好で潜伏する(うーん、別人に見える^_^;)桂さんに届け物をする捨助くん。岩倉村の坊主に紙のハタキを預ける……たぶん、紙に書いてあることにヒントがあるんだろう。岩倉公ったら、昔の500円札ですな(世代がバレる^_^;)。



　松原くんと篠原泰之進くんが縄張り争い。苦々しく見ている永倉さんと山南さん。

「時代は目の前で動いているのに、我々は何をやっているのか」

　……前回から、このセリフを繰り返しているなぁ(嘆息)。



　縁側で西本願寺の図面を広げている土方さんに話しかける伊東さん。うわー、早くも直接対話だよ(興奮するのは、野間みつねさんの小説『まなざし』の愛読者だから^_^;。そして、今後の『新選組！』でも土方さんと伊東さんの対話がドラマの重要な鍵を握っていると予測するから)。今回の放映は山南さんが脱走するという重い事件が控えているだけに、ここではしゃがなくてどうする、と、はしゃぐ白牡丹。

「だんだん皆さんの関係がわかってきました。原田くんの発言には、なぜ誰も応じないのですか」

「今にあんたもわかる」

　答えるまでもないズレた発言だってこと、伊東先生、当然お気づきでらっしゃいますよね。本題は、別のところにあるようで。

　土方さん、嫌そうに部屋にひっこむ。顔に「お前、苦手」と書いてある土方さん(笑)。でも、めげずに話しかける伊東先生。

「山南君とはうまくいってないようですね」

「そんなことはねぇ」

「彼はやや隊の中で孤立している感がある。山南君は雄弁ではあるが、詰めが甘い。沈着を装っているが、案外情に動かされる方ではありませんか」

　伊東先生、参謀としての有能さを土方さんにアピールする作戦らしい。

「山南の悪口を言って欲しくねぇな」

「Oh」……「Oh」って聞こえた(爆笑)。伊東先生、「英語でしゃべらナイト」モードでしょうか。いやぁ、小技がありますね、伊東先生も。

「はっははは、嫌っておられのかとばかり」

「別段好きではないが、付き合いが古いんでね。昨日今日やって来たくせにでかい顔して知ったような口を利く奴よりは、はるかにましってことですよ」

　この返答に、土方さんの不器用さが見える……「別段好きではないが」と言っているが、伊東先生がちょっとカマをかけるだけで山南さんを擁護するところ、土方さんは山南さんが好きなのだ(断言)。

　ひえー、満面笑みの伊東先生、顔は笑っているが、内心は「こいつ手強い」と思って下さったのでしょうか。これからのふたりの対話シーンがますます楽しみ(爆)。



　黒谷に呼び出されているのは薩摩の西郷どん、佐々木様と近藤さん。桑名藩主で京都所司代の松平定敬さんも登場、育ちの良さからかおっとりしている風貌が、筒井さん演じる容保様と何となく似てる(笑)。

　遠慮がなく姿勢を崩すわ、ぼけらっとするところがあるわ、でも大人物の感じがある西郷さん。宇梶さん、グッジョブ。

　おお、近藤さんの回想に松本良順先生登場。前回は総司君の病状が中心だったけど、きちっとここで話し合いの内容をフォローしているわけね。良順先生の言葉に心を動かされた近藤さん、亡き佐久間象山先生の教えを自分の攘夷論として展開する。

　ドラマの感想では余り長く書けないが、新選組を率いる近藤さんが、尊皇攘夷論ではあるがまずは開国しなければならないと思想転換した瞬間。

　良順先生「どっかのゆすりたかりとおんなじだ」って、新選組に対する当てつけかと思った(汗)。史実の良順先生は、新選組にすごーく肩入れしてくださってますが。



　寺田屋で飲んだくれている龍馬くん。この人の運命は、アップダウンが激しい。先週は山南さんを動揺させるほど、きらきらした目で日本を変えると息巻いていたのにな。

　そこに訪ねてきたのが山南さん。

　龍馬くん、軍艦奉行を務めていた勝先生が罷免されて海軍創設の夢を奪われてしまったためにふて腐れているわけだったんですね。

「わしはもう、どーでもようなった」

「坂本君には、そういうことは言って欲しくない」

　山南さん、失意の坂本さんに光明を与える(？)一言。

「つまるところこの国を動かすのは主義や主張ではなく、人と人のつながりではないでしょうか」

　山南さんは、前回の龍馬くんとの会話で、坂本さんの壮大なビジョンに対して自分が新選組の内部で無力であることを思い知らされた。今回の龍馬くんとの会話では、むしろ日本の行く末について自分に何ができるかを、新選組を離れて考えたいと思ったのだろうか(ここの解釈は自信ないが、山南さんの目に輝きがあったので)。



　そして、隣りでは、羽振りの良い捨助くんが酒に酔ったいきおいでおりょうさんに迫る。でも、金ちらつかせて仲良くなろうなんて、セコイ(笑)。こういう奴は、金の切れ目が縁の切れ目なんだけど、捨助くんにはわからないだろーな^_^;。

「ちゃんとそれに見合った仕事をしてんだよ。命がけでな」

　……長州系浪士の方々、凄い目で睨んでまっせ(笑)。



　山南さん、水面に映った自分の顔を見つめ、小石を蹴り入れる。今の自分が嫌なんですね……。ここが、一番、今回の山南さんで印象に残った場面。