新選組・土方歳三を中心に取り上げるブログ。2004年大河ドラマ『新選組!』・2006正月時代劇『新選組!! 土方歳三最期の一日』……脚本家・制作演出スタッフ・俳優陣の愛がこもった作品を今でも愛し続けています。幕末関係のニュースと歴史紀行(土方さんに加えて第36代江川太郎左衛門英龍、またの名を坦庵公も好き)、たまにグルメねた。今いちばん好きな言葉は「碧血丹心」です。
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「対立=conflict」は何から生じるのか。たまたま第30話を見る直前にネットで調べていて、「意見や意思決定に関わる対立」と「感情にもとづく対立」という分類があるのを知った。前回の分析がまさしく前者に関わる部分だったので、今回は後者の面から土方さん・永倉さん・山南さんのケースを考えてみたい。
「感情にもとづく」というのはすごーく広い。対立する相手をどう思っているかも含まれているだろう。「土方さんってやっぱり山南さんが嫌いなんだー(;O;)」なんて表面的な分析はしたくないので、対立に至る前提である、組織感覚や対人関係のもとになるパーソナリティについて考察してみたい。
1.土方歳三 「身内」にしか素顔を曝せない不器用な男
一番手は、やはり土方さん。
対立の場面に先立って、恩賞金を眺めながら近藤さんに酒を注ぎ、源さんと総司君が加わって、後から山南さんが来るのを嫌そうに見ている場面があった。「山南さんをハブにしている」というヤマナマーの感想もあちこちに見られたが、あの場面、近藤さんと源さんと総司君以外の誰が加わっても土方さんは「邪魔が入った」と思うだろう。
大河ドラマ『新選組!』の土方さんは、誰に対しても分け隔てなく接しようとする近藤さんと違って、「素」と「外向き」の差が大きい。そして、「素」を見せられるのは、「試衛館生え抜きの四人」というよりは、「多摩出身の試衛館の仲間」に限られているのだろうと思う。
多摩の人間は、江戸周辺でも特に同郷意識が強いらしい。しかも、土方家と土方さんの義兄である佐藤家と井上家は遠い縁戚、沖田家も井上家と血縁。さらに言えば、試衛館の一派が壬生浪士組時代に芹沢一派と違って商家に押し借りに行かずともやってこられたのは、義兄の佐藤彦五郎はじめとする多摩の後援者たちが仕送りをしてくれたおかげだ(ここまでのドラマでは描かれていないが、次回の勇さんが江戸に帰った時に出てくるかも知れない)。
屈託のない総司君や誰に対しても控えめな源さん(だって、源さんだもん♪)はともかく、副長として隊内の人々と接する場面が多い土方さんには、自分の弱みを含めて「素」の自分を見せられる相手が極端に少なくなっている。新選組を効率的に組織しようとすると、建前を使うことも多くなるし、組織を大きくしようと思えば個人的には決して好いていない観柳斎や谷長男だって活用しなければならないが、決して「素」を曝すことはない。
あーあ、ストレスたまりますよね……。
2.永倉新八 建前の通じない男
「本音しかない男」という表現も考えたが、「建前の通じない男」という方が新八っつぁんの素を表現するにはいいかと思う。
そのヒントになったのは、白牡丹が頻回するsabaさんの日記「2004日記」。
逆に言えば、近藤さんが本心から反省していると意思表明しちゃったら、対立点は解消してしまうんだよなぁ^_^;。
全然違う話なのだが、日本人はチームワークが得意な文化という日本人の有り体な発言に対して、異文化コミュニケーションの講師が「そうでしょうか。日本人の伝統的なスポーツは、相撲、柔道、剣道など、個人戦が多いのではないでしょうか」と応じて、目から鱗だったことがある。大河ドラマ『新選組!』の新八っつぁんって、根っからの剣士で、個人戦の強者なんだよね。おそらく、個人としての剣の弱さをカバーするために集団でどう戦闘するかという土方さんがしそうな発想とは対極にある人。
そして、組織感覚はゼロ。左之助が謹慎を食らっていることについて「お前がそういう人間だってことは近藤さんも土方さんも知ってるじゃないか」という論理に、それがあらわれている。クラブ活動のレベルなら、それでいい。でも、より大きな組織を動かすためには、規律を生むための法度をつくって徹底させ、できるだけ公正な基準で褒賞金を与えることによって組織化しようとする土方さんにとっては、やっかいな相手だよなー。
新八っつぁんと新選組をつないでいるのは、近藤さんに対する信義。芹沢さんを殺したのが近藤さんたちだったかどうかという以上に、島田魁さんが言うように「俺たちにウソをついていたのは、それ以上にいけない」っていう感覚なんじゃないかな。だから、論点は棚に上げても「近藤さんが頭を下げた」という事実に感動してしまう。でも、理屈でなく「かっちゃんが頭を下げさせられた」という事実に収まらない土方さんとは、今後、対立必至かも……。
3.山南敬助 ぶつかりもできなければ弱みも見せられない男
……うわー、ヤマナマーに非難囂々なのを覚悟で、言ってしまった^_^;。白牡丹、大河ドラマ『新選組!』の山南さん、好きです。でも、冷静に見ると、そう表現せざるを得ないわけで。
山南さんも、時には自己主張をする。「あらゆることに備えて策を練るのが軍議ではなないか〜っ!」とか。
でも、いくつかの場面を振り返って、気がついてしまった。山南さん、一度主張したことが通らないとわかると、すぐに引き下がってしまうんですよね……。
池田屋事件の前の軍議が、その典型的な場面。珍しく爆発したのに、それを上回る観柳斎の意見が出てしまうと、すっかり引っ込んでしまう。
10代の頃、人と関係を結ぶのが苦手だった白牡丹、実は山南さんが一番自分と似ているなぁと思う。生き物にたとえると(山南さん、ごめんなさい^_^;)イソギンチャク。触手を伸ばしてちくっと刺したりはできるんだけど、効かないと殻に閉じこもって大人しくしてしまう。
山南さんの不幸な面は、新選組の本当の核である多摩の四人に溶け込むには、自分の殻を破って子供じみた側面を見せたり、自分の弱みをさらしたり、することができなかったことにあると思う。多摩の男は、そういうところを見せられない相手は、構えてるって思ってしまうんだよね^_^;。
もし、芹沢さんが泣いたあの酒宴の席で、多摩伊勢音頭がわからなくても座を盛り上げるために加わった永倉さんのように自分をさらけだす勇気が山南さんにあったなら……事態は違っていたかも知れない。
そして、山南さんは永倉さんと違って組織感覚はあるんだけど、自覚があるのかどうか、自分からぶつかっていくんじゃなくて、上の人頼みなんだよな……(嘆息)。
池田屋の時も会津藩に相談するべきだと主張、建白書の時も自分が表に立つと余計にこじれるから容保公に意見してもらおう、と、上頼み。よくも悪くも「かっちゃんを男にする」という動機で、できるだけ「かっちゃん」を傷つけないように自分の力で解決しようとする土方さんから見たら、まったく逆の方向に行ってしまう。
白牡丹は、対立の矢面に立たない山南さんをせこいとは思っていない。でも、対立を表に出さないように行動すればするほど、実は自分自身を追い込んでいる山南さんが、哀れである。自分をかなぐり捨ててぶち当たるか、自分の弱みをさらけ出すか、それが山南敬助にできていたら、土方さんとの関係も変わっていただろうか、という是非もない仮説を提示するのみである。
「感情にもとづく」というのはすごーく広い。対立する相手をどう思っているかも含まれているだろう。「土方さんってやっぱり山南さんが嫌いなんだー(;O;)」なんて表面的な分析はしたくないので、対立に至る前提である、組織感覚や対人関係のもとになるパーソナリティについて考察してみたい。
1.土方歳三 「身内」にしか素顔を曝せない不器用な男
一番手は、やはり土方さん。
対立の場面に先立って、恩賞金を眺めながら近藤さんに酒を注ぎ、源さんと総司君が加わって、後から山南さんが来るのを嫌そうに見ている場面があった。「山南さんをハブにしている」というヤマナマーの感想もあちこちに見られたが、あの場面、近藤さんと源さんと総司君以外の誰が加わっても土方さんは「邪魔が入った」と思うだろう。
大河ドラマ『新選組!』の土方さんは、誰に対しても分け隔てなく接しようとする近藤さんと違って、「素」と「外向き」の差が大きい。そして、「素」を見せられるのは、「試衛館生え抜きの四人」というよりは、「多摩出身の試衛館の仲間」に限られているのだろうと思う。
多摩の人間は、江戸周辺でも特に同郷意識が強いらしい。しかも、土方家と土方さんの義兄である佐藤家と井上家は遠い縁戚、沖田家も井上家と血縁。さらに言えば、試衛館の一派が壬生浪士組時代に芹沢一派と違って商家に押し借りに行かずともやってこられたのは、義兄の佐藤彦五郎はじめとする多摩の後援者たちが仕送りをしてくれたおかげだ(ここまでのドラマでは描かれていないが、次回の勇さんが江戸に帰った時に出てくるかも知れない)。
屈託のない総司君や誰に対しても控えめな源さん(だって、源さんだもん♪)はともかく、副長として隊内の人々と接する場面が多い土方さんには、自分の弱みを含めて「素」の自分を見せられる相手が極端に少なくなっている。新選組を効率的に組織しようとすると、建前を使うことも多くなるし、組織を大きくしようと思えば個人的には決して好いていない観柳斎や谷長男だって活用しなければならないが、決して「素」を曝すことはない。
あーあ、ストレスたまりますよね……。
2.永倉新八 建前の通じない男
「本音しかない男」という表現も考えたが、「建前の通じない男」という方が新八っつぁんの素を表現するにはいいかと思う。
そのヒントになったのは、白牡丹が頻回するsabaさんの日記「2004日記」。
ここまで来て思ったのですが、これって15話ぐらいに出てきた清河と池田徳太郎みたいな関係で、永倉は「近藤にあやまってほしかった」のかも。近藤が増長しているとかなんとかが中心じゃなくて、筋の通らないことを反省して永倉が理想とする元の近藤に戻ってもらえばそれでよかったのかも。
逆に言えば、近藤さんが本心から反省していると意思表明しちゃったら、対立点は解消してしまうんだよなぁ^_^;。
全然違う話なのだが、日本人はチームワークが得意な文化という日本人の有り体な発言に対して、異文化コミュニケーションの講師が「そうでしょうか。日本人の伝統的なスポーツは、相撲、柔道、剣道など、個人戦が多いのではないでしょうか」と応じて、目から鱗だったことがある。大河ドラマ『新選組!』の新八っつぁんって、根っからの剣士で、個人戦の強者なんだよね。おそらく、個人としての剣の弱さをカバーするために集団でどう戦闘するかという土方さんがしそうな発想とは対極にある人。
そして、組織感覚はゼロ。左之助が謹慎を食らっていることについて「お前がそういう人間だってことは近藤さんも土方さんも知ってるじゃないか」という論理に、それがあらわれている。クラブ活動のレベルなら、それでいい。でも、より大きな組織を動かすためには、規律を生むための法度をつくって徹底させ、できるだけ公正な基準で褒賞金を与えることによって組織化しようとする土方さんにとっては、やっかいな相手だよなー。
新八っつぁんと新選組をつないでいるのは、近藤さんに対する信義。芹沢さんを殺したのが近藤さんたちだったかどうかという以上に、島田魁さんが言うように「俺たちにウソをついていたのは、それ以上にいけない」っていう感覚なんじゃないかな。だから、論点は棚に上げても「近藤さんが頭を下げた」という事実に感動してしまう。でも、理屈でなく「かっちゃんが頭を下げさせられた」という事実に収まらない土方さんとは、今後、対立必至かも……。
3.山南敬助 ぶつかりもできなければ弱みも見せられない男
……うわー、ヤマナマーに非難囂々なのを覚悟で、言ってしまった^_^;。白牡丹、大河ドラマ『新選組!』の山南さん、好きです。でも、冷静に見ると、そう表現せざるを得ないわけで。
山南さんも、時には自己主張をする。「あらゆることに備えて策を練るのが軍議ではなないか〜っ!」とか。
でも、いくつかの場面を振り返って、気がついてしまった。山南さん、一度主張したことが通らないとわかると、すぐに引き下がってしまうんですよね……。
池田屋事件の前の軍議が、その典型的な場面。珍しく爆発したのに、それを上回る観柳斎の意見が出てしまうと、すっかり引っ込んでしまう。
10代の頃、人と関係を結ぶのが苦手だった白牡丹、実は山南さんが一番自分と似ているなぁと思う。生き物にたとえると(山南さん、ごめんなさい^_^;)イソギンチャク。触手を伸ばしてちくっと刺したりはできるんだけど、効かないと殻に閉じこもって大人しくしてしまう。
山南さんの不幸な面は、新選組の本当の核である多摩の四人に溶け込むには、自分の殻を破って子供じみた側面を見せたり、自分の弱みをさらしたり、することができなかったことにあると思う。多摩の男は、そういうところを見せられない相手は、構えてるって思ってしまうんだよね^_^;。
もし、芹沢さんが泣いたあの酒宴の席で、多摩伊勢音頭がわからなくても座を盛り上げるために加わった永倉さんのように自分をさらけだす勇気が山南さんにあったなら……事態は違っていたかも知れない。
そして、山南さんは永倉さんと違って組織感覚はあるんだけど、自覚があるのかどうか、自分からぶつかっていくんじゃなくて、上の人頼みなんだよな……(嘆息)。
池田屋の時も会津藩に相談するべきだと主張、建白書の時も自分が表に立つと余計にこじれるから容保公に意見してもらおう、と、上頼み。よくも悪くも「かっちゃんを男にする」という動機で、できるだけ「かっちゃん」を傷つけないように自分の力で解決しようとする土方さんから見たら、まったく逆の方向に行ってしまう。
白牡丹は、対立の矢面に立たない山南さんをせこいとは思っていない。でも、対立を表に出さないように行動すればするほど、実は自分自身を追い込んでいる山南さんが、哀れである。自分をかなぐり捨ててぶち当たるか、自分の弱みをさらけ出すか、それが山南敬助にできていたら、土方さんとの関係も変わっていただろうか、という是非もない仮説を提示するのみである。
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