新選組・土方歳三を中心に取り上げるブログ。2004年大河ドラマ『新選組!』・2006正月時代劇『新選組!! 土方歳三最期の一日』……脚本家・制作演出スタッフ・俳優陣の愛がこもった作品を今でも愛し続けています。幕末関係のニュースと歴史紀行(土方さんに加えて第36代江川太郎左衛門英龍、またの名を坦庵公も好き)、たまにグルメねた。今いちばん好きな言葉は「碧血丹心」です。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
坦庵公こと第36代江川太郎左衛門英龍についてざっとおさらいすべく、ネットで入手した昭和5年発行・昭和6年第4版の『江川太郎左衛門』古見一夫(國民文學社)をざっと読みながらメモを取っています。
著者は伊豆出身、教育畑で仕事をしながら江川太郎左衛門の事績を20年調べていて、東京高等高等師範学校教授川島次郎氏のすすめで最初はこの本を自費出版したようです。
本書は、教育勅語奉戴四十周年記念(汗)事業として雑誌『國民文學』によって発行されることになった、という経緯らしい。もともとは近代の偉人シリーズとして第一弾が乃木大将、第二弾が渡辺崋山、第三弾が江川太郎左衛門、と企画されていたところ、出版社が倒産(汗)。多数の名士らの資金援助を受けて自費出版したもののようだ。初版千部、再版千部、で自分が入手したのは第4版。
明治維新以降、近代化・軍備増強をすすめてきた近代日本において、乃木大将と並んで渡辺崋山や江川坦庵公が評価されていた、というのが21世紀初頭の日本に生きる自分には、まず驚きです。しかも教育勅語にもとづく青少年の修身のテキストとして、幕末の幕府役人であった江川英龍が評価されていたというのもちょっとした驚きです……敗戦以降の近代史観において余り大きく取り上げられないのは、その反動なんだろうなーと思います(戦前の修身の教育を全肯定する立場ではありません。念のため)。
しかし、そういう時代背景で出版された江川英龍伝を読み始めて、目からウロコの一言。「我が陸海軍の基礎を据えた偉人」……その一言が聞きたかったのです、はい。西洋砲術を高島秋帆から学んで広めたとか、マリナー号事件で活躍したとか、お台場をつくったとか、反射炉をつくったとか、具体的な事績をまとめた一言をなかなか目にすることができないのはなぜかということがずっと気になってました。
以下、具体的な事績を同書からメモ書きしながらコメント。
・砲術教練の創始……高島流砲術を習い、通称韮山塾・江川塾にて幕臣および諸藩の門人に広める。門人に佐久間象山、橋本左内、木戸孝允、黒田清隆、大山厳、杉孫七郎ら。
・農兵隊の創設……幕府の許可が下りた時には病没していたので、実行したのは子息の英敏・英武ら。同書では「これが他日全国皆兵主義の徴兵制度となった」と。
・軍隊衛生の「確立」……「確立」とまで言い切れるかは疑問だが、関連する洋書大槻俊斎に翻訳させ『銃創瑣言』と題して出版(序文を添える)。
・韮山に反射炉を築いて大砲を鋳造……坦庵公病没後に竣工
・ドンドル銃・ガラナイト弾その他の兵器を発明
・江戸湾防衛のためお台場の築造……十一基を建設する計画が幕府の予算不足のため、中断
・沈没したロシア船「ディアナ号」の代船として西洋式スクーナー船を築造……築造に関わった技術者の中から明治海軍の技術者を輩出
・糧食としてパンを導入
・地方代官として善政を敷き「世直し江川大明神」と称えられる……特に幕末、甲州一揆直後の甲斐国地域を管轄下に加えられ、よく治めた
・管轄下に入った伊豆七島と八丈島を巡見し行政を見直した
・天然痘予防のために種痘を励行
・西洋通の学者・蘭医・幕臣などによる「尚歯会」を支援……メンバーに高野長英・渡辺崋山・小関三英・鈴木春山・川路聖謨ら。開明派を嫌う鳥居耀蔵が引き起こした蕃社の獄で弾圧を受ける
・管轄地の豪農が天保の飢饉もあり経営難に陥った時には二宮尊徳に助力を仰ぎ、経営を立ち直らせた
・西洋式砲術の師である高島秋帆が鳥居耀蔵の讒言により投獄された時には放免を求めて諸方面に働きかける、釈放後は砲術師範として厚遇
・安政の大地震で被害を受けた伊豆半島(特に下田方面は津波被害が甚大だった)など管轄地での救民活動
……これらの実績に加え、倹約の励行とか婦徳教育の強調とか「忍」「敬慎第一実用専務」がモットーとか、確かに修身の教科書好みの人ではあるのだけど(苦笑)。
作中、佐久間象山について「無類の尊大漢」と書かれているのが笑えた。
蕃社の獄の際に高野長英を一時匿ったことについては書かれてなかった、なぁ。
口伝の域は出ていないが、いろいろなエピソードがあって面白かった。
☆★☆★
2月5日追記。
ドンドル銃……従来の火縄銃や火打銃と違って、引き金で雷管を打つ形式の銃
ガラナイト弾……grenade、炸裂弾のこと。
著者は伊豆出身、教育畑で仕事をしながら江川太郎左衛門の事績を20年調べていて、東京高等高等師範学校教授川島次郎氏のすすめで最初はこの本を自費出版したようです。
本書は、教育勅語奉戴四十周年記念(汗)事業として雑誌『國民文學』によって発行されることになった、という経緯らしい。もともとは近代の偉人シリーズとして第一弾が乃木大将、第二弾が渡辺崋山、第三弾が江川太郎左衛門、と企画されていたところ、出版社が倒産(汗)。多数の名士らの資金援助を受けて自費出版したもののようだ。初版千部、再版千部、で自分が入手したのは第4版。
明治維新以降、近代化・軍備増強をすすめてきた近代日本において、乃木大将と並んで渡辺崋山や江川坦庵公が評価されていた、というのが21世紀初頭の日本に生きる自分には、まず驚きです。しかも教育勅語にもとづく青少年の修身のテキストとして、幕末の幕府役人であった江川英龍が評価されていたというのもちょっとした驚きです……敗戦以降の近代史観において余り大きく取り上げられないのは、その反動なんだろうなーと思います(戦前の修身の教育を全肯定する立場ではありません。念のため)。
しかし、そういう時代背景で出版された江川英龍伝を読み始めて、目からウロコの一言。「我が陸海軍の基礎を据えた偉人」……その一言が聞きたかったのです、はい。西洋砲術を高島秋帆から学んで広めたとか、マリナー号事件で活躍したとか、お台場をつくったとか、反射炉をつくったとか、具体的な事績をまとめた一言をなかなか目にすることができないのはなぜかということがずっと気になってました。
以下、具体的な事績を同書からメモ書きしながらコメント。
・砲術教練の創始……高島流砲術を習い、通称韮山塾・江川塾にて幕臣および諸藩の門人に広める。門人に佐久間象山、橋本左内、木戸孝允、黒田清隆、大山厳、杉孫七郎ら。
・農兵隊の創設……幕府の許可が下りた時には病没していたので、実行したのは子息の英敏・英武ら。同書では「これが他日全国皆兵主義の徴兵制度となった」と。
・軍隊衛生の「確立」……「確立」とまで言い切れるかは疑問だが、関連する洋書大槻俊斎に翻訳させ『銃創瑣言』と題して出版(序文を添える)。
・韮山に反射炉を築いて大砲を鋳造……坦庵公病没後に竣工
・ドンドル銃・ガラナイト弾その他の兵器を発明
・江戸湾防衛のためお台場の築造……十一基を建設する計画が幕府の予算不足のため、中断
・沈没したロシア船「ディアナ号」の代船として西洋式スクーナー船を築造……築造に関わった技術者の中から明治海軍の技術者を輩出
・糧食としてパンを導入
・地方代官として善政を敷き「世直し江川大明神」と称えられる……特に幕末、甲州一揆直後の甲斐国地域を管轄下に加えられ、よく治めた
・管轄下に入った伊豆七島と八丈島を巡見し行政を見直した
・天然痘予防のために種痘を励行
・西洋通の学者・蘭医・幕臣などによる「尚歯会」を支援……メンバーに高野長英・渡辺崋山・小関三英・鈴木春山・川路聖謨ら。開明派を嫌う鳥居耀蔵が引き起こした蕃社の獄で弾圧を受ける
・管轄地の豪農が天保の飢饉もあり経営難に陥った時には二宮尊徳に助力を仰ぎ、経営を立ち直らせた
・西洋式砲術の師である高島秋帆が鳥居耀蔵の讒言により投獄された時には放免を求めて諸方面に働きかける、釈放後は砲術師範として厚遇
・安政の大地震で被害を受けた伊豆半島(特に下田方面は津波被害が甚大だった)など管轄地での救民活動
……これらの実績に加え、倹約の励行とか婦徳教育の強調とか「忍」「敬慎第一実用専務」がモットーとか、確かに修身の教科書好みの人ではあるのだけど(苦笑)。
作中、佐久間象山について「無類の尊大漢」と書かれているのが笑えた。
蕃社の獄の際に高野長英を一時匿ったことについては書かれてなかった、なぁ。
口伝の域は出ていないが、いろいろなエピソードがあって面白かった。
☆★☆★
2月5日追記。
ドンドル銃……従来の火縄銃や火打銃と違って、引き金で雷管を打つ形式の銃
ガラナイト弾……grenade、炸裂弾のこと。
PR
この記事にコメントする
この記事へのトラックバック
トラックバックURL:
カレンダー
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
カテゴリー
最新記事
(08/11)
(05/19)
(05/15)
(02/12)
(08/11)
最新コメント
[11/22 iqos มีกี่รุ่น]
[12/14 白牡丹(管理人)]
[12/14 ゆーじあむ]
[11/08 白牡丹(管理人)]
[11/07 れい]
[01/21 ゆーじあむ]
[11/15 白牡丹@管理人]
[11/15 ゆーじあむ]
[05/25 長谷川誠二郎]
[07/23 白牡丹@管理人]
最新TB
ブログ内検索
アーカイブ
最古記事
カウンター
プロフィール
HN:
白牡丹
性別:
非公開
自己紹介:
幕末、特に新選組や旧幕府関係者の歴史を追っかけています。連絡先はmariachi*dream.com(*印を@に置き換えてください)にて。
リンク
アクセス解析
Livedoor BlogRoll
本棚