新選組・土方歳三を中心に取り上げるブログ。2004年大河ドラマ『新選組!』・2006正月時代劇『新選組!! 土方歳三最期の一日』……脚本家・制作演出スタッフ・俳優陣の愛がこもった作品を今でも愛し続けています。幕末関係のニュースと歴史紀行(土方さんに加えて第36代江川太郎左衛門英龍、またの名を坦庵公も好き)、たまにグルメねた。今いちばん好きな言葉は「碧血丹心」です。
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昨日の「『謀反』と『造反有理』の差……建白書事件をめぐって」の続き。
断っておくが、以後の文章は白牡丹が土方さん贔屓なために、山南さん贔屓の方には少しきついことを書かざるを得ない。山南さんの心境については、また別項で山南さん視点で書こうと思っている。
建白書事件の関係者を処罰すると宣言する土方さんと山南さんの対立の場面について、分析したい。その視点の参考になったのはニュース屋YKさんのブログ「水川青話」における「今週の新選組! 江戸へ帰る」である。多謝。
蛇足ながら、見出しに使った「共犯幻想」という言葉は1971年に真崎守さんが描いたマンガのタイトルで、当時は子供だった白牡丹はうっすらとしか内容を覚えていないのだが、70年安保の時代の若者たちの夢と挫折を描いていたと思う。
前回の記事で書いたように、新選組を「近藤勇に心酔する同志の集団」から「日本一」の戦闘集団にしようと考えている土方さんには、建白書事件は隊の命令系統に反する重大な軍規違反と捉えたというのが白牡丹の仮説。
結果的には容保候の立ち会いで手打ちになって和解した事件ではあるが、新選組のスポンサーである容保候に局長の非行を訴えるという行為がどんな影響を及ぼしかねないかを、彼らの状況を踏まえて整理してみる。
新選組は京都守護職である会津藩主の預かりではあるが、家臣ではなく、有志による自治的な集団である。従って、幕府の一角を担う京都守護職の立場から見て意に添わない事件があれば、新選組はいつでも解散を命じられるリスクを背負っていた。
建白書事件は、単に隊内の意見の対立があったというだけではない。芹沢鴨らを暗殺することによって体制を確立した近藤・土方に対して造反する勢力が隊内に存在することが会津藩に知られたということは、新選組の存在自体を会津藩に否定される可能性があった。
池田屋事件で京の不逞浪士を制圧するには有能な戦闘集団であることを証明した新選組だが、その局長が古参の隊士から非行を訴えられ、自分たちの切腹と局長の切腹のどちらを取るのかと迫ることは、言ってみれば上司の上司に対する直訴である。
平時の会社組織でも、これをやったら上司を潰すか自分を潰すかの最終手段である。まして、前回書いたように、上官命令は絶対である戦闘組織では、近藤・土方体制に対する重大な軍規違反である。
だから、たかが建白書と思われるかも知れないが、そして当事者同士が和解すればめでたしめでたしだと思われるかも知れないが、大河ドラマ『新選組!』局長は腹に収めても、副長である土方さんはそれでは収まらなかった。まずは、建白書事件に加わった者たちに対して綱紀粛正を行うことによって、新入隊士たちを含めた隊内に、局長に造反することが重大な違背行為であることを知らしめなくてはならない。そして、建白書に連名していないが、建白書を書くようにそそのかした山南さんにその重大さを気づかせ、以後繰り返さないことを誓わせねばならない。
山南さんに建白書事件の関係者に重罰を科すと宣言した土方さんの心中には、山南さんが建白書事件の背後にいたことを(史実の山南さんのために言えば、これはあくまで三谷設定なのだが)知っていて、釘を刺すという目的があっただろう。
だが、山南さんは「造反有理」という理屈を持ち出して、不満を持つ幹部や隊士たちがいるんだからその不満を解消するために指導者たちが努力すべきだと言う。
だから、土方さんは、お前がその黒幕だとわかっているんだというメッセージを出す。
「そんなことしたって、誰かさんが裏でそそのかしたら、同じことだろうが」
その心情をもう少し白牡丹なりに解釈すれば、近藤局長と自分の方針に表立って異を唱えるやり方、まして会津藩に訴えるというやり方は新選組自体の存在を揺るがすものだ、その重大さを理解して自重して欲しい、というものだったと思う……土方さん贔屓の想像なのだが(^^ゞ。
だが、山南さんはここで嘘をついた。
「……私は誰もそそのかしていない」
すでに武田観柳斎にも「山南総長だ」と想像がついていることを、山南さんは気づいていなかったのか。あるいは、自分を守るためか。
「誰かさん」とかまをかけた言葉に自分が関係ないと言い出した時点で、白状したようなものである。それでも、真相をわかっているからこそ、土方さんは詰め寄らざるを得ない。
「建白書を書かせたのは、あんただ」
……はぁ(嘆息)。もし、土方さんが山南さんの立場にいたら、どうしただろう。土方さんも、結構、その場しのぎの嘘をつく。だが、それが通用しないと知ると、土方さんは居直ったり開き直ったりする名人である。前回放映分で自分の失言に永倉さんが激昂した時に「長州の仕業だと信じていたのか」と開き直る場面が、その典型だ。
たぶん、山南さんの場面に土方さんがいたら、その行為を暗黙のうちに認めた上で「それで何が悪い」と開き直ったに違いない。
……でも、山南さんは開き直ることができないんだよな(嘆息)。
YKさんは鋭い。
白牡丹も同感。ここで山南さんが自分の連座を認めて、改めて自分の身を盾にして建白書事件の関係者への処罰を軽くするよう訴えたら、土方さんはあんなに肩を落とさなかっただろう。
土方さん贔屓で見てしまう白牡丹には、山南さん贔屓の方には辛いことを言うかも知れませんが……土方さんが独りで葛山さんを切腹させるという決断をせざるを得なかったのは、山南さんが逃げたからである(ぼそ)。新見さんを切腹に追い込み、芹沢鴨さんを闇討ちという手段に訴えても新選組を自分たちの理想の組織にするためには止むを得ないと思って信じ合っていたのに……。
でも、土方さんはまだ、山南さんに「共犯幻想」を抱いていた……少なくとも、葛山さんの遺体を見た山南さんが、敵意の視線を向けるまでは。
「奴を殺したのは、俺とお前だよ」
土方さんは、不器用。論をもって山南さんを説得できないから、抜き差しならない状況をつくって、山南さんを自分の共犯者に縛りつけようとする。
切腹を命じたのは自分だが、局長に造反する覚悟もないものを巻き込んだのは、お前だ……そう、言いたかったんだろう。
そして、その先には、今までの通り、新選組を確固とした戦闘組織にするために、お前も泥をかぶれ、一緒に修羅の道を行こう、という最後通牒だったと思う。
……だが、山南さんは、もはやそれを受け容れなかった。それどころか、苦悩の末に葛山を処断した土方さんに、敵意を通り越して憎悪の視線を向ける。
芹沢一派という明らかな敵がいた時は、あれほど息のあったコンビプレーができたのになぁ……(嘆息)。まるで、その信頼関係が砂の楼閣だったかのように、崩れていく。
白牡丹の憶測ではあるが、それでも土方さんは山南さんを必要としている。伊東大蔵(甲子太郎)さんたちが加入した時に、伊東さんの知見に対抗できて信頼できるのは、山南さんしかいないから。
山南さんには山南さんの理屈があるのだが、それはそれで、次の機会に……ということで、今回は、土方さんが山南さんを共犯者として引き留めたかったのに、山南さんが責任を回避した……という土方さん視点での分析に終始させていただく。
断っておくが、以後の文章は白牡丹が土方さん贔屓なために、山南さん贔屓の方には少しきついことを書かざるを得ない。山南さんの心境については、また別項で山南さん視点で書こうと思っている。
建白書事件の関係者を処罰すると宣言する土方さんと山南さんの対立の場面について、分析したい。その視点の参考になったのはニュース屋YKさんのブログ「水川青話」における「今週の新選組! 江戸へ帰る」である。多謝。
蛇足ながら、見出しに使った「共犯幻想」という言葉は1971年に真崎守さんが描いたマンガのタイトルで、当時は子供だった白牡丹はうっすらとしか内容を覚えていないのだが、70年安保の時代の若者たちの夢と挫折を描いていたと思う。
前回の記事で書いたように、新選組を「近藤勇に心酔する同志の集団」から「日本一」の戦闘集団にしようと考えている土方さんには、建白書事件は隊の命令系統に反する重大な軍規違反と捉えたというのが白牡丹の仮説。
結果的には容保候の立ち会いで手打ちになって和解した事件ではあるが、新選組のスポンサーである容保候に局長の非行を訴えるという行為がどんな影響を及ぼしかねないかを、彼らの状況を踏まえて整理してみる。
新選組は京都守護職である会津藩主の預かりではあるが、家臣ではなく、有志による自治的な集団である。従って、幕府の一角を担う京都守護職の立場から見て意に添わない事件があれば、新選組はいつでも解散を命じられるリスクを背負っていた。
建白書事件は、単に隊内の意見の対立があったというだけではない。芹沢鴨らを暗殺することによって体制を確立した近藤・土方に対して造反する勢力が隊内に存在することが会津藩に知られたということは、新選組の存在自体を会津藩に否定される可能性があった。
池田屋事件で京の不逞浪士を制圧するには有能な戦闘集団であることを証明した新選組だが、その局長が古参の隊士から非行を訴えられ、自分たちの切腹と局長の切腹のどちらを取るのかと迫ることは、言ってみれば上司の上司に対する直訴である。
平時の会社組織でも、これをやったら上司を潰すか自分を潰すかの最終手段である。まして、前回書いたように、上官命令は絶対である戦闘組織では、近藤・土方体制に対する重大な軍規違反である。
だから、たかが建白書と思われるかも知れないが、そして当事者同士が和解すればめでたしめでたしだと思われるかも知れないが、大河ドラマ『新選組!』局長は腹に収めても、副長である土方さんはそれでは収まらなかった。まずは、建白書事件に加わった者たちに対して綱紀粛正を行うことによって、新入隊士たちを含めた隊内に、局長に造反することが重大な違背行為であることを知らしめなくてはならない。そして、建白書に連名していないが、建白書を書くようにそそのかした山南さんにその重大さを気づかせ、以後繰り返さないことを誓わせねばならない。
山南さんに建白書事件の関係者に重罰を科すと宣言した土方さんの心中には、山南さんが建白書事件の背後にいたことを(史実の山南さんのために言えば、これはあくまで三谷設定なのだが)知っていて、釘を刺すという目的があっただろう。
だが、山南さんは「造反有理」という理屈を持ち出して、不満を持つ幹部や隊士たちがいるんだからその不満を解消するために指導者たちが努力すべきだと言う。
だから、土方さんは、お前がその黒幕だとわかっているんだというメッセージを出す。
「そんなことしたって、誰かさんが裏でそそのかしたら、同じことだろうが」
その心情をもう少し白牡丹なりに解釈すれば、近藤局長と自分の方針に表立って異を唱えるやり方、まして会津藩に訴えるというやり方は新選組自体の存在を揺るがすものだ、その重大さを理解して自重して欲しい、というものだったと思う……土方さん贔屓の想像なのだが(^^ゞ。
だが、山南さんはここで嘘をついた。
「……私は誰もそそのかしていない」
すでに武田観柳斎にも「山南総長だ」と想像がついていることを、山南さんは気づいていなかったのか。あるいは、自分を守るためか。
「誰かさん」とかまをかけた言葉に自分が関係ないと言い出した時点で、白状したようなものである。それでも、真相をわかっているからこそ、土方さんは詰め寄らざるを得ない。
「建白書を書かせたのは、あんただ」
……はぁ(嘆息)。もし、土方さんが山南さんの立場にいたら、どうしただろう。土方さんも、結構、その場しのぎの嘘をつく。だが、それが通用しないと知ると、土方さんは居直ったり開き直ったりする名人である。前回放映分で自分の失言に永倉さんが激昂した時に「長州の仕業だと信じていたのか」と開き直る場面が、その典型だ。
たぶん、山南さんの場面に土方さんがいたら、その行為を暗黙のうちに認めた上で「それで何が悪い」と開き直ったに違いない。
……でも、山南さんは開き直ることができないんだよな(嘆息)。
YKさんは鋭い。
決して私の土方びいきが過ぎてるわけじゃないと思うんだが、「誰かさんがそそのかすから」云々の土方と山南の対決、土方は山南を追い詰めるのが目的ではなくて、自分の軽挙妄動の始末を自分で付けろと、覚悟を決めろと、山南に促していたんじゃないかな。なのに山南は、「私はそそのかしていない」と(例によって)自分に都合よく苦しい嘘をつき、その嘘を暴かれてもやはり「とにかく私は承服しかねる」という原理原則論のみでその場を去ってしまった。具体的に何をどうすべきか提案しないで、反対だけしてその場を後にした。
白牡丹も同感。ここで山南さんが自分の連座を認めて、改めて自分の身を盾にして建白書事件の関係者への処罰を軽くするよう訴えたら、土方さんはあんなに肩を落とさなかっただろう。
土方さん贔屓で見てしまう白牡丹には、山南さん贔屓の方には辛いことを言うかも知れませんが……土方さんが独りで葛山さんを切腹させるという決断をせざるを得なかったのは、山南さんが逃げたからである(ぼそ)。新見さんを切腹に追い込み、芹沢鴨さんを闇討ちという手段に訴えても新選組を自分たちの理想の組織にするためには止むを得ないと思って信じ合っていたのに……。
でも、土方さんはまだ、山南さんに「共犯幻想」を抱いていた……少なくとも、葛山さんの遺体を見た山南さんが、敵意の視線を向けるまでは。
「奴を殺したのは、俺とお前だよ」
土方さんは、不器用。論をもって山南さんを説得できないから、抜き差しならない状況をつくって、山南さんを自分の共犯者に縛りつけようとする。
切腹を命じたのは自分だが、局長に造反する覚悟もないものを巻き込んだのは、お前だ……そう、言いたかったんだろう。
そして、その先には、今までの通り、新選組を確固とした戦闘組織にするために、お前も泥をかぶれ、一緒に修羅の道を行こう、という最後通牒だったと思う。
……だが、山南さんは、もはやそれを受け容れなかった。それどころか、苦悩の末に葛山を処断した土方さんに、敵意を通り越して憎悪の視線を向ける。
芹沢一派という明らかな敵がいた時は、あれほど息のあったコンビプレーができたのになぁ……(嘆息)。まるで、その信頼関係が砂の楼閣だったかのように、崩れていく。
白牡丹の憶測ではあるが、それでも土方さんは山南さんを必要としている。伊東大蔵(甲子太郎)さんたちが加入した時に、伊東さんの知見に対抗できて信頼できるのは、山南さんしかいないから。
山南さんには山南さんの理屈があるのだが、それはそれで、次の機会に……ということで、今回は、土方さんが山南さんを共犯者として引き留めたかったのに、山南さんが責任を回避した……という土方さん視点での分析に終始させていただく。
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