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新選組・土方歳三を中心に取り上げるブログ。2004年大河ドラマ『新選組!』・2006正月時代劇『新選組!! 土方歳三最期の一日』……脚本家・制作演出スタッフ・俳優陣の愛がこもった作品を今でも愛し続けています。幕末関係のニュースと歴史紀行(土方さんに加えて第36代江川太郎左衛門英龍、またの名を坦庵公も好き)、たまにグルメねた。今いちばん好きな言葉は「碧血丹心」です。
 すでに連載14回目となる「『新選組!!』で学ぶ組織心理学 コンフリクトのマネジメント」ですが、そろそろ終わりが見えてきた感じです……ちょっと寂しい気もするのですが、こんなに長くかかるとは思ってもいなかった(爆)ので、自分の饒舌さにちょっと驚いています(大苦笑)。『新選組!! 土方歳三最期の一日』という作品が限られた時間の中でも人と人との対立やその克服を描いた上質のドラマであることが、自分を饒舌にさせているのだと思います。



 さて、榎本さんが土方さんの「桶狭間戦法」に感銘を受けて合意し、ふたりは改めて「生きるための戦い」への決意を確認した場面から。いよいよ(笑)大鳥先生登場です。



(9) 土方さんvs大鳥さん(第二ラウンド)



 ふと、思い出したように榎本さんが口火を切ります。



榎本「……ちょっと待ってくれ。きみが出撃した後の全軍の指揮は誰が執る」

土方「あんたに任せる」

榎本「私でもいいんだが、ここはひとつ、大鳥にやらせてみないか」

土方「どうせあの人は、俺の案には乗らない」



 ……顔を合わせる度にいがみ合ってるし、さっきは入れ札の件でイジメましたからねぇ(苦笑)。



土方「ここは総裁自ら出ていくしかないだろう」

榎本「(にこやかに)土方君はそんなことを言っているが、あんたはどうなんだい」



 模型テーブルの下から、刀をどんと突いて、気まずそうに出てくる大鳥さん(笑)。ぎょっとする土方さん。



榎本「ずいぶん長い間、隠れてたな」

大鳥「気づいていたのか」

榎本「足もとだからね、気づくなと言う方が無理な話だ」



 ……えーと、人を斬ったこともない榎本さんが大鳥さんの存在に気づいていて、強者の剣客・土方さんが大鳥さんに気づかなかったんですね(滝汗)。都合のよい解釈をすれば、きっと大鳥さんは土方さんの方にでなく榎本さんの側にずっと蹲っていたということでしょう(爆)。



土方「(厳しい表情で)何をしてた」

大鳥「あんたが、総裁にろくでもないことを吹き込んだら、すぐに斬り捨てるつもりだった」

土方「……」

大鳥「そして、これ以上ないというほどの、ろくでもない策を聞かせてもらったよ」

土方「……」

 大鳥さん、土方さんに一歩詰め寄ります。土方さん、刀に手を置きます。

榎本「よせ!」

 そのまま頭を下げる大鳥さん。

大鳥「土方、礼を言う」

土方「……何のことだ」

大鳥「榎本総裁を、もう一度戦う気にさせてくれた」

土方「……」



 土方さんの目撃していない場面で大鳥さんの「勝ちたい……勝ちたい」という呟きを聞いていた私たち視聴者は大鳥さんの本心を伏線として見聞きしていたのですが、土方さんは初めてなんですよね。土方さんにとっては、降伏という決定を覆すには大鳥さんを飛び越えて榎本さんを翻意させるしかありませんでしたから、大鳥さんの本心を見抜く余裕はここまでほとんどありませんでした。しかし、榎本さんと和解が成立した今、土方さんにとっては期せずして大鳥さんとも和解が成立するきっかけになっていたのでした。



大鳥「守りの固めは俺の専門だ。後のことは心配するな。存分に戦って来い」

土方「……」

 ここの場面の大鳥さん、いままでになく格好いいです(^^)。

 隠れた時に落とした「香車」をパチンとジオラマに戻す大鳥さん。大鳥さんの構想に足りなかった「香車」は、土方さんだったんですよね……その「香車」が、大鳥さんの手から滑って盤面からこぼれ落ちた、というのも象徴的なことだと思いますが(涙)。



土方「……大鳥さん、さっき、あんたの顔を見て思ったよ」

大鳥「何の話だ」

土方「総裁が降伏すると言った時、あんた、あそこにいた兵たちの誰よりも口惜しそうな顔をしていた」

大鳥「……」

土方「計算だけの男には出来ない顔だった」



 そして土方さんもまた、不器用さんにしては暖かく(苦笑)、大鳥さんの志や人柄を認める一言を添えます。やればできるじゃん、土方さん(爆)。



土方「後は任せた」

大鳥「(頷く)」

榎本「おいおい、ちょっと待ってくれ。私抜きで心を通い合わせるのは、やめてもらいたいな」

 ……見ていて気恥ずかしくも照れ臭い、男たち三人の友情が通い合っている場面です(爆)。「コンフリクトのマネジメント」的には、これ以上ないほどの大団円ですな。



(10) 土方さんと榎本さんと大鳥さん



 作戦会議室を出ながら、三人。「コンフリクトのマネジメント」分析においては、エピローグとして見るべき場面でしょう。



榎本「明日の戦で勝利すれば、我々が薩長の大軍を追い返したという事実が残る。薩長の奴らも少しは考えるだろう。未開の土地の開拓ぐらいは許してやろうと。その時は晴れて蝦夷の国の誕生だ」



 この辺りの楽天的なところが、「間抜けなロマンチスト」を自称する榎本さんの良いところでも悪いところでもありますね。ただ、人は、そういう夢を描ける人だからこそ、付いていけるのではないかと私は思います。そういう壮大なロマンチストの足もとを固める役割は、土方さんと大鳥さんの得意とするところでしょう。



土方「その国では、近藤勇はもう罪人ではないんだな」

榎本「もちろんだよ。この国を造る礎となった一人の英雄として、未来永劫、その名は刻まれる」

土方「……(頷く)」



 この榎本さんの一言こそ、土方さんの内心のコンフリクトを解消するものでした。「その4」で述べた私の解釈ではありますが、「近藤さんの汚名を雪ぐためには生きている限り薩長と戦い続けなければならないという使命感、しかし一方では近藤さんを死なせてしまった自分を許せない、罰したい、罰されなければならないという罪の意識」の相克が、戦に勝利する見込みのない状況においては「一日でも早く戦で死にたい」という願望になっていました。



 しかし、榎本さんが一度は捨てた「新しい国」の夢を諦めずに生きるための戦いに挑むという決意をした上で榎本さんの説得に成功した土方さんは、榎本さんのこの言葉によって、新しい国を建設し暁には近藤さんの汚名を雪ぐことができるという希望を見いだします……それを目的として榎本さんを説得した訳ではなく、壮大な「新しい国」の夢を(諦めたとは言いつつも)語る榎本さんに二人目の「馬鹿なろまんち」を見いだし、その夢を実現する手助けをしたいと心から思ったのだろうと私は解釈しています。でも、土方さんの近藤さんに対する思いを理解した榎本さんがかけてくれた言葉は、土方さんに、「新しい国」=近藤さんへの贖罪のために戦い続けること・生き続けること、という方向転換、希望への新たな道を後押ししてくれました。これもまた、「コンフリクトのマネジメント」的には、願ってもいない、素晴らしい展開だと思います。



 土方さんに手を差し出す榎本さん。

土方「……前から気になっていた。この挨拶には何の意味がある」

榎本「土方君、これからは、これが我らの挨拶だ。我らの、新しい国の」

 少しためらいつつも、榎本さんの手を握り返す土方さん。

 そして、その二人の様子を暖かい目で(笑)見つめる大鳥さんに、榎本さんが振り返って目配せします。ちょっと驚き、そして嬉しそうに、握手に加わる大鳥さん。その大鳥さんの手の上に、土方さんのもう一方の手が重ねられます。



 ……ドラマはさらに続きますが、「コンフリクトのマネジメント」分析としては、ここまでで十分でしょう。



 その後、彼ら三人が手を取り合って計画した新政府軍への逆襲はならず、土方さんは一本木関門で命を落とし、旧幕府軍はリスクを取って乾坤一擲の反攻に転じたことが裏目に出て、さらにひどい状況で降伏を余儀なくされます。しかし、土方さんと初めて協力し合って挑んだ戦いが土方さんの死・旧幕府軍の敗北という結末を迎え、模型を壊して号泣する大鳥さん……その大鳥さんを労うように肩に手を置き、望楼に佇んで涙もこぼさずに遠くを見つめる榎本さん……そのふたりの心の中には、土方さんが託した思いが生き続けています。そして、弁天台場に残った新選組の皆と永井様、多摩に向かって走り続ける鉄之助君、会津に残った斎藤さんの心の中にも。



 ワイン好きの白牡丹、ここで皆さんと共に、愛すべき「ろまんち」たちに赤ワインで乾杯しながら、講義を終えたいと思います。長い間、ご静聴ありがとうございましたm(_ _)m。



☆★☆★



 なお、当初は「コンフリクトのマネジメント」論の後に「リーダーシップ論」も書くつもりでしたが、「コンフリクトのマネジメント」論で言い尽くした感がありますので、ここで一旦お開きにしたいと思っています。コメンタリーとDVDを入手した時には感想を書くつもりですが、ここまで長い『新選組!!』論は、これ限りです。



 本編と続編の制作に関わった全ての方々に、『組!』『組!!』制作に注いで下さった愛と情熱に、感謝を込めて。『組!』『組!!』を盛り上げてくれた『TV Navi』『TV Station』『ステラ』などメディアの方々に感謝を込めて。そして、『組!』『組!!』を共に鑑賞し、ここまで一緒に走ってきたブロガーさんたちファンの方々に、連帯の気持ちを込めて。『組!』『組!!』への思いで私がここまで突っ走って来られたのも、ともに走る方々がいてからこそです。



『新選組!!』で学ぶ組織心理学 コンフリクトのマネジメント

 その1

 その2

 その3

 その4

 その5

 その6

 その7

 その8

 その9

 その10

 その11

 その12

 その13

 その14 本稿
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