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新選組・土方歳三を中心に取り上げるブログ。2004年大河ドラマ『新選組!』・2006正月時代劇『新選組!! 土方歳三最期の一日』……脚本家・制作演出スタッフ・俳優陣の愛がこもった作品を今でも愛し続けています。幕末関係のニュースと歴史紀行(土方さんに加えて第36代江川太郎左衛門英龍、またの名を坦庵公も好き)、たまにグルメねた。今いちばん好きな言葉は「碧血丹心」です。
『髪結新三』を勘九郎が初役で演ると聞いて、歌舞伎友に声かけ、友の伝手経由で花道横のいい席で観ることができた。しかも「とちり」列で花道すぐ横、芝居空間に呑み込まれるような体験だった。

『梅雨小袖昔八丈 髪結新三』
2015年10月に見ている。新三は尾上松緑、忠七は時蔵、勝奴は亀寿、源七は團蔵、家主長兵衛が左團次、お熊は梅枝、加賀屋藤兵衛がサービスで仁左衛門、魚売りもサービスで菊五郎(芸術祭参加作品で昼の部は一條大蔵と文七元結が並んでいる)の舞台だった。さらっとしか日記に残していなので、演目は好きだけど配役はあまり記憶に残らなかったのだと思う。
映像で録画しておいた十七代勘三郎の勘九郎改め勘三郎襲名公演が私の予習作品。何しろ、新三は勘三郎、忠七と長兵衛が三津五郎の二役、勝奴は染五郎(今の幸四郎)、源七は富十郎、お熊は菊之助と勘三郎襲名公演なだけに豪華だ。鶴松が丁稚で「おいら役者になるんだ」と言っていて、今回はお熊で出て来るし、勝奴だった染五郎は実年齢よりちょっと老け役の源七で勘九郎を引き立てる側に回っている。
今回の配役は勘九郎が新三、七之助が忠七、勝奴に巳之助(十代目三津五郎の息子)、源七に幸四郎、長兵衛に彌十郎、お熊に鶴松、白子屋後家お常に扇雀、丁稚に長三郎、加賀屋藤兵衛に中車、車力善八に亀蔵と粒よりだった。
で、勘九郎の初役である新三。声音や台詞運びや仕草に勘三郎(十七代は見ていないので十八代つまりお父さん)を彷彿とさせる場面があるけど、勘三郎の新三よりもワルな新三だ。それは目を黒く縁取って目尻を吊り上げている化粧の強さで強調されている。そして、お熊を解放する場面で、懐手で柱にもたれかかり、お熊を見やる目付きのエロさエッチさによく表現されている。前科者で腕に二本の入れ墨があり、深川の裏長屋でくすぶっている廻り髪結いにしては、有名料亭の手ぬぐいを貼り合わせた粋な浴衣を引っかけたりしているところに、後ろ暗い収入源が他にあることが示唆されていたり(そして浴衣のデザインは多分、勘三郎さんのものと瓜二つ)、初鰹を一本買う(今の日本円で7万円くらいだそうだ。祝儀込みで渡したのは10万円くらいなので、高級ワインボトルをぽんと注文するぐらいの感覚なのかな)とか、髪結い風情にしては金回りがよい。忠七を騙してお熊を拐かし、白子屋から百両を取ろうとするワル。ついでに一晩、お熊を手込めにしていたから、ワルの色気むんむん。親分で知られた源七を追い返す勢いのある鼻息の荒さ、しかし家主の長兵衛にはやり込められて、三十両をせしめるつもりが半分の十五両しか受け取れず、滞納家賃に二両取られてしまう。勝奴に二両分け前をやって、手元に残ったのは十一両。
ぽんぽんと弾むやりとりは彌十郎さんと勘九郎さんの息がよく合っていたから(「うるせえのはうちの親父だよ」「わしはそれが好きだった」とか、金を並べて確認して渡す場面でわざと一枚飛ばして勘定するとことか)河竹黙阿弥の七五調に加えて江戸の下町の町民らしいやりとりがよかった。七之助の忠七もなよなよしてるだけでなく芯の強さがあって、身よりがなくても白子屋に手代として勤められる堅実な店員なのを伺わせるところがあった。巳之吉の勝奴は抜け目なさがニンにあっててよかった。
あえて言うなら幸四郎の源七がなぁ。。もう少し鬘で白髪足すとかできると思うけど、声質は変えられないからねぇ。。特に閻魔堂で新三と斬り合う場面では顔が正面を向いてなかったので、声が客席に通らなかった。ちょっとねぇ。
でも勘九郎さんが今後持ち役として再演する時に「初演もよかった」と自慢できる出来。

『紅翫』
中村芝翫の家に伝わる舞踊劇。今回は当代芝翫さんの長男、橋之助さんが紅翫。20代半ば過ぎかな、踊り分けも含めてキレイに踊っていたけど、エンターテインメントとして客席を喜ばせるものとしての完成度はなかった。巳之吉、染五郎、児太郎(太った?顔が丸々として老けた印象が)など若手に加え、勘太郎くんの越後獅子(13才と役と実年齢が合ってて可愛かったし、踊りも隙がなかった)。

歌舞伎への誘い 梅雨小袖昔八丈
中村勘九郎、エッチに工夫 八月納涼歌舞伎「梅雨小袖昔八丈 髪結新三」に主演
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歌舞伎「髪結新三」の初ガツオは甘かった? 舞台で代用の食材とは
歌舞伎「髪結新三」、黙阿弥と江戸の初夏 上村以和於
SPICE: 巳之助が児太郎と幽霊を貸し、幸四郎が染五郎を振り回し、勘九郎が七之助の髪を整え、橋之助が江戸で人気のパフォーマーになる~歌舞伎座『八月納涼歌舞伎』第一部・二部観劇レポート
渡辺保の歌舞伎劇評 2024年8月 勘九郎初役の新三
長谷部浩 【劇評346】勘九郎の『髪結新三』。果敢な挑戦。

【八月納涼歌舞伎】《髪結新三》ルポ 小悪党の髪結い、勘九郎の独特の色気に酔う 父の面影も映しつつ

勘九郎さんで見たい演目。
『桜姫東文章』ぜひ釣鐘権助と清玄の二役を勘九郎さんで、桜姫は七之助さんで。
『摂州合邦辻』悪役の演じ分けを勘九郎さんで。
『女殺油地獄』いまだったら扇雀さんの女将で、勘九郎さん与兵衛で。その後七之助さん与兵衛でも見たい。
『夏祭浪花鑑』勘九郎さんの団七、七之助さんのお辰を見たい。勘三郎さん所縁の平成中村座で観たい。
……と挙げてみると、勘九郎さんには勘三郎さん+仁左衛門さんの当たり役をこなして欲しいという願望になる。勘三郎さんよりくっきりした悪役で行けるから。
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