新選組・土方歳三を中心に取り上げるブログ。2004年大河ドラマ『新選組!』・2006正月時代劇『新選組!! 土方歳三最期の一日』……脚本家・制作演出スタッフ・俳優陣の愛がこもった作品を今でも愛し続けています。幕末関係のニュースと歴史紀行(土方さんに加えて第36代江川太郎左衛門英龍、またの名を坦庵公も好き)、たまにグルメねた。今いちばん好きな言葉は「碧血丹心」です。
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やっと、89分間のドラマの69分までカバーしました。残り20分です。今夜も赤ワインをお供に頑張ってます。
「明日の戦で勝利すれば我々が薩長の大軍を追い返したという事実が残る。薩長の奴らも少しは考えるだろう。未開の土地の開拓ぐらいは許してやろうと。となれば、こっちのものだ。それを足がかりに新しい国づくりを始められる」……榎本さん、かなり楽天家ですね。まぁ、自称でも「間抜けなロマンチスト」、土方さん曰く「馬鹿なろまんち」ですから(^^)。そういうところがこの人の魅力的なところですね。
「その時は、晴れて我らが蝦夷の国の誕生だ」「その国では、近藤勇はもう罪人ではないんだな」「もちろんだ。この国の礎となったひとりの英雄として、未来永劫その名は刻まれる」……近藤勇の汚名を雪ぐことだけが戦い続けることの理由である土方さんにとって、榎本さんの答えは自分が「死に場所を求めて戦う」ことから「生き延びるために戦う」と気持ちを切り替えるために重要な動機づけになったと思います。こっくりと頷く土方さん。
握手のために手を差し出す榎本さん、「前から気になっていたんだ。その挨拶には一体何の意味がある」と尋ねる土方さん……本編を最初の頃から見てきた人には「ヒュースケン逃げろ」の回を思い出したのではないでしょうか。ヒュースケンが命の危機を救ってくれた近藤・土方・永倉に差し出した手の意味を、誰も気付かなかった。そして榎本さんが「土方君。これからはこれが我らの挨拶だ。我らの新しい国の」と答えると、快くとまではいかないけど(笑)、土方さんも榎本さんの手を握り返す。ヒュースケンの回のエピソードがここで繋がったことに快哉を上げたのは私だけではあるまい(笑)。ヒュースケンの回は本編でも「井の中の蛙」という諺に引っかけたエピソードや土方さんが洋装に興味を持つエピソードなど、三谷さんがお気に入りの回らしく伏線が沢山散りばめられてましたね。
榎本さんに目で促されて握手に加わる大鳥さん、大鳥さんの手に自分の左手を重ねる土方さん……大鳥さんに目で促されて、きょろきょろと目を動かすケースケがらぶりー(爆)。
幹部たちに指示する大鳥さん……「無茶をしてはならんっ。全滅戦より、必ず力を残して敵を引きつけながら陣地に戻るのだ。いいな!」ひゅうがおんさんのご指摘通り、全体の策を考える土方さんに対して、細かい陣割を伝える山南さんの役を大鳥さんがやっている格好になってます。その指示を聞きながら、目を閉じて気持ちを集中させる土方さん。その心中は描かれていませんが、かつての近藤さん・山南さんとの役割分担が榎本さん・大鳥さんというパートナーを得て再現され、近藤勇が罪人ではなく英雄となる「新しい国」のために戦うという気持ちの切替えを図っているのかも知れません。
侵攻を続け、山を登る新政府軍……アップで撮される葉っぱがクマザサだったらもっとよかったのにと、箱館山は自分の足で上ったことはないのですが二股の台場山を上った経験では思いました。
砲声を聞いて目を開き、ジオラマに向かっている榎本さん・大鳥さんに加わる土方さん……榎本「どっちの方向だ」大鳥「北だ。斥候を出せ」と、いよいよ新政府軍の総攻撃が始まります。
新選組屯所@称名寺……こちらでも砲声が聞こえてきます。「始まったな」と背後の尾関さんに呟く島田さん、腕組みをして迎え撃つ気持ちを示しています。
五稜郭に走り込む斥候「薩長軍が赤川台場に攻め込みました」……赤川という地名は今でも赤川町という名で残っています。旧幕府軍は、箱館山から東北方向に、五稜郭、四稜郭、赤川地区と、ほぼ直線上に防衛ラインを張っていたようですね。ジオラマの駒を動かす大鳥さん、ジオラマを見つめ、頷き合う榎本さんと土方さん。
新選組屯所@称名寺……隊士たちの動きが活発になっています。相馬さんが島田さんに「赤川台場が敵に奪われました!」と報告。「見ているだけでいいんですか? 我々も加勢に!」と勢い込む相馬さんに対して、落ち着き払って島田さん「ここで待てというのが土方さんの命令だ。奴らが攻め込むまで一歩もここを動いてはならん」と指示する島田さん。
再び斥候……斥候が負傷して倒れ込むところで、戦況の厳しさと、新政府軍の侵攻の速さ・激しさがわかるような演出です。「四稜郭と権現台場が陥ちた。敵はこちらに向かって侵攻を続けている」と榎本さん。「間もなく陥ちた陣の兵がこちらに向かってくる。すぐに本隊に組み込み、決戦に備えよう」と大鳥さん。一見すると攻め込まれていて形勢不利なのですが、榎本・大鳥・土方にとっては「想定内」。そして、守りのエキスパートを自称する大鳥さん、ここから本陣を固めるために陣頭指揮に移ります(地味ですが、ケースケなりの見せ場だと思います!)。
土方さん「これで心おきなく突っ込める……」……不敵に口元を緩めて一言。計算通りに本陣に大軍を引きつけ、各地に散らばっていた将兵たちも本陣に逃げ帰るふりをして結集しようとしている、そして本陣の守りには榎本・大鳥がいるという安心感が言わせる台詞ですね。それにしても大胆不敵であることには間違いないです。
本陣に戻ってきた将兵を労う大鳥さん……「ご苦労であった! しかし、本当の戦はこれからだ! 気を入れて行こう〜っ!!」どうですか、この生き生きっぷり(笑)。土方さんと性格は違うけど、ケースケも薩長を相手に戦いたかったんだなぁと皆さんに伝わりませんか? ……と、蛇足ながら問いかけてみたい白牡丹@土方さんファンだけどケースケも好きなのよ、です。「おう!」と味方が応じてくれて、ちょっと嬉しかったりして。
山中に大砲を運び込む新政府軍。着々と侵攻が続いています。
榎本さん「敵は桔梗野台場まで迫ってきている」、土方さん「奴らは総攻撃の勢いに乗り、もう五稜郭しか見えなくなっている」、大鳥さん「狙い目だな」……桔梗野は、赤川―四稜郭の防衛ラインより西に位置しています。七重浜方面から攻めてきた軍勢かな?
土方さん「これで黒田のいる本陣は切り離された。勝負だ」と、ジオラマに笄を突き立てる土方さん……あえて不利な状況をつくって、乾坤一擲の勝負に賭ける不敵さ、たくましさが山本さんの目力《めぢから》で表現されています。決戦に備えて自室に戻る土方さんを、榎本さん・大鳥さんが希望を託して目で見送ります。
自室で決戦に備える土方さん……長い夜が明け、夜明けが来ています。明治2年5月11日の朝の光が、土方さんの部屋に差し込んでいます。愛刀を刀受けに置き、かつて詠んだ句を書き散らした(一番右は「白牡丹」の句だとお見受けしました……が、第31回に出てきた備忘録と句が違うところもあるので、思い出して新たに書き留めた備忘録かも知れません。洋装の写真がしおり代わりに挟まれているのも、素敵な演出です)帳面を脇にのけ、文箱から「かっちゃん」の浅葱羽織の半身を取り出し、近藤さんに話しかける。「近藤さん、悪いがあんたのところに行くのはもう少し先になりそうだな」半身の浅葱羽織の向こうには、かつて象山先生から「鬼瓦」という渾名をつけられ、近藤さんが自室に飾っていた鬼瓦の置物も見える……しかしBGMは、「流山」で「加納君、お久しぶりです」と近藤さんが自分の身元を認める時に流れた女声の、どこか天国から聞こえてきそうな天使の歌声風(涙)。彼岸の向こうの近藤さんに、そっちに行くのはもう少し待って欲しいと語りかけるその日が、運命の日になるとは……(つ、辛い……)。しかし、浅葱羽織を鉢巻に仕立てて額に結ぶ山本土方の表情は圧巻です。
部下50人を率いて五稜郭を出る土方さん……「目指すは本陣、官賊薩摩、黒田了介の首ただひとつ!いざっ!」「おうっ!」いかにも桶狭間(この場面、三谷さんが友人の大石静さんが脚本を担当する『功名が辻』に送ったエールかとも思えなくもないですね)。でも行進はフランス軍式なのが箱館戦争らしいです。こんなに劣勢なのに、かっこいいんだよなぁ。
大軍を展開して攻めようとする新政府軍、馬で本陣を目指す土方隊。大砲を組み立てる新政府軍。
新選組屯所@称名寺……島田さんが「いいか、敵はまだ遠いが、いつ出陣命令が出てもいいように準備を怠るなよ!」と、檄を飛ばします。士気は高いようですが、大砲を擁する新政府軍に対して、武器は刀だったり槍だったり、装備の差が歴然としています。寺の二階に布陣する相馬さん、旧式っぽい大砲の弾薬(?)を運び込む蟻通さん。
そうしている間にも、平地では新政府軍が大軍を展開して侵攻しています。その隙を縫うように敵の本陣を目指す土方隊。一方で大砲に弾丸を装填する新政府軍……ロケがあって、空間に広がりを感じさせられてよかった(何しろ、本編では鳥羽伏見も勝沼も宇都宮もセットでしたからねぇ……倒木の使い回しとか、池というか堀というか川というかよくわからない水辺の使い回しとか(^^ゞ)。そして、黒熊《こぐま》をかぶる薩摩の指揮官が蹴飛ばすカンテラによって、前夜、土方さんと市村鉄之助君が語り合った箱館山まで敵が攻め込んでいるという位置関係が明らかになります。箱館山という天然の要害があるからと守りを薄くしていた箱館山まで、敵は侵攻しているのです……そして、新政府軍の大砲が照準を合わせるのは、箱館の街中です。高地に陣取って大砲で撃ち下ろすというのは、現代戦で言えば制空権を手にしたのと同じぐらい、新政府軍が有利に立ったということです。箱館山の下で、敵軍の配置を知らず、悠々と待ち受ける新選組が、ちょっと悲しいですね……。
箱館山からの奇襲……あえて敵将の顔を見せず、兵士たちの顔もクローズアップさせないショットが、うまいと思います。近代戦の特徴は、兵士ひとりひとりの力量を問わず、装備の差によって個人個人の差を補うことで成り立っていると思うからです。ちょっと脱線しますが、白牡丹にとって近代戦の始まりはナポレオン軍によるフランス軍のスペイン侵攻で、近世と近代の境目を目撃することになった画家・ゴヤが描いた『戦争の惨禍』シリーズ、プラド美術館所蔵の「1808年5月3日」という油絵が象徴的です。抵抗する市民たちの顔はひとりひとり個人であるのに対して、銃を突きつける兵士たちは顔が見えず、個人の属性を消した近代的な軍隊。ゴヤの傑作のひとつです。このシーンを見ていて、ふっと思い出しました。
奇襲を受ける新選組屯所@称名寺……箱館山からの砲撃を受けて、思っていたよりも近い砲撃に島田さんが「何だ?」といぶかります。二階の相馬さんが「山の上から敵兵が! 不意打ちです!」と報告。総攻撃を受けてもここは最後の砦と思っていた新選組たち守備兵たちは浮き足立ちます。山の上からばんばんと遠慮なく落ちてくる砲撃に、称名寺は揺らぎます。そして、寺の中に攻め込んでくる敵兵たち。白兵戦となります。必死で食い止めようとする山野・蟻通。銃弾がかすめても何とかもちこたえて「誠」旗を守ろうとする尾関。「逃げてはならん!」と隊を立て直そうとする島田。二階から飛び降りて薩摩の指揮官や兵士たちと斬り結ぶ相馬。しかし、多勢に無勢で、追い込まれる蟻通。加勢したくても格子が邪魔をして蟻通の近くに行けない島田は、蟻通が斬られる場面を目撃して、号泣します(ううう……土スタの番宣だったかでは、「耐え抜け〜!」だったか、島田が叫ぶ場面がありましたが、カットされた模様です)。
有川の本陣に辿り着く土方隊……手で馬を止めろと指図する山本土方さんがかっこいい。しかし、本陣が手薄なのを見てとって「行くぞ」と声をかけた瞬間、箱館山からの砲撃が目に映ります。
「明日の戦で勝利すれば我々が薩長の大軍を追い返したという事実が残る。薩長の奴らも少しは考えるだろう。未開の土地の開拓ぐらいは許してやろうと。となれば、こっちのものだ。それを足がかりに新しい国づくりを始められる」……榎本さん、かなり楽天家ですね。まぁ、自称でも「間抜けなロマンチスト」、土方さん曰く「馬鹿なろまんち」ですから(^^)。そういうところがこの人の魅力的なところですね。
「その時は、晴れて我らが蝦夷の国の誕生だ」「その国では、近藤勇はもう罪人ではないんだな」「もちろんだ。この国の礎となったひとりの英雄として、未来永劫その名は刻まれる」……近藤勇の汚名を雪ぐことだけが戦い続けることの理由である土方さんにとって、榎本さんの答えは自分が「死に場所を求めて戦う」ことから「生き延びるために戦う」と気持ちを切り替えるために重要な動機づけになったと思います。こっくりと頷く土方さん。
握手のために手を差し出す榎本さん、「前から気になっていたんだ。その挨拶には一体何の意味がある」と尋ねる土方さん……本編を最初の頃から見てきた人には「ヒュースケン逃げろ」の回を思い出したのではないでしょうか。ヒュースケンが命の危機を救ってくれた近藤・土方・永倉に差し出した手の意味を、誰も気付かなかった。そして榎本さんが「土方君。これからはこれが我らの挨拶だ。我らの新しい国の」と答えると、快くとまではいかないけど(笑)、土方さんも榎本さんの手を握り返す。ヒュースケンの回のエピソードがここで繋がったことに快哉を上げたのは私だけではあるまい(笑)。ヒュースケンの回は本編でも「井の中の蛙」という諺に引っかけたエピソードや土方さんが洋装に興味を持つエピソードなど、三谷さんがお気に入りの回らしく伏線が沢山散りばめられてましたね。
榎本さんに目で促されて握手に加わる大鳥さん、大鳥さんの手に自分の左手を重ねる土方さん……大鳥さんに目で促されて、きょろきょろと目を動かすケースケがらぶりー(爆)。
幹部たちに指示する大鳥さん……「無茶をしてはならんっ。全滅戦より、必ず力を残して敵を引きつけながら陣地に戻るのだ。いいな!」ひゅうがおんさんのご指摘通り、全体の策を考える土方さんに対して、細かい陣割を伝える山南さんの役を大鳥さんがやっている格好になってます。その指示を聞きながら、目を閉じて気持ちを集中させる土方さん。その心中は描かれていませんが、かつての近藤さん・山南さんとの役割分担が榎本さん・大鳥さんというパートナーを得て再現され、近藤勇が罪人ではなく英雄となる「新しい国」のために戦うという気持ちの切替えを図っているのかも知れません。
侵攻を続け、山を登る新政府軍……アップで撮される葉っぱがクマザサだったらもっとよかったのにと、箱館山は自分の足で上ったことはないのですが二股の台場山を上った経験では思いました。
砲声を聞いて目を開き、ジオラマに向かっている榎本さん・大鳥さんに加わる土方さん……榎本「どっちの方向だ」大鳥「北だ。斥候を出せ」と、いよいよ新政府軍の総攻撃が始まります。
新選組屯所@称名寺……こちらでも砲声が聞こえてきます。「始まったな」と背後の尾関さんに呟く島田さん、腕組みをして迎え撃つ気持ちを示しています。
五稜郭に走り込む斥候「薩長軍が赤川台場に攻め込みました」……赤川という地名は今でも赤川町という名で残っています。旧幕府軍は、箱館山から東北方向に、五稜郭、四稜郭、赤川地区と、ほぼ直線上に防衛ラインを張っていたようですね。ジオラマの駒を動かす大鳥さん、ジオラマを見つめ、頷き合う榎本さんと土方さん。
新選組屯所@称名寺……隊士たちの動きが活発になっています。相馬さんが島田さんに「赤川台場が敵に奪われました!」と報告。「見ているだけでいいんですか? 我々も加勢に!」と勢い込む相馬さんに対して、落ち着き払って島田さん「ここで待てというのが土方さんの命令だ。奴らが攻め込むまで一歩もここを動いてはならん」と指示する島田さん。
再び斥候……斥候が負傷して倒れ込むところで、戦況の厳しさと、新政府軍の侵攻の速さ・激しさがわかるような演出です。「四稜郭と権現台場が陥ちた。敵はこちらに向かって侵攻を続けている」と榎本さん。「間もなく陥ちた陣の兵がこちらに向かってくる。すぐに本隊に組み込み、決戦に備えよう」と大鳥さん。一見すると攻め込まれていて形勢不利なのですが、榎本・大鳥・土方にとっては「想定内」。そして、守りのエキスパートを自称する大鳥さん、ここから本陣を固めるために陣頭指揮に移ります(地味ですが、ケースケなりの見せ場だと思います!)。
土方さん「これで心おきなく突っ込める……」……不敵に口元を緩めて一言。計算通りに本陣に大軍を引きつけ、各地に散らばっていた将兵たちも本陣に逃げ帰るふりをして結集しようとしている、そして本陣の守りには榎本・大鳥がいるという安心感が言わせる台詞ですね。それにしても大胆不敵であることには間違いないです。
本陣に戻ってきた将兵を労う大鳥さん……「ご苦労であった! しかし、本当の戦はこれからだ! 気を入れて行こう〜っ!!」どうですか、この生き生きっぷり(笑)。土方さんと性格は違うけど、ケースケも薩長を相手に戦いたかったんだなぁと皆さんに伝わりませんか? ……と、蛇足ながら問いかけてみたい白牡丹@土方さんファンだけどケースケも好きなのよ、です。「おう!」と味方が応じてくれて、ちょっと嬉しかったりして。
山中に大砲を運び込む新政府軍。着々と侵攻が続いています。
榎本さん「敵は桔梗野台場まで迫ってきている」、土方さん「奴らは総攻撃の勢いに乗り、もう五稜郭しか見えなくなっている」、大鳥さん「狙い目だな」……桔梗野は、赤川―四稜郭の防衛ラインより西に位置しています。七重浜方面から攻めてきた軍勢かな?
土方さん「これで黒田のいる本陣は切り離された。勝負だ」と、ジオラマに笄を突き立てる土方さん……あえて不利な状況をつくって、乾坤一擲の勝負に賭ける不敵さ、たくましさが山本さんの目力《めぢから》で表現されています。決戦に備えて自室に戻る土方さんを、榎本さん・大鳥さんが希望を託して目で見送ります。
自室で決戦に備える土方さん……長い夜が明け、夜明けが来ています。明治2年5月11日の朝の光が、土方さんの部屋に差し込んでいます。愛刀を刀受けに置き、かつて詠んだ句を書き散らした(一番右は「白牡丹」の句だとお見受けしました……が、第31回に出てきた備忘録と句が違うところもあるので、思い出して新たに書き留めた備忘録かも知れません。洋装の写真がしおり代わりに挟まれているのも、素敵な演出です)帳面を脇にのけ、文箱から「かっちゃん」の浅葱羽織の半身を取り出し、近藤さんに話しかける。「近藤さん、悪いがあんたのところに行くのはもう少し先になりそうだな」半身の浅葱羽織の向こうには、かつて象山先生から「鬼瓦」という渾名をつけられ、近藤さんが自室に飾っていた鬼瓦の置物も見える……しかしBGMは、「流山」で「加納君、お久しぶりです」と近藤さんが自分の身元を認める時に流れた女声の、どこか天国から聞こえてきそうな天使の歌声風(涙)。彼岸の向こうの近藤さんに、そっちに行くのはもう少し待って欲しいと語りかけるその日が、運命の日になるとは……(つ、辛い……)。しかし、浅葱羽織を鉢巻に仕立てて額に結ぶ山本土方の表情は圧巻です。
部下50人を率いて五稜郭を出る土方さん……「目指すは本陣、官賊薩摩、黒田了介の首ただひとつ!いざっ!」「おうっ!」いかにも桶狭間(この場面、三谷さんが友人の大石静さんが脚本を担当する『功名が辻』に送ったエールかとも思えなくもないですね)。でも行進はフランス軍式なのが箱館戦争らしいです。こんなに劣勢なのに、かっこいいんだよなぁ。
大軍を展開して攻めようとする新政府軍、馬で本陣を目指す土方隊。大砲を組み立てる新政府軍。
新選組屯所@称名寺……島田さんが「いいか、敵はまだ遠いが、いつ出陣命令が出てもいいように準備を怠るなよ!」と、檄を飛ばします。士気は高いようですが、大砲を擁する新政府軍に対して、武器は刀だったり槍だったり、装備の差が歴然としています。寺の二階に布陣する相馬さん、旧式っぽい大砲の弾薬(?)を運び込む蟻通さん。
そうしている間にも、平地では新政府軍が大軍を展開して侵攻しています。その隙を縫うように敵の本陣を目指す土方隊。一方で大砲に弾丸を装填する新政府軍……ロケがあって、空間に広がりを感じさせられてよかった(何しろ、本編では鳥羽伏見も勝沼も宇都宮もセットでしたからねぇ……倒木の使い回しとか、池というか堀というか川というかよくわからない水辺の使い回しとか(^^ゞ)。そして、黒熊《こぐま》をかぶる薩摩の指揮官が蹴飛ばすカンテラによって、前夜、土方さんと市村鉄之助君が語り合った箱館山まで敵が攻め込んでいるという位置関係が明らかになります。箱館山という天然の要害があるからと守りを薄くしていた箱館山まで、敵は侵攻しているのです……そして、新政府軍の大砲が照準を合わせるのは、箱館の街中です。高地に陣取って大砲で撃ち下ろすというのは、現代戦で言えば制空権を手にしたのと同じぐらい、新政府軍が有利に立ったということです。箱館山の下で、敵軍の配置を知らず、悠々と待ち受ける新選組が、ちょっと悲しいですね……。
箱館山からの奇襲……あえて敵将の顔を見せず、兵士たちの顔もクローズアップさせないショットが、うまいと思います。近代戦の特徴は、兵士ひとりひとりの力量を問わず、装備の差によって個人個人の差を補うことで成り立っていると思うからです。ちょっと脱線しますが、白牡丹にとって近代戦の始まりはナポレオン軍によるフランス軍のスペイン侵攻で、近世と近代の境目を目撃することになった画家・ゴヤが描いた『戦争の惨禍』シリーズ、プラド美術館所蔵の「1808年5月3日」という油絵が象徴的です。抵抗する市民たちの顔はひとりひとり個人であるのに対して、銃を突きつける兵士たちは顔が見えず、個人の属性を消した近代的な軍隊。ゴヤの傑作のひとつです。このシーンを見ていて、ふっと思い出しました。
奇襲を受ける新選組屯所@称名寺……箱館山からの砲撃を受けて、思っていたよりも近い砲撃に島田さんが「何だ?」といぶかります。二階の相馬さんが「山の上から敵兵が! 不意打ちです!」と報告。総攻撃を受けてもここは最後の砦と思っていた新選組たち守備兵たちは浮き足立ちます。山の上からばんばんと遠慮なく落ちてくる砲撃に、称名寺は揺らぎます。そして、寺の中に攻め込んでくる敵兵たち。白兵戦となります。必死で食い止めようとする山野・蟻通。銃弾がかすめても何とかもちこたえて「誠」旗を守ろうとする尾関。「逃げてはならん!」と隊を立て直そうとする島田。二階から飛び降りて薩摩の指揮官や兵士たちと斬り結ぶ相馬。しかし、多勢に無勢で、追い込まれる蟻通。加勢したくても格子が邪魔をして蟻通の近くに行けない島田は、蟻通が斬られる場面を目撃して、号泣します(ううう……土スタの番宣だったかでは、「耐え抜け〜!」だったか、島田が叫ぶ場面がありましたが、カットされた模様です)。
有川の本陣に辿り着く土方隊……手で馬を止めろと指図する山本土方さんがかっこいい。しかし、本陣が手薄なのを見てとって「行くぞ」と声をかけた瞬間、箱館山からの砲撃が目に映ります。
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