第25回「新選組誕生」……「真実の瞬間」という言葉を捧げたい

　新見さんの死を知って動揺する勇くん。トシたちが陥れて切腹に追いやったと知ると、「お前は切腹しなくていいのか」と詰め寄る。「すべては浪士組のためだ」「あんたがそうしろと言うならいいぜ。俺は腹を切る」と、開き直るというか^_^;、覚悟のほどを見せるトシ。

　「山南も同意の上だ」と、ため口になっているな。山南さんとトシの距離が今一番近い……のかなぁ。この先のことを考えると、切ないよなぁ(;O;)。



　オープニング後、再び、トシと勇くん。トシ、口では割り切ったようなことを言うけど、新見さんの件で頬がこけたような気がする。多摩に帰ると言う勇くんに、トシ、「多摩へは帰さねぇ。みんなお前についてきてんだ。今さら抜けるとは言わせねぇぞ」「そしてその後はお前が浪士組を引っ張っていく」と、やはり、確信犯。



「ガラにもなく長生きしたくなった」って、鴨さん、覚悟通りの結末以外の死を避けるために、か(汗)……ボディガードに一くんをつける。

　お梅さん、入るお墓はない、無縁仏でいいと。「俺の墓に入ればいい」と言う鴨さん、やさしい。本当の夫婦《めおと》になったなぁ。「約束やで」と言う言葉にまともに肯定しないのは、自分が死んだ後のことは約束できないという心境なのかな。

　でも「これで安心して死ねる」って……お梅さん、初めて人に心を開いたね。切ない……墓の話題で愛を語ること、そしてふたりに残された時間がとても短いことが。



　源さんと左之助、暗殺要員を頼まれる。「永倉は誰かさんと同じで融通の利かないところがある」って、トシ、勇くんに当てこすりかい^_^;。

　誰を使って誰を使わないか、トシと山南さんの配慮はすごい。確実に結果を出すための配慮とはいえ、冷酷なようで人それぞれをよく見ている。そういうやり方でしか優しさを示せないトシの不器用さが白牡丹には可愛いんだなぁ。



　鴨さん、会津藩に挨拶に行くことを「新見の初七日がまだ済んじゃいねぇんだ」ということを口実に断る。「俺だって忙しいんだよ」嵐山に紅葉狩り……残り少ない時間を心残りなく過ごしたい、のか。

　新八っつぁんは、体よく伏見に警護に出される。

　紅葉狩りに行く鴨さんとお梅さん。ふたりを見送る総司君、青痣が痛々しい。

　トシに呼び出された総司君は、芹沢暗殺の件を聞かされる。「お前を巻き込みたくねえんだ」、トシなりの気遣い。でも総司君は、「あの人は私が斬らなくちゃいけないんです。あの人はそれを望んでいる。私も加えてください」と自ら刺客を志願。成人として鴨さんに一番認められたいのは、総司君だろう。



　お梅さん、どこか田舎に引っ込んで寺子屋を開いたらと、かなわぬ将来の話をする。「俺らしくねぇなぁ」「ううん、ものすごう、あんさんらしいと思う」……このやりとりで、お梅さんが心底から鴨さんを愛しているとわかる。

　ほんのつかの間のハネムーンであり、心中の道行きのようでもある。

　お梅さん、一ちゃんにもお裾分け……おい、一ちゃん、紅葉の美しさを「まるで血の色だ」って、不吉だよ……(汗)。



　黒谷さんで、勇君、容保様から褒賞金と「新選組」の名を賜る。それは、同時に、浪士組を刷新して欲しいというメッセージも入っているのだろうか……。

　筒井君、何だか急に落ち着いて堂々としていて、若殿らしい雰囲気になっているのには、びっくり。帝に信任されているという自信からだろうか(笑)。



　宴席。皆の視線にいろいろな感情がこもっているなぁ……。山南さんが鴨さんを探るような視線なのを、トシ、遮って鴨さんにお酌(芸が細かいなぁ……)。

　「先生のお姿は語りぐさになっているらしいですよ」と持ち上げるトシ。「俺を酔わせてどうする。斬るつもりか」「言っておくがな、俺の剣は酒が入れば入ると切れ味がよくなる」という鴨さんに、トシ、「一度、お手合わせ願いたいものです」……凄いっ、このふたり、前哨戦として眼で斬り結んでいる。

　そして、勇くんにお酌するトシ、「どうぞ」って改まっているのは、勇くんに釘を刺したいんではないかと思う。腹を決めろって眼をしてる。山本耕史さんは演技達者だから、眼で何を言わんとしているかがわかるんだよなぁ。

　厠に立つ芹沢さんのところに、勇くんが声をかける。「新選組」の名をもらったことを報告。「名前なんかはどうでもいいや」と、今夜より先のことには興味がないといった風情の鴨さん……死に急ぐという言葉は当てはまらないけど、今夜のその瞬間を待ち望んでいるようだ。勇くんが暗殺の件を伝えようとして鴨さんに「聞きたくねぇなぁ」といなされる。「鬼になれよ近藤。鬼になって俺を喰っちまえよ。遠慮は要らねぇ」……うう、今夜の鴨さんは無茶苦茶かっこいい。

　そして、改めて「新選組」の名を見て「悪くねぇな。明日からこの名前で行けよ」……それは、まるで、明日がないと悟っている鴨さんの遺書のよう。

　嵐山の紅葉を話題に出したのは、その鮮烈な赤い色に、自分の死をイメージしたからなんだろうか。



　源さん、総司くんが討っ手に加わったので、トシに勇くん対策要員に回される。この辺りの臨機応変さと勇くん思い(この場面ですら「あの人」と呼んでいる)が、トシらしい。

　駕籠を呼ぼうとした平助くんと野口くんを止めるトシ。うん、確かに揺られるともっと気分が悪くなると思う。でも、確実に鴨さんの体調を悪くする方にしなかったのはなぜだろう、トシ……トシなりの、配慮なんだろうか。

「お前はもういい」って一くん、鴨さんに解任される。やはり、一くんは、その瞬間までに他の誰かに邪魔されないように添わせたのね。

　野口くんも付き添おうとして、山南さんに平助くんの手伝いをするよう引き留められる。山南さんらしい気遣いだなぁ……。

　酔っぱらったふりの上手い左之助^_^;。察知して、ふらりと立ち上がる一くん。

　山南さんから芹沢暗殺を知らされた平助くん、動揺して源さんにすがる。

　立ち上がる勇くんを止める源さん。「そうではないっ。俺は、鬼になった」……んー、今日の香取さん、結構いい感じの演技です。



　一くん、刺客四人を引き留める。眼うるうるなんだけど、怖い。

　左之助、「しょうがねぇな」とあっさり立ち向かう。この思い切りのよさと、天真爛漫な普段の表情からごろっと切り替わる戦闘モードがなかなか魅力的。何ていうか、戦国時代の野武士にいそうなタイプ。

　なるほど、一くんを引き下がらせることができるのは勇くんだけだな。「すでに芹沢さんは覚悟を決めている。今ここで誰かが命を落としても、それは無駄死にだ。もう仲間内での戦いは沢山だ。その刀を、これからはご公儀のためだけに抜いてくれ」……うん、局長らしい雰囲気が出てきた。

　左之助、笑顔が天真爛漫。さっきまで命の遣り取りをする覚悟で向かったくせに嬉しそうに笑う顔が素晴らしい。いい性格だなぁ……。

「お前に浪士組の行く末を託した」「心得た」……勇くんとトシの会話は、互いの命と運命を託し合う絆の深さが感じられる。勇くん、トシと総司くんにだけ声をかけるところが、この三人の絆の深さが(山南さんや左之助と比べても)特別なことを思わせるよな^_^;。

　走りつつ一ちゃんの肩に手を置くトシ、前にも肩に腕回していたし、一ちゃんだけ贔屓してないかい(笑)。



　鴨さんと共にいるお梅さんについては「あの女には手を出すな」とトシ。うん、三谷版のトシなら、そう言っても違和感がない。

　総司君、起き出したひでちゃんに、「何を聞いても決して部屋から出るな」と警告。

　雷鳴轟き、雨の降り出す中を鴨さん暗殺に走る刺客たち。四人揃って刀(左之助は槍だが)を構えるところがかっこいい。

　待ちかまえていた鴨さん。「嬉しいぜ」と総司君に笑う鴨さんは、本当に嬉しそうだ。ここが自分の死に場所だと待ちかまえていたわけか……切ないなぁ。

　眠っていたお梅さんを起こすという三谷オリジナル設定も、嬉しいなぁ……そのままぐさぐさ刺されるのは、余りにも可哀想だから。

。「たった四人か。俺もなめられたもんだ」と、憎さも憎しな豪傑さが、何とも素敵。試衛館の若者たちを大人にするために立ち塞がる最大の敵として自分の命を使おうとするところの潔さ。

　し、しかし、布団に投げ捨てた瓢箪が、後であんな演出に使われるとは……憎いぞ三谷さん。

　刀を構える鴨さん、やはり天下一品のかっこよさ。平山・平間が加勢に入り、山南さんと左之助はそっちに廻る。平間さんを助ける山南さん、らしいよなぁ。左之助vs平山、そして刀を落とした相手を絶命させることに一瞬ためらう山南さんに、反撃しかける平山さん、投げ槍でそれを救う左之助。

「戦じゃな、躊躇った方が負けなんだよ、先生」

　戦闘モードに入った時の凄みが普段の脳天気さとギャップ大きくて、左之助らしい(^^)。でも、この場面で、山南さんの心優しさというか、弱さが今後の伏線になりそうな……(あわわっ)。



　総司くんとトシを相手に互角の勝負、鴨さん。四人に囲まれてもにやりと笑うところが凄い。白牡丹は、鴨さんの死に泣くよりも「よっ、千両役者っ」と声をかけたい。

　はやる総司君、鴨居に刀を食い込ませる。形勢逆転、追い詰められる総司くん。

　……しかし、まさか、あの小道具がここで出てくるかっ(驚異っ)。

　そして、足を滑らせたところを総司君に刺され、嬉しそうに一瞬笑う。

　トシから背後に止めを刺されて、絶命。眼を開けたままなところがリアル。

　刺客たちの息づかいの荒さに、戦闘のすさまじさを感じさせる。



　そして、お梅さん。雷光の中に、刺客は総司くんと認める。

「逃げて」と言う総司くん。

　しかし……まさかの一瞬だった。自害するとは聞いていたけど、こんな壮絶な自害で、鴨さんに寄り添うように死ぬとは。

　白牡丹には、「生きる」という選択を敢然として拒否した自害に見えた。これ以上、男たちの都合で振り回させる人生を拒否して、心を許した唯一の男と墓に入ることを自分から選んだ死……史実では一緒に埋葬されないのだ(哀れ……)が、三谷ワールドでは、せめて一緒の墓に埋葬されたことと思いたい。

　長州藩関係者の手によるものだと見せかけるために小道具を残し、折れた刀を回収するトシ……表情は見えないが、冷静だよ君は。

　そして、為三郎。そーか、目撃したのね、史実通りに。でも、史実と違って怪我がなくてよかった。



　野口君、源さんに「野口、屋敷へは戻るな。芹沢局長は亡くなられた」と知らされ……さらに平助に暗殺の一件を伝えられ、号泣。「お前だけは助けるようにと山南さんに言われた」……山南さんも平助くんも、いい奴だよなぁ(;O;)。

「あなたは今すぐ京を離れなさい。そして二度とここには戻ってきてはならない」という勇くんに続けて……水戸に帰って剣術の道場を開けというと平助くん、優しい……。

　……うう、三谷さん、史実ではこの後一年ほどして切腹を命じられる野口君を救ってくれて、ありがとう(;O;)。勇くんを主人公として立てるためということもあるんだろうけど、史実よりも多く人を殺す創作作品(特に新選組ものは^^;)が多い中で、史実よりも人を殺さないっていうのは、何だか嬉しい。史実を忠実に再現するのがドラマでなく、こうあって欲しいという表現の仕方もあると思う。



　弔辞を読む勇くん……いや、もう、近藤さんと呼ぼう。トシも、この瞬間から「土方さん」と呼ぶね。隊士たちそれぞれの表情の複雑さが、これまた凄い。事情を知っている者の表情が、特に。

　島田魁さんが掲げる「新選組屯所」の看板に歓声。ひとり局長体制となった新選組の局長となった近藤さんの呼びかけに隊士一同「おうーっ」って、男だらけで体育会系だな^_^;。



　今回の芹沢さんを見てて思い出した言葉が「真実の瞬間」……スペイン語では、闘牛士が手負いの牛と向き合って生死を賭ける、その瞬間を言うと聞いている。白牡丹はスペインで闘牛を見たことがあるが、今回の鴨さんはまさしく闘牛場の牛のようだった。オーレっと声をかけるのは不謹慎のような気がするが、闘牛場を最後の戦いの場として壮絶に戦った鴨さんにふさわしい言葉のように思う。