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新選組・土方歳三を中心に取り上げるブログ。2004年大河ドラマ『新選組!』・2006正月時代劇『新選組!! 土方歳三最期の一日』……脚本家・制作演出スタッフ・俳優陣の愛がこもった作品を今でも愛し続けています。幕末関係のニュースと歴史紀行(土方さんに加えて第36代江川太郎左衛門英龍、またの名を坦庵公も好き)、たまにグルメねた。今いちばん好きな言葉は「碧血丹心」です。
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昼の部
明月八幡祭
 深川が舞台なので楽しみにしていた。ストーリーは、越後出身の実直で純朴な反物商人が深川芸者に惚れ、金策に困った芸者のために実家の田畑を売り払ってつくった金を渡そうとするが、馴染みの大尽が金をつくってくれたので、「あ、その金もう要らない」とすげなく袖にする。
 (ここまでだと落語「品川心中」そっくり)
 さらに芸者には本命の間夫がいて、目の前でいちゃいちゃ。戻る故郷もなく(実家にいる病身の母は息子の行状を知らずに追い出されるのか?)、尽くそうとした芸者には捨てられ、商人は絶望する。深川八幡祭に人が集まり過ぎて永代橋が落ちるという大惨事の夜、雨の中で商人は芸者を惨殺する。男が捕らわれた後、雨の上がった深川を冴え冴えとした満月の光が照らす。

 実直な縮屋新助を尾上松緑が演じ、いつもとイメージの違う役だったのだが説得力があった。芸者美代吉は市川笑也、美しいんだけどマノン・レスコーをイメージしたヒロインにはちょっとあどけなさが足りないような。安きに流れやすく、大金を計画性もなく使ってしまうのだけど、魅力が今いち伝わらなかった。猿之助の船頭三次は色気がなくてちょっとなぁ。

浮世風呂
 猿之助の三助政吉の踊りはさすが。なめくじの種之助はキモかわいい。

御所桜堀川夜討
 弁慶上使

 吉右衛門の弁慶が、生涯たった一度だけ契った女とその時に授かった娘と再会した時、自分が刺し殺した女が自分の娘と知った。
 吉右衛門の弁慶の泣きを鑑賞するためにだけ設定やストーリーがあるような(汗)。
 でもまぁ、それが吉右衛門好きにはたまらないだろう。やはり人間国宝だけのことはある。
 雀右衛門のおわさ、米吉のしのぶ。

夜の部

鎌倉三代記
 絹川村閑居の場

 真田太平記をそのまま芝居にすると差し障りがあるので、徳川家康を源頼家に、真田幸村を佐々木髙綱に、千姫を時姫に、木村重正を三浦之助に置き換えるのですね。そして時姫は三浦之助を慕って政略結婚を蹴って三浦の実家で病身の母を看病している。そこへ負け戦で重傷を負った三浦之助が戻ってきて、時姫に実家に戻って父の宮本頼家を暗殺するよう言い含める。で、佐々木髙綱と三浦之助は壮烈に戦死するため戦場に戻る。
 去年大河ドラマ『真田丸』を楽しんで見ていたので真田側そのままなら頭に入りやすいが、それを時代勘のない源頼家vs北条時政に置き換えなければならないのでちょっととまどった。

 三浦之助を演じた尾上松也さんはこの世代として歌舞伎座でほとんど主役級を演じるのだけどほとんど出ずっぱりで最初から重傷って設定だから大変だったろう。若さや二枚目ぶりは流石だけど、まだまだ一杯一杯という感じ。
 時姫を演じた雀右衛門さんは流石。雀右衛門を襲名した時から三姫を手がけていただけあって、踊りも口説きも巧い(でも一途に恋する世間知らずの姫とはいえ、今日明日にも死ぬ母を案じる三浦之助に「私を見て」「せめて一夜の契りを」とか、好きになれない性格設定)。
 百姓藤三郎と佐々木髙綱は幸四郎。

曽我綉御所染
 御所五郎蔵

 もとは仙台藩藩士だったが腰元皐月との不義が発覚して侠客となった御所五郎蔵を仁左衛門様が演じる……というだけで、舞台が全然違う。御所五郎蔵の立ち姿、振る舞いにリアリティがある。役者が演じている架空の役ではなく、架空の空間に生きているように見える。凄いわぁ、ただ、溜息。
 仮花道に立つライバル星土右衛門と花道に立つ五郎蔵のやりとりが素敵……見たことある構図だと思ったら、ニコニコ歌舞伎2017「花街詞合鏡(くるわことばあわせかがみ)」で中村獅童さん演じる八重垣紋三が吉原で沢村國矢さん演じる蔭山新右衛門と鞘当てする場面の構図と同じだった。ニコニコ歌舞伎は新作なので、こちらが原典だったのね。
 元女房で廓に身を埋めた傾城皐月に離縁を申し入れられ、侠客としての義理人情もあって手切れ金のために離縁を受け容れるが、恋敵に皐月を渡せば男として分が立たない。ので皐月を闇打ちで殺そうとする五郎蔵……って皐月の立場から見たら踏んだり蹴ったり。
 で、それを察した皐月の友人であり主筋の愛人である傾城逢州が身代わりに刺し殺される。だが、五郎蔵が大金を必要としたのは旧主が逢州に入れ込んで藩の金を吉原に使うため、その借金の尻ぬぐいのためだった。うーん、傾城逢州も傾城皐月も哀しいなぁ。。
 とにかくニザ様を見るためにあるのだが、雀右衛門の皐月、左團次の土右衛門、歌六の甲屋与五郎、米吉の逢州とまずまずの配役。

一本刀土俵入

 幸四郎の駒形茂兵衛は侠客としての後半は説得力あったが、相撲部屋を逃げ出した前半がいただけなかった。山○清か。世間を知らない二十歳前の少年にしては頭が足りなすぎて十年の歳月があったといえども後半の侠客につながらない(泣)。
 猿之助のおつたはよかった。特に前半のはすっぱで人生を投げて飲んだくれた酌婦像が。ほんの気まぐれで親切に櫛や簪を旅費に替えろと分け与えたのが、十年後に恩返しされるのだが、まったく思い出せないところに長谷川伸のリアリティ。


夜の部は、一列後ろの団体客が芝居中ずっと喋っていた(オペラグラスの貸し借り、果てはイヤフォンサービスの解説を隣の友人に口伝する)。時々振り向いて「しーっ」のポーズをするなど注意したのだが、全然直らず。家でテレビ見てるんじゃねーぞ、周りの客が迷惑してるんだ、ツアコンにクレーム入れようかと何度思ったか。
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