『大奥〜永遠〜右衛門佐・綱吉篇』 見ました

映画『大奥〜永遠〜右衛門佐・綱吉篇』見ました。原作ファンは映像化されると作品イメージが変わったらどうしようかと焦るものですが、テレビ版『大奥〜誕生〜有功・家光篇』に続いて、安心して作品世界に浸れるものでした。

　以下、ネタバレを含むので畳んでおります。

　思えば映画版『大奥』水野・吉宗篇は主役だけがミスキャストで残念な作品でした。柴本コウの吉宗もよかったし、阿部サダヲの杉下・佐々木蔵之介の藤波・玉木宏の松島と考えられる限り豪華なキャスティングだったのに、主役がニノだったために……(涙)。竹を割ったような性格の水野を演じきれる俳優さんは他にいたでしょうに。

　テレビ版『大奥〜誕生〜』有功・家光篇は、有功を演じる堺雅人さん、女家光を演じる多部未華子さん、春日局を演じる麻生祐未さんがよかっただけでなく、脇を固める方々も適役だったために、マンガ作品のテレビドラマ化作品としてはこの上ないほどの完成度だった。堺さんは期待通りに慈愛あふれる有功の葛藤を表現してくれたが、多部未華子ちゃんの女家光の荒々しさ、男への憎しみと怖れ、それを乗り越えた上で有功を慕わしく思う恋心、その有功に他の男と交わって子供を産めと言われることへの怒りなど、喜怒哀楽がとてもよくわかった。それをもたらす有功様の、微笑で喜怒哀楽を表現する堺マジックがぴったりだった。

　それに比べると右衛門佐はも少しストレートな人物だ。公家の男に生まれて生活のために美貌と知性を使って公家の姫君の種馬として生きてきた前半生は人並み以上の苦労話としても、大奥に出仕して綱吉に見出されて大奥総取締に就任するまでが短い（普通、出世物語とされるストーリーはここが長い）。だから、この映画は、恋とか愛よりも権力を選んだ右衛門佐が、権力の頂点にありながらも壊れていく綱吉を見つめることがストーリーの眼目だと思う。阿久里や柳沢吉保や御台など、関わる人たちを魅了せずにいられない魔性の女綱吉ではあるが、母家光を早く亡くして父桂昌院ひとりに育てられたせいか、自分に自信がなく、溺愛してくれる父のいいなり。さまざまな経緯を経て、右衛門佐が何十年も秘めていた恋心を披瀝して初めて、父からの呪縛から自由になる綱吉。

　堺さん、野心あふれる右衛門佐にはちょっと肉食臭が足りなかったが、それでも奸智に長けながら綱吉には誠実な人物は十分に表現できた。菅野さん、時には冷酷で時には童女な魔性の綱吉にぴったり。尾野さんの柳沢吉保も、美しくて綱吉に忠実で権勢を欲しいままにする悪女が似合う。西田敏行は、何を演じても地が出てしまって、うんざりしてしまう俳優さんなのだが(汗)、今回はちゃんと玉栄のなれの果てに見えた。

　ラストは原作と少し違うのだが、これもまたよし。