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新選組・土方歳三を中心に取り上げるブログ。2004年大河ドラマ『新選組!』・2006正月時代劇『新選組!! 土方歳三最期の一日』……脚本家・制作演出スタッフ・俳優陣の愛がこもった作品を今でも愛し続けています。幕末関係のニュースと歴史紀行(土方さんに加えて第36代江川太郎左衛門英龍、またの名を坦庵公も好き)、たまにグルメねた。今いちばん好きな言葉は「碧血丹心」です。
昨日の昼の部に続き、仁左衛門の由良之助、勘九郎の勘平(勘九郎さんは昼の部で判官切腹、夜の部で勘平腹切り……)、七之助のおかる、松也の平右衞門、亀蔵の九太夫、隼人の定九郎、左近の力弥など素晴らしいバランスの配役。

ニザ様の由良さまはやはり素敵。遊び慣れた風でいて、亡き主君の仇討ちを内密に推進するリーダーの器量をあらわしている。機密情報を盗み見たおかるを請け出して始末する非情な決断もしつつ、足軽の平右衞門が妹おかるを殺してでも仇討ちに加わりたい一途さやおかるを不憫に思う情も持ち合わせている。そして討ち入りにおける大将たる気品と風格。

勘九郎の勘平は美男で主君のおぼえめでたき側近でありながら、おかるとの逢瀬によって主君の不祥事に居合わせず、山崎街道の狩人に身をやつすという転落ぶり。さらに、定九郎に襲われて命を落とした舅の財布五十両を手に入れたことから舅殺しの嫌疑をかけられ、姑に責められ、おかるが自ら身を売ってつくった大金の出所を以前の朋輩から疑われ、進退窮まって腹に刀を突き立てる。命運尽きたところで舅の死は勘平の銃によるものではなく夜盗の刀によるものと判明し、舅殺しは定九郎の仕業なので定九郎を殺した勘平は舅の仇を取った殊勲とされ、仇討ちの連判状に血判を押して絶命。ところどころ声が勘三郎さんそっくりで、親子二代の魂が勘平に乗り移っている印象が。運命に翻弄されて進退窮まる勘平が適役すぎる。

そして、七之助さんはおかるが似合いすぎ。落人の踊りも素敵なのだけど、五段目の自ら売られていく世話女房から七段目では由良さまにじゃらつく艶やかな遊女、そして平右衛門の妹として純朴で無邪気なキャッキャウフフな笑顔、父そして夫の死に打ちひしがれて兄のために命を投げ出す悲愴な
姿と振り幅の大きな役柄が素晴らしく似合っていた。玉さまでも見ているのだけど、玉さまだと隙がなさ過ぎて無邪気さあどけなさは……と思っていたので七さまはドンピシャ。

松也さんの平右衛門もよかった。大仰過ぎるほどの無骨さ、足軽中間の身軽さや気遣い、亡き主君に報いたい一途さ、妹おかるへの情愛と実家に起こった悲劇を伝えねばならない兄としての責任感などが、よく出ていた。引き揚げの場面では木槌を抱えて意気揚々と花道を歩く姿(その後は切腹だが武士身分ではないので俗名で葬られる)が印象的。

定九郎はやはり色悪でなくては。一度見たのはたぶん松緑、闇に光るギョロ目が印象的だった。でも初代仲蔵の形としてはすらりとした美男だからこその凄みが欲しい。その点では隼人さん文句なし。撃たれた後の口から血を吐いてもがく場面が物足りなかったけど。

左近の力弥もよかった。昨日の莟玉さんの力弥は初々しい小姓ぶりがよかったけど、左近の力弥は顔世御前からの密書を父に運ぶ姿に尋常ならぬ警戒ぶりがあった。

そして最後に菊五郎の服部逸郎。「あっぱれ」「武士とはかくありたいもの」とセリフは少ないものの一瞬で場を持っていった。前回拝見した時より声に力があった。

この豪華配役で見られることはもうないのだろうなと思う、素晴らしい二日間。チケット取ってくれた友人に大感謝。

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仮名手本忠臣蔵は国立劇場で観た気がしたけど大序から四段目の記憶がない。たぶん二部興行で後半だけを観たのだろう。

大序・三段目
人形が配役を披露する口上は11時開演の前、10時50分から。それを知っていたのでチケットを取ってくれた友人も滑り込みセーフで人形の口上を観ることができた。大物の役者の配役になると「えへん、えへん」と勿体ぶるところが面白く。

浄瑠璃人形での舞台が最初だったので、幕が開いた最初は浄瑠璃人形のように頭を下げ、ややあって人形に血がかよって始まる。松緑演じる師直は憎々しく、パワハラとセクハラの塊。小禄の桃井若狭之助に論破されたのが面白くなく、また横恋慕している塩冶判官の妻の顔世午前に手ひどく振られて憤懣やるかたない。桃井の家臣である加古川本蔵がタイミングよく付け届け(今でいう賄賂だが江戸時代はお付き合いの潤滑油だった)をしたので、上野介の憤懣は塩冶判官だけに向く。世間を知らない鮒侍と罵られた判官は思いあまって吉良に斬りつけ、加古川に留められる。

松緑の上野介が憎らしい悪役ぶりで、まずは桃井若狭之助や塩冶判官への同情を買う役回りとしてはよいのだが、高家の品位みたいなところは少し物足りないかな。松也の若狭之助は直言してしまう若さと清廉さと短慮がいい感じ。判官は若狭之助より穏やかで、ふたりの対立を和らげる役回りもできるが、師直のあまりの侮辱に、一国一城の主としての責任感もぶち切れて刃を振りかざす。勘九郎さんはこういうメリハリのある役が似合う。

今回はカットされたけど、桃井若狭之助と加古川本蔵の「ひとつ間違ったら自分たちが吉良上野介を斬りに行ってたかも知れない」ストーリーがあることを感じさせる物語の厚み。

四段目

ひたすら勘九郎さん演じる塩冶判官の切腹に息を詰める回。「通さん場」なので飲食も控えて厳粛な切腹の場に見入る。

「由良之助はまだか」
心を許した家老の由良之助に遺志を託したい判官。勘九郎は、武士の作法を守って美しく切腹することで責任を負うが、息を引き取る直前に駆けつけた由良之助に自らの腹を捌いた九寸五分を託すことで仇を討てとのメッセージを伝える。

ニザさまの声が他のお役をする時より低く、それによって家老の器の大きさを伝えているようだ。七段目の由良之助を見た時よりも低い声で、動揺したりいきりたったりする藩士たちを従える。

落人

重苦しく、切腹から城明け渡しまでカバーした四段目から踊り中心の幕に。もともとは十一段に入ってなかったけど、『裏表忠臣蔵』という作品で好評だったので一緒に組み込まれたそうだ。

「色に迷ったばっかりに」……逢い引きのため、主君である判官の切腹の場面に立ち会うことができなかった早野勘平が、恋人である腰元のおかると一緒に鎌倉を出て、戸塚で朝を迎える一幕。隼人の寛平、七之助のおかる、美男美女で眼福。鷺坂伴内は巳之助。

黒井緑朗のひとりがたり 三月大歌舞伎『仮名手本忠臣蔵』昼の部A(歌舞伎座)

中村勘九郎が”技”と“心”で描く『仮名手本忠臣蔵』塩冶判官と早野勘平
今月は昼の部『きらら浮世伝』を狙うか、夜の部『阿古屋』『文七元結』を狙うか、迷った。
歌舞伎美人 猿若祭二月大歌舞伎
 玉さま阿古屋と勘九郎七之助初役文七夫婦が、わずかに蔦重を上回った。幸い友人が良席を取ってくれて、花道近くのとちり席。花道七三の一番いい姿をほとんど真正面で見られる角度。

一、壇浦兜軍記 阿古屋
 もう玉さまの阿古屋は2015年に梅枝(現・時蔵)と児太郎に譲って見られないものと思った。3人の競演を見たのは2015年12月。
十二月大歌舞伎 夜の部 梅枝・児太郎・玉三郎の阿古屋
 もう覚えていないと言っていいのだが、玉さまが圧巻であったこと、梅枝と児太郎が初役にしては頑張っていたこと(そして玉さまの岩永が異様なまでの存在感で圧倒的だったこと)は記憶にある。
 もう二度と見られないかも知れないと思っていた玉さまの阿古屋。金銀の簪がキラキラ光って神々しく見えた。そして琴、三味線、胡弓を名妓らしく巧みに奏でながら、景清を想う気持ちを曲に表現する。生で見られるのはこれが最後かも知れないと思うと一挙手一投足が完璧に美しい。
 そして、菊之助(三月に菊五郎を襲名するから菊之助としては最後)の秩父庄司重忠(畠山重忠がモデルだそうで、生締めの端整な若い立役が似合う、文武両道に秀でて音楽にも優れた眉目秀麗な裁判官)が微動だにせず一音たりとも聴き逃さず一挙手も見逃すまいとする姿の美しさ。種之助さんが滑稽で醜悪な悪役を人形振りで演じるのは勿体ないけど、ユーモアのある仕草が(玉さまと違って)くすっと笑える感じなのでバランスがよかった。

一、絵島生島
 これは初めて。大奥総取締の絵島が投獄される絵島事件は多少知ってるので、大正年間につくられた舞踊劇の絵島生島の趣向は多少わかる。三宅島に流される生島新五郎を菊之助丈、絵島(の幻)と三宅島の海女を七之助丈が二役で踊り分け。菊之助さんは踊りも演技も上手だし、何より菊五郎さんと富士純子さんの遺伝子を受け継いだ丹精なお顔とすらりとした姿が美しく、島流しにあってやつれて狂う生島新五郎の哀れさがハマリ役。七之助さんも踊り巧者なので安心して見ていられた。

一、人情噺文七元結
 そして終幕が人情劇というのは滅多にないことだけど、誰も悪人が出てこない、これが最後に来ることで気持ちがほこほこして帰れるのがいい。
 二十年来の生落語ファンとしても三遊亭圓朝作の『文七元結』は古典落語屈指の大ネタ。天保生まれで明治維新(江戸っ子は「ご瓦解」と言うらしい)を経験した圓朝は、薩長が幅を利かせる東京に江戸の気風(「きふう」より「きっぷ」と読みたい)に響く落語を創作した。酒と博打に溺れて左官業を半ば放り出している長兵衛を諫めて家計を建て直し、夫婦仲を取り戻して欲しいと自ら吉原に身を売る娘のおかげで借金できた五十両を、通りすがりの見ず知らずの若造が身を投げんとするのを押しとどめ、自分にではなく娘が悪い病にかからぬように拝んでくれと言って投げつけるように五十両を与える長兵衛の描写は生半可な落語家にはできず、真打ちならではという代物。個人的には談春さんの佐野槌の女将の諭しに説得力があって大好き。なので、歌舞伎として見るなら中村屋で見たかった。
 十七代中村勘三郎→十八代中村勘三郎→当代中村勘九郎と三代にわたって受け継がれている中村屋の芸。さすが兄弟、息の合った長兵衛とお兼の貧乏夫婦。勘九郎さんは、酒と博打に身を持ち崩してはいるけど、憎めない長兵衛そのもの。七之助さんは貧乏神おびんちゃんに続き、コメディエンヌとしての才能をバキバキに発揮(でんぐり返ってた〜!)。勘太郎くん(声変わりしてたけど)のけなげなお久。鶴松の生真面目だけど囲碁に見境がなくなる手代文七、コミカルな部分も含めて芸達者なところを見せた。そして時蔵改め萬寿さんの貫禄ある角海老女将のお駒の、情けありつつも忘八の女房らしい采配を含めた長兵衛への説教。最後は芝翫さんや松緑さんも加わっての大団円で、ああよかったね〜と語り合いながら帰る家路の楽しさよ。
十二月大歌舞伎第三部を中村屋友の会に入っている友人の手配で3人で観た。最前列で観る歌舞伎は初めて。

舞鶴雪月花

勘九郎さんの三役演じ分け(桜の精、父親松虫、雪達磨)た踊りと長三郎さんの子松虫の可愛らしさも、いい舞台だった。

天守物語

「舞台装置の粗とか役者さんの化粧や着付けの粗とか見えちゃったりしたら冷めちゃうんじゃないか」とか「天守物語の舞台は俯瞰で見た方が映えるんじゃないか」とか不安もあったが……さすがは歌舞伎座、完璧に妖魔の住まう異世界をつくりものっぽくせず、間近に見ても粗がひとつもない。それどころか、遮るものが何ひとつなく、舞台の世界に没入できた。溜息が出るほど美しい泉鏡花ワールドに身ひとつで飛び込んだような体験だった。

富田勲のシンセサイザーはちょっと音が大きすぎるように思ったけど、暗闇に浮かぶ満月、三日月の後に幕が開けて、鶴松さんが間近に糸繰りで糸を垂らしている。鶴松さん芝のぶさんがお女中たちの中でもとりわけ若く美しいが他の方々も奥女中らしい品があり、女童たちも愛らしく、かつ生身でない女の洗練された所作が眼を引いた。

あぁそして玉三郎さんの富姫の美しさときたら。年齢を感じさせない若々しさ、人ならぬものの妖しさ。所作や言葉の美しさに見取れてしまう。赤姫の拵えで登場した七之助さん亀姫と並ぶと、この世のものとも思われぬ美女姉妹の親密さが眩しい。

やがて登場する姫川図書之助。團子ちゃん、清々しくて凛々しくてぴったり。富姫に恋し、人間界に裏切られて富姫と共に永遠に生きることを選ぶ図書之助を美しく清々しく演じきってくれた。玉三郎さんがぜひにと指名した相手役を堂々とこの若さで演じきる團子さん。拍手拍手。

『髪結新三』を勘九郎が初役で演ると聞いて、歌舞伎友に声かけ、友の伝手経由で花道横のいい席で観ることができた。しかも「とちり」列で花道すぐ横、芝居空間に呑み込まれるような体験だった。

『梅雨小袖昔八丈 髪結新三』
2015年10月に見ている。新三は尾上松緑、忠七は時蔵、勝奴は亀寿、源七は團蔵、家主長兵衛が左團次、お熊は梅枝、加賀屋藤兵衛がサービスで仁左衛門、魚売りもサービスで菊五郎(芸術祭参加作品で昼の部は一條大蔵と文七元結が並んでいる)の舞台だった。さらっとしか日記に残していなので、演目は好きだけど配役はあまり記憶に残らなかったのだと思う。
映像で録画しておいた十七代勘三郎の勘九郎改め勘三郎襲名公演が私の予習作品。何しろ、新三は勘三郎、忠七と長兵衛が三津五郎の二役、勝奴は染五郎(今の幸四郎)、源七は富十郎、お熊は菊之助と勘三郎襲名公演なだけに豪華だ。鶴松が丁稚で「おいら役者になるんだ」と言っていて、今回はお熊で出て来るし、勝奴だった染五郎は実年齢よりちょっと老け役の源七で勘九郎を引き立てる側に回っている。
今回の配役は勘九郎が新三、七之助が忠七、勝奴に巳之助(十代目三津五郎の息子)、源七に幸四郎、長兵衛に彌十郎、お熊に鶴松、白子屋後家お常に扇雀、丁稚に長三郎、加賀屋藤兵衛に中車、車力善八に亀蔵と粒よりだった。
で、勘九郎の初役である新三。声音や台詞運びや仕草に勘三郎(十七代は見ていないので十八代つまりお父さん)を彷彿とさせる場面があるけど、勘三郎の新三よりもワルな新三だ。それは目を黒く縁取って目尻を吊り上げている化粧の強さで強調されている。そして、お熊を解放する場面で、懐手で柱にもたれかかり、お熊を見やる目付きのエロさエッチさによく表現されている。前科者で腕に二本の入れ墨があり、深川の裏長屋でくすぶっている廻り髪結いにしては、有名料亭の手ぬぐいを貼り合わせた粋な浴衣を引っかけたりしているところに、後ろ暗い収入源が他にあることが示唆されていたり(そして浴衣のデザインは多分、勘三郎さんのものと瓜二つ)、初鰹を一本買う(今の日本円で7万円くらいだそうだ。祝儀込みで渡したのは10万円くらいなので、高級ワインボトルをぽんと注文するぐらいの感覚なのかな)とか、髪結い風情にしては金回りがよい。忠七を騙してお熊を拐かし、白子屋から百両を取ろうとするワル。ついでに一晩、お熊を手込めにしていたから、ワルの色気むんむん。親分で知られた源七を追い返す勢いのある鼻息の荒さ、しかし家主の長兵衛にはやり込められて、三十両をせしめるつもりが半分の十五両しか受け取れず、滞納家賃に二両取られてしまう。勝奴に二両分け前をやって、手元に残ったのは十一両。
ぽんぽんと弾むやりとりは彌十郎さんと勘九郎さんの息がよく合っていたから(「うるせえのはうちの親父だよ」「わしはそれが好きだった」とか、金を並べて確認して渡す場面でわざと一枚飛ばして勘定するとことか)河竹黙阿弥の七五調に加えて江戸の下町の町民らしいやりとりがよかった。七之助の忠七もなよなよしてるだけでなく芯の強さがあって、身よりがなくても白子屋に手代として勤められる堅実な店員なのを伺わせるところがあった。巳之吉の勝奴は抜け目なさがニンにあっててよかった。
あえて言うなら幸四郎の源七がなぁ。。もう少し鬘で白髪足すとかできると思うけど、声質は変えられないからねぇ。。特に閻魔堂で新三と斬り合う場面では顔が正面を向いてなかったので、声が客席に通らなかった。ちょっとねぇ。
でも勘九郎さんが今後持ち役として再演する時に「初演もよかった」と自慢できる出来。

『紅翫』
中村芝翫の家に伝わる舞踊劇。今回は当代芝翫さんの長男、橋之助さんが紅翫。20代半ば過ぎかな、踊り分けも含めてキレイに踊っていたけど、エンターテインメントとして客席を喜ばせるものとしての完成度はなかった。巳之吉、染五郎、児太郎(太った?顔が丸々として老けた印象が)など若手に加え、勘太郎くんの越後獅子(13才と役と実年齢が合ってて可愛かったし、踊りも隙がなかった)。

歌舞伎への誘い 梅雨小袖昔八丈
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勘九郎さんで見たい演目。
『桜姫東文章』ぜひ釣鐘権助と清玄の二役を勘九郎さんで、桜姫は七之助さんで。
『摂州合邦辻』悪役の演じ分けを勘九郎さんで。
『女殺油地獄』いまだったら扇雀さんの女将で、勘九郎さん与兵衛で。その後七之助さん与兵衛でも見たい。
『夏祭浪花鑑』勘九郎さんの団七、七之助さんのお辰を見たい。勘三郎さん所縁の平成中村座で観たい。
……と挙げてみると、勘九郎さんには勘三郎さん+仁左衛門さんの当たり役をこなして欲しいという願望になる。勘三郎さんよりくっきりした悪役で行けるから。
中村屋ファンの友人から1階席のチケットを譲ってもらって観劇。歌舞伎町に行くのはすごく気後れしたが、東宝タワーから東急歌舞伎町タワーに伝い歩く感じで何とか迷わずに到着。ちょっと早めに着いたので西武新宿駅下のカフェで少し時間を潰した。

15時15分に開場し16時に開演。

一、正札附根本草摺

曽我五郎と小林朝比奈の妹舞鶴との舞踊。虎之介と鶴松、20代のコンビ。これからどんどん伸びてゆくんだろうな。

一、流星

勘太郎の牽牛、長三郎の織姫、愛らしくて初々しいカップル。勘太郎くんは13才で随分背丈も伸びた。勘九郎の流星が、雷夫婦の喧嘩を注進。雷の夫、雷の女房、雷の子供、雷のばあさんと四役をユーモラスに踊り分け。重力を感じさせない軽やかさ、見惚れるなぁ。

一、福叶神恋噺

落語の『貧乏神』を題材にした新作。七之助さんのコメディエンヌぶりを堪能。勘九郎さんの役は勘三郎さんの『法界坊』を連想させる汚さとよぼよぼさが目立つ貧乏神だったけど、ちょっとしか出て来なかったのは残念(七之助や虎之介を引き立てる立ち回りなんだろうけど)。虎之介はちょっと匙加減を誤れば白けてしまう、ぐうたらだけど憎めない、可愛らしさのある役を好演。
友人の株主優待で最後列ながら1階席。テレビ収録か、カメラ機材が持ち込まれ、撮影スタッフが録画していた。

一、鴛鴦襖恋睦(おしのふすまこいのむつごと)
おしどり

四世市川左團次一年祭追善狂言
二、歌舞伎十八番の内 毛抜(けぬき)

河竹黙阿弥 作
三、極付幡随長兵衛(きわめつきばんずいちょうべえ)
「公平法問諍」

左團次さんの一年祭で男女蔵さんが頑張った「毛抜」はともかくも。

え、水野十郎左衛門宅の風呂場での場面ってあんな感じだったっけ? 過去、私は橋之助さん改め芝翫さんで2回見ているのだけど、こんな幕切れだったかな……えええっ、團菊祭なのに、テレビ収録入ってるのに、という疑問符が脳内を駆け回って終わった。
十八世中村勘三郎十三回忌追善猿若祭二月大歌舞伎

歌舞伎好きな近所の同窓3人で観劇。せっかくの中村勘三郎さん十三回忌追善で、籠釣瓶花街酔醒を勘九郎さん七之助さんが初役で次郎左右衛門と八ツ橋、しかも栄之丞を仁左衛門さんで。ということで、奮発して1階席、チケット松竹のノーマル会員だけど2日かけて3人連席、しかも花道に近いところ。

野崎村の鶴松さんお光が歌舞伎座で大役(勘三郎さんに第三の息子と言われて部屋子以上の扱いだったとは言え、一般家庭の出身)。初々しさも覚悟を決めてからの振る舞いも最後の泣きもよかった。児太郎さんお染、彌十郎さん久作、東蔵さんお常もよかったので、七之助さん久松がふたりの女に惚れられる美青年ぶりが光った。

『釣女』も滑稽さが楽しかった。獅童さん、芝翫さんが達者なので萬太郎さん梅枝さんのカップルが引き立った。醜女に笑わされるというのは同性としてどうなんかなという気持ちがないでもなかったけど、芝翫さんの振り切りっぷりで、この女性は美醜に関係なく自分の欲望に素直なんだーと思えて清々しいほどだった。

でも、何と言っても『籠釣瓶』。勘九郎さんはあばたの化粧少なめで、誠実で実直ながら地方で財を築いた遣り手の商人で、だからこそ八ツ橋のひどい愛想づかしに天国から地獄を味わって、終幕は目が据わって一刀のもとに切り捨てる場面とのコントラストが効いていた。そう、勘九郎はこういう役が映えるのよ。七之助は美しく、でも栄之丞に脅迫されると乗客の次郎左右衛門を無情に振るという非道を自覚しながら哀しくて、最後は斬られてあっけなくくずおれるところが美しく(でも歌右衛門や玉三郎ほどに最期の海老反りは長くなく)。歌舞伎をライブで見始めてからの中で、一番の名演だった。シネマ歌舞伎化を希望(翌日か翌々日に収録のカメラが入ったようなので、期待してる)。
久しぶりの更新。

昨日、志の輔らくごin下北沢 The Last 牡丹灯籠に行ってきました。2010年に志の輔さんをライブで聴きに行って落語にはまった私、本多劇場の牡丹灯籠も通算で10回目。去年まで3年間はコロナで落語通いを中断していましたが、本多劇場の牡丹灯籠も今年が最後と聞き、チケット激戦をくぐり抜け、何とか一枚入手しました。

台風7号が来る前でよかった……(安堵)。公演は20日までありますが、私にとっては最後の牡丹灯籠かも知れないので、集中して聴き入りました。公演3日目ですが、3回の中で最長とか(苦笑)。

お露新三郎のくだりの幽霊噺も怖いのですが、改めて久しぶりに聴くと、生身の人間の欲による悪事の方が怖いかも。お国と伴蔵、二大悪人の凄さといったら。

記念にいただいた団扇の裏には登場人物相関図のサービス付き。ただし、一箇所間違いがあると志の輔さんから聞いて、どこかなーと探すまでもなく、最初に目が行ってしまいました(笑)。

久々に土方さん写真ネタ。

旧家で発見の明治期の写真は土方歳三 名前取り違えた貴重なブロマイドと判明 津の郷土史家浅生さん調査 三重
【津】三重県津市芸濃町の旧家で昨年5月に見つかった明治時代の写真約200枚の中に、新選組の土方歳三を旧土佐藩の土方久元と取り違え久元の名入りで焼き付けた写真が含まれていた。郷土史家の浅生悦生さん(77)=同市安濃町=の調査で、存在が指摘されながら実物が確認されていなかった貴重な一枚であることが分かった。

明治時代の写真は芸濃町出身で製茶輸出業を営んだ駒田作五郎氏(1849―1895)が収集したもので、駒田家旧宅の解体にともない浅生さんが譲り受けた。約160枚が人物、残りが景勝地などだった。

浅生さんによると明治初期の写真は名刺代わりに交換されたほか、著名人の土産用ブロマイドとして流通した。駒田家に残されていたのは県議会議員らと直接交換したと思われるもののほか、渋沢栄一や福沢諭吉など幕末から明治に活躍した人物の写真もあった。

貴重な一枚は新選組副長で知られる土方歳三が椅子に座る全身像を丸抜きにした写真。縦10センチ、横6センチの手札サイズで下部に「土方久元君」と、全く別人の政治家の名が焼き付けられている。

浅生さんが歳三の実姉の子孫が館長を務める佐藤彦五郎新選組資料館(東京都日野市)に問い合わせたところ、写真の人物は歳三に間違いなく、現存する歳三の肖像写真を基に土産用に出回ったブロマイドと判明した。

また小説家・子母澤寛の「新選組遺聞」で、歳三の肖像写真を土佐の土方久元と誤認した写真の存在が指摘されながら実物が確認されていなかった貴重な一枚だとして、先月同館で展示された。

浅生さんは「現存唯一と聞き驚いている。当時写真は貴重で名前が知られていても顔は分かっていなかった。写真館が土方歳三を同姓の久元と信じていたと考えられる」と推察し「他にも新たな発見があるかもしれない。今後も調査していく」と話している。

 いわゆる「お土産写真」ですね。土佐の土方久元さんと誤認されて出回っていたという、お約束のエピソードも記事に解説されています。
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