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新選組・土方歳三を中心に取り上げるブログ。2004年大河ドラマ『新選組!』・2006正月時代劇『新選組!! 土方歳三最期の一日』……脚本家・制作演出スタッフ・俳優陣の愛がこもった作品を今でも愛し続けています。幕末関係のニュースと歴史紀行(土方さんに加えて第36代江川太郎左衛門英龍、またの名を坦庵公も好き)、たまにグルメねた。今いちばん好きな言葉は「碧血丹心」です。
 「紅葉坂の佐平次」の次の談春、何たって大ネタの「九州吹き戻し」。開幕早々に出囃子の「鞍馬」、今日もまた前座なしで長講二席ですね。

 「まさか予備知識なしで来たとか、今日が初談春なんてお客様はいないですよね。疲れたらいつでも帰れるように、客席を暗くしておきましたから」と軽口。

 談春さんにしてはちょっと長めのマクラ。

 「九州吹き戻し」はネタおろしが家元が楽屋にいる高座だったとか(CDに収録されているアレでしょうか)。家元が「あいつ何やってんの」前座「九州吹き戻しです」家元「えええっ」みたいな舞台裏だったとか。でも今日は言わなかったけど、家元のお墨付きがCDに収録されているんですよね。

 3年に一回ぐらいかけているネタだけど、かける場所を選ぶ。地方で「九州吹き戻し」かけて慣れないお客さんをげっそりさせるわけにもいかない。で、にぎわい座にしたけど、てっきり来月だと思っていた。あわてて昨日一日でさらったので、間違えるかも知れない、と。いやいや、こういう追い詰められた時の談春師こそ、勝負強さが出ると思うんですよ。むしろ期待しちゃう(笑)。

 さらに小ネタ。談春さんが談志家元のピンチヒッターで頼まれて、鶴瓶さんと市馬さんと三人会に出た。どういう順番にするか、じゃんけんで決めて、自分が前座さんの次に出て「お札はがし」をかけた。楽屋の鶴瓶さん、「じゃんけんで勝っておいて、トリがかけるような噺をやる奴があるかいな」みたいな。さらに、談春さんの前座たちに、談春さんの何の噺を聞いて弟子入りする気になったか聴いてみた。こはるちゃん「九州吹き戻しです」(すごっ)。春樹くん「包丁(とか何とか、難しいネタだった)」春太くん「慶安太平記です」……と、談春一門は大ネタばかり。市馬さんのとこの市楽さん「……牛ほめです」(笑)。さらに、鶴瓶師匠の前座さん「……やさしさ」って、落語ネタかいな? と、長めな助走。「始めてしまうと、引き返せなくなるから」みたいなことを何度か言ってましたね、今日の談春師匠は。




 で、19時5分ぐらいから始まった「九州吹き戻し」が中入りに入ったのが20時10分頃(計算上は65分)。15分の休憩を挟んで20時25分から始めたのが、何と「宿屋の仇討ち」。はねたのが21時15分で、談春さん「遅くなってごめんなさい」と観客に頭を下げた……って、二本目も50分の長講じゃないですか、いったいどんだけタフなんですか談春師匠はっ(汗)。

落語あらすじ千字寄席 九州吹き戻し


 「九州吹き戻し」、CDで何回か聴いてますが、素人ながら「こなれてる〜」と思いました。肥後で江戸屋に拾われて八面六臂の活躍を始める「北里〈きたり〉喜之助」を「肥後のいのどん」と表現し、「へ〜い!」と居残り佐平次のサービスをしたり。「紅葉坂の佐平次」がいまだに記憶に残る自分には、とっても嬉しいサービスでした。

 途中で脱線気味に『赤めだか』のドラマ化や映画化を全部断ったというエピソードを語ったり。脚本家が本来やるべきプロットの構想をしない原作付きのドラマ化は楽し過ぎで受け容れられないという談春さんらしい断り方とか。好きな役者を出していいと言われても、家元に役所広司とか中井貴一とかは違うと思う、中村屋とか志の輔兄さんとか思ったけど急がし過ぎて無理だと思ったって……志の輔さんが談志家元を演じるのを、ちょっと見たかったかも(志の輔さんが過労で死ぬから無理・苦笑)。

 それにしても、すごい長編。

 江戸のちょっとした商家の若旦那に生まれた喜之助が遊び上手で、誘われているうちに両親の残した財産を使い尽くし、借金を踏み倒して江戸を出奔し、わずかに残った金を元手に日本全国を旅して回り、金が尽きたのが肥後の熊本。そこで懐かしい「江戸」屋の提灯が目に入って、無銭飲食覚悟で飛び込み、翌朝挨拶に来た主人が江戸時代に顔見知りだったとわかる。ここまでで3分の1ぐらい。

 そこからは心を入れ替えて働き始めた喜之助が、調理はもちろん、幇間さながらに座を持ち上げ、三味線を弾いたり歌ったり、掛け取りもすれば、昼間は子供たちに手習いや三味線を教えたりと、一生懸命働いて「肥後の文化人」に仲間入りしてしまう。3年で給金以外に100両の心付けがたまり、江戸屋の主人がもう100両がんばってためたら肥後に店を持て、暖簾分けしてやるから親戚づきあいしよう、と破格の待遇。ところが、100両の金を得て、江戸にも戻れる、義理の悪い借金も返せるとわかった途端に江戸への里心が募り、江戸に帰りたくてたまらない。親方の背中を流す時もはばかりに行く時も「江戸」を思い出させる有様で、江戸屋の主人もあきらめ、奉加帳を回して20両を集めてくれた上に、路銀の足しにと5両を差し出してくれた。これらの人々の気持ちをありがたく思うものの、江戸が恋しい喜之助は出発前日から気もそぞろで、旅支度も調えて、思いあまって夜中に江戸屋を旅立つ始末。ここまでで3分の2。

 肥後の城下を通り過ぎ、灯りを見つけて立ち寄ったのが江戸行きの大きな荷船のたまり場で、水夫〈かこ〉たちと意気投合し、彼らが船頭とかけあってくれたおかげで船にこっそり乗り込むことができた。ところが、その船が大時化に遭い、すさまじい暴風雨……砂浜に打ち上げられ、助かったと思ったら目の前に見えるのは桜島。肥後から江戸に向かっていた喜之助、江戸に急ぐ余りに大時化に吹き戻されて鹿児島へ。そこから肥後に戻って江戸屋に駆け込んだ始末。

 それだけ命がけの大冒険をしたんだ、大した話だと言ってくれる江戸屋の主人に喜之助が返す一言がオチなのだけど、ほんとスペクタクルな話ですよね。特に、噺家が消耗する残り3分の1に、台風の場面が来るわけで。

 談春さんが「肥後の佐平次」と表現するように、喜之助は江戸屋の主人やお客様や水夫や船頭に愛されるところがありますね。ただ、決定的に違うのは、佐平次は「居残り」という犯罪を成立させるために行動している悪人〈それも魅力的な悪人〉であるのに対して、喜之助は江戸屋で無銭飲食こそしようとしますが、悪人ではないんですよね。もともと江戸のちょっした商家の若旦那だったという人柄の良さがあるし、仕事のない時間に近所の子供たちを集めて手習いや三味線を教えるのも金欲しさという意地汚さというより手持ち無沙汰を紛らわすためという雰囲気が感じられるのです。

 大スペクタクルなお噺でした。お疲れ様です、師匠。

☆★☆★

 って、中入り後は「宿屋の仇討ち」なんですかっ(大汗)。

 これがまた、面白い。

 マクラにちょこっと「志の輔兄さんみたいな噺をする」とか何とか言って、30秒ぐらい「でなんでございますよ」と志の輔口調だったかな。

 でも、「宿屋の仇討ち」、志の輔さんバージョンだったら、万事世話九郎と築地の三人組の間で振り回される宿屋の伊八が「あーあーあーあー(なんでこうなるの?)」というところが眼目だと思うのですよ。

 談春さん版は、確かに伊八は振り回されているけど、江戸の魚河岸三人組のはじけっぷりとか、万事世話九郎の迫力とか、伊八以外のところが面白い。清六が尻文字で「清ちゃんのせの字はどう書くの〜♪」とかやってたり、相撲の取り組みの描写とか、源ちゃんの色事師噺に入れ込むリアリティがすごいんだけど実は両国の居酒屋で酒飲んでた時に背中で聞いた客の話の受け売りだったとか。やっぱ、ちょいワルを描かせたら談春師はぴか一ですよ(^^)。

 万事世話九郎の武士らしい迫力がぎりぎりまで続いて、最後の最後、ぎりぎりのところでとぼけるところも素晴らしい。

 ごちそうさまでした。来月の「二階ぞめき」、チケット前売り取れません〜(>_<)。何とかしたいのですが。




 

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