第508回落語研究会

　今日は久しぶりに開演から全部聴けた。高座返しは市馬師匠の前座、市也さん。



1. 「たらちね」　古今亭志ん坊改め　古今亭志ん吉

　先月まで前座「志ん坊」だったという志ん吉さん。古今亭らしい、明るくて軽めな芸風です。

　つい「自らことの姓名は、父は京都の産にして姓は安藤、名は慶三」のところを、口の中で復唱してしまう自分(汗)。まだ覚えきれてませんが。

2. 「だくだく」　桃月庵白酒

　右斜め後ろのお客さんが、ついこの間鈴本で白酒師匠が今日のために口慣らしを兼ねて「だくだく」をかけていたとかいう話を耳に挟む。いいなぁ、ご通過の方々は。

　「だくだく」は、この馬鹿馬鹿しさが落語らしいし、貧乏長屋の住人も泥棒も一緒になって「つもり」に励むところが江戸の見栄と遊び心あふれた噺だと思う。

　今日の白酒「だくだく」はラジオの天気予報が台風接近情報を伝えていたりして、ちょこちょこと遊び心があったかな。でも、今いち笑えなかったのはなぜだろう……最初「ミケ」だった猫が「タマ」になったからかしら(汗)。

　ハッつぁんが絵に描かせた金庫に入った1億3千万円(札束が描ききれないので、1億3千万円相当とか解説があるらしい)が、泥棒が盗んだつもりの金額になると3億6千万円にグレードアップ。羊羹7きれが、藤村の羊羹10さおにグレードアップ。猫のタマがペルシャ猫にグレードアップ……辺りが面白かった。でも、観客層と白酒師匠との感覚のギャップなのか、爆笑にはならなかったなぁ。

3. 「付き馬」　入船亭扇遊

　汗っかきばかり続いて出てきてすみません、というご挨拶とともに扇遊師匠、中入り前の一席は「付き馬」。

　うーん、何箇所か言い直しがあったことが気になるってことは、自分が噺の中に入り込んでなかったってことだよなぁ……(汗)。

(中入り)

4. 「七段目」　柳亭市馬

　いつもながら、師匠の笑顔を見ると、心が洗われるような心持ちになります。

　マクラは、昔、某テレビ局(TBSではない)であった演芸番組で落語家たちが総出演で芝居をやったというエピソード。仮名手本忠臣蔵のおかる勘平を柳橋師匠・志ん生師匠でやったとか、七段目は由良之助が圓生師匠で相手役のおかるは文楽師匠がやるはずだったが都合が悪くなって小さん師匠がやったとか……小さん師匠がおかる役をやっている姿を想像するだけで笑ってしまうじゃないですか^_^;。

　今日の市馬師匠は全編はじけてました。この他にもマクラで落語の真打ち襲名披露の模様を語る場面で彦六師匠のものまねをするとか……そして「七段目」自体がお芝居の台詞や仕草からそのまんまパクリだらけ、歌舞伎など元ネタをよくわかってない自分さえ爆笑しっ放しです。

5. 「かんしゃく」　柳家小三治

　小三治師匠がトリの落語研究会は2度目でしょうか。とっても長いマクラになることを覚悟しつつも、それを楽しみにしていたのですが……今年の夏はとっても長かった、それを堪え忍んだ自分と皆さんを褒めてあげたいとか……昔の女性は「幼にして親に従い　嫁しては夫に従い　老いては子に従い」と言われていたけど皆さんはおめでとうございます、とか、お茶をすすりながらいくつかマ・ク・ラを振りましたが、それほどながくはありませんでした。

　そうそう、古典落語と新作落語の違いという小ネタは面白かったです。今は古典落語といわれるネタも、そもそもは新作落語で、最初にネタにした人から引き継いだところから古典になるという説をいったん示しておいて……でも、原作者が生きて話している限りは新作じゃないかと自分でちゃちゃ入れて「すみません、忘れてください」……あらら〜(汗)。ついつい、三遊亭白鳥師匠が古典を改作した「メルヘンもう半分(ムーミン版)」、さらに改作した「メルヘンもう半分(どらえもん版)」とした白酒師匠の版は、新作という定義に入るんでしょうか(汗)。自分は、面白ければ古典でも新作でもいいですが。

　『この落語家を聴け』広瀬和生さんのエッセイで小三治師匠の「かんしゃく」を取り上げ、癇性の大金持ちの主が「このアイスクリーム、好きだ」とひとりごちながら不器用そうに笑う、の場面をとてもうまく表現していた。今日は、それをライブで見られたので、満足。