新選組・土方歳三を中心に取り上げるブログ。2004年大河ドラマ『新選組!』・2006正月時代劇『新選組!! 土方歳三最期の一日』……脚本家・制作演出スタッフ・俳優陣の愛がこもった作品を今でも愛し続けています。幕末関係のニュースと歴史紀行(土方さんに加えて第36代江川太郎左衛門英龍、またの名を坦庵公も好き)、たまにグルメねた。今いちばん好きな言葉は「碧血丹心」です。
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天皇皇后両陛下と同じ演劇空間を共有してしまった(汗)。
両陛下、歌舞伎を鑑賞
にざさま、色悪が似合う。敵討ちを返り討ちにしてトドメを刺すとか、おびき寄せて殺すとか、極悪非道な二枚目。悪の華、それもふたり違うタイプの悪。脇を固める役者さんたちもよく、花道が近くて低い国立劇場ならではの楽しさも花道近くで楽しんだ。
(評・舞台)国立劇場「霊験亀山鉾」 仁左衛門、冷酷な「悪」も見せ場
長谷部浩【劇評86】仁左衛門の実悪。水右衛門に色気。
両陛下、歌舞伎を鑑賞
天皇、皇后両陛下は25日午後、東京都千代田区の国立劇場を訪れ、文化庁芸術祭主催公演の歌舞伎「霊験亀山鉾」を鑑賞された。席に向かわれる両陛下
実際にあった敵討ちを題材にした作品で、両陛下は2幕目の第4場から大詰めまでを鑑賞。片岡仁左衛門さんらの熱のこもった演技に、何度も拍手を送っていた。
にざさま、色悪が似合う。敵討ちを返り討ちにしてトドメを刺すとか、おびき寄せて殺すとか、極悪非道な二枚目。悪の華、それもふたり違うタイプの悪。脇を固める役者さんたちもよく、花道が近くて低い国立劇場ならではの楽しさも花道近くで楽しんだ。
(評・舞台)国立劇場「霊験亀山鉾」 仁左衛門、冷酷な「悪」も見せ場
四代目鶴屋南北作「霊験亀山鉾(れいげんかめやまほこ)」は国立劇場で3回目。15年前の上演を踏襲して、片岡仁左衛門が時代と世話の悪を演じ分けて、当たり役とした。
南北作品で江戸時代から上演が続くものは実は少なく、近代に再発見、復活された作品の方が多い。ここ半世紀に限っても、女性主人公の可能性の拡張や、スペクタクルによる視野の拡大など、いくつかの視角があるが、男の強い欲望と悪を体現した主人公を甦(よみがえ)らせたという点では、仁左衛門主演による「絵本合法衢(えほんがっぽうがつじ)」と「霊験亀山鉾」の2作が、平成歌舞伎の成果だろう。
本作は俗に「亀山の仇討(あだうち)」と呼ばれる作品世界だが、藤田水右衛門を敵と狙う石井一族が、次から次へと返り討ちに遭う。大胆にして細心、強悪非道の水右衛門を、仁左衛門が水際立った役者ぶりと重厚なせりふ術で造形する。八郎兵衛と早替(がわ)りする2幕目が眼目で、中でも「焼場(やきば)」で燃える棺桶(かんおけ)からの登場が最高の見せ場。冷酷無残な殺し場が続いても、それを悲惨と思わせず、お芝居の楽しみ、慰みに転換してみせる稀有(けう)な芸質である。
江戸の錦絵を見れば、水右衛門は白塗りではなく砥(と)の粉の入ったリアルさが特長だったかもしれない。早替りの都合と芸風から、水右衛門を蒼白(そうはく)で色気ある敵役に、八郎兵衛も白塗りで闊達(かったつ)な愛嬌(あいきょう)ある役に変えたのは、仁左衛門ならではの成功。原作からは少し離れるが、現実的な処理というべきか。
仁左衛門が圧倒的ではあるが、周囲も堅実。中村錦之助の石井源之丞は、ベテランらしい安定感を増した。中村又五郎の石井兵介と下部袖介も手堅く、上村吉弥も甲斐甲斐(かいがい)しい。中村雀右衛門の芸者おつまは、焼場での体当たりの立ち回りがよかった。
(児玉竜一・早稲田大学教授)
27日まで。
長谷部浩【劇評86】仁左衛門の実悪。水右衛門に色気。
歌舞伎劇評 平成二十九年十月 国立劇場。
天皇の退位の時期が決まり、平成の世も遠からず終わることになった。平成歌舞伎の光芒を伝える舞台を目に焼き付けておきたい。そんな気持ちで国立劇場の『通し狂言
霊験亀山鉾 ー亀山の仇討ー』を観た。
仁左衛門が座頭として藤田水右衛門と古手屋八郎兵衛を勤める。脇を固めるのは、播磨屋吉右衛門と同座することの多い雀右衛門、又五郎、歌六。そこに彌十郎、錦之助、孝太郎も加わるのだから、座組に不足はない。実力のある俳優で、四世鶴屋南北が仕組んだ台本を味わう。至福の体験である。
序幕第二場、石和河原仇討の場から、役者の魅力があふれでる。仁左衛門が演じると実悪の水右衛門に色悪の魅力が加わる。兵介の又五郎のきりりとした様子、官兵衛の彌十郎の捌き役の風格さえ漂わせる大きさ、三人が絵面に決まっただけで、歌舞伎は役者ぶりを観る演劇だと思い知らされる。役柄と役者の複雑な関係に、観客の想像力がからむとき、喜びが生まれる。
時代の幕ばかりではない。二幕目、世話となってからも、こうした役柄、役者、観客のせめぎあいが舞台を作る。仁左衛門が水右衛門から八郎兵衛に替わりるのが最大の見どころだ。加えて弥兵衛実ハ源之丞の錦之助をあいだに、芸者おつまの雀右衛門と丹波屋おりきの吉弥がやりとりする場面に陶然となる。ひとりのいい男に、ふたりの女。
また、この場では団扇の絵を手掛かりに、おつまが八郎兵衛と瓜二つの水右衛門と思い込む取り違えもまた見物になる。『鰻谷』を踏まえている。
近代の劇構造からすれば不自然な取り違えも、初演の五代目幸四郎の存在が前提にあり、今、大立者となって風格を漂わせる仁左衛門がいれば、十分に成り立つ。歌舞伎は役者を観るものとすれば、なんの不自然もない。
駿州中島村の場では、狼が出没してふたつの棺桶が取り違えられ、次の焼場の場で火に掛けられた棺桶のタガがはずれて、水右衛門が不敵に登場する趣向へと繋がっていく。
芝居になっているのは、三幕目機屋の場。ここでは秀太郎の貞林尼がみずから自害して肝の臓の生血を孫に与える件がみもの。息をつめた芝居を秀太郎が全体を締めつつ運んでいく。いささか身体が不自由に見えるもののさすがの芸力を見せつける場となった。秀太郎が品格を失わず、孝太郎が派手なところをのぞかせるのも対照の妙。
大詰は祭礼の雰囲気を、陰惨な敵討に取り入れるのが趣向。ここでも仁左衛門が実悪の大きさを見せつける。水右衛門をおびきよせる頼母一役を歌六が勤め舞台を引き締める。
母子に助太刀もあって水右衛門が敵討されると、直って「まずはこれぎり」と幕切れ。古典歌舞伎の醍醐味をもたつくことなく趣向で見せた好舞台。二十七日が千穐楽だが必見であろう。
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