新選組・土方歳三を中心に取り上げるブログ。2004年大河ドラマ『新選組!』・2006正月時代劇『新選組!! 土方歳三最期の一日』……脚本家・制作演出スタッフ・俳優陣の愛がこもった作品を今でも愛し続けています。幕末関係のニュースと歴史紀行(土方さんに加えて第36代江川太郎左衛門英龍、またの名を坦庵公も好き)、たまにグルメねた。今いちばん好きな言葉は「碧血丹心」です。
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10月21日の記事で紹介した土方さん本、読み終わりました!
白牡丹、史実の土方さんが一番好きという方にこの本をお薦めします(小説やアニメ作品の土方さんキャラが一番という方もいらっしゃるんで、わざわざ断り書きをしています^_^;……もちろん、大河ドラマ『新選組!』をはじめ、いくつかの創作作品の土方さんも大好きな自分ですが)。
最近発見された史料の内容も反映された史伝のため、新たな視点がいくつもあります。作者が前書きで述べていますので、そのまま引用します。
これ以外にとても興味深かったのは、京都時代の新選組内における洋式軍隊推進派と抵抗派(バックに攘夷思想だったり、甲州流軍学だったり)の対立構造という視点。もうひとつは、分離した御陵衛士と新選組の関係を、従来の見方である「勤王派と佐幕派の思想の違いによる分派」ではなく「倒幕勢力を探索するための表面的な分派、結果としての二重スパイ化」という描き方をしていることです。すごく刺激的なのですが、なぜ伊東甲子太郎が暗殺されなければならなかったのかという点での説明についてはもう少し掘り下げる必要があるように思います。
特に江戸脱走後の土方さんの立場について、今まで読んだ解説本ではどうもしっくりくる説明が得られなかったのですが、白牡丹はこの本の説明が一番しっくりしました。特に会津が新政府軍の包囲網で苦況に陥っていた時に土方さんが仙台に行くことを考えていたのはなぜなのか、この本で目からウロコが落ちました。旧幕府陸軍脱走派と会津藩が必ずしも一体ではなかったことも、腑に落ちました。そして、世話になった会津藩の苦境を見過ごしておけないという藤田五郎(斎藤一)たちと、米沢に援軍を依頼に行って果たせずに結果として仙台に集まる土方さんや会津を引き上げてきた大鳥さんたちの視点の違いもさらに理解できました。
江戸脱出以降の土方さんを象徴する言葉が「幕府侍」。宇都宮の戦いでともに幕府陸軍を率いた秋月登之助のたっての望みで土方さんが譲った刀と伝えられる大和守秀国に「幕府侍土方義豊戦刀」と刻まれているそうです(今年の土方歳三資料館の特別展示に出品されていました)。土方さん自身が彫らせたかどうかはわかりませんが、「幕府侍」というネーミングが、箱館で戦死するまでの土方さんのアイデンティティを見事に表現しているんですね(著者の相川さんもそこにこだわっていて、後書きでは司馬遼太郎『燃えよ剣』ファンを刺激するような記述も……あたたっ、でも気持ちはわかります^_^;)。
惜しむらくは、通読できるノンフィクションとしての形で出版されたため、出典や参照された史料などが脚注の形で残されていないことです(巻末に参考文献リストはありますが)。その説の根拠となった原典を当たりたいと思っても出典がわからないというのは、史実重視派としては辛いものがあります。
新選組や土方さんについての入門本としてではなく、一通り「定説」を知っている上で読んだ方が面白く読める本だと思います。
白牡丹、史実の土方さんが一番好きという方にこの本をお薦めします(小説やアニメ作品の土方さんキャラが一番という方もいらっしゃるんで、わざわざ断り書きをしています^_^;……もちろん、大河ドラマ『新選組!』をはじめ、いくつかの創作作品の土方さんも大好きな自分ですが)。
最近発見された史料の内容も反映された史伝のため、新たな視点がいくつもあります。作者が前書きで述べていますので、そのまま引用します。
①新選組組織には、平時と戦時の棲み分けが存在したこと:たとえば平時は京都市中見廻りに従事するが、合戦へ従軍する際には戦時モードへ移行する。沖田総司などが務めた副長助勤、組頭の違いである。
②新選組ポストは、幕府の職制にリンクしたこと:聞き馴れない言葉かもしれないが、大きく番方(武官、戦闘員)と役方(文官、非戦闘員)のふたつである。新選組では組頭が番方、諸士調役券監察が役方に相当する。あわせて職務内容についても、詳しく触れている。
③組織を統率するために、掟が重視されたこと:加盟した同志(浪士)を律するのが、平時は禁令(法度)、戦時は軍律(軍中法度)となる。特に「局中法度」は有名だが、違反した場合は厳罰主義――。それが、土方歳三の生涯を貫く哲学である。
④組織では序列が定められたこと:新選組は同志集団であり、形の上では身分の格差はない。が、時代を反映して序列(席次)が重視された。ポストもさることながら、創設以来、序列をめぐる相克が数多く、また不祥事を起こせば、ペナルティとして序列が下げられた。土方歳三が得た最上位ポストは副長で、序列は局長・近藤勇に次ぐ第二位となる。言い換えれば、序列を上げることが出世なのである。
⑤鳥羽伏見の敗戦後、江戸に帰還した新選組は、徳川(旧幕府)陸軍の一部隊となったこと:甲州鎮撫や流山出張は勝海舟の軍備恭順路線の一環であり、「関東取締出役」(八州廻り)の機能を果たしたことになる。
⑥江戸脱走後、土方歳三のステータスが向上したこと:旧幕府脱走陸軍に参加した彼は、北へと転戦するのだが、その間に伝習第一大隊長に就任している。それゆえに、箱館軍事政権では、閣僚ポストの陸軍奉行並に選出される。(以下略)
⑦江戸脱走後の新選組との関係:微妙な表現になるが、土方歳三と新選組とは、常に行動を共にしたわけではない。むしろ一定の距離が存在した、と思った方がわかりやすい。(以下略)
これ以外にとても興味深かったのは、京都時代の新選組内における洋式軍隊推進派と抵抗派(バックに攘夷思想だったり、甲州流軍学だったり)の対立構造という視点。もうひとつは、分離した御陵衛士と新選組の関係を、従来の見方である「勤王派と佐幕派の思想の違いによる分派」ではなく「倒幕勢力を探索するための表面的な分派、結果としての二重スパイ化」という描き方をしていることです。すごく刺激的なのですが、なぜ伊東甲子太郎が暗殺されなければならなかったのかという点での説明についてはもう少し掘り下げる必要があるように思います。
特に江戸脱走後の土方さんの立場について、今まで読んだ解説本ではどうもしっくりくる説明が得られなかったのですが、白牡丹はこの本の説明が一番しっくりしました。特に会津が新政府軍の包囲網で苦況に陥っていた時に土方さんが仙台に行くことを考えていたのはなぜなのか、この本で目からウロコが落ちました。旧幕府陸軍脱走派と会津藩が必ずしも一体ではなかったことも、腑に落ちました。そして、世話になった会津藩の苦境を見過ごしておけないという藤田五郎(斎藤一)たちと、米沢に援軍を依頼に行って果たせずに結果として仙台に集まる土方さんや会津を引き上げてきた大鳥さんたちの視点の違いもさらに理解できました。
江戸脱出以降の土方さんを象徴する言葉が「幕府侍」。宇都宮の戦いでともに幕府陸軍を率いた秋月登之助のたっての望みで土方さんが譲った刀と伝えられる大和守秀国に「幕府侍土方義豊戦刀」と刻まれているそうです(今年の土方歳三資料館の特別展示に出品されていました)。土方さん自身が彫らせたかどうかはわかりませんが、「幕府侍」というネーミングが、箱館で戦死するまでの土方さんのアイデンティティを見事に表現しているんですね(著者の相川さんもそこにこだわっていて、後書きでは司馬遼太郎『燃えよ剣』ファンを刺激するような記述も……あたたっ、でも気持ちはわかります^_^;)。
惜しむらくは、通読できるノンフィクションとしての形で出版されたため、出典や参照された史料などが脚注の形で残されていないことです(巻末に参考文献リストはありますが)。その説の根拠となった原典を当たりたいと思っても出典がわからないというのは、史実重視派としては辛いものがあります。
新選組や土方さんについての入門本としてではなく、一通り「定説」を知っている上で読んだ方が面白く読める本だと思います。
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