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新選組・土方歳三を中心に取り上げるブログ。2004年大河ドラマ『新選組!』・2006正月時代劇『新選組!! 土方歳三最期の一日』……脚本家・制作演出スタッフ・俳優陣の愛がこもった作品を今でも愛し続けています。幕末関係のニュースと歴史紀行(土方さんに加えて第36代江川太郎左衛門英龍、またの名を坦庵公も好き)、たまにグルメねた。今いちばん好きな言葉は「碧血丹心」です。
 関心の深いところ以外はざっと斜め読み・流し読みですが、なかなか収穫がありました。
 坦庵公こと江川英龍と土方歳三・新選組に関心を持つ白牡丹にとって、多摩という土地固有の歴史が幕末・明治維新(ちゅーか幕府瓦解^_^;)とどう相互に関連し合っているかという点は、見過ごせないですし。



 いくつか興味を引かれた点について、メモ書き。

・八王子千人同心出身にして蘭学者、松本斗機蔵(リンク先はwikipedia)
松本 斗機蔵(まつもと ときぞう、1795年(寛政5年)-1841年10月26日(天保12年9月12日))は儒学者。八王子千人同心組頭。三十表一人扶持。
 同じ千人同心組頭で「桑都日記」を著した塩野適斎に学び漢学を修め、湯島の昌平黌に学んだ。下総千葉氏の出といい、千人同心組頭の松本家の養子となった。渡辺崋山・高野長英・伊豆韮山代官江川英龍など蘭学者と親交があり、探検家最上徳内や地理学者高橋景保とも通じ、水戸藩の藤田東湖とも接点を有するなど、開明派の一人であった。
 1837年(天保8年)末、「献斤微衷(けんきんびちゅう)」を著し、水戸・徳川斉昭に献上、その後、幕府に「上書」を提出した。斗機蔵は、これらの著述の中で、鎖国政策を見直し、貿易を振興し、海防の充実を図るべきこと、外国船打払令が無謀なこと、そして穏便な交渉が必要であると建言した。1841年(天保12年)、斗機蔵は幕府に才能を評価され、浦賀奉行に任命されたが、赴任しないまま同年病没した。八王子市千人町の宗格院に墓がある。

 Wikipediaが要領よくまとめてくれているのでそのまま引用^_^;。『風雲児たち』第15巻(リイド社)で尚歯会が紹介された時に、小関三英を紹介した後に「とまぁこれくらいの人物が尚歯会にははいて捨てるほどおったわけで……」と省略されてしまった中に入るであろう人物のひとり、だろう(汗)。
 でも『風雲児たち』の読者なら、おおっと思うはず。何しろ、最上徳内(田沼時代に蝦夷地~千島列島を探検)・高橋景保(シーボルト事件で投獄された暦学者)と交流があり、渡辺崋山・高野長英・伊豆韮山代官江川英龍(ちなみに、この本では、英龍様の盟友・斎藤弥九郎とも親交があったようだ)など蘭学者や水戸藩ブレーンの藤田東湖と親交があり、水戸・徳川斉昭公に外交政策について意見書を建策したって……『風雲児たち』に登場したっておかしくないではないですか(苦笑)。
 しかも病没しなかったら浦賀奉行に赴任していたはずとなったら……も少し長生きしていたら、浦賀奉行所与力の中島三郎助とも親交を結んでいたかも知れない。
 この書によれば、モリソン号事件に対する松本の意見は、渡辺崋山・高野長英の意見と比べても遜色ないどころか、「現実の対応策においてきわめて説得的」だったそうだ。その背景には、西洋事情や蝦夷地はじめ対外関係に関する重要な書物を持っていたり、詳細な日本地図を持っていたり……その上に幕府の支配下にあるのでかなり最新の情報を得ていたことがあるようだ。
 先日の佐藤文明氏の講演会でも紹介されていたのだが、改めて、松本斗機蔵についてもう少し知りたくなった。

・八王子千人同心あれこれ

 八王子千人同心そのものは幕府直轄で鑓奉行の配下にある。御家人待遇だが半農半士で普段は農耕に従事しているために扶持米も少なく、また旗本・御家人全体がそうであったように、江戸時代全体を通じて貨幣経済・消費経済が発達してくると経済的に没落する者も多く、千人同心株を売ったりすることも多かったようだ。

 多摩の天領は旗本や代官の統括下にあったが、八王子千人同心そのものは幕府の直接支配下にあるので、関係はやや複雑。つまり、千人同心として出動がかかった時には幕府鑓奉行の配下になるのだが、公務の時以外は農民として処遇され、たとえば代官地の住民であれば代官の支配下にあった。しかし普通の農民ではないという矜持も強く、「五人組帳」や「宗門人別帳」に苗字記載をするか否かを巡って訴訟が起こったり、半農半士という例外的な身分やアイデンティティゆえの特別な事情があったようだ。
 巻末の年表を見たら「天保9年(1838)12月、代官江川坦庵、八王子千人同心の絹布着用を禁じ紛糾する」との一行があり、目を見張った。坦庵ファンでいくつか評伝を読んだけど、このエピソードは初めて知った。しかも、坦庵公の人柄、八王子千人同心の複雑なアイデンティティからして、興味深い。
 坦庵公は地方代官ではあるけど知行地が生涯最大で10万石以上(でも地方代官だったので代官としての石高は確か800石^_^;……もちろん、老中の直接支配下に入ってからは別途役付手当があったはず)を治める大・代官だったけど、公務の時に着る礼服以外はツギのあたった綿の着物で過ごし、衣食住すべてにわたって質素倹約を旨とした人だった(ただし、マリナー号事件でイギリス船と直接談判しなければならなかった時には派手で豪華な着物を着用して交渉役としての威儀を保った)。だから、天保改革の幕府方針に従って、八王子千人同心にも質素倹約を求めたのだろう。
 しかし、半農半士という身分とはいえ、あるいはその身分ゆえ、並の農民と同列に扱われたくない八王子千人同心、武士の特権のひとつである絹着用を禁じるというお触れに、反発したのではあるまいか。歴史の複雑な多摩領についてはなるべく自治に任せたと今まで聞いていた江川代官さまだけど、この一件ではちょっと痛い目を見たようだ。

 甲府で近藤勇率いる甲陽鎮撫隊が薩長土肥などの東征軍に敗れた後、八王子千人同心はどうしたか。
 日光勤番についていた八王子千人同心頭石坂弥次右衛門は、日光を戦火から守るために東征軍に日光を引き渡した(その時に勤番についていた千人同心のひとりが土方さんの幼なじみ。東征軍と戦った土方さんは、敵前逃亡しかけた従者を斬ったが、戦闘直後に斬った従者を憐れんで日光の近くに弔うように幼なじみに依頼した。ちなみに日光には、任務途中で病死などで亡くなった八王子千人同心関係者の墓地があるらしい)。その石坂弥次右衛門は、切腹した。
 東征軍が甲府から八王子に入ってきた時、八王子千人同心の組織としては恭順した。江戸開城以降、強い姿勢を示した新政府に、八王子千人同心たちは大きく3つに分かれた。
 一番多かったのは、その地にとどまって農民になること。
 恭順をよしとせず、彰義隊に加わった者もいたようだ。彰義隊壊滅以降は、それに先だって甲府で敗れた甲陽鎮撫隊に協力した日野名主の佐藤彦五郎一家が親戚たちに匿ってもらったように、あちこちに潜伏したらしい。
 そして一部は、新政府の警察組織として八王子周辺の警備につき、やがて神奈川県警の一部になった(この地域が神奈川県知事の統括地とされたため)。
 
・新選組と八王子千人同心、そして……
 谷春雄氏が一本書いている。すでに何本か読んでいるので、これといった発見はなかったのだが……松本斗機蔵の略歴を読んでいて、やはり佐藤文明氏の見解通り、新選組の前身となった壬生浪士組が、水戸天狗党の流れであった芹澤鴨一派と、近藤勇ら天然理心流門下だったのは偶然ではないような気がしてきた。

 芹澤鴨が学んだ神道無念流の江戸の道場のひとつ、練兵館は斎藤弥九郎が開いたもので、その斎藤弥九郎は江川太郎左衛門英龍の右腕。坦庵公こと江川英龍と斎藤弥九郎は尚歯会と自称した蘭学グループの中心的なメンバーであったけど、水戸の徳川斉昭や藤田東湖とも交流があった。
 浪士組上京の当時、坦庵公はこの世にはいないのだけど、幕府の開いた講武所の教授方にも名を連ねていた斎藤弥九郎、多摩と水戸の両方に人脈があるんだよなぁ……さらにいえば、長州からの留学生も受け容れてるし(汗)。
 まだまだ情報収集中だけど、科学者・技術者的なセンスを持った江川英龍が欧米に対して自国を防衛するにあたって欧米の知識を積極的に取り入れたのに対して、斎藤弥九郎はそれを補佐しつつも思想的にはちょっと攘夷派寄りなのかなぁ、という印象。

☆★☆★

 新選組の幹部だった土方さんや井上源さんは、源さんの実兄である井上松五郎さんが八王子千人同心の一員として上京した折りにいろいろ相談したりして、上京以前から親しかったことが伺える。

 けど、八王子千人同心と多摩の名主・豪農層との関係は、全般にどんなもんだったんだろう。八王子千人同心と幕府の関係、多摩の天領と代官の関係、同じ多摩といっても地域性もあろうし、も少し複雑だったんじゃなかろうか。

☆★☆★

 とりとめのない感想ですが、自分用のメモということでご容赦くださいませ。




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