忍者ブログ
新選組・土方歳三を中心に取り上げるブログ。2004年大河ドラマ『新選組!』・2006正月時代劇『新選組!! 土方歳三最期の一日』……脚本家・制作演出スタッフ・俳優陣の愛がこもった作品を今でも愛し続けています。幕末関係のニュースと歴史紀行(土方さんに加えて第36代江川太郎左衛門英龍、またの名を坦庵公も好き)、たまにグルメねた。今いちばん好きな言葉は「碧血丹心」です。
平成30年12月歌舞伎公演「通し狂言 増補双級巴―石川五右衛門―」

 歌舞伎や落語を好んでよく見る友人と今年の歌舞伎見納め。

 石川五右衛門一代記という物語として吉右衛門さんが複数の作品を繋げてつくったそうだけど、一幕一幕は面白いのだが繋いだ時の物語性がイマイチと感じられた。たとえば、発端の「芥川の場」から序幕の「壬生村次左衛門内の場」への転換に時間がかかり、そこまでして発端を見せる必要があったのかと思ったり。吉右衛門さんが葛籠抜け宙乗りしてまで見せた一番のクライマックスが、次の幕では夢オチになったり。歌舞伎は絵空事とか非現実的な物語でも作品にしてしまえる力があるのだけど、初見ではちょっとついていけないと思うところあり。

 吉右衛門さんの五右衛門と、播磨屋ではないけど娘婿の菊之助さんの久吉の対比はとても絵柄がよかった。菊之助さんは「猿」と呼ばれる久吉にはとても見えない(笑)が、丹精で動きもまた綺麗で、大盗賊の五右衛門の幼友達であり、戦国時代末期最大の出世男で、今は五右衛門を追う立場となった久吉の輝かしさにはよく似合った。

 歌六さん演じる次左衛門が五右衛門の産みの母親を殺した因果で、次左衛門が自害しようとしたのを止めた娘の小冬を誤って殺したり。五右衛門の息子がつらく当たる儘母が不義を働いたと勘違いして刺殺したら、儘母は息子を出奔させるためにつらく当たっていたとわかったり。その儘母にたかりに来る悪い舅を五右衛門が殺したり。因果が巡る殺し合いの輪廻は吉右衛門さんの陰々滅々な芝居の趣味が出てるなぁ。これ音羽屋さんの芝居で見たら同じ展開でももっと明るくエンターテインメント性があるんだろうなぁ。。
PR
歌舞伎美人 歌舞伎座百三十年 十二月大歌舞伎

今月はどうしても梅枝・児太郎・玉三郎の阿古屋が見たくて、昼の部を諦め三夜連続で夜の部を見た。


12/22 梅枝/阿古屋 玉三郎/岩永 玉三郎/傾城雪吉原
12/23 児太郎/阿古屋 玉三郎/岩永 玉三郎/傾城雪吉原
12/24 玉三郎/阿古屋 松緑/岩永 梅枝・児太郎/二人藤娘

 十月は七之助に揚巻を、この昼の部では壱太郎にお染の七役を、夜の部では梅枝と児太郎に阿古屋を、と玉三郎は自分の芸を複数の若手に継承していっている。梅枝さん30才、児太郎さん24才。いずれも名門の子息で若手女方として活躍中だが、琴・三味線・胡弓を弾きこなす阿古屋という大役には思い切った抜擢だ。
 また、勘九郎・七之助、中車、児太郎など親の後見がない役者さんを積極的に舞台に起用している。

 梅枝さんの阿古屋は、初役と思えない安定感。

 児太郎さんの阿古屋は、健気。

 玉三郎さまの阿古屋は、それだけで絵巻。

 岩永については、玉三郎さんの人形ぶりは本当に手足が人形。足に重みを感じない。存在感が異様といえば異様。
 対して、松緑さんの人形ぶりは、いささか人間味を残す人形ぶり。動かせる眉がコミカル。

 中車さんと松緑さんの「あんまと泥棒」は、このふたりの舞台の中で一番好きかも知れない。松緑さん、芝居が臭いのと陰気なところがどうも好きになれないのだけど、この作品では人のいい泥棒をうまくこなしていた。

 玉三郎さまの傾城雪女郎は、ただひたすら綺麗。動きがやや静止画の連続のようで流動性とかダイナミックさはないけれど。

 二人藤娘は、息が合ってそれぞれの個性(梅枝さんははんなり、児太郎さんは可憐とか健気とか)が出ていた。
立川談春独演会2018ファイナル

 久しぶりの独演会、半年ぶりだそうだ。私は1月の紀伊國屋サザンシアター以降、談志まつりでの「三方一両損」しか聞いていなかったから、楽しみ一層倍。落語はそこそこ聴く友人を誘って。

 開口一番はなし。談春が「鞍馬」とともに上がり、短い挨拶の後に口慣らしで「替わり目」を。酔っ払った亭主が女房に酒と肴をねだり、女房がおでんを買いに行く場面まで。おでんは「焼き(豆腐)」「がん(もどき)」「やつ(がしら)」。「(はん)ぺん」はなかったの、珍しい。そして、おでんを買いに女房が出て行ったと思い込んで亭主が独り言する場面が好きなんだけど、その手前で終わってしまった。

 そして、続いて「鼠穴」。訛りがちょっと東京に近い。父親の遺産を使い果たした弟が、江戸で成功した兄から貸してもらえた金がたった三文、怒り狂って兄を見返すと一念発起して三文を元手に大成功。兄に金を返しに行き、兄の真意を聞かされる。
 この当たりで近くの席で奇妙な悲鳴が上がったと思ったら人が昏倒する音。ざわっとした二階席で、私の右隣の男女の客ふたりが素速く動いた。医療関係者らしく、バイタルを確認し、会場スタッフにAEDを持ってこさせ(使用はしなかった)、担架で運び出すところまで指揮。脳、おそらくはくも膜下出血ではないかと友人とひそひそ。救急車で運ばれた病人さん、早期の処置で軽症でありますよう。
 その間、おそらく春師は二階席のざわざわに気付き、会場全体の客を引き付ける熱演をしたようだ。私が集中力を取り戻したのは最後の場面。

 中入り後はなんと「芝浜」。それも、勝が財布を拾う場面の描写がなく、勝を送り出した後の女房が独り言で自分の心情を明かす場面があり、駆け込んで戻って来た勝が財布を拾ったことを報告する、という演出に。あと、夢にしちゃってから三年後に女房が勝に本当のことを告げる気になった動機が「幸せだったから」。少しリニューアルされた「芝浜」はじわっと来る。二重丸。大拍手。

 来年は落語会を増やすと宣言してくれた春師、でもチケットは毎回激戦になりそうだ。
亡き中村勘三郎さんの夢や情熱が込められた芝居小屋の空間は愛が詰まっていた。役者さん、裏方さん、お茶子さん、観客、みんなが勘三郎さんを愛していた。そして、とても温かい空間だった。
 たとえば、女子トイレの並び列を捌くのがとても上手なスタッフさんはファンレターをもらっていた。幕が上がる前にスマートフォンなどの電源オフをアナウンスした、喋りの上手いお茶子さんは「お茶子屋!」の掛け声をもらっていた。はねて帰る観客を迎えた浅草の旦那さんやおかみさんたちは、みなニコニコしていた。隣のお客さんとも「今日は冷えますね」とか何かと会話しやすい感じだった。
 素晴らしい空間だった。最後の「平成」中村座。

【昼の部】
一、実盛物語
源平布引滝〜義賢最期・実盛物語
 勘九郎の実盛がニンに合って素敵すぎる。平家方にいる源氏の味方。しかし心ならずも源氏の白旗を守ろうとした小万を斬ってしまい、その子太郎吉に成人して親の敵である自分を討ちに来いと約束する実直さと清廉さを持っているところが引き立つ。最後に馬上で花道を行く姿が凛々しい。
 そして長三郎くんは千穐楽も乗り切った。5才児? 台詞も結構あるし演技もあれば舞台上の時間も長いけど最後までよくやり遂げた。そして実盛様に馬に乗せてもらった時の笑顔は天然かと思う愛らしさ。
 新悟さんの葵御前が武将の夫人らしい。小万の児太郎さんは命が事切れててほとんど台詞ないのが残念な、凛々しい女房。

一、近江のお兼
 七之助さんの艶やかで力強いお兼。暴れ馬だったお馬ちゃんが懐くのも無理はない。長い晒しを両手で捌くのも鮮やか。

一、江戸みやげ 狐狸狐狸ばなし
 扇雀さんの伊之助が上方出身で元は女方役者でしんねりむっつりした感じ。七之助さんのおきわは浮気が本気になってしまう情婦。芝翫が間男のスリルを楽しむ生臭坊主重善。この3人が上手いのは言うに及ばず。コミカルな味と正体の演じ分けが重要な雇い人又市を扇雀さんの子息の虎之介さんが上手くやっていた。芝翫さん次男の福之助さんもずいぶん精進したようだ。

 歌舞伎には珍しく、千穐楽だからかカーテンコールあり。

【夜の部】
一、弥栄芝居賑
 一堂総出演で賑やかな舞台。芝居茶屋亭主に扇雀さん、猿若町名主に芝翫さん、中村座座元に勘九郎さん、その女房に七之助さん。鶴松くん勘太郎くん長三郎くんはふたりの子供という体。主立った方々が男伊達女伊達になって地名をもじった名乗りを挙げ、渡り台詞で平成中村座を寿ぐ。
 そして、初見では勘三郎さんの悪戯か途中で切れてしまった勘三郎さんの様々な映像を最後まで見て、花道をスポットライトの光を受けて舞台に上がる勘三郎さん(の魂)の後、

一、舞鶴五條橋

 昼間の長三郎くんがともすれば集中力切れてしまう危うさを持っているのに対して、勘太郎くんは最初から最後まで牛若丸になりきって演じる余裕があった。まぁすでに歌舞伎座で『玉兎』踊りきっちゃうぐらいだから凄いのだけど、今回は扇雀さんの常盤御前との芝居が少々あり、また勘九郎さんの弁慶との立ち回りがあり、いくら勘九郎さんが合わせて受けるとはいえ、義経らしい敏捷な動きを見せるわけで。
 凄いな。末怖ろしい才能だわ。

一、仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場

 平成中村座今公演で一番好き。何と言っても兵右衛門勘九郎と妹おかる七之助さんが本物の兄弟らしくわちゃわちゃしているところが好きで、そこから兵右衛門がおかるに斬りかかり、父と勘平に何があったかを打ち明け、おかるが自害を決意するまでのスピード展開も好き。芝翫さんが大星由良之助らしい大きさ。

 こちらもカーテンコールあり。誰もいない舞台から、勘九郎と七之助と芝翫と亀蔵と、お洋服に着替えた勘太郎くんが登場(足が長い、頭ちっちゃい!!)。勘九郎さんの短い挨拶。






今月は千穐楽に平成中村座のチケットを取ったので、楽前の歌舞伎座。

【昼の部】
一、お江戸みやげ
 結城紬の行商人の二人組、時蔵のお辻、又五郎のおゆうが湯島天神参りの茶屋で噂に聞いた宮地芝居で売り込み中の梅枝さん演じる坂東栄紫にのぼせてしまう。締まり屋のお辻は一生一度の恋と思いなし、栄紫が恋仲のお紺(右近)と駆け落ちするために全財産をはたいてしまう。
 時蔵のお辻はしっかり者風で、岡惚れして全財産を使い果たすようには見えないけどいい芝居。又五郎さんのおゆうがいいツッコミしていた。梅枝さんの栄紫は凛々しく、お紺はおちゃっぴい。

一、素襖落

一、十六夜清心
 鎌倉極楽寺の所化清心は遊女十六夜と恋仲になり、女犯禁止の格ある寺にあるまじき行為を咎められて追放される。十六夜は隙をみて遊郭を脱走し、清心と稲瀬川の百本杭で行き会う。ふたりは入水して心中をはかるが、十六夜は流されて俳諧師白蓮(実は大盗賊の大寺正兵衛)に助けられ、清心は泳ぎができて死にきれない。清心の前を、事情あって大金を懐に忍ばせた寺小姓の恋塚求女が通りかかり、癪の発作で苦しむところを介抱するうちに大金を押し借りしようと思い、抵抗する求女と揉み合っているうちに求女を殺してしまう。
「しかし、待てよ。今日十六夜が身を投げたのも、
またこの若衆の金を取り殺したことを知ったのは、
お月さまとおればかり。
人間わずか五十年、首尾よくいって十年か二十年がせきの山。
つづれをまとう身の上でも金さえあればできる楽しみ、
同じことならあのように騒いで暮らすが人の徳。
ひとり殺すも千人殺すも、取られる首はたったひとつ。
とても悪事をし出したからは、これからは夜盗家尻切り、
人の物はわが物と栄耀栄華をするのが徳。
こいつぁめったに死なれぬわぇ」
 菊五郎はさすがの音羽屋の黙阿弥調。
 梅枝さんの求女が匂い立つような若衆ぶり。

【夜の部】
一、楼門五三桐
 吉右衛門さんの五右衛門「絶景かな絶景かな」と菊五郎さんの真柴久義「石川や」ぐらいしか台詞がないのに、なんでこんなに豪華なんだろう。This is 歌舞伎、という大道具の絢爛さ。
 人間国宝ふたりに、歌昇さん・種之助さんと伸び盛りの若手を配置。

一、文売り
 雀右衛門さんが文売りの「喋り」を踊りで表現。

一、隅田川続俤 法界坊
 今月ダントツの面白さ。勘三郎さんのシネマ歌舞伎『法界坊』を見損なってしまったので比較ができないが、女に横恋慕するわ、女を殺すわ、金を奪い取ろうとするわ、という小汚くて悪徳な坊主なのにかわいいと思えてしまう。幽霊の宙乗り。そして大喜利の「双面」では法界坊と彼に殺された野分姫というふたりの悪霊が憑いた女を踊り訳で演じる超難しさ。
今日は昼夜興行でしたが、夜の部のみチケット確保しました。夜の部、談春が中入り前、志の輔が膝代わりで談志家元音源の直後という豪華なラインナップで、チケット取るの大変でした。

一、新聞記事 小談志

一、片棒 志遊

一、幇間腹 生志 ○

ニンに合ったネタですね。とても楽しかったです。

一、三方一両損 談春 ○

啖呵を聴かせるためのネタ、という。今日は大岡越前守も笑いを起こすお茶目さんでした。

(中入り)
一、家元音源〜漫談 平等論〜

一、猿後家 志の輔 ○

もう大爆笑。

一、鼠穴 里う馬

最後はずっしりと。
生前の談志をライブで見たのは柳亭市馬師の『年忘れ市馬集』の後半の歌謡ショー(というか前半の落語はそそくさと切り上げ)のゲストという立場であった。最期に『蜘蛛駕籠』を公演した舞台のチケットを入手していたのだが所用があり、友人にチケットを譲ってしまった。
 ので、「談志に間に合わなかった落語ファン」「志ん朝に間に合わなかった落語ファン」だと自認している(歌舞伎の方も「勘三郎・三津五郎・團十郎に間に合わなかった歌舞伎ファン」だ)。

 毎年、談志まつりは見るようにしている(一部苦手な落語家がいるので全回通しではないが)。

一、悪質商法だまされ自慢〜安来節〜 平林

 真打昇進おめでとうございます。

一、紙入れ 談慶

一、強情灸 キウイ

一、大工調べ ぜん馬

(中入り)

一、家元音源〜狸賽〜

一、蝦蟇の油 談笑

 家元はたしか英語版の『蝦蟇の油』が出来たと記憶しています。英語のできる人がちらほらいるため、英語とスペイン語ができる談笑さんにスペイン語版を勧めたと思います。
 大学時代に選考した私は、聴きながらゲラゲラ笑ってました。談笑さんスペインや中南米で公演したら受けると思います。

一、Mr. マリック 超魔術

一、芝浜 談四楼 ◎

 自民党落語議連発足に立ち会った報告と、談志の思い出を少々。そしてリクエストが多かったので伝説のよみうりホールでかけることは怖れ多くも「くさくない」『芝浜』を。
 あっさりとしていて、でも江戸っ子の勝っつぁんと女房の味がよく出ていた逸品でした。
 たぶん生で聴いた『芝浜』の中で一番完成度が高かったです。
有吉佐和子作。新派の杉村春子が主役のお園を演じてロングラン。玉三郎が歌舞伎で舞台にかけた時、有吉佐和子は鬼籍に入っていた・合掌。

幕末の歴史好きにはツボツボな作品。そして横浜のある遊郭における遊女の自害が大和撫子の鑑として脚色され喧伝されていく様は見事な現代性も感じさせる。

玉三郎さんが演じるお園の演技の凄さ、シネマ歌舞伎ならではのカメラワークでさらに引き立っていました。人のいい場末の芸者(吉原から品川、さらに開港直後の横浜へ流れてきた)。同じように吉原から流れてきた病身の遊女の亀遊を妹のように可愛がり、亀遊が通辞の藤吉と恋仲になるのを陰で応援していたが、その亀遊はアメリカ人商人イリウスに気に入られたと知ると恋がかなわないのを絶望して剃刀で自害してしまう。

亀遊を喪った清吉はアメリカに渡航して医師になることを目指す。残ったお園は、かわら版による亀遊の死の脚色をいぶかいつつも、置屋の主人にそそのかされ、攘夷女郎亀勇の自害の目撃者として講釈師よろしく登楼客に語って聴かせる。攘夷派の儒学者・大橋訥庵の五回忌に門弟たちが集まる座敷に出た時、吉原で訥庵から習ったという歌を披露した時……。

最後の場面。「ひとり残されたお園は、酒をあおりながら、時代の波に翻弄された亀遊や我が身を嘆くのである」。時に慶応三年七月、大政奉還・王政復古から戊辰戦争・新政府成立といったさらなる時代の波が押し寄せてくることを知らず。。

無茶苦茶豪華な共演陣。勘三郎さん、七之助さん、獅童さんなど主要な配役だけでなく、ちょい役の浪士の中に海老蔵さんとか勘太郎(当時)さんがいたり、福助さんとか松也さんとか新悟さんとか唐人口の遊女たちなんか凄いメークで本人とわからないぐらい(きっと喜んで演じたに違いない)。

勘三郎さん三津五郎さんなど鬼籍に入った名優たち、新派に移って河合雪之丞になった春猿さんとか、今では再現できない舞台を見られるシネマ歌舞伎ならでは。
3年ぶりに浅草で幕を開けた「平成中村座」

 中村屋さん贔屓なもので、平成中村座は昼と夜を二回ずつ確保してしまいました。うち一回目は初日から3日め。
 歌舞伎を見始めてすぐに平成中村座を経験していたので、地元の芝居小屋のような感覚になります。十八世中村勘三郎丈を生で見ることができなかったのが残念なのだけど、この空間は勘三郎さんへの愛が詰まっていて、とても温かい気持ちになります。

【昼の部】
一、源平布引滝 実盛物語
 イヤホンガイドのサイトからの簡単な紹介。
「義賢最後」(よしかたさいご)の続きです。
木曽義賢の身重の妻・葵御前を助ける平家方の斎藤実盛の恩情と心の苦しみのお話し。
家に伝わる源氏の白旗を亡き義賢から預かった小万は、平家方に追われ琵琶湖を泳ぐが、敵方の船に引き上げられる。
引き上げたのは斉藤実盛。
源氏に心をよせる実盛、彼女の腕を切り落として、旗が平家にわたるのを防ぐ。
小万の一念で、腕が握った旗は葵御前の許に。
さて、ここは、琵琶湖のほとり。百姓九郎助の家です。
ここに義賢の側室、葵御前がかくまわれています。
葵御前が産む木曽義賢の子が男子だったら即刻殺せという清盛の命を受けて、斉藤実盛と瀬尾十郎兼氏が検分役としてやってきます。
葵は無事、男子駒王丸を産んでいました。
でも、「産んだのはコレです!」と差し出されたのは、女の片腕!?
実盛が小万の「片腕」を斬った状況を、物語るところが、題名の由縁。一番の歌舞伎クライマックスです。
死んだ小万は、実は、平家の瀬尾十郎の○○!意外な人物関係がすごいドラマチック・・・。  
 勘九郎さんの次男、5才の長三郎くんが台詞も振りもついた太郎吉の芝居を長丁場こなします。勘九郎さんの実盛は、颯爽とした生締で理も情もわきまえた武士。亀蔵演じる瀬尾に九郎助夫妻と太郎吉をかばいながら、葵御前の出産をさりげなくサポートし、落とす手はずを整え、太郎吉の将来の仇討ちまで受けとめます。
 小万の児太郎さん、葵御膳の新悟さんもポイントポイントでいい姿。亀蔵さん演じる瀬尾の自害のシーンは、トンボがうまく決まったものの、消し幕さんとのタイミングが少々ずれて、身体が動くところが見えちゃいました。
 実盛が黒馬に乗って堂々と去る場面は素敵でした……花道すぐ脇の席だっただけにガン見しました。

二、近江のお兼

 七さんが暴れ馬を手懐け、布晒を両手でひらひらと宙に舞わせる可愛く力持ちのお兼を踊りました。そうか、勘三郎さんも踊っていたのね。芸幅が広かったんだなぁ勘三郎さんは。

三、江戸みやげ 狐狸狐狸ばなし

 生臭坊主との浮気に血道を上げる女房と、それでも女房を愛する染め物屋の亭主を中心とした、騙し騙されのコミカルな舞台。
 今回は扇雀の伊之助に七之助のおきわ。「しつこい蛇のような」と言われる執念の強さ、かいがいしい世話を焼くこまめさ、上方で役者をしていた伊之助の、二面性があるが嫌みではないところが扇雀はうまかった。七之助は浮気に絡め取られて本気になり相手と心中しようとする怖さと、呆けた演技の哀れさ、それでも浮気の虫が止まない業をコミカルかつシリアスに。芝翫の生臭坊主が割とよかった。

【夜の部】

 客席にひらひら蛾が舞っていた。前に勘九郎さん七之助さんのトークで、勘三郎さんが時々ハエになって舞台を見に来ているという話をしていたけど、今日は蛾となって戻ってきたのかな、と思ったら……。

一、弥栄芝居賑

 江戸の風情を残す中村屋の芝居小屋を舞台後景にして、勘九郎七之助が座元夫婦に、勘太郎長三郎を息子に、扇雀が挨拶の音頭を取り、手締めは芝翫。男伊達と女伊達が花道に並んで浅草ゆかりの土地や風物を織り込んだ連ねの台詞が面白かった。小三郎さんが手首のアンチョコを見ながらもつっかえつっかえだったのが中村屋のファンにはご愛敬で許されるものの少々残念ではあった。
 そして芝居はありし日の勘三郎さんの映像。『娘道成寺』や『め組』や『野田版 鼠小僧』や……あれ、中途半端なところで途切れた。少しザワザワしながら、なし崩し的に20分の休憩に。そこに七さんがお顔はそのままで鬘をはずした浴衣姿で、なおちゃんとのりちゃんも引き連れて幕から顔出しして「どうやら父がいたずらしたようで……」と挨拶。
 どうやら、あの蛾は本当に勘三郎さんの魂を運んでいたらしい。

二、舞鶴五條橋

 扇雀さんの常盤御前と勘太郎くんの九郎義経の場面の後、勘九郎さんの弁慶と勘太郎くんの義経の対決。勘太郎くんがちゃんと芝居してて(歌舞伎座で『団子売』踊りきった時から並々ならぬ技量と度胸があると思ってはいたが)五條橋の対決も見応えがあった。そして勘九郎さん弁慶の薙刀での立ち回り、六方と勇壮な大きな芝居。近くで見られてとてもよかった。主人を得て破顔一笑したところが可愛い。。

三、仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場

 今日一番見応えがあった。勘九郎さんの寺坂平右衛門と七之助さんのお軽はそれぞれ、仁左衛門さまと玉三郎さまから教えられたのだろう。勘九郎さんと七之助さんの兄弟ならではのキャッキャッウフフとじゃらつくかわゆさがある。

 楽日近くでまた見られるのが楽しみ。

新橋演舞場が月一回催している食事付き落語会です。落語は前座+真打ち2席で、その前後に演舞場の厨房新ばしがつくった食事をいただきます。ちょっと品数多めの幕の内弁当に全国各地の酒造が提供する日本酒(今回は1合×2本を隣の人と、5合×2本をテーブル4名とシェアしたので、意外に飲ませていただいた感じでした)が提供されます。

https://www.shinbashi-enbujo.co.jp/contents/rakugo20181030.html

今回は宮城県内最古の蔵元、内ヶ崎酒造さんの提供でした。4本のうち最後に提供された特別純米酒鳳陽源氏は初めてイギリス王室のワインセラーに収蔵された日本酒3種類のうちの一本だそうです。

また、先付けとして出されたのは有機農業をしているOme Farmさんが提供する後関晩生小松菜のお浸しでした。写真撮影忘れましたが、白身魚の塩麹焼きの後に焼きおにぎり鮭茶漬けがあり、食事として十分に満足できました。有機野菜は甘みがあって優しい味でした。

主催者挨拶、Ome Farmさんと内ヶ崎酒造さんの挨拶を前後に挟みましたが、落語会も本格的でした。

テーブルをご一緒した3人組の紳士たちは、毎月この会にいらっしゃる常連さんを中心にしたお仲間さんたち。うちお一人が隣席になったので伺いましたら、一番印象に残っているのが一之輔さんの回だそうです。

一、たらちめ/古今亭まめ菊

菊師は寄席や落語会でちょくちょく聴きますが、独演会は初めてかも知れません。なので一番弟子のまめ菊さんをお見かけしたのも今回が初めてです。口跡も菊之丞さんが若い女性になったらこんな感じかな、という菊之丞さんの落語がちゃんと入っています。少し女性の登場場面を多くしているところが女性落語家らしいアレンジですね。

一、火焔太鼓/古今亭菊之丞

これぞ古今亭、大師匠の志ん生が得意としたネタです。菊之丞さんの落語に出てくる長屋のおかみさんはしっかり者でバリバリ仕事できそうな感じです。

(中入り)

一、幾代餅/古今亭菊之丞

これも古今亭らしいネタ。幾代太夫の古風な感じと、搗き米屋の奉公人清蔵さんの実直な感じがいいです。

後半は抽選会があり、Ome Farmさん提供の有機野菜、内ヶ崎酒造さん提供のグラスや前掛け、菊之丞師匠がサインしたポスターや色紙などがクジ引き賞品として提供されました。

地下食堂はかなり広く、宴会テーブル席で4人掛けが40テーブル、計160人が満席でした。新橋演舞場のお客様だけあって、女性客には季節の着物を着てらっしゃる方も多く見られました。

落語会+食事+酒で9,000円です。落語ファンとしてはかなりハイエンドな落語会だなーと思いますが食事や酒も割高とは感じませんでした。また、大広間の座敷に落語家さんを招き入れた感じで、ホール落語よりも落語家さんとの距離が近く感じられます。

来月は柳亭市馬師匠がゲストで、市馬ファンの私はもうチケット確保してます(^^)。
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
最新コメント
[12/14 白牡丹(管理人)]
[12/14 ゆーじあむ]
[11/08 白牡丹(管理人)]
[11/07 れい]
[01/21 ゆーじあむ]
[11/15 白牡丹@管理人]
[11/15 ゆーじあむ]
[05/25 長谷川誠二郎]
[07/23 白牡丹@管理人]
[07/23 伊藤哲也]
最新TB
ブログ内検索
アーカイブ
カウンター
プロフィール
HN:
白牡丹
性別:
非公開
自己紹介:
幕末、特に新選組や旧幕府関係者の歴史を追っかけています。連絡先はmariachi*dream.com(*印を@に置き換えてください)にて。
バーコード
Livedoor BlogRoll
本棚
Copyright ©  -- 白牡丹のつぶやき --  All Rights Reserved
Designed by CriCri / Material by White Board

忍者ブログ  /  [PR]