新選組・土方歳三を中心に取り上げるブログ。2004年大河ドラマ『新選組!』・2006正月時代劇『新選組!! 土方歳三最期の一日』……脚本家・制作演出スタッフ・俳優陣の愛がこもった作品を今でも愛し続けています。幕末関係のニュースと歴史紀行(土方さんに加えて第36代江川太郎左衛門英龍、またの名を坦庵公も好き)、たまにグルメねた。今いちばん好きな言葉は「碧血丹心」です。
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『天涯の武士』全4巻が出そろったところで、第1巻から一気読みして感想を書こうとしたが、これが難しい。
小栗上野介忠順の業績と、幕末維新の歴史の展開にいろいろな思いが湧いて、一気読みなんてできないのだ。一冊読んでは休憩、一冊読んでは休憩、マンガ速読の得意な自分が朝から読み始めてまだ3巻しか読めていない(涙)。
第3巻の巻末に寄せられた日本大学藝術学部文芸学科教授、清水正教授の「木村直巳を読め」という推薦文が素晴らしい。一部だけ引用する。
推薦文といえば、第1巻では森義朗元内閣総理大臣の推薦文が掲載されているのだが、私は、大久保利通の血を引く政治家でマンガ読み、かつ『新選組!』放映時に逆賊を主人公にした大河ドラマなんかやっていいのかと国会で質問した山口県(長州)選出の議員に対して「当時は薩長の方がテロリストだと思ってますが何か?」と開き直ってくれた麻生太郎氏(リンク先は拙ブログ2005年6月3日記事「新選組!@国会」)は、この本を読むことがあるのだろうか、と思う。麻生さんがこの本を読んで感想を述べてくれるのだったら、金払ってでも聴きたいなぁ(爆)。
☆★☆★
さて、改めて、拙ブログでどんな感想を書いてきたか、まず振り返りたい。
驚いたことに、一番最初の記事はちょうど2年前だった。
2006年2月28日記事 『天涯の武士―幕臣小栗上野介』木村直巳
まだこの頃は、余裕こいた感想だったなぁ……(嘆息)。
2006年8月23日記事 『天涯の武士』にも永倉新八っつぁんが登場
永倉新八が出てきて、しかも小栗上野介と西郷どん・大久保どんが一瞬の邂逅を果たすという本作のクライマックス場面は、昨日発売の第3巻に収録された。
史実で小栗上野介がこの時に上方に出張していたかどうか、私はまだ調べていないが、本当に一瞬かすめたかかすめないかという交錯の場面をつくることによって、この後に続く歴史の非情さが際だつ演出だった。
2008年2月12日記事 『天涯の武士』やっとコミックス完結!
完結まで読んでしまったらどーんと重いものを抱えてしまうのがわかっているので、あえて軽めなコメントで済ましているなぁ。
2008年2月27日記事 『天涯の武士』第3巻・第4巻 木村直巳
☆★☆★
ふっと思う。『新選組!』でもって明治新政府に抵抗する旧幕府方に汲みする者たちを主人公にして大河ドラマをつくったNHKは、小栗上野介忠順を主人公にして大河ドラマをつくることはできないだろうか、と。もしその夢がかなうならば、『新選組!』の製作スタッフをなるべく揃えて、やって欲しい。脚本は三谷さんでキャストは『新選組!』からというのは無理としても、NHK大河ドラマで小栗上野介を主人公にできたら、それは『新選組!』より遙かにえらいことになると思う。たぶん、山口県出身の議員が国会でボケた質問するぐらいじゃ済まないだろう(苦笑)。
……というぐらい、小栗上野介というのは幕末維新の歴史を取り扱う上でややこしい人物だと思う。この作品においては、唯一といっていい架空の人物である、元薩摩藩の郷士で西郷の間諜として小栗の元に派遣され、小栗に私淑してしまった浪士・宮里団十郎が、明治5年の東京で車夫として西郷の前に現れて西郷をなじる言葉に、小栗上野介の功績を凝縮されている。
幕府の中にあって近代化の青写真を持ち、それを実現できそうな人物と見なされたからこそ、小栗上野介は西軍(この時点で白牡丹が薩長土肥ら明治新政府軍を形容する時に使用する名称)に裁判もなしに断罪され、処刑されたのだ。
視点をストーリーの最初に戻そう。1860年、ペリー来航から7年後、アメリカを目指して太平洋を渡った「ポーハタン号」には日米修好条約批准書交換のための遣米使節団が乗り込み、その中に幕臣・小栗豊後守忠順がいた。サンフランシスコまで同道した「咸臨丸」には、勝海舟が乗り込んでいた。徳川家康の直臣・小栗又一の子孫で2500石取りの直参旗本・小栗豊後守忠順は、使節団のナンバー3という立場で、アメリカ大陸を横断し、ワシントンで日本にとって不利になっていた金貨の交換レートを是正するための分析を行うなど実務的なリーダーとしての実績を積み、アメリカの政治や経済や産業や社会を実見して帰国する。一方の、貧乏御家人出身で若い時に蘭学を学んだことによって出世の糸口を築いた勝海舟は、使節団がワシントンに向けて出発するのを見届けたら日本に報告のために帰るという使命ゆえに、アメリカをじっくり観察する機会は小栗ほどではなく、帰国する(咸臨丸の中でも何かと毀誉褒貶の多い言動をかましているが^_^;)。
小栗自身は勝に含むところは何もなく、勝を癖はあるが今後の日本にとって欠くべからざる人材と見ている。しかし、勝にとっては、出自といい、同じアメリカ通でありながら目のつけどころに差があることといい、小栗の存在はライバル心と劣等感を刺激する。
言いにくいことを直言してはばからず、地位に恋々としない小栗は、日本の近代化に向けていろいろと着手するが、たびたび入る横やりに何度も辞職し、また登用されるの繰り返し。それでも、横須賀ドックやら、日本発の民間カンパニー兵庫商社の設立やら、陸軍の創設やら、浮き沈みしながらも手がけてしまう。あくまでも幕臣として日本の近代化を進めていくのだが、横須賀ドック建設に当たっては「例え…幕府が滅びて新しい持ち主に熨斗をつけてそっくり渡すことになっても、造船所《ドック》が完成していれば"土蔵つき売り家"ってことになって、この国のためにもなるだろうさ」「この国が滅びさえしなけりゃ俺達がやっていることはいつか必ず意味を持つだろうさ!」と剛毅なビジョンを持っている。
一方、勝も、その放言癖や他藩の様々な人材との交流ゆえに周囲から疎まれて何度も閑職に追いやられ、有能な自分を評価しない幕府に対する不満を募らせ、薩長同盟を弟子の坂本龍馬に吹き込むという獅子心中の虫に転じる。ただ、若くして亡くなった徳川家茂公が自分を取り立ててくれたことには感激し、幕府の死に水を取るに当たっては徳川家を滅亡させないという一線を守ろうとする。
これに対抗する倒幕勢力は西郷隆盛と大久保利通に集約されてしまっている分だけ、余計にふたりの黒いこと黒いこと(苦笑)。こんなに黒くて怖い西郷どんは他の作品では見たことがない……自分が読んでいる範囲では、これに匹敵するのは北方謙三『黒龍の棺』に出てくる西郷ぐらいだと思う^_^;。要は、幕府をぶっ潰してから新しい近代国家をつくるという路線を選んだ以上は、幕府にあって先に近代化を手がけてしまう可能性のある小栗が邪魔なので、フランスと提携を結ぶ小栗にイギリスをつかって圧力をかけたり、いろいろ妨害するわけ。で、最後には……。
という大きな歴史の中で、様々な登場人物が出てくるのだが、これがまた、面白い。小栗の盟友でフランス語に通じた栗本鋤雲、もとは小栗家の仲間で明治時代には三井財閥に発展する三井組中興の祖となった紀伊國屋利八(三野村利左衛門)、遣米使節団でアメリカ女性のアイドルとなる通訳見習いの立石斧次郎、ご存じ坂本龍馬に高杉晋作、会津藩公用方の秋月悌次郎、破戒僧(苦笑)メルメ・ド・カション、フランス公使ロッシュ、清水組二代目喜助(後の清水建設になる)、横須賀造船所をつくったフランス人技師ヴェルニー、イギリス公使パークス(これが薩摩のふたり以上に黒い^_^;)、福地源一郎(後の桜痴)、幕閣としては松前和泉守や大久保一翁など、家茂公、慶喜公、松平容保様、天領小布施の豪農にして豪商で文化人の高井鴻山、大鳥圭介、榎本武揚、ジュール・ブリュネ、など。ちょっとだけ出てくる中には、新選組からは近藤勇、土方歳三、沖田総司(この顔は私のイメージする沖田君っぽい)、芹沢鴨、永倉新八など。薩摩藩では中村半次郎もちらっと出てくる。でも桂小五郎とか岩倉公は直接出てこない。
☆★☆★
はぁ、大河でなくても、これをドラマ化しようという剛毅なテレビ局はないものでしょうかねぇ……(嘆息)。
あ、『またも辞めたか亭主殿~幕末の名奉行・小栗上野介~(リンク先はwiki)』は軽く見てますが、当時はそれほど関心がなかったんで、あまり記憶に残ってなかったんですよ(汗)。まずは、
それに『天涯の武士』ほどに小栗の存在を薩摩の大久保や西郷が脅威に感じたという設定ではないと思うので。
だから、この『天涯の武士』をドラマで見たい気持ちに変わりはありません。署名活動でも始めようかしら(苦笑)。
☆★☆★
2/29追記。大鳥圭介の顔は和装の写真に似せて割と男前。それはいいのだが、ん~、背丈が普通にあるのがなぁ……南京カボチャにして欲しかった(爆)。もう少しやかましい奴にして欲しかったし(爆×2)。
小栗上野介忠順の業績と、幕末維新の歴史の展開にいろいろな思いが湧いて、一気読みなんてできないのだ。一冊読んでは休憩、一冊読んでは休憩、マンガ速読の得意な自分が朝から読み始めてまだ3巻しか読めていない(涙)。
第3巻の巻末に寄せられた日本大学藝術学部文芸学科教授、清水正教授の「木村直巳を読め」という推薦文が素晴らしい。一部だけ引用する。
(略)小栗の理想を実現しようとする情熱と無私の行動力にさわやかな感動を覚える。が、この劇画は新国家建設に命を賭けた幕末の獅子たちの活躍だけを描いているのではない。西郷や勝海舟の小栗に対する嫉妬や憎悪をも巧みに描いた人間劇としても秀逸である。
推薦文といえば、第1巻では森義朗元内閣総理大臣の推薦文が掲載されているのだが、私は、大久保利通の血を引く政治家でマンガ読み、かつ『新選組!』放映時に逆賊を主人公にした大河ドラマなんかやっていいのかと国会で質問した山口県(長州)選出の議員に対して「当時は薩長の方がテロリストだと思ってますが何か?」と開き直ってくれた麻生太郎氏(リンク先は拙ブログ2005年6月3日記事「新選組!@国会」)は、この本を読むことがあるのだろうか、と思う。麻生さんがこの本を読んで感想を述べてくれるのだったら、金払ってでも聴きたいなぁ(爆)。
☆★☆★
さて、改めて、拙ブログでどんな感想を書いてきたか、まず振り返りたい。
驚いたことに、一番最初の記事はちょうど2年前だった。
2006年2月28日記事 『天涯の武士―幕臣小栗上野介』木村直巳
主人公は小栗上野介。そして、幕府内の最大のライバルが勝海舟。この勝海舟、胡散臭いわ、貧乏御家人の出身で苦労して出世してきただけに、大身の旗本出身の小栗上野介に向けるライバル心が暑苦しいわ(笑)で、むっちゃ受けまくった。さらに、薩摩の西郷隆盛が、黒い(爆)。いやー、ますます受けた。もっとも、その親友、大久保一蔵どんは、黒い上に真っ暗(汗)……でも小栗に才を認められていたりする。
出てくる人物たちも多彩だし、写真が残っている人物はすごく特徴を捉えていて、見ていて楽しい。幕府側も各藩士も沢山出てくる……秋月様もご出演(笑)。そして、点景のように京都大阪で新選組が出てきて、芹沢鴨や近藤勇に混じって、和装の土方さんもちっちゃく何コマかに出てきて、木村さん、『ダークキャット』で描いたバラガキが混じった土方歳三を思い出しながら描いていたんだろうなぁと、にやにやしてしまった。
まだこの頃は、余裕こいた感想だったなぁ……(嘆息)。
2006年8月23日記事 『天涯の武士』にも永倉新八っつぁんが登場
大坂から京都入りした小栗上野介らご一行を、京都守護職の会津公のはからいで新選組が警備するというエピソードが。その新選組の警備を受けながら、主人公の小栗さんが西郷吉之助と一瞬の邂逅をするというのが今回のクライマックスでした。
永倉新八っつぁん、大柄で割と恰幅がよくて、聞き書きで伝えられるような雰囲気で描かれてました。
史実かどうかわかりませんが、『ダークキャット』で土方歳三・沖田総司を登場させた木村先生がちょい役で新選組を登場させたかったのかも知れません。
ストーリーの方も、だんだん時代が押し詰まってきて、小栗さんと西郷・大久保コンビの暗闘がますます楽しみになってきています。
永倉新八が出てきて、しかも小栗上野介と西郷どん・大久保どんが一瞬の邂逅を果たすという本作のクライマックス場面は、昨日発売の第3巻に収録された。
史実で小栗上野介がこの時に上方に出張していたかどうか、私はまだ調べていないが、本当に一瞬かすめたかかすめないかという交錯の場面をつくることによって、この後に続く歴史の非情さが際だつ演出だった。
2008年2月12日記事 『天涯の武士』やっとコミックス完結!
個人的には、他の作品では見られないほど真っ黒い(汗)西郷どんが魅力的だと思う……ほとんど大魔神状態(大苦笑)。大久保どんはすごーく陰々滅々(苦笑)。勝海舟も、ちょっと悪党が入ってる……でも、時代の変わり目で活躍できるのはそんな人物だろうと思う。
一方、めっさ有能ではあるけど、真っ正直にずばずばと物言いがきつく、気にくわないとすぐに辞任カードを切るサラブレッドな小栗上野介は、組織のしがらみがない関係として見たら魅力的ではあるけど、上司にも同僚にも部下にも持ちたくないタイプだ(爆)。
完結まで読んでしまったらどーんと重いものを抱えてしまうのがわかっているので、あえて軽めなコメントで済ましているなぁ。
2008年2月27日記事 『天涯の武士』第3巻・第4巻 木村直巳
明治維新が日本の夜明けであり、それ以前の時代は暗黒の封建時代であったと信じる方には、ちょっと受け容れがたいかも知れない(特に、維新の元勲である3人のうち薩摩出身の西郷隆盛・大久保利通は、この作品ではとってもダークな役柄……)。でも、処刑された河原に「罪なくして斬らる」と碑を建てられた小栗上野介忠順の視点からすると、幕末維新の激動の歴史は、幕府の側から進められたかも知れない近代国家日本の骨格を示すと同時に、もし幕府が崩壊したとしても次代の政府に土蔵付きの家を譲ることになると予見する近代化の土台をつくる時代でもあった。
幕末の歴史を新選組や会津藩などを軸に見てきた自分には、それを補完する歴史を幕府の中央政局から見ることができた。でも第3巻・第4巻には、小栗上野介とその周辺人物だけでなく、新たに家茂公・慶喜公・松平容保様・榎本武揚・大鳥圭介・ブリュネといったお馴染みの人物も登場して、親しみが湧く。
そして、なぜ小栗上野介忠順が裁判もなしに斬首されなければならないのか(比較する対象かどうかは微妙だが、少なくとも近藤勇は投降した時に詮議は受けた……拷問もあったようではあるが……汗)、フィクションではあるもののかなーり説得力のある展開。激動の時代にあっては、嫉妬や羨望や脅威といった感情が平時以上にたやすく憎悪や敵意に転換することを感じさせられる展開だ。
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ふっと思う。『新選組!』でもって明治新政府に抵抗する旧幕府方に汲みする者たちを主人公にして大河ドラマをつくったNHKは、小栗上野介忠順を主人公にして大河ドラマをつくることはできないだろうか、と。もしその夢がかなうならば、『新選組!』の製作スタッフをなるべく揃えて、やって欲しい。脚本は三谷さんでキャストは『新選組!』からというのは無理としても、NHK大河ドラマで小栗上野介を主人公にできたら、それは『新選組!』より遙かにえらいことになると思う。たぶん、山口県出身の議員が国会でボケた質問するぐらいじゃ済まないだろう(苦笑)。
……というぐらい、小栗上野介というのは幕末維新の歴史を取り扱う上でややこしい人物だと思う。この作品においては、唯一といっていい架空の人物である、元薩摩藩の郷士で西郷の間諜として小栗の元に派遣され、小栗に私淑してしまった浪士・宮里団十郎が、明治5年の東京で車夫として西郷の前に現れて西郷をなじる言葉に、小栗上野介の功績を凝縮されている。
「政府は廃藩置県ば断行されたそうでごわすな
郵政制度 鉄道 銀行《バンク》に株式会社《カンパニー》…
奇怪なことに
明治の文明開化とか
申すものは
おいが以前 ある幕臣から
聞いた話と同じもの
ばかりでごわす」
幕府の中にあって近代化の青写真を持ち、それを実現できそうな人物と見なされたからこそ、小栗上野介は西軍(この時点で白牡丹が薩長土肥ら明治新政府軍を形容する時に使用する名称)に裁判もなしに断罪され、処刑されたのだ。
視点をストーリーの最初に戻そう。1860年、ペリー来航から7年後、アメリカを目指して太平洋を渡った「ポーハタン号」には日米修好条約批准書交換のための遣米使節団が乗り込み、その中に幕臣・小栗豊後守忠順がいた。サンフランシスコまで同道した「咸臨丸」には、勝海舟が乗り込んでいた。徳川家康の直臣・小栗又一の子孫で2500石取りの直参旗本・小栗豊後守忠順は、使節団のナンバー3という立場で、アメリカ大陸を横断し、ワシントンで日本にとって不利になっていた金貨の交換レートを是正するための分析を行うなど実務的なリーダーとしての実績を積み、アメリカの政治や経済や産業や社会を実見して帰国する。一方の、貧乏御家人出身で若い時に蘭学を学んだことによって出世の糸口を築いた勝海舟は、使節団がワシントンに向けて出発するのを見届けたら日本に報告のために帰るという使命ゆえに、アメリカをじっくり観察する機会は小栗ほどではなく、帰国する(咸臨丸の中でも何かと毀誉褒貶の多い言動をかましているが^_^;)。
小栗自身は勝に含むところは何もなく、勝を癖はあるが今後の日本にとって欠くべからざる人材と見ている。しかし、勝にとっては、出自といい、同じアメリカ通でありながら目のつけどころに差があることといい、小栗の存在はライバル心と劣等感を刺激する。
言いにくいことを直言してはばからず、地位に恋々としない小栗は、日本の近代化に向けていろいろと着手するが、たびたび入る横やりに何度も辞職し、また登用されるの繰り返し。それでも、横須賀ドックやら、日本発の民間カンパニー兵庫商社の設立やら、陸軍の創設やら、浮き沈みしながらも手がけてしまう。あくまでも幕臣として日本の近代化を進めていくのだが、横須賀ドック建設に当たっては「例え…幕府が滅びて新しい持ち主に熨斗をつけてそっくり渡すことになっても、造船所《ドック》が完成していれば"土蔵つき売り家"ってことになって、この国のためにもなるだろうさ」「この国が滅びさえしなけりゃ俺達がやっていることはいつか必ず意味を持つだろうさ!」と剛毅なビジョンを持っている。
一方、勝も、その放言癖や他藩の様々な人材との交流ゆえに周囲から疎まれて何度も閑職に追いやられ、有能な自分を評価しない幕府に対する不満を募らせ、薩長同盟を弟子の坂本龍馬に吹き込むという獅子心中の虫に転じる。ただ、若くして亡くなった徳川家茂公が自分を取り立ててくれたことには感激し、幕府の死に水を取るに当たっては徳川家を滅亡させないという一線を守ろうとする。
これに対抗する倒幕勢力は西郷隆盛と大久保利通に集約されてしまっている分だけ、余計にふたりの黒いこと黒いこと(苦笑)。こんなに黒くて怖い西郷どんは他の作品では見たことがない……自分が読んでいる範囲では、これに匹敵するのは北方謙三『黒龍の棺』に出てくる西郷ぐらいだと思う^_^;。要は、幕府をぶっ潰してから新しい近代国家をつくるという路線を選んだ以上は、幕府にあって先に近代化を手がけてしまう可能性のある小栗が邪魔なので、フランスと提携を結ぶ小栗にイギリスをつかって圧力をかけたり、いろいろ妨害するわけ。で、最後には……。
という大きな歴史の中で、様々な登場人物が出てくるのだが、これがまた、面白い。小栗の盟友でフランス語に通じた栗本鋤雲、もとは小栗家の仲間で明治時代には三井財閥に発展する三井組中興の祖となった紀伊國屋利八(三野村利左衛門)、遣米使節団でアメリカ女性のアイドルとなる通訳見習いの立石斧次郎、ご存じ坂本龍馬に高杉晋作、会津藩公用方の秋月悌次郎、破戒僧(苦笑)メルメ・ド・カション、フランス公使ロッシュ、清水組二代目喜助(後の清水建設になる)、横須賀造船所をつくったフランス人技師ヴェルニー、イギリス公使パークス(これが薩摩のふたり以上に黒い^_^;)、福地源一郎(後の桜痴)、幕閣としては松前和泉守や大久保一翁など、家茂公、慶喜公、松平容保様、天領小布施の豪農にして豪商で文化人の高井鴻山、大鳥圭介、榎本武揚、ジュール・ブリュネ、など。ちょっとだけ出てくる中には、新選組からは近藤勇、土方歳三、沖田総司(この顔は私のイメージする沖田君っぽい)、芹沢鴨、永倉新八など。薩摩藩では中村半次郎もちらっと出てくる。でも桂小五郎とか岩倉公は直接出てこない。
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はぁ、大河でなくても、これをドラマ化しようという剛毅なテレビ局はないものでしょうかねぇ……(嘆息)。
あ、『またも辞めたか亭主殿~幕末の名奉行・小栗上野介~(リンク先はwiki)』は軽く見てますが、当時はそれほど関心がなかったんで、あまり記憶に残ってなかったんですよ(汗)。まずは、
それに『天涯の武士』ほどに小栗の存在を薩摩の大久保や西郷が脅威に感じたという設定ではないと思うので。
だから、この『天涯の武士』をドラマで見たい気持ちに変わりはありません。署名活動でも始めようかしら(苦笑)。
☆★☆★
2/29追記。大鳥圭介の顔は和装の写真に似せて割と男前。それはいいのだが、ん~、背丈が普通にあるのがなぁ……南京カボチャにして欲しかった(爆)。もう少しやかましい奴にして欲しかったし(爆×2)。
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彼と勝海舟のぶつかり合いなどを丁寧に描いた結果、「何で小栗って死罪になったの?」ということがまるっきりすっ飛ばされてしまったというか(汗)。唐突に何の脈絡もなく最期の日が来てしまい、「おいおいおい!」でした。
> 彼と勝海舟のぶつかり合いなどを丁寧に描いた結果、「何で小栗って死罪になったの?」ということがまるっきりすっ飛ばされてしまったというか(汗)。
う~ん、それじゃやはり、私にとっては『天涯の武士』の代わりにはなりませんorz。
『天涯の武士』お勧めです、青空百景さん。