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新選組・土方歳三を中心に取り上げるブログ。2004年大河ドラマ『新選組!』・2006正月時代劇『新選組!! 土方歳三最期の一日』……脚本家・制作演出スタッフ・俳優陣の愛がこもった作品を今でも愛し続けています。幕末関係のニュースと歴史紀行(土方さんに加えて第36代江川太郎左衛門英龍、またの名を坦庵公も好き)、たまにグルメねた。今いちばん好きな言葉は「碧血丹心」です。
久々に幕末ニュースです。

北海道
辞林「幕末の三筆・市河米庵と一族門流展」 札幌・小原道城書道美術館 /北海道
 「幕末の三筆」と称された市河米庵(1779~1858年)の作品を集めた特別展「幕末の三筆・市河米庵と一族門流展」が、小原道城書道美術館(札幌市中央区北2西2)で開かれている。
 市河米庵は江戸唐様書の大家。剛健な書風で知られ、大名らにも書を指導。特別展では米庵を中心に父で儒学者の市河寛斎ら一族の書画や門流の書など約40点を展示している。

東京
土方の逸話や人柄紹介…町田の小島さん出版
奉公で指導力養う 手紙に「モテた」…

土方歳三(佐藤彦五郎新選組資料館蔵)
土方歳三(佐藤彦五郎新選組資料館蔵)
「幕末群像伝 土方歳三」を出版した小島さん
「幕末群像伝 土方歳三」を出版した小島さん

 新選組の研究をライフワークとする町田市小野路町、小島資料館館長の小島政孝さん(67)が、新選組副長の土方歳三の生涯やエピソードを伝える「幕末群像伝 土方歳三」を出版した。小島さんは「テレビなどでのイメージとは異なる土方の人間性を読み取ってもらえればうれしい」と話している。

 小島さんは、旧小野路村の豪農だった小島家の24代当主。20代当主の漢学者、小島鹿之助は自宅の庭を剣術の出稽古に開放し、のちに新選組局長となる近藤勇や土方、沖田総司らが訪れた。小島家には、1836年(天保7年)から1921年(大正10年)まで4代にわたって書き継がれた「小島日記」などの史料が所蔵されており、新選組に関する貴重な記録にもなっている。

 小島さんは今回、小島日記などをもとに、土方の出生、多摩ゆかりの剣術・天然理心流入門などから、北海道・函館で戦死するまでの様々なエピソードをつづった。

 土方は11歳から24歳の頃まで商家に奉公に出ており、この経験が新選組での指導力に生かされたとみられるという。また、土方から鹿之助の母に風邪薬が送られてきた際には、用法を詳細に記した手紙が添えられていたことや、京都で土方が女性にもてたことを自慢げに記した自筆の手紙などからは、女性への優しさがうかがわれることも紹介している。

 四六判、64ページ。2000部発行。税込み800円。希望者には送料込み1000円で分ける。問い合わせは小島資料館(042・736・8777)。

 小島さんは、「幕末群像伝~多摩の豪農・小島家を巡る人々~」の執筆にも取り組んでいる。土方や近藤、土方の義兄・佐藤彦五郎ら33人を取り上げる予定で、来年には出版するという。

土方歳三

 1835年(天保6年)、石田村(現日野市)生まれ。新選組副長として、幕末の京都で治安維持にあたった。局長の近藤勇が新政府軍に捕縛された後も宇都宮、会津などを転戦。69年(明治2年)、函館五稜郭の戦いで戦死した。

2017年08月26日 Copyright © The Yomiuri Shimbun

歳三の新たな一面を紹介 文化小島資料館で上梓
 小島資料館の館長・小島政孝氏(小島家24代当主)が「幕末群像伝〜土方歳三」を上梓した。小島家20代当主である小島鹿之助は近藤勇、土方歳三らと親交があり、書簡など様々な資料が現在も残っている。新撰組副長のとしての土方歳三のほか、幼少期のことや女性自慢など新たな一面を資料を読み解きながら記している。

 今回の冊子は町田ジャーナルで連載していたコラム「博愛堂清話」(1998年〜2011年)の中から土方歳三の部分を抜き出し、加筆したもの。

 特に新しい発見は、歳三の幼少期のこと。武蔵国多摩郡石田村(現東京都日野市)で生まれた歳三は、幼少期に長年にわたり奉公にでたことが石田村の「宗門人別帳」を調べることで分かった。11歳から24歳までと長く、小島氏は書籍の中で「小学5年から、大学院修士課程までを、奉公で過ごしたことになる。彼の人生35年間においても、この期間は、長く人格形成にもおいても重要な時期であった」と記した。人の使い方や指導者としての立場など、後の新撰組副長としての指導力に活かされたと、小島氏は語る。

 小島家当主4代前にあたる小島鹿之助は、近藤勇、土方歳三と親交が深く、年齢は鹿之助が、近藤より4歳年長だった。そして近藤より1歳年下の歳三。数多くの書簡の中には、歳三の女性自慢もあり、いかに京の街で女性にモテているかを報告してきた。小説やテレビ、映画で知っている歳三とは違った一面も紹介している。

 冊子は四六版で61ページ。定価740円(税別)。希望者は現金書留で〒195―0064町田市小野路町950番「小島資料館」宛。送料込で1000円同封のこと。ほか、町田駅前のぽっぽ町田でも販売している。

静岡
幕末の英雄「書」展示 静岡・駿府博物館、「三舟」など30点(2017/8/20 09:08)
 静岡市駿河区登呂の駿府博物館で19日、大政奉還から150周年を記念する企画展「幕末維新 英雄たちの書~徳川慶喜、勝海舟、山岡鉄舟、他~」(同館、静岡新聞社・静岡放送主催)が始まった。11月19日まで。
 同館の所蔵品から、幕末から明治にかけて活躍した人物の書を中心に30点を展示した。江戸城無血開城に尽力し、「幕末の三舟」と呼ばれた勝海舟、山岡鉄舟、高橋泥舟の書や、江戸幕府最後の将軍徳川慶喜の書も並んでいる。江戸中期の駿府の城下町を描いた土佐光成の「駿府鳥瞰(ちょうかん)図」も特別展示されている。10月7日からの後期展は、一部展示品を入れ替える。
 入館料は高校生以上500円、中学生以下無料。8月26日午後2時からは、書家大谷青嵐さんのギャラリートークが開かれる。問い合わせは同館<電054(284)3216>へ。

京都
京都幕末祭龍馬の新史料紹介 対談や報告 3日・東山 /京都
幕末維新の歴史を振り返る「第5回京都幕末祭」(NPO法人京都龍馬会主催)の講演会が3日午後1時半、京都市東山区の京都国立博物館平成知新館である。幕末の志士、坂本龍馬の没後150年を記念し、新発見の手紙などの史料を読み解き、知られざる姿を探る。

宮川禎一・同博物館上席研究員と京都龍馬会の赤尾博章理事…
 以下は有料記事となります。

【京都ホテルオークラ】10月13日で「大政奉還」表明から150年 オリジナルカクテルシリーズ 第5弾
[オークラ ホテルズ & リゾーツ]
歴史的瞬間にスポットをあてた一杯が9、10月に登場!

京都ホテルオークラ(本社:京都市中京区 (株)京都ホテル、東証2部上場、代表取締役社長 福永法弘)では、「大政奉還」が表明された10月13日に合わせ、2017年9月1日(金)~10月31日(火)に「大政奉還」にちなんだオリジナルカクテルを販売いたします。


京都ホテルオークラ オリジナルカクテル「維新」(左)と「決断」(右)
2017年は徳川家15代将軍慶喜が二条城で朝廷に政権を返上する「大政奉還」を表明してから150周年にあたります。京都ホテルオークラでは、幕末期、ホテルと同じ場所に長州藩邸があったことにちなみ、長州藩の志士「桂小五郎」と「二条城」をメインテーマに1月からオリジナルカクテルの販売を続けてまいりました。
2ヶ月毎にサブテーマや素材を変えながらシリーズ展開してきたこのカクテルを通じ、新たなお客様とのコミュニケーションや出会いの機会も生まれ、好評をいただいております。

今回、徳川慶喜が二条城二の丸御殿大広間に諸藩の重臣を集め「大政奉還」を表明したという10月13日に合わせ、その歴史的瞬間にスポットをあてた一杯が登場いたします。「二条城」をはじめ、幕末・明治維新ゆかりの地が数多くある京都で、歴史を動かした人々に思いを馳せる一杯をお楽しみください。

◆大政奉還150周年 オリジナルカクテル(9・10月)概要
「決断」(写真右)
「大政奉還」が表明された「二条城」大広間の障壁画と、新たな時代への幕開けをイメージし、美しい黄金色に仕上げた一杯。柚子やお茶など日本の素材にこだわった豊かなボタニカルが特長の「季の美 京都ドライジン」をベースに、きりっとした味わいの中に京都の「特別牛乳」でまろやかさをプラスしております。

「維新」(写真左)
朝の光に照らされた草原を思わせる鮮やかな緑で「大政奉還」後に新政府樹立へと歩みだした桂小五郎らの旅立ちを表現した一杯。明治初期に日本へもたらされて以来、多くのリーダーや文人に愛されたスコッチウイスキー「オールドパー」がベースの柔らかな味わいの中に、柚子の香りを利かせ、爽やかな飲み口に仕上げております。

【 価 格 】各1,782円(税・サービス料込)
【販売店舗】 2階 バー「チッペンデール」、17階 トップラウンジ「オリゾンテ」
*「オリゾンテ」はラウンジタイムのみ
【販売期間】2017年9月1日(金)~10月31日(火)
*大政奉還150周年カクテルシリーズは2017年12月29日(金)まで販売


【京都ホテルオークラについて】
京都市の中心部に佇む、1888年創業の伝統あるホテル。京の風情とヨーロピアンテイストが調和した落ち着いた趣の館内には国内外の賓客を迎えてきた歴史が刻まれています。高さ約60メートルの最上階レストランフロアからの眺めは美しく、東山三十六峰や鴨川、古都の街並みが一望できます。

〒604-8558
京都市中京区河原町御池
TEL:075-211-5111(代表)
アクセス:地下鉄東西線「京都市役所前駅」直結。/JR京都駅より車で約15分。
webサイトURL:http://okura.kyotohotel.co.jp/

企業プレスリリース詳細へ (2017/09/01-17:41)



兵庫
知られざる開港前夜に焦点 神戸で「開国への潮流」展
「長崎海軍伝習所絵図」など当時の様子を伝える資料が並ぶ会場=神戸市立博物館
拡大
「長崎海軍伝習所絵図」など当時の様子を伝える資料が並ぶ会場=神戸市立博物館
 神戸開港150年目の企画展「開国への潮流-開港前夜の兵庫と神戸」(神戸新聞社など主催)が、神戸市立博物館(神戸市中央区京町)で開かれている。幕末の開港までの準備段階に焦点をあてた展示。その後、貿易拠点として発展していく神戸の礎を築いた先人たちの軌跡をたどることができる。(ライター・加藤紀子)

 兵庫(神戸)港が開港したのは1868年。江戸幕府が欧米諸国と結んだ通商条約で開港場に選ばれていたが、幕末の混乱で5年遅れての実現となった。その間に、将軍徳川家茂の上洛艦隊を受け入れる港として整備されるなど、急速に近代化が進んだ。

 学芸員の三好俊さんは「準備段階の歴史は、開港後に比べてあまり知られていない」と、展覧会の狙いを話す。今回は当時の史料およそ100点を通じて、外国人の来日に衝撃を受けながらも、積極的に変化に対応していった街の姿を紹介する。

 注目の展示品は、最近になって見つかった「レザノフ屏風(びょうぶ)」だろう。1804(文化元)年に長崎に来航し、幕府に通商開始を求めて滞在したロシア人・レザノフ。自身の肖像のほか、将軍への献上のために持ち込んだ品々が描かれている。当時の人たちの視点で紹介してあり、初めて接する異国文化への認識が分かる。

 「長崎海軍伝習所絵図」は、幕末の海事教育施設の考証復元図。大坂湾の海図作成を手掛けた人材を育成したことで知られ、ここで学んだ多くが明治時代に活躍する。絵図は、海洋国家として成長していく日本に欠かせなかった伝習所の訓練の様子を伝える。

 神戸市指定文化財の「和田岬石堡塔外冑壁(せきほとうがいちゅうへき)之図」は、昨年までの修理工事で分かった砲台の調査結果の資料も併せて展示する。中央に円柱形の石造砲塔を備えるなど、海外で使われていた構造を日本で初めて導入した砲台だが、建造にあたっては日本の伝統技術も貢献した。

 例えば、火薬庫に大砲の冷却水が流れ込まないように、和船の造船で培われた高度な防水技術が使われている。海外の新工法を積極的に取り入れる過程で、従来の技法も織り交ぜながら模索した跡がうかがえる。

 神戸の開港を伝えるイギリスの絵入新聞「イラストレイテッド・ロンドンニュース」は、銅版画で表現した神戸港の光景と合わせてセレモニーの様子を記事にする。神戸港が世界に向けてデビューしたことを報道したもので、新しい時代の幕開けを感じる。

 三好さんは「神戸港の発展には、開港準備に奔走し、模索した先人たちの努力があったことを感じてほしい」と話している。

 24日まで。月曜休館(ただし、18日は開館し19日休館)。一般800円、大学生600円、高校生450円、小・中学生300円。JR三ノ宮駅、阪神、阪急神戸三宮駅から徒歩10分。TEL078・391・0035

■インフォメーション

・記念シンポジウム「神戸開港と港の近代化」 3日午後1時から。当日正午から入場整理券配布。

・サタデー・トーク 学芸員による見どころ解説 毎週土曜午後2時から。

 いずれも聴講無料。観覧券必要。先着160人。

岡山
徳兵衛漂流記米大統領選の記述発見 幕末の備中 4年ごとに「王」選ぶ 津山郷土博所蔵 /岡山
 2015年に津山市で見つかり、19世紀半ばの米国の様子を伝える日本人船乗りの漂流記に、米大統領選に関する記述があることが分かった。4年ごとに「王」を選んでいるなどと記され、米大統領選を紹介した県内最古の史料である可能性が高い。幕末の県内の町民が、世襲制とは異なるトップがいると知っていたことを裏付ける貴重なものだ。【小林一彦】

 記述があったのは、備中(現在の県西部)出身の徳兵衛が米サンフランシスコなどを訪れた体験を記した「漂流記」。徳兵衛が帰国を果たした後の1855年、津山城下の西今町(現・津山市西今町)の商家だった野々口屋佐一郎が聞き書きした。160年後、津山郷土博物館の所蔵品から発見された。

 漂流記で徳兵衛は「アメリカニ国王なし弐(二)十四ヶ国主より四年〓(しめ)其内ノ賢者を見立して王とするよし承り候」と述べている。「弐十四ヶ国」は24州を指すとみられる。米大統領選は当時も今も州政府のトップから選ぶ方法ではなく、州の数も徳兵衛のサンフランシスコ滞在時は31州になっていたため正確性に欠けるが、漂流記後半の付記冒頭に記され、徳兵衛や佐一郎の関心の高さがうかがわれる。

 徳兵衛と同じ「栄力丸」で漂流した船乗りたちが帰郷後、出身地の藩関係者に聴取された記録として知られる史料でも、「入札」で「年季を限り国王に見立て」(姫路藩)、「一任四年限りに代り持に」(鳥取藩)などと、やはり任期を限って国の代表を交代させていると報告している。

 徳兵衛が米大統領選について知ったのは、米国から移送された中国・上海滞在時だった可能性が高い。徳兵衛らの帰国を支援した先輩漂流民の山本音吉は当時、上海の英国系商社員として働いていた。栄力丸の乗組員が音吉から海外事情を教えてもらったと述べている史料もある。

 国内では、佐一郎が聞き書きした55年の前年に日米和親条約が結ばれ、津山出身の蘭学者、箕作阮甫(みつくりげんぽ)がペリー初来日時(53年)に持参した米国大統領国書の翻訳を手掛けるなどしている。米国への関心が国内で高まっていた時期で、徳兵衛のもたらした情報は多くの町民らに広がっていた可能性がある。

米サンフランシスコに滞在
 徳兵衛は1820年代初頭に現在の倉敷市玉島勇崎で生まれたとみられる。鎖国期の1850年に廻船(かいせん)「栄力丸」(乗組員17人)に乗船。江戸から上方方面に帰る途中、紀伊半島沖で嵐に遭遇し、かじや帆柱が破損するなどして約50日間太平洋を漂流した。

 米国商船に救助され、そのまま51~52年に米サンフランシスコに滞在。その後、中国に移送されて54年に長崎へ帰国。長崎奉行による取り調べを受けた後、翌年1月(旧暦)に当時兄が暮らしていた松山新町(現高梁市新町)に帰郷した。佐一郎による聞き書きは、その3カ月後だった。

高知
湿板写真や機材 維新映し出す・・・中岡慎太郎館
 江戸末期から明治期にかけて撮影されたガラス湿板写真などを展示する「幕末維新写真展」が、北川村の中岡慎太郎館で開かれている。同館は「写真を通じて当時の雰囲気を体感してもらえれば」としている。4日まで。

 維新期に活躍した武士らの写真や、当時のカメラ機材など約150点を展示。侍が刀を抜いて構える写真は初公開で、当時は抜刀行為が厳しく制限されていたため、非常に貴重だという。和装と洋装が入り交じった写真も初公開。坂本龍馬や中岡慎太郎ら幕末の志士のほか、町人や歌舞伎役者たちの姿も並ぶ。

 「日本写真の祖」とも評される上野彦馬や、明治天皇の「御真影」を初めて撮影した内田九一ら、当時の写真家が撮影した写真も。最初期の報道カメラマンと言われるフェリーチェ・ベアトが使っていたとされるカメラの現物も展示されている。このほか、当時の写真技法を記したテキストなどのマニュアル本や、被写体用の敷物を含めたカメラセット一式も紹介。同館の担当者は「写真の歴史を知る上で貴重な資料」としている。

 高校生以上500円、小中学生300円。問い合わせは、同館(0887・38・8600)。


佐賀
幕末の「精煉方」技術今に 副島硝子工業の「肥前びーどろ」 ガラスの美工芸の世界へ [佐賀県] 
 透き通る清涼感と、柔らかな手ざわりが魅力の「肥前びーどろ」。幕末佐賀藩の理化学研究所「精煉方(せいれんかた)」にルーツを持ち、副島硝子(がらす)工業=佐賀市道祖元町=がその技術を今に伝えている。

 精煉方は1852年、多布施川のほとりに設置。佐賀藩は、佐野常民を主任に秀才たちを集め、洋書の翻訳を基礎に蒸気船や大砲製造を進めた。カメラや紙、薬剤と研究分野は幅広く、佐野常民記念館の諸田謙次郎館長(63)は「日本の近代化と物づくりの発祥の地、原点になった」と話す。

 飽くなき好奇心と研究熱を支えたのが、敷地内に置かれたガラス工場だった。昼夜煌々(こうこう)と火がともる熔解(ようかい)炉で実験用ビーカーやフラスコが作られ、火を操る術は肥前陶工たちの知恵があったともいう。

 ガラス製造は日本では、弥生時代の勾玉(まがたま)製造などが確認されているが、本格的な国産が始まったのは17世紀前後から。出島での交易を通して製造技術が伝わったらしい。ポルトガル語がなまって「びーどろ」「ぎやまん」と呼ばれ珍重された。佐賀藩では武雄鍋島家が最初にガラス製造に着手し、精煉方での製造へとつながっていった。

 副島硝子工業の初代社長、副島源一郎さんは8歳で精煉方に弟子入り。孫にあたる副島太郎社長(69)は「祖父はまだ子どもだったので、佐野常民さんから文机(ふづくえ)や革帯(ベルト)をもらいかわいがられたそうです」と明かす。精煉方のガラス技術は明治に民営会社に受け継がれ、副島硝子工業は1903年に独立。ランプやビン類で近代化に貢献し、金魚鉢やハエ取り瓶などが広く普及した。

 昭和の高度成長期にはオートメーション工場の出現で経営難に直面する。太郎社長が営業担当として入社したばかりのころだった。「もう手作りはやめようとしていたら、職人さんが『30年ガラス一筋で、やっと作りたい物ができてきた。無念で仕方ない』と言うんです。そこで若造だった私にも物づくりへの羨望(せんぼう)が生まれた。『もうちょっと辛抱すれば、きっといい時代が来る』と、自分も工場に入って作り始めました」

 手作りガラスブームのあけぼのも見え始めていた。看板商品の「肥前びーどろ」は精煉方ゆかりのガラス棒を使う「ジャッパン吹き」で、型を使わない宙吹きで仕上げる。柔らかな曲線の酒器「肥前燗瓶(かんびん)」は佐賀の酒席に異国情緒を添え、用と美を兼ね備えた器たちは茶人にも愛された。

 近年では明るい色彩の虹色シリーズが人気で、「伝統を受け継ぎつつ、新しいガラスを作っていきたい」と太郎社長。アクセサリーや玉手箱なども企画中で、より工芸としてのガラスの美を生かしていきたいという。

 理化学研究から近代化の原動力に、そして日用品から工芸の世界へ。精煉方の物づくり精神は、今もガラスのきらめきの中に宿っている。

     ×

 9月10日まで、佐賀市川副町の佐野常民記念館で企画展「ガラスの世界~佐賀藩精煉方の歩みと佐野常民」が開催中。精煉方の歴史と副島硝子工業の製品約30点を展示。一般300円、小学生~高校生100円。9月4日は休館。同館=0952(34)9455。副島硝子工業=0952(24)4211。展示販売あり。

=2017/08/31付 西日本新聞朝刊=

未来のヒント、佐賀に30年から「幕末維新博覧会」
 明治維新150年を迎える平成30年、佐賀県が「肥前さが幕末維新博覧会」を開催する。武士道を説いた「葉隠」や、優れた人材を輩出した藩校などを取り上げ、先人の言行をダイナミックに体感できるテーマ館を設ける。最新映像を駆使し、過去の偉業から未来のヒントをつかむ展示を目指す。 (高瀬真由子)

 中核施設「幕末維新記念館」は、市中心部にある市村記念体育館内に整備する。

 幕末、肥前佐賀藩は蒸気船や鉄製大砲、反射炉などを、国内で初めて実用化した。こうしたイノベーション(技術革新)を、最新技術を駆使して伝える。

 このほか、周辺施設に2つのテーマ館を整備する。旧三省銀行が会場の「葉隠みらい館」では、映像で葉隠の文章を写し出す。

 葉隠は佐賀藩の武士、山本常朝が語った教訓など約1300項目を弟子が記録したもので、写本がひそかに藩内に伝わった。藩士に対する教材として、重視された。

 旧古賀家を会場とする「リアル弘道館」では、藩校を再現し、先人の学びの様子を伝える。

 維新後、明治政府で活躍した大隈重信、副島種臣、大木喬任、江藤新平、佐野常民、島義勇らはいずれも弘道館で学んだ。

 150年前にタイムスリップしたような体験ができるよう、佐賀県は展示構成に知恵を絞っている。

 開催期間は、来年3月17日~平成31年1月14日。期間中、博物館など周辺施設でも特別展を検討する。特設レストランも企画し、県内の回遊性を高める。県の担当者は「歴史や文化を含め、佐賀全体を楽しんでほしい」と語った。

 維新を推進した「薩長土肥」のうち、肥前佐賀は注目される機会が少ない。県は博覧会を通じて、佐賀のアピールを図る。

「唐津八偉人」の志を未来へ 市が近代化貢献の8人選定 来年の維新150年に合わせ [佐賀県]
 唐津市は、来年の明治維新150年に合わせ、日本の近代化に貢献した人材を輩出した唐津藩の英語学校「耐恒寮(たいこうりょう)」出身の4人をはじめ、維新前後に活躍した人物計8人を「唐津八偉人」に選定した。先人の生き方や成し遂げた偉業を顕彰し、子どもたちに志をもって未来へと歩んでもらうのが目的。

 唐津出身者を対象に「耐恒寮」の他は「幕末」「石炭」「女性」「近代化」をキーワードにして決めた。八偉人をあしらったタペストリー(縦、横ともに2・4メートル)6枚を作って市中心街のビルなどの壁面に張り出したり、ポスター・チラシも制作したりする方針で、9月1日開会の定例市議会に提案する本年度一般会計補正予算案に243万円を盛り込む。小中学生向けに、八偉人の活躍を知ってもらうための教材作成も視野に入れている。

 八偉人は、小笠原長行(ながみち)▽大野右仲(すけなか)▽辰野金吾▽曽禰(そね)達蔵▽天野為之▽大島小太郎▽奥村五百子(いおこ)▽長谷川芳之助。

 小笠原長行は、幕末に唐津藩主だった長国の養嗣子。幕府に才覚が認められ、老中となって外交で手腕を振るった。戊辰戦争では、旧幕府軍に従って北海道・函館まで渡って忠誠を尽くした。大野は儒学者として藩に仕え、戊辰戦争では長行の側近として明治新政府軍に抗戦し、宮城県・仙台で新選組に入隊。指揮を執った土方歳三が狙撃で亡くなる最期を記した「函館戦記」で知られる。

 耐恒寮は1871(明治4)年、唐津藩知事だった長国が開いた。後に首相となる高橋是清を英語教師として招き、閉校後は薫陶を受けた生徒たちが上京。建築家となった辰野は日本の「表玄関」となる東京駅や日本銀行本店の設計を担う国家プロジェクトにかかわり、曽禰も建築家として、東京駅前にロンドンの銀行街をモデルにした「丸の内煉瓦(れんが)街」を手掛けた。天野も耐恒寮出身で、日本人による最初の経済原論を刊行、早稲田大の二代目学長に就任した。高橋から学んだ大島も唐津銀行を創設、鉄道や唐津港の整備にも力を尽くした。

 奥村は幕末の尊王攘夷(じょうい)、明治初期の自由民権運動で奔走して激動の時代を生き、戦没者遺族、傷病兵家族の支援組織として「愛国婦人会」を創設した。唐津藩士の家に生まれた長谷川は官費留学生として米国で鉱山学を学び、三菱に入社。炭鉱や鉱山の業務に携わった。三菱退社後は官営八幡製鉄所創設に関わった。

 欧米先進国に学び、近代国家へと大変革していった明治時代。けん引していった「唐津八偉人」について、峰達郎市長は「志を広く知ってもらい、唐津のプライドづくりをしたい」と話した。

=2017/08/31付 西日本新聞朝刊=
 大野右仲の資料、見たい……。

エンターテインメント
『風雲児たち』三谷幸喜脚本でドラマ化に大反響!「真田丸」キャスト・スタッフ再集結
 みなもと太郎のマンガ『風雲児たち』がNHKの正月時代劇としてドラマ化されることが分かった。この発表にファンからは「これは凄まじい驚きですよ!」「頬をつねりながらドラマ化の報せを読んでる」と大反響が起こっている。

 同作は、関ヶ原の戦いを機に始まる徳川幕府や江戸時代にスポットを当てた“大河歴史ギャグ”マンガ。今回のドラマ化では演出を大河ドラマ「真田丸」の吉川邦夫が手掛け、「風雲児たち~蘭学革命(れぼりゅうし)篇~」と題して前野良沢と杉田玄白の“蘭学事始”を描く。

 脚本を担当するのは三谷幸喜で、「真田丸」以来1年ぶりにNHK時代劇の脚本を担当することに。三谷は同作について「僕はこの作品で、歴史の新しい見方を学びました。『風雲児たち』には、今の日本を築き上げた先人たちの感動的なエピソードがぎっしり詰まっています」とコメント。「今回、そのほんのちょっと一部分をドラマ化しました。歴史ファン、みなもとファンとしてこれ以上の喜びはありません」と喜びを語っている。

 脚本を三谷が務めるとあって、ファンは大興奮のようすで「スーパー楽しみなんですけど!」「三谷幸喜がみなもと作品の脚本を担当するとかヤバすぎるでしょwww」「どこまでギャグが盛り込まれてくるかな?」「これでまたしばらく生きていけるわ」といった声が続出。

 これまでに発表されている出演者にも注目が集まっており、前野良沢役に片岡愛之助、杉田玄白役に新納慎也、平賀源内役に山本耕史、田沼意次役に草刈正雄と「真田丸」キャストが集結。強力な体制でのドラマ化にファンからは「『真田丸』キャスト・スタッフの再結集なんて最高かよ」「草刈正雄が田沼意次役とかハンパない」「真田丸ファンは正月時代劇に集合だな」などの反応が溢れている。

 みなもとは「私のギャグスピリットを最も良くご理解されている三谷幸喜氏の手でNHKでドラマ化されることを、大変うれしく楽しみにしております」とドラマ化に期待を寄せるコメント。喜劇王・三谷幸喜が原作の持つ“ギャグ”要素をどのように活かしてくるのか、正月の放送が今から待ち遠しい。

■正月時代劇「風雲児たち~蘭学革命(れぼりゅうし)篇~」
放送予定:2018年1月初旬
原作:みなもと太郎
演出:吉川邦夫
脚本:三谷幸喜
音楽:荻野清子
出演:片岡愛之助、新納慎也、山本耕史、草刈正雄 ほか
制作統括:陸田元一、中村高志
公式ページ:http://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=11289
幕末の彰義隊を通して、青春の悲劇を活写した『合葬』
今年は時代劇映画がちょっとしたブームになっていて、『無限の住人』や『たたら侍』『花戦さ』『忍びの国』、そして現在『関ケ原』が大ヒット中です。

個人的には、こうしたブームの基を築いたのは松竹の『超高速!参勤交代』2部作(14&16)や『殿、利息でござる!』(16)などコメディ時代劇のクリーン・ヒットではないかと密かに思っている次第ですが、同時期に松竹(正式には松竹メディア事業部)では、規模こそ小さいまでも、珠玉の時代劇映画を配給していました。

今回はその映画、2015年度作品『合葬』をご紹介したいと思います。

上野戦争をクライマックスに
新政府軍に徹底抗戦を誓う若者たち

『合葬』は、江戸風俗研究家兼漫画家でもあった杉浦日向子が雑誌『ガロ』に発表し、1984年に第13回日本漫画家協会賞・優秀賞を受賞した同名漫画を原作にしたもの。

舞台は江戸時代末期、いわゆる幕末の時代に幕府側について、薩摩や長州の新政府軍を迎え討つことになった彰義隊の若者たちの悲劇を描いたものです。

もともと彰義隊は将軍・徳川慶喜の身辺警護や江戸の秩序守護を目的に組織されたものでしたが、大政奉還によってその存在意義がなくなり、しかし隊員らはそれを認めようとはせず、薩摩や長州を中心とする新政府軍への徹底抗戦を誓うのでした。

その隊員のひとり秋津極(柳楽優弥)は、友人・福原悌二郎(岡山天音)の妹で婚約者でもある砂世(門脇麦)に別離を言い渡します。

それは砂世の身を気遣ってのことでしたが、悌二郎には納得できません。

しかし極は己の信念を変えようとはせず、さらには養子縁組をした家から追い出された吉森柾之助(瀬戸康史)を彰義隊に引きずり込みます。

そんな彼の気概を、隊の穏健派で上役の森篤之進(オダギリジョー)が認め、やがては悌二郎も彰義隊に入隊することに。

まもなくして江戸城の無血開城が決定となり、彰義隊は江戸警護の任を解かれますが、血の気の多い強硬派の若者たちはその命に従おうとせず、新政府軍との衝突は時間の問題に……。

閉塞感漂う現代ともリンクする
戦いに身を投じる若者たちの姿

合葬 映画 BD DVD

(C)2015 杉浦日向子・MS.HS / 「合葬」製作委員会

慶応4年(1868年)3月に西郷隆盛と勝海舟の間で盟約が結ばれて江戸城無血開城がなされた後も、幕府軍と新政府軍とのさまざまな激戦が繰り広げられていった事実は、歴史好きのかたなら先刻ご承知かと思われますが、本作では同年5月に勃発した上野戦争をクライマックスに、戦いに身を投じていく若者たちの悲劇を青春群像劇として活写していきます。

脚本に『ジョゼと虎と魚たち』(03)や『天然コケッコー』(07)など青春映画の旗手・渡辺あやを迎えているのも、この作品が幕末バトル映画ではなく、あくまでも青春映画にしたいという製作サイドの意向が汲み取れます。

その渡辺あやと『カントリーガール』(10)でタッグを組んだ自主映画作家・小林達夫監督が本作で商業映画デビューを飾りましたが、激動の時代に翻弄されていく3人の若者たちをドライに見据えたキャメラアイは、どこかしら現代のきな臭くも閉塞感漂う現代とも巧みにリンクしているかのようです。

本作はモントリオール国際映画祭やミンスク国際映画祭にも出品され、単に日本のサムライ情緒だけではなく、その奥にある世界中どこでも普遍的な青春の慟哭といった要素が大いに評価されました。

ASA-CHANG&巡礼の無調の中から哀しい情感を漂わせる音楽や、カヒミカリィのナレーションも、ここでは大いに功を奏しています。

そして、やはり特筆すべきは、群像劇としてそれぞれの運命を健気に体現していく若手俳優たちの熱演でしょう。

華やかな体裁のものとは趣が異なる作品なので、見る前は地味な印象をもたらすかもしれませんが、いざ見始めると芳醇かつ悲愴極まる青春の慟哭に引き込まれること必至。

これはぜひ一見をお勧めしたい作品です。

そして小林監督の次回作が早く実現しますように!

[この映画を見れる動画配信サイトはこちら!](2017年9月1日現在配信中)
超歌劇(ウルトラミュージカル)『幕末Rock』絶叫!熱狂!雷舞(クライマックスライブ)セットリスト発表!!
超歌劇(ウルトラミュージカル)『幕末Rock』絶叫!熱狂!雷舞(クライマックスライブ)セットリストを発表!!
新たなる、超歌劇(ウルトラミュージカル) 『幕末Rock』の動きに注目!!


『幕末Rock』とは、2014年2月にゲームがリリースされるや大ヒットし、7月にTVアニメが放送され、“幕末”という時代設定のもと、志士(ロッカー)たちが音楽で新しい時代を創る、斬新で魅力的なキャラクターにあふれた大人気コンテンツです。
舞台版は、超歌劇(ウルトラミュージカル)と銘打ち、2014年12月に吉谷光太郎氏の脚本・演出で上演され、本格Rockの楽曲の数々と圧巻の雷舞(ライブ)演出を、若手実力派俳優たちがミュージカルで表現し、全公演満席で、立見もでるほどの注目作となりました。原作ゲーム、アニメの世界観をそのままに、劇中の演出シーンの一部として、観客が実際にペンライトを振りながら公演を楽しむという観客参加型のライブ要素を取り入れた演出が大好評をいただきました。
その後、2015年8月に超超歌劇(ちょう・ウルトラミュージカル)として、東京・大阪で再演し、全公演即SOLD OUT。千秋楽には全国でのライブビューイングも敢行。そして2016年8月、9月には新作で新キャラクターも登場した「黒船来航」を上演。そして、2017年3月には超歌劇(ウルトラミュージカル)『幕末Rock』待望の雷舞(ライブ)を東京・大阪で開催することを発表、また公式Twitterでは、生誕祭企画など大きな盛り上がりをみせており、ロックの日に合わせ6月9日には公演日程を発表いたしました。
そしてこの度、雷舞(ライブ)にて歌われるセットリストを発表いたします!(一部未発表)
新たなる、超歌劇(ウルトラミュージカル) 『幕末Rock』の動きにぜひご注目ください!

★セットリスト★
☆楽曲は順不同で公開させていただいておりますので、ご了承ください。
☆???は日替わり楽曲となります。
☆今回の雷舞は「セットリストA」と「セットリストB」があり、楽曲が異なります。
☆公式サイトの公演日程に、「A」「B」を追記しております。

What's this?
Crash My Head
LAST SCREAM
REACTION
ハチノジディストーション
モット!!!
共鳴進歌
INTERSECT
GOD BREATH
グラデーション
不完全パズル
宙ノ翼
L or R
絶頂SPIRAL
MASTER COMMUNICATION
×××ing
???(日替わり)
[セットリストA]
非常幻想 -オーバーミラージュ-
Rolling Thunder
絶頂DAYBREAK
WHITE
[セットリストB]
黒曜蝶(ブラックバタフライ)
RIDE ON THE WAVE
五色繚乱
暁のFreebird

■公演日程:
【大阪公演】 2017年11月24日(金)~26日(日):大阪メルパルクホール
【東京公演】2017年11月29日(水)~12月3日(日):AiiA 2.5 Theater Tokyo

■スタッフ
原作:『幕末Rock』(マーベラス)
構成:吉谷光太郎 音楽制作:テレビ朝日ミュージック ステージング:MAMORU

■キャスト
坂本龍馬 役:良知真次 高杉晋作 役:糸川耀士郎 桂小五郎 役:三津谷亮 土方歳三 役:輝馬 沖田総司 役:佐々木喜英/お登勢 役:山岸拓生 勝海舟 役:岩﨑大/井伊直弼 役:吉岡佑 徳川慶喜 役:Kimeru/マシュー・カルブレイス・ペリー・ジュニア 役:兼崎健太郎

■主催/マーベラス テレビ朝日ミュージック NBCユニバーサル・エンターテイメント NAS
©2014 Marvelous Inc./幕末Rock製作委員会
©2014 Marvelous Inc./超歌劇『幕末Rock』製作委員会

■公式サイト:http://bakumatsu.marv.jp/stage/
■公式ブログ:http://www.marv.jp/message/bakumatsu.php
■公式twitter:https://twitter.com/bakumatsu69

■公演に関するお問い合わせ マーベラス ユーザーサポート
TEL:0120-577-405  (土日祝日 指定日除く 11:00~17:00)
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千穐楽で第一部・第二部。第一部はいつもの3階席でしたが、第二部はチケット取りにくかったのでやむなく1階席を奢りました。後ろの方でしたが、やじきたの演出上花道以外の出入りがあり、勘九郎さんがかなり近くに見えたのが嬉しかったです。

第一部
刺青奇偶……玉三郎演出の好みなんだろうが、舞台がとにかく暗い。見づらい。そして長谷川伸のお涙頂戴な感じは私の好みでないこともあり、見ててしんどかった。七之助さんは玉三郎さんそっくりだったけど、第三部に自分を出し切っているせいか、ここではちょっと抑えめ。中車さんは歌舞伎でも新作ものは演技力が映える。でも収穫は染五郎さんの親分、この人の持ち味よりも風格が必要な役柄だと思うのだけど大親分の風格が出てた。

玉兎……勘太郎くん綺麗に踊りきった。踊りの名手の血筋なので期待も自ずと高くなるけど6才の今後が楽しみ。

団子売り……やっぱ踊り上手の舞台は素晴らしい。勘九郎さんも猿之助さんも軽やかに美しく踊るなあ。

修善寺物語……途中意識をなくしたところがあるが(汗)、勘九郎さんの頼家の後ろ姿が美しかった(橋之助さん弁慶を相手に富樫を演じた時の気品を思い出した)。彌十郎さんは最後の職人の執念というか芸術家としての狂気が、今月は桜の森が衝撃的だったのでちょっと物足りない。猿之助さんの桂が見事。

やじきた……前作はシネマ歌舞伎で見たけど笑いのセンスが自分には合わないと思う(そういえば猿之助さんの三谷幸喜さん舞台『エノケソ』でも合わないと思った)。でも猿之助さん染五郎さんの弥次喜多に若手もかなり出てて豪華だったし、途中からAパートBパート観客に選ばせる趣向とか凝ってはいた。子役では染五郎さん長男の金太郎くんは芸達者なのがデフォなんだけど猿之助さん長男の團子くんも以外にいい役者ぶりだった。いろいろ言われているけど、頑張って結果出してると思う。松也さんが劇中で狐忠信を演じる役者、巳之助さんが静御前を演じるけど松也さん役の事故で狐忠信を演じるという女形も立て役も演じる役者で身体能力高い。あと先月に続いて児太郎が悪婆っぽい役でドスのきく声出してて、可愛らしい姫役以外のレパートリーを広げつつあるので福助襲名が遅れているものの若手女形の中でも光ってる。勘九郎さん七之助さんもちょい顔出し。


 座頭役の中車さんのカマキリ好きに合わせてカマキリのご紋。

長谷部浩の劇評 【劇評82】玉三郎写しの『刺青奇偶』
歌舞伎劇評 平成二十九年八月 歌舞伎座

八月納涼歌舞伎の第一部、第二部は、高い青空が見えたとはいいがたい。

まずは長谷川伸の『刺青奇偶』(坂東玉三郎・石川耕士演出)は、玉三郎の目が光る。冒頭の酌婦、お仲(七之助)は、風情、口跡、所作いずれも玉三郎写しで、七之助が行儀良く初役を勤めている。冒頭、舞台の照明が暗いこともあって、玉三郎がお仲を勤めているのかと目を疑った。それほど忠実な写しだと思った。

中車の半太郎が、また、すぐれている。歌舞伎のなかでの居場所が次第に定まってきたが、慢心が見えない。

人生にとことん失望した女が、それでも惚れてしまういなせな様子がよく序幕で、ふたりの不安定な関係をしっかりと見せる。これは七之助、中車の柄と仁をよく踏まえた演出の力によるものだ。

長谷川伸の劇作は、ときに前半と後半で、主人公二人の立場が逆転する。はすっぱだった酌婦が、病を得て亭主の将来を案じる。博奕打ちだった夫は、足を洗ったが、どうにもあがきがつかない。ふたりの思いがどうにも噛み合わないところに、劇作の巧みさがある。中車は後半、決して捨て鉢にならずに、未来へと一縷の望みを捨てない。細いながらも一本芯が通っていて説得力を持つ。

錦吾の半太郎父、喜兵衛。梅花の母おさくが、ふっと人生のむなしさを漂わせてよい。これほど貫目が出たのかと感心したのは、染五郎の政五郎。たしかに衣裳のなかに「肉」はいれているのだろうが、そんな外見など必要としないだけの落ち着きと貫禄が備わってきた。来年の襲名に向けて、一歩、一歩、努力を重ねているのだろう。

続いて踊りは、勘太郎の『玉兎』と、猿之助、勘九郞の『団子売』。勘太郎は踊りも得意とされる家に生まれただけに修業中の身。これからが楽しみだ。また、猿之助、勘九郞は、踊りの巧さに溺れず、風俗を写す役者の踊りに徹している。

第二部は、岡本綺堂の『修禅寺物語』(市川猿翁監修)。初世坂東好太郎の三十七回忌、二世板東吉弥の十三回忌。父と兄の追善を出せる役者となって、彌十郎渾身の舞台となった。いわゆる芸道物である。彌十郎の夜叉王は、はじめ気難しい面打ちと見せたところが、最後は、姉娘桂(猿之助)の断末魔を絵に写し取るだけの覚悟のある芸能者へと変わっていく。はじめから決意のある人物とするか、それとも、桂が頼朝(勘九郞)に望まれて家を出て、しかも頼朝が闇討ちを受け、桂が手傷を負い戻ってくる過程で、芸能者としての覚悟を強くしたのか。彌十郎は、全体を一貫させており、この役者、持ち前の人の良さを見せまいと勤めている。そのため、自分を律するに厳しい夜叉王となった。ときに自分の芸に対する自負や末娘楓(新悟)に対する愛情を強く出してもよい。

秀調の修禅寺の僧、巳之助の楓婿の春彦が、役をよくつかまえて、劇を支えている。

続いて『東海道中膝栗毛 歌舞伎座捕物帖』(十返舎一九原作、杉原邦生構成、戸部和久脚本、市川猿之助脚本・演出)。ラスベガスへ染五郎の弥次郎兵衛、猿之助の喜多八が旅をした昨年の納涼歌舞伎を前作として、趣向本意の芝居を立ち上げた。(片岡)亀蔵の役名に「戸板雅楽之助」とあるように、劇評家戸板康二の一連の名探偵雅楽物を意識した推理劇仕立て。名探偵コナンなども意識しているのだろう。見どころは、沢潟屋の芸、『義経千本桜』の『四の切』をトリックとしているところで、舞台裏の仕掛を見せているところが観客を惹きつける。

また、金太郎の伊月梵太郎と團子の五代政之助が、弥次郎兵衛、喜多八と対になっているとこも、ご趣向。

かつて『野田版 研辰の討たれ』で、十八代目中村勘三郎が、染五郎と勘九郞(当時・勘太郎)を「坊ちゃん一号、二号」と呼んで大笑いさせたのを思い出した。『四の切』に対する言及とともに、こうした役者の血縁をチャリとするのはさじ加減がむずかしい。二十七日まで。
渡辺保 2017年8月歌舞伎座
(略)
「桜の森」の第三部に対して、第一部は中車、七之助の「刺青奇偶」と舞踊
の上下二幕。上の巻は勘太郎の清元「玉兎」、下の巻が猿之助、勘九郎の竹本
「団子売」。第二部が坂東好太郎、坂東吉弥追善で、好太郎の三男、吉弥の弟
である施主弥十郎の夜叉王で「修禅寺物語」と去年当たった染五郎、猿之助の
弥次喜多の新作「歌舞伎座捕物帖」。

 第一部の見ものは「団子売」である。猿之助の女房がほんのわずかな手ぶり
―――たとえば餅を取ってトントンとおこつく振りが絶妙の面白さで、この踊
りでやっと溜飲が下がった。対する勘九郎の亭主は、さすがに亡き三津五郎の
仕込みだけあってキッチリ踊って、猿之助の曲せ球に対して直球の対照的な面
白さ。この踊りくらべが第一部唯一の見ものである。
 勘太郎の「玉兎」は教わった通りに踊ってご愛嬌。
 さて「刺青奇偶」は玉三郎、石川耕士の共同演出。そのためだろう。七之助
の酌婦お仲は玉三郎生き写し。目をつぶって聞いていると玉三郎がやっている
のかと思うほどである。しかしそうなると玉三郎ではそう見えなかった序幕の
ふてくされ具合が、七之助だと実に嫌な女に見えてくる。七之助の個性が死ん
でいるためにお仲という女のイメージがつかまえられていないからである。
 その点、中車の手取りの半太郎は、それなりの独自の人間像を作っている。
ことに大詰の鮫の政五郎とのやりとりの、こんな瀕死の状況でも性根を失わないところがう
まい。
 猿弥の熊介がユーモラスでうまい。
 勘之丞の医者、芝のぶの近所の女房ともに生活感がない。錦吾と梅花の半太郎の親夫婦も平凡。
 染五郎が鮫の政五郎を付き合うが、まだ年配が足りないのは是非もない。
 かくして総体に水っぽい「刺青奇偶」になった。

 第二部の「修禅寺物語」は、弥十郎の夜叉王が抑えた心理的な芝居でいいが、
その分この男に潜んでいる職人としてのプライドの高さ、そのプライドゆえに
先の将軍頼家にも楯突く激情が薄い。これはのちにふれるせりふの朗誦法にも
かかわるだろう。
 幕開き、例の如く砧を打つ桂と楓姉妹のせりふで始まるが、猿之助の桂が観
客の気持ちを一気にとらえるリアリティがあってうまい。この女の生まれ、育
ち、そこから来る性格の権高さ、生き方の理想手に取る如くである。新悟の楓、
巳之助の春彦がこの猿之助に食いついていい。
 勘九郎の頼家は、この人ならばいま一息鋭いだろうと思ったが、意外に穏や
かである。
 亀蔵の金窪兵衛が本役。秀調の修禅寺の僧、万太郎の下田五郎。
 さてこのメンバーの一座過不足のない出来、リァリティは十分であるが、私
には大きな不満がある。いずれもせりふの歌うべきところを歌わないことであ
る。綺堂作品を歌舞伎役者が歌わなくなってからすでに久しい。おそらく幸四
郎歌右衛門の、久保田万太郎演出の「番町皿屋敷」以来だろう。しかしそれは
せりふを歌うことによってリァリティを喪失したことへの反省のためであった。
そのリァリティがこれだけ濃くて、しかもうまく表現されるようになったから
は、歌うところは歌ってもいいのではないかと私は思う。それが歌舞伎であり、
岡本綺堂の戯曲だろう。弥十郎の夜叉王にも猿之助の桂にも、今一歩激情が出
ないのはそのためである。考えてみればいくら芸術至上主義者でも、断末魔の
娘の死に顔をスケッチしようというのは異常だろう。父も父、娘も娘の狂気で
あるが、その狂気こそ歌うアリアに支えられているのであって、歌わなければ
夜叉王は唯の老父になってしまい、スケッチも芸術のためではなく、唯の遺品
を残すに過ぎなくなってしまう。それでは作者が書こうとした芸術にのみ生き
る人間の悲劇は意味を失うのではないか。 

 この後が、去年ラスベガスまで行った「弥次喜多」の第二編。杉原邦生構成、
戸部和久脚本、猿之助脚本演出。
 歌舞伎座で殺人事件が起きる。犯人はだれが。思い付きは面白いが、サスペ
ンスとしてはすぐ犯人がわかってしまうので面白くなく、ドラマとしての見せ
場もなく、喜劇としても爆笑とはいかなかった。劇中劇に「四の切」があって、
化かされの法師にバイトで出ていた弥次喜多が、間違いで宙乗りになるのが面
白いだけの芝居になった。構成も台本も芝居のツボを外しているからである。
 中車の座元、児太郎の女房、大道具の棟梁に勘九郎、鑑識の女医に七之助、
竹本に門之助、笑三郎、役人に亀蔵、猿弥、役者に巳之助、隼人、新悟、竹三
郎、弘太郎という、ほとんど一座総出なのにもったいない。
 
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『渡辺保の歌舞伎劇評』http://homepage1.nifty.com/tamotu/
歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」 金太郎と團子、成長ぶり披露
8月恒例の3部制。

 第1部。長谷川伸作の新歌舞伎「刺青奇偶(いれずみちょうはん)」。最下層で生きる博奕(ばくち)打ちの半太郎(市川中車(ちゅうしゃ)=香川照之)と、女房お仲(中村七之助)の純愛を描く。落ちぶれ、いらだちを表出する中車の自然な演技と、死病の床から夫に博奕をやめさせようと、画然と訴える七之助。現代劇と歌舞伎の融合を見るよう。市川染五郎が人情味あふれる賭場の親分で新境地。続いて6歳の中村勘太郎の「玉兎」と父、中村勘九郎、市川猿之助(えんのすけ)の「団子売」の舞踊2題。

 第2部。岡本綺堂の新歌舞伎「修禅寺物語」。初代坂東好太郎(こうたろう)三十七回忌、二代目坂東吉弥十三回忌追善で、好太郎の三男で吉弥の弟、坂東彌十郎が夜叉王(やしゃおう)。姉娘、桂(猿之助)の瀕死(ひんし)の顔を写生する夜叉王の恬淡(てんたん)さに、慙愧(ざんき)を捨てた彌十郎の解釈が見える。昨年8月公演での好評を受け、再び染五郎の弥次さん、猿之助の喜多さんで「東海道中膝栗毛 歌舞伎座捕物帖(こびきちょうなぞときばなし)」。2人の宙乗りを含め、俳優陣総出のにぎわい。松本金太郎と市川團子(だこ)がコンビで成長ぶりを披露した。

 第3部。野田秀樹作・演出「野田版 桜の森の満開の下」。坂口安吾作品の潤色で、野田の夢の遊眠社時代の人気作を歌舞伎化。壬申の乱時代を背景に、国家権力の権謀術数(けんぼうじゅっすう)ぶりをシニカルに描き出す。(遺産争いを喜劇的に描く)プッチーニ歌劇のアリアが随所に流れ、今作のテーマが「だまし・だまされ」ごっこと分かる。耳男(みみお)に勘九郎。27日まで、東京・銀座の歌舞伎座。(劇評家 石井啓夫)
玉三郎、猿之助、野田秀樹…演出家で見せる8月納涼歌舞伎
 8月の歌舞伎座は「納涼歌舞伎」。いつもの月とは異なり、3部に分かれ、1部の舞踊を除けば、徳川時代の芝居はひとつもなく、明治、昭和、平成の作品で、役者もさることながら、それぞれの「演出家」を意識させる月となった。

 第1部は長谷川伸の「刺青奇偶」。昭和7年初演で、六代目菊五郎と五代目福助が主演した。この2人のひ孫にあたる中村七之助が「お仲」を演じ、市川中車(香川照之)が「半太郎」。バクチ打ちと、身を持ち崩した酌婦が知り合い、数年後、2人は一緒に暮らしているが、女は重い病で長くはない――と、ストーリーは陳腐なのだが、坂東玉三郎による演出は、すべてが抑制的で、見る側の想像力を必要とする。往年のフランス映画のような雰囲気で、見ごたえがある。

 第2部最初は岡本綺堂の「修禅寺物語」。坂東彌十郎演じる「夜叉王」が主人公のはずなのだが、脇役の市川猿之助演じる「桂」のほうが主人公になってしまう。猿之助の存在感の凄さを改めて感じた。
 次が新作「歌舞伎座捕物帖」。バックステージものだが、歌舞伎座で役者の連続殺人事件が起き、犯人は誰かを、染五郎の弥次さんと、猿之助の喜多さんが解いていくミステリー劇でもある。2種類の結末が用意され、その日の観客の拍手でどちらにするか決める趣向。猿之助は演出も担い、ドタバタコメディーに仕上げた。これはこれで笑えて楽しいのだが、このストーリーならば、シリアスな芝居にしても面白いように思った。

 第3部が「野田版 桜の森の満開の下」。野田秀樹にとって4作目の歌舞伎座での演出。これまでは既存の歌舞伎、オペラを脚色して演出したが、今作は野田自身の代表作「贋作 桜の森の満開の下」を歌舞伎化したもの。もとのセリフを七・五調に書き換え、それが売り物のひとつらしいが、そうしたからと歌舞伎らしくなるわけではない。野田演劇を歌舞伎座で歌舞伎役者を使って上演してみました、という実験にすぎない。そもそも30年近く前の演劇を、なぜいまリメークするのか、その意図が伝わらない。役者は、みな熱演。

「刺青奇偶」と「野田版桜の森の満開の下」での中村芝のぶが、出番は少ないが、名演だった。

(作家・中川右介)
(評・舞台)歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」 愛の破壊衝動、三つ巴
 第三部野田秀樹作・演出「野田版 桜の森の満開の下」は、お盆興行のせいか、亡き十八代目勘三郎をしのばせる。

 古代の飛騨の国で、ヒダの王(扇雀)は耳男(勘九郎)、オオアマ(染五郎)、マナコ(猿弥)に、娘夜長姫(七之助)の守護仏ミロク像を彫らせる。

 彼らは3人で1人の匠(たくみ)を形作る分身たちである。耳男は師匠殺し。オオアマは壬申(じんしん)の乱の大海人皇子。マナコは山賊。

 大海人は権力を奪い、山賊は滅び、耳男は仏を彫って、夜長姫を殺す。バルザックの「知られざる傑作」の画家のように、芸術家は自分の作品を破壊したい衝動を抱く。芸術家に限らず人は、愛する者に対して同じ衝動を持っている。

 夜長姫は耳男の恋人で、作品の寓意(ぐうい)である。全ては耳男が桜の下で見た夢だった。坂口安吾の原作では耳男が主役(シテ)で、他の2人は主役に随伴する役(ツレ)の匠に過ぎない。

 それをオオアマとマナコという独自の性格に書き換え、3人が対等の主役として、三つ巴(どもえ)になる舞台に仕立てたのが、野田版の特徴である。十八代目勘三郎が上演を望んだが果たせず、遺児たちに手渡された。

 舞台の命は絵よりも短い。愛する者による破壊の手さえ待たずに消えていく。終幕耳男が独り夢から覚める寂しさは、演出家の思いであろうか。

 第一部「刺青奇偶(いれずみちょうはん)」は、中車の直情径行さが、手取りの半太郎の命がけの生き方によくはまっている。七之助の病身の女房お仲の情愛の濃(こま)やかさ。他に舞踊「玉兎」「団子売」。

 第二部は「修禅寺物語」。弥十郎の面作師夜叉(やしゃ)王のスケールが大きい。染五郎と猿之助の弥次喜多コンビで、娯楽本位の「歌舞伎座捕物帖」。

 (天野道映・評論家)
このメンバーだったらグダグダでも楽しいという、一之輔と白鳥と彦いちと白酒の落語会。しかも口上つき。



口上
 下手から一之輔、彦いち、白酒、白鳥。ソニーのCDジャケット撮影で使ったらしく、それぞれのカラーに合わせた座布団。一之輔イエロー、彦いちブルー、白酒ピンク、白鳥グリーン。なんだか戦隊ものみたい(笑)。
 一之輔の司会もグダグダなら、それぞれの挨拶もグダグダ。皆すぐに白酒の前座名(五街道はたご)と二つ目名(五街道喜助)が思い出せない。初めて会った場面を思い出せない。
 でも白鳥が、去年談春兄さんが30周年でゲストに白酒や白鳥を呼んだ会で、楽屋で「30周年ぽっちで記念落語会なんて、けっ」みたいなことを言ったとチクったのを始め、みんなろくでもない挨拶(褒め言葉)。白鳥の三本締めも入りの口上が締まらず。

代書屋/一之輔
 「代書屋」といえば権太楼なんだけど、一之輔版は吉さん本名は中村吉右衛門、母はメイ子さんという同姓同名バージョン。

黄昏のライバル/白鳥
 Q蔵の師匠は桃月庵白酒、池袋のおでん屋をやっているかつてのライバルは白鳥で。対決場面では60分の「ざるや」と「マキシム・ド・呑兵衛」で勝った方が「芝浜」をするということになってました。

ねっけつ!怪談部/彦いち
 この時期には一度は聞きたいネタなんだけど、新作聞きたいなぁ。でも今年初めてというくらい寄席に行ってない私じゃ当たらないよな。

井戸の茶碗/白酒
 熱血な屑屋さんで話がテンポよかった。

昨日ニュースを知って興奮がやまない白牡丹です。

三谷幸喜、1年ぶりにNHKで時代劇!
正月時代劇「風雲児たち~蘭学革命(れぼりゅうし)篇~」

大河ドラマ「真田丸」より1年――。
三谷幸喜が満を持して送る究極のエンターテインメント時代劇、制作開始!

あの三谷幸喜さんが「真田丸」以来、1年ぶりにNHK時代劇に帰ってきます!

今度のお題は、前野良沢と杉田玄白による“蘭学事始”。史上初の西洋医学書の和訳に一心同体で取り組んだ二人は、鎖国ど真ん中の江戸中期に革命的な翻訳を成し遂げます。しかし、刊行された『解体新書』になぜか良沢の名は載らず、名声は玄白だけのものとなりました。二人の間にいったい何が起きたのか…。

みなもと太郎さんの大河歴史ギャグ漫画を原作に、笑いとサスペンスに満ちた新しい三谷流歴史ドラマが誕生します。

原作者・みなもと太郎さんより
拙著『風雲児たち』は私のマンガのなかでも愛着のある作品で、だからこそ30数年、飽きもせず描き続けています。私のギャグスピリットを最も良くご理解されている三谷幸喜氏の手でNHKでドラマ化されることを、大変うれしく楽しみにしております。

脚本・三谷幸喜さんより
僕の大学時代に連載が始まった、みなもと太郎さんの『風雲児たち』。僕はこの作品で、歴史の新しい見方を学びました。『風雲児たち』には、今の日本を築き上げた先人たちの感動的なエピソードがぎっしり詰まっています。今回、そのほんのちょっと一部分をドラマ化しました。歴史ファン、みなもとファンとしてこれ以上の喜びはありません。

正月時代劇「風雲児たち~蘭学革命(れぼりゅうし)篇~」

【放送予定】平成30年1月初旬[総合]

【原作】みなもと太郎『風雲児たち』

【脚本】三谷幸喜

【音楽】荻野清子

【出演】片岡愛之助(前野良沢)、新納慎也(杉田玄白)、
山本耕史(平賀源内)、草刈正雄(田沼意次) ほか

【演出】吉川邦夫

【制作統括】陸田元一、中村高志

※「れぼりゅうし」はオランダ語の「革命」
三谷幸喜、「風雲児たち」ドラマ化!片岡愛之助&山本耕史ら出演
NHK大河ドラマ「真田丸」や「新選組!」など数々の作品を手掛ける三谷幸喜が、来年1月に放送されるNHK正月時代劇「風雲児たち~蘭学革命(れぼりゅうし)篇~」の脚本を手掛けることが決定。みなもと太郎の「風雲児たち」を原作に、究極のエンターテインメント時代劇を作り上げる。

原作「風雲児たち」は、全20巻が刊行されている大河歴史ギャグ漫画。現在は「コミック乱」(リイド社)にて続編「風雲児たち 幕末編」が連載中だ。

「真田丸」以来、1年ぶりにNHK時代劇に帰ってくる三谷さん。今回のテーマは、前野良沢と杉田玄白による“蘭学事始”。史上初の西洋医学書の和訳に一心同体で取り組んだ2人は、鎖国ど真ん中の江戸中期に革命的な翻訳を成し遂げるも、刊行された「解体新書」になぜか良沢の名は載らず、名声は玄白だけのものとなった。一体、2人の間に何が起きたのか…。

三谷さんは、「僕はこの作品で、歴史の新しい見方を学びました。『風雲児たち』には、いまの日本を築き上げた先人たちの感動的なエピソードがぎっしり詰まっています。今回、そのほんのちょっと一部分をドラマ化しました。歴史ファン、みなもとファンとしてこれ以上の喜びはありません」とコメント。

一方、原作者のみなもと氏は今回のドラマ化決定に関して「拙著『風雲児たち』は私のマンガの中でも愛着のある作品で、だからこそ30数年、飽きもせず描き続けています。私のギャグスピリットを最も良くご理解されている三谷幸喜氏の手でNHKでドラマ化されることを、大変うれしく楽しみにしております」と喜びを語っている。

また、製作決定とあわせてキャストも発表。前野良沢役を片岡愛之助、杉田玄白役を新納慎也、平賀源内役を山本耕史、田沼意次役を草刈正雄と、「真田丸」にも出演した役者たちが揃った。

正月時代劇「風雲児たち~蘭学革命(れぼりゅうし)篇~」は2018年1月初旬、NHK総合にて放送予定。
 『組!』『組!!』の頃からミタニンがみなもと太郎『風雲児たち』好きだと知ってた(『風雲児たち』か『風雲児たち』幕末編のいずれの巻の帯にお勧めの言葉と写真が掲載されているし、みなもと先生の『冗談新選組』が復刊された時もコメントあったし)。
 だから、まさかのみにゃもと大河歴史ギャグマンガのNHK時代劇化、しかもミタニン・吉川Pのコンピで、発表された配役が『組!』『組!!』『丸』と縁が深くて。

 このよろこびは……

前野良沢先生と杉田玄白先生と中川淳庵くんと一緒に「ひしっ!!」と抱き合って望陀の涙を流すレベル。

https://twitter.com/ProducerKUMA/status/897809277213040649

今年前半はいろいろあって心身ともに辛い状態もあったけど、このニュースのおかげで「放映までは絶対死ねない!」と生きることを固く固く胸に誓ったもの。

で、先生方にお願い。「蘭学革命(れぼりゅうし)篇」と銘打つからには好評なら続編もというお気持ちでありましょう。以下、続編でお願い。
・大黒屋光太夫篇
・最上徳内篇
・高田屋嘉兵衛篇
・伊能忠敬編
・高野長英篇
・江川太郎左衛門篇
スピンオフで時代を遡って関ヶ原篇と保科正之篇と平田靱負篇と……

 海外ロケとか全国ロケ沢山ありそうな主人公を多めですね。正月時代劇枠だけで足りなかったら、いっそ大河枠で『風雲児たち』『風雲児たち 幕末編』やって欲しいぐらい。

 あぁぁ、ラブりんの前野良沢先生、ニイロさんの杉田玄白先生、ヤマコーが八面六臂の天才で口が軽くて移り気でホモで悲惨な死を遂げる平賀源内、でいろいろな作品の中で一番好きな田沼意次像であるところの『風雲児たち』田沼意次を何と真田昌幸を演じた草刈正雄さんなんて何てナイスなキャスティング。。

歌舞伎美人八月納涼歌舞伎より。
演劇史上に輝く珠玉の名作がついに歌舞伎に!
坂口安吾作品集より
野田秀樹 作・演出
  野田版 桜の森の満開の下(さくらのもりのまんかいのした)
耳男 勘九郎
オオアマ 染五郎
夜長姫 七之助
早寝姫 梅枝
ハンニャ 巳之助
ビッコの女 児太郎
アナマロ 新悟
山賊 虎之介
山賊 弘太郎
エナコ 芝のぶ
マネマロ 梅花
青名人 吉之丞
マナコ 猿弥
赤名人 片岡亀蔵
エンマ 彌十郎
ヒダの王 扇雀
野田版 桜の森の満開の下(さくらのもりのまんかいのした)
現代演劇史に輝かしい軌跡を残した戯曲が、待望の「野田版」歌舞伎として蘇る
 深い深い桜の森。満開の桜の木の下では、何かよからぬことが起きるという謂れがあります。それは、屍体が埋まっているからなのか、はたまた鬼の仕業なのか…。
 時は天智天皇が治める時代。ヒダの王家の王の下に、三人のヒダの匠の名人が集められます。その名は、耳男、マナコ、そしてオオアマ。ヒダの王は三人に、娘である夜長姫と早寝姫を守る仏像の彫刻を競い合うことを命じます。しかし、三人の名人はそれぞれ秘密を抱えた訳ありの身。素性を隠し、名人と身分を偽っているのでした。そんな三人に与えられた期限は3年、夜長姫の16歳の正月までに仏像を完成させなければなりません。ところがある日、早寝姫が桜の木で首を吊って死んでいるのが見つかります。時を同じくして都では天智天皇が崩御。娘と帝を同時に失ったヒダの王は悲しみに暮れます。やがて3年の月日が経ち、三人が仏像を完成させたとき、それぞれの思惑が交錯し…。
 野田秀樹が坂口安吾の小説「桜の森の満開の下」と「夜長姫と耳男」を下敷きに書き下ろした人気作『贋作・桜の森の満開の下』を、『野田版 研辰の討たれ』、『野田版 鼠小僧』、『野田版 愛陀姫』に続く、「野田版」歌舞伎の4作目として、満を持しての上演です。人間と鬼とが混在し、時空間を自由に操りながら展開する物語をお楽しみください。
長谷部浩の劇評より
【劇評81】『野田版 桜の森の満開の下』七之助の夜長姫の残酷
歌舞伎劇評 平成二十九年八月 歌舞伎座

八月納涼歌舞伎、第三部は、満を持して『野田版 桜の森の満開の下』が上演された。野田秀樹がかつて主宰していた夢の遊眠社時代の代表作であり、平成元年の初演以来、京都南座、大阪中座を含む伝統的な様式を持つ劇場でも上演されてきた。

十八代目中村勘三郎が健在のとき、この『贋作・桜の森の満開の下』の上演が企画され、勘三郎(当時・勘九郎)の耳男、福助の夜長姫を前提に、歌舞伎化する脚本がすでに進行して、三分の一が書き上がっていたと聞いている。結果として、勘三郎と野田の歌舞伎での共同作業は、平成十三年の『野田版 研辰の討たれ』が先行して、野田は歌舞伎座六度目の演出となる。

現・勘九郎の耳男、七之助の夜長姫の配役でこの舞台を観て、野田三十歳の若々しい文体には、この若い歌舞伎役者の肉体がふさわしいと思った。

この物語は、アーティストの耳男が、芸術の源泉となる力を追い求める物語である。彼にインスピレーションを与えるのは、夜長姫の美と残酷である。夜長姫は妖艶な美しさを放つばかりか、耳男の耳を切り取り、耳男のアトリエに火をつけることも辞さず、妹の早寝姫(梅枝)を自殺に追い込んでも平然としている。この二人の関係性が、勘九郎、七之助の踏み込んだ演技によって鮮明になった。

芸に一心に打ち込む耳男の真摯、そして酷いまでの残酷で他者を狂わせていく夜長姫がいい。特に、これまで女優によって演じられてきた夜長姫が、女方に替わって、その残酷を躊躇なく表現している。野田の歌舞伎作品のなかでも、もっとも、人間の精神性を深く描ききり、しかも国作りと歴史の改ざん、敗北した国の民を「鬼」として排斥していく人間の身勝手さが背景となっている。

染五郎の天武の大王(オオアマ)が大らかでありながら野心に燃える姿を活写。猿弥のマナコが野人の貪欲な欲望を精緻な演技で浮かび上がらせる。また、(片岡)亀蔵の赤名人、巳之助のハンニャロ(ハンニャ)が対となって狂言を回していく。彌十郎のエンマ、扇雀のヒダの王に、異界と現実界を支配する男の大きさがある。

Zakの音響と田中傳左衞門の作調がすぐれたコラボレーションを実現した。重低音の表現、また、笛による自転車のブレーキ音など、細部まで見どころがおおい。歌舞伎はまぎれもなく音楽劇であるが、空気感を創り出し、劇場を埋め尽くす音の力が大きい。それもまた、歌舞伎なのだと考えさせられた。二十七日まで。
 野田版歌舞伎は『鼠小僧』をビデオで見ただけし、原作の坂口安吾作品は読んでない。そんな私でも、30年前に現代演劇として成功した作品が歌舞伎になっても違和感がない、ただし中村勘三郎・中村勘九郎・中村七之助という親子リレーがあって初めてなんだろうと思う。坂口安吾原作だからか野田30才の作品だからか、込められた寓意を表現できないとならないからだ。

 歴史好きな私は天智天皇から天武天皇にかけての時代と聞くと、ああ壬申の乱だなと思う。古事記と日本書紀の時代だなと思う。青銅から鉄の剣に替わった時代だなと思う。ヒダの王は天智天皇に滅ぼされた蘇我石川麻呂かな。早寝姫は大田皇女、夜長姫は後に持統天皇になる鸕野讚良皇女。歴史劇としては大友皇子が出てこないとしまらないのだけど、まぁ歴史劇でなく寓意劇だし、テーマはむしろアーティストである耳男とミューズであり破壊神である夜長姫の関係だろう。

 『阿弖流爲』で立烏帽子と鈴鹿とアラハバキ神の三役を演じることで女性の三面を描いた七之助さんが一役で女性の神性(この場合はミューズと破壊神・戦争神)、あどけなさ無垢さと非情さ残酷さの二面性がよく表現されていた。

 勘九郎さんは相変わらず高い身体性で報われないミッションをひたむきに果たそうとする役が似合う。そしてオオアマの色悪ぶり(国崩し級)は染五郎さん似合う。歴史は勝者のものであり、勝者に都合の悪いものは改竄され隠蔽されないことにされる、というのは現代に通じた。

 戦または空襲や原爆の寓意である「青いおおきな空が落ちてくる」。人は突然の雨に降られたように雨宿りして「ああ、まいったなぁ」という、というのは、数え切れない焼夷弾や原爆2発を日本に落とした米軍を天災と理解しないと対米従属の日米地位協定を受け容れられない国民になってしまうからだと思う……受け容れられないと沖縄県民のようにまつろわぬ民になるしかない。自分は今限りなく沖縄民に近い心証にあるのだけど。

 七様がゆっくり倒れていく最後の場面が息を呑む美しさだった。

☆★☆★

追記。朝日新聞評
(評・舞台)歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」 愛の破壊衝動、三つ巴
 第三部野田秀樹作・演出「野田版 桜の森の満開の下」は、お盆興行のせいか、亡き十八代目勘三郎をしのばせる。

 古代の飛騨の国で、ヒダの王(扇雀)は耳男(勘九郎)、オオアマ(染五郎)、マナコ(猿弥)に、娘夜長姫(七之助)の守護仏ミロク像を彫らせる。

 彼らは3人で1人の匠(たくみ)を形作る分身たちである。耳男は師匠殺し。オオアマは壬申(じんしん)の乱の大海人皇子。マナコは山賊。

 大海人は権力を奪い、山賊は滅び、耳男は仏を彫って、夜長姫を殺す。バルザックの「知られざる傑作」の画家のように、芸術家は自分の作品を破壊したい衝動を抱く。芸術家に限らず人は、愛する者に対して同じ衝動を持っている。

 夜長姫は耳男の恋人で、作品の寓意(ぐうい)である。全ては耳男が桜の下で見た夢だった。坂口安吾の原作では耳男が主役(シテ)で、他の2人は主役に随伴する役(ツレ)の匠に過ぎない。

 それをオオアマとマナコという独自の性格に書き換え、3人が対等の主役として、三つ巴(どもえ)になる舞台に仕立てたのが、野田版の特徴である。十八代目勘三郎が上演を望んだが果たせず、遺児たちに手渡された。

 舞台の命は絵よりも短い。愛する者による破壊の手さえ待たずに消えていく。終幕耳男が独り夢から覚める寂しさは、演出家の思いであろうか。

 第一部「刺青奇偶(いれずみちょうはん)」は、中車の直情径行さが、手取りの半太郎の命がけの生き方によくはまっている。七之助の病身の女房お仲の情愛の濃(こま)やかさ。他に舞踊「玉兎」「団子売」。

 第二部は「修禅寺物語」。弥十郎の面作師夜叉(やしゃ)王のスケールが大きい。染五郎と猿之助の弥次喜多コンビで、娯楽本位の「歌舞伎座捕物帖」。

 (天野道映・評論家)

 27日まで。

東京新聞
<評>心弾む「団子売」 歌舞伎座「八月納涼」
歌舞伎座は舞踊を除き、新歌舞伎・新作尽くしの「八月納涼歌舞伎」。
 第一部「刺青奇偶(いれずみちょうはん)」では市川中車の半太郎、中村七之助のお仲が、世間の片隅に生きる男女の純愛を描き出す。市川染五郎の政五郎。市川猿弥の熊介に軽みがあっていい。「団子売(だんごうり)」は中村勘九郎、市川猿之助の踊りがともに小気味よく充実していて気持ちが弾む。ほかに中村勘太郎の「玉兎(たまうさぎ)」。
 第二部はまず坂東好太郎、坂東吉弥の追善狂言「修禅寺物語(しゅぜんじものがたり)」。坂東弥十郎の夜叉(やしゃ)王は、自ら打った面にじっと見入る姿に、芸術家の狂熱とはまた違う、愚直な職人像が浮かんだ。猿之助の桂がまことに巧緻(こうち)で、職人を侮り「関白大臣将軍家のおそば」を望む気位の高さ、気性の激しさが鮮やかに表れる。坂東巳之助の春彦、坂東新悟の楓(かえで)も好演。勘九郎の頼家、秀調の修禅寺の僧、片岡亀蔵の金窪兵衛。
 次は昨年に続き染五郎、猿之助の「東海道中膝栗毛」。今回は「歌舞伎座捕物帖(こびきちょうなぞときばなし)」と題し、舞台稽古中の歌舞伎座で殺人事件が起きるというミステリー仕立て。旅をしない弥次喜多という趣向だが、その分二人の影が薄く、さらに推理劇、バックステージ物としての興味が欲しかった。
 第三部は「野田版 桜の森の満開の下」。故中村勘三郎と野田秀樹とが上演を約束していたという企画が実現。もとより屈指の名作であり、勘九郎ら役者の技量には舌を巻くが、少なくともこの戯曲の目も眩(くら)むような疾走感には、歌舞伎の感覚は必ずしも適していないのではないだろうか。二十七日まで。
 (矢内賢二=歌舞伎研究家)

渡辺保
2017年8月歌舞伎座野田版「桜の森の満開の下」
野田秀樹が歌舞伎の歴史に新しい一頁を書き加えた。

その一頁は、今月三部制の歌舞伎座の第三部「野田版 桜の森の満開の下」の

大詰、勘九郎の耳男が七之助の夜長姫を殺すシーンの、幻想的な美しさである。

むろん歌舞伎にはこういう美しさはなかった。しかし在来の野田秀樹の「贋作 

桜の森の満開の下」にもなかった。その意味では単に歌舞伎の歴史の新しい一

頁であるばかりでなく、野田演劇の新しい特異なページでもあるだろう。 

染五郎のオオアマの政治体制が、扇雀のヒダの王を滅ぼし、勘九郎の耳男も桜

の森に追い詰められる。そこで耳男が七之助の夜長姫を殺す。満山の桜―――

堀尾幸男の墨の強く入った、一風変わった桜の森の装置のなか、桜吹雪が激し

く降る。高鳴る音楽。そこで展開する「殺し場」が官能滴るばかり。その美し

さは幻想的で、ぼってりとした厚みのある豊かさで、しかも儚く、これまでの

歌舞伎の「殺し場」とは一味も二味も違う新しい美しさであり、同時にこれぞ

歌舞伎という本質的な歌舞伎そのものの造形性の極北を示している。

さらに殺された夜長姫は薄衣一枚を残して消え、舞台上手奥から般若の面をつ

け、黒の薄衣を着た鬼たちが、枝垂桜の大きな枝を手に手に二列に並んで、舞

台を横切り花道へ入って行く。それと同時に舞台奥の下手から上手に向かって

鬼たちと逆行するように、影のようにオオアマの輿が朧に消えて行く。御承知

のように歌舞伎はページェントの面白さをその特徴の一つとする。この二組の

行列はこの作品の世界の構造を示すと同時に「殺し場」の余韻であり、背景で

もあった。

私はその美しさを堪能し、陶酔に浸った。今までにない美しさである。

しかしそこへ行くまで、ことに第一幕は大変だったし、見ていてくたびれた。

野田秀樹の言葉遊び、彼方へ飛び、此方へ行って時代の感覚に触れていくせり

ふの面白さが歌舞伎調になると失速し、ほとんど死んでいる。そうなると言葉

の方向性が見失われて、本来ならば舞台に浮かび上がるはずのもの―――たと

えばヒダの王の作ろうとした体制が少しもイメージとして成立しない。

全体のテンポも遅い。歌舞伎の造形性は「キマル」ところにあるが、この「桜

の森」は耳男に象徴されるように「キマ」らない疾走感にある。その二つの表

現の落差、違和感が強いのである。第一幕が終わったところで私はほとんど

「桜の森」の歌舞伎化は失敗だとさえ思った。

 しかし二幕目になるとその違和感がなくなり、ついに冒頭にふれた「殺し場」

に至って、第一幕とは全く違う一頁を開くことに成功した。

 この作品を歌舞伎化しようという話は、勘三郎生前、いや「野田版」三作以

前にあったというが、もしそうだとすれば勘三郎がやりたかったのも野田秀樹

がやりたかったのもこの第二幕にあるのだろうという気がした。そして今は亡

き勘三郎に代わってその夢を実現した野田秀樹の、勘三郎への深い愛情を思わ

ずにはいられなかった。

 「桜の森」の第三部に対して、第一部は中車、七之助の「刺青奇偶」と舞踊

の上下二幕。上の巻は勘太郎の清元「玉兎」、下の巻が猿之助、勘九郎の竹本

「団子売」。第二部が坂東好太郎、坂東吉弥追善で、好太郎の三男、吉弥の弟

である施主弥十郎の夜叉王で「修禅寺物語」と去年当たった染五郎、猿之助の

弥次喜多の新作「歌舞伎座捕物帖」。

 第一部の見ものは「団子売」である。猿之助の女房がほんのわずかな手ぶり

―――たとえば餅を取ってトントンとおこつく振りが絶妙の面白さで、この踊

りでやっと溜飲が下がった。対する勘九郎の亭主は、さすがに亡き三津五郎の

仕込みだけあってキッチリ踊って、猿之助の曲せ球に対して直球の対照的な面

白さ。この踊りくらべが第一部唯一の見ものである。

 勘太郎の「玉兎」は教わった通りに踊ってご愛嬌。

 さて「刺青奇偶」は玉三郎、石川耕士の共同演出。そのためだろう。七之助

の酌婦お仲は玉三郎生き写し。目をつぶって聞いていると玉三郎がやっている

のかと思うほどである。しかしそうなると玉三郎ではそう見えなかった序幕の

ふてくされ具合が、七之助だと実に嫌な女に見えてくる。七之助の個性が死ん

でいるためにお仲という女のイメージがつかまえられていないからである。

 その点、中車の手取りの半太郎は、それなりの独自の人間像を作っている。

ことに大詰の

鮫の政五郎とのやりとりの、こんな瀕死の状況でも性根を失わないところがう

まい。

 猿弥の熊介がユーモラスでうまい。

 勘之丞の医者、芝のぶの近所の女房ともに生活感がない。錦吾と梅花の半太

郎の親夫婦も平凡。

 染五郎が鮫の政五郎を付き合うが、まだ年配が足りないのは是非もない。

 かくして総体に水っぽい「刺青奇偶」になった。

 第二部の「修禅寺物語」は、弥十郎の夜叉王が抑えた心理的な芝居でいいが、

その分この男に潜んでいる職人としてのプライドの高さ、そのプライドゆえに

先の将軍頼家にも楯突く激情が薄い。これはのちにふれるせりふの朗誦法にも

かかわるだろう。

 幕開き、例の如く砧を打つ桂と楓姉妹のせりふで始まるが、猿之助の桂が観

客の気持ちを一気にとらえるリアリティがあってうまい。この女の生まれ、育

ち、そこから来る性格の権高さ、生き方の理想手に取る如くである。新悟の楓、

巳之助の春彦がこの猿之助に食いついていい。

 勘九郎の頼家は、この人ならばいま一息鋭いだろうと思ったが、意外に穏や

かである。

 亀蔵の金窪兵衛が本役。秀調の修禅寺の僧、万太郎の下田五郎。

 さてこのメンバーの一座過不足のない出来、リァリティは十分であるが、私

には大きな不満がある。いずれもせりふの歌うべきところを歌わないことであ

る。綺堂作品を歌舞伎役者が歌わなくなってからすでに久しい。おそらく幸四

郎歌右衛門の、久保田万太郎演出の「番町皿屋敷」以来だろう。しかしそれは

せりふを歌うことによってリァリティを喪失したことへの反省のためであった。

そのリァリティがこれだけ濃くて、しかもうまく表現されるようになったから

は、歌うところは歌ってもいいのではないかと私は思う。それが歌舞伎であり、

岡本綺堂の戯曲だろう。弥十郎の夜叉王にも猿之助の桂にも、今一歩激情が出

ないのはそのためである。考えてみればいくら芸術至上主義者でも、断末魔の

娘の死に顔をスケッチしようというのは異常だろう。父も父、娘も娘の狂気で

あるが、その狂気こそ歌うアリアに支えられているのであって、歌わなければ

夜叉王は唯の老父になってしまい、スケッチも芸術のためではなく、唯の遺品

を残すに過ぎなくなってしまう。それでは作者が書こうとした芸術にのみ生き

る人間の悲劇は意味を失うのではないか。 

 この後が、去年ラスベガスまで行った「弥次喜多」の第二編。杉原邦生構成、

戸部和久脚本、猿之助脚本演出。

 歌舞伎座で殺人事件が起きる。犯人はだれが。思い付きは面白いが、サスペ

ンスとしてはすぐ犯人がわかってしまうので面白くなく、ドラマとしての見せ

場もなく、喜劇としても爆笑とはいかなかった。劇中劇に「四の切」があって、

化かされの法師にバイトで出ていた弥次喜多が、間違いで宙乗りになるのが面

白いだけの芝居になった。構成も台本も芝居のツボを外しているからである。

 中車の座元、児太郎の女房、大道具の棟梁に勘九郎、鑑識の女医に七之助、

竹本に門之助、笑三郎、役人に亀蔵、猿弥、役者に巳之助、隼人、新悟、竹三

郎、弘太郎という、ほとんど一座総出なのにもったいない。

 

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『渡辺保の歌舞伎劇評』http://homepage1.nifty.com/tamotu/

河村常雄の新劇場見聞録 八月納涼歌舞伎評
<見>恒例の三部制。大看板は姿を見せず、若手花形で大歌舞伎座を賄う。今回の芝居は、若手花形だと勉強会になりがちな古典物がなく、新歌舞伎2本に新作喜劇、野田版。それだけに出演陣は存分に持ち味を発揮、三部とも概ね充実した舞台になっている。

第一部は長谷川伸の新歌舞伎「刺青奇偶」から。玉三郎と石川耕士の演出。
渡世人半太郎(中車)と元酌婦お仲(七之助)の哀しくも純な夫婦愛を描く。中車は元来芸達者、古典でなければうまい。渡世人のいなせな感じがよく出ている。お仲を病から救うために賭場荒らしに手を染めた経緯を語る件がうまい。七之助は薄幸の女性が仁に叶う。自暴自棄の前半から亭主思いで病弱の女房になる後半への切り替えも鮮やか。初役の2人の好演で見応えのある舞台になった。
染五郎が鮫の政五郎。最後に親分の貫禄を見せる役だが、貫禄を見せるにはあと一歩。錦吾演じる半太郎の父・喜兵衛、梅花の母・おさくが、情味を出している。
舞踊は勘太郎があどけなさの残る「玉兎」。猿之助のお福、勘九郎の杵造でテンポのいい「団子売」。勘三郎、三津五郎亡き後の踊り手。暗い芝居のあと、舞台を明るくして第一部の幕を下ろした。

第二部は岡本綺堂の新歌舞伎「修禅寺物語」。猿翁の監修。映画スターであった初代坂東好太郎の三十七回忌、その長男で二代目坂東吉弥の十三回忌の追善演目である。好太郎三男の彌十郎が夜叉王を勤め、その息子・新悟が妹娘・楓。
近年、彌十郎は脇役でありながら存在感を増しているが、期待通り主役を無事勤めた。相手が将軍といえども納得できない面は渡せないという芸術家としての気概、二人の娘への情愛、瀕死の姉娘の顔を写し取ろうとする芸術家魂など的確に表現している。
猿之助が姉娘・桂。上昇志向の強さを浮き彫りにして好演。勘九郎の源頼家、已之助の春彦。
もう一本は戸部和久脚本、猿之助脚本・演出の新作喜劇「東海道中膝栗毛・歌舞伎座捕物帖」。昨夏、染五郎の弥次郎兵衛、猿之助の喜多八がクジラに乗ったり、ラスベガスで遊んだりの破天荒な「膝栗毛」を上演した。本作はその続編で、ラスベガスから帰った弥次喜多が活躍するのは江戸の歌舞伎座の舞台裏。「義経千本桜・川連法眼館」の初日を前に役者が殺され犯人を推理していく。舞台の仕掛けや舞台作りの過程が見られて楽しめる。宙乗りで出て、宙乗りで引っ込む染五郎と猿之助。今回も喜劇のセンスを発揮している。
共演は人気花形、若手、御曹司が大挙出演。勘九郎、七之助、已之助、児太郎、隼人、千之助、虎之介、新悟、片岡亀蔵。超若手の金太郎、團子から超ベテランの竹三郎。中車、門之助、笑也、笑三郎、猿弥らおもだか勢などなど。大挙出演で薄味にしているが、にぎやかな舞台にはなった。
第三部は「野田版 桜の森の満開の下」の一本立て。坂口安吾の2作品をベースにした野田秀樹作品の歌舞伎化。壬申の乱を背景にして権力、国家、恋愛,芸術を民話風にかつダイナミックに描く。演出も野田。
特有の言葉遊びで分かりにくくなりがちな野田戯曲であるが、歌舞伎俳優の強い台詞がそれをカバーする。勘九郎の耳男。染五郎のオオアマ、七之助の夜長姫。梅枝の早寝姫、猿弥のマナコ、片岡亀蔵の赤名人、彌十郎のエンマ、扇雀のヒダの王。いずれも好演である。
11日所見。
――27日まで歌舞伎座で上演。





渡辺保
2017年7月歌舞伎座
海老蔵奮闘劇 

 海老蔵が昼の部の「加賀鳶」「連獅子」、夜の「秋葉権現廻船噺」の通しと

昼夜六役のほとんど出ずっぱりの奮闘興行である。

 なかでもっともいいのは「連獅子」の親獅子。花があって下手揚幕から出た

ところの、余裕のある風格の大きさ、スッキリした姿で堂々たる歌舞伎座の座

頭である。踊りよりも役者の持ち味で見せる花やかさ。

 対する子獅子は巳之助。踊り始めると自然にそっちへ目が行くのは、この人

の踊りのうまさ、体を十二分に使う、その呼吸のよさである。男女蔵、市蔵の

間狂言をふくめて完成度からいえば、昼夜一番の見ものである。長唄は日吉小

間蔵杵屋勝松。

 この前に右団次の「矢の根」、海老蔵初役の梅吉と道玄二役の「加賀鳶」。

 まず海老蔵の梅吉が序幕木戸前一場だけだがいい。上手町木戸を出た梅吉が、

かつて見た十一代目団十郎(当時海老蔵)の、一寸暗い影があって、しかも色

気と貫目があって、さっそうたる梅吉に生き写しである。せりふが歯切れがい

いのは十一代目以上だが、いささか早口すぎて趣に乏しく、引込みももう一杯

しっかりと見せてほしい。

 二役道玄は目がよく利く御茶ノ水の殺しがいいが、世話物の芸としては、滑

稽さ、愛嬌、太々しさはまだ未完成。しかし二ついいところがある。一つは不

思議な実在感があること。もう一つは松蔵に見顕されてから恐れ入るまでのプ

ロセスが、松緑、勘三郎、富十郎、十二代目団十郎ととかく不明確だったとこ

ろがスッキリしてわかりやすいこと。すなわち松蔵がお朝の書置きを偽筆と見

破ったところでの思い入れでこれが強請であることを認めてしまい居直って

「もとより話の根なし草」になるのがハッキリしていてわかりやすい。松蔵の

指摘に思わず口にくわえていて煙管をポロリと宙ぶらりんにしてしまうところ

がそれである。道玄の「もとより話の根なし草」になる心理が手に取るように

明確になる。これは海老蔵が道玄という人間の行為をキチンと組み立てた結果

である。

そのあとの松蔵に御茶ノ水で拾った煙草入れの証拠の書き出しを突きつけられ

る件でも手を大げさに上下しないのがいい。

 対する松蔵は中車。御茶ノ水の幕切れで煙草入れを闇にかざすのに両手で持

つのはおかしいだろうし、姿が悪い。質見世は面白いとまではいかないが一応

の出来になったのは大進歩である。

 この舞台のおさすりお兼で、右之助が二代目斎入を襲名した。

 勢揃いは、右団次を筆頭に、巳之助、男女蔵、亀鶴以下、九団次、市蔵、権

十郎、団蔵、左団次と手揃いである。

 家橘の伊勢屋与兵衛、お朝は児太郎、太次右衛門は辰禄、猿三郎の大家。

 さて、この狂言の傑作は、笑三郎の道元女房おせつである。しっとりした持

ち味、芝居がしっかりしていて役をうまく仕生かしている。

 右団次の「矢の根」は、揚げ障子が揚がったところで、その隈奴をとった顔

が現代的に見えるのが損である。いずれ芸が進めば隈取が生きて輝くようにな

るだろう。明晰な調子の人なのにせりふ廻しに独特の癖があって、そのために

おせち料理の言立てや七福神の店おろしが聞きとりにくいのは残念。

 十郎は笑也、大薩摩文太夫は九団次。弘太郎の馬士がとぼけた味でいい。

 夜の部は竹田治蔵の「秋葉権現廻船噺」を台本作りのベテラン四人織田紘二、

石川耕士、川崎哲男、藤間勘十郎が集まって補綴演出した通し狂言。原作から

かなりはなれての新脚本といってもいい。

 発端に月本始之助(巳之助)と傾城花月(新悟)の駆け落ちを見せ、月本家

所蔵の紀貫之直筆の秘宝「古今集」を盗んだ日本駄右衛門(海老蔵)と女道楽

のため兄玉島逸当(中車)に勘当をうけた玉島幸兵衛(海老蔵二役)の立ち廻

りがある。発端からして海老蔵が二役早替りを見せるが、長い割には手際が悪

く、さして面白くない。

 序幕が月本館。上使(海老蔵)に化けた駄右衛門が月本家の当主月本円秋

(右団次)に切腹を迫る。そこへ玉島逸当がかけつけて上使が偽せ者と見破ら

れるが、円秋にかわって陰腹を切るという大芝居。

 海老蔵は上使に化けて来たところは、烏帽子、大紋まことにすっきりして駄

右衛門が化けているとは思えず、それが芝居だといえばそれまでだが別人のよ

う。正体をあらわしての御簾斬りが見ものというほかはない。駄右衛門はお家

横領の叔父月本祐明(男女蔵)も殺す。この祐明の側室と見えたのは駄右衛門

一味の女賊牙のお才(児太郎)で、駄右衛門の御簾切りのあと緋無垢の着付の

肌脱ぎになると弁慶縞の浴衣という奇抜さで、児太郎がのびのびとやってこの

幕第一の収穫。

 他では右団次の月本円秋が立派。

 しかし盛沢山すぎて役者の芸の仕どころが少ないのが難である。

 二幕目第一場は、始之助と花月の「落人」を真似たような長唄の道行。ここ

といい前幕の月本円秋の切腹で四段目の判官切腹の真似といい、とかく歌舞伎

の名場面をそのまま持ち込むのが問題である。もとを知らない観客にはなんの

ことかわからず、知っている観客にはああ二番煎じかと思われてオリジナリテ

ィを失う。もっと抽斗ばかり使わずに本当の創造をして貰いたい。

 第二場がお才の茶屋で、やっと芝居らしくなるが、かつて前進座で瀬川菊之

丞が哀愁漂う玉島幸兵衛を見せたのとはかわって、ここも「伊勢音頭」の丸取

り。海老蔵の幸兵衛は、福岡貢のようである。三階立ての大仕掛けの道具もさ

して働かずにつまらぬ。

 第三場が秋葉権現、海老蔵の三役中、この大権現が一番の出来。

 勸玄の白狐がパパの秋葉大権現に抱かれて客席を指さしたりするあどけなさ。

「成田屋」の掛け声、拍手、それこそ超満員の劇場も崩れるばかりで、この父

子宙乗りが、この通し狂言第一の見どころになった。

 大詰三場は例の如き大団円。火事場、亡者の襲撃と趣向沢山の割にはつまらず。

 海老蔵が汗みどろになっての大奮闘にもかかわらず、竹田治蔵の原作がよく

ないために以上の結果。海老蔵の努力、意欲は十分わかるが、今後はもっと骨

格のしっかりしたドラマの原作を取り上げてほしい。               

 

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『渡辺保の歌舞伎劇評』http://homepage1.nifty.com/tamotu/

長谷部浩
【劇評79】海老蔵を活かす復活狂言
歌舞伎劇評 平成二九年七月 歌舞伎座夜の部

歌舞伎座夜の部は、海老蔵と長男勸玄が宙乗りを勤める『駄右衛門花御所異聞』を通す。竹田治蔵作の芝居を復活させた台本(織田絋二、石川耕士、川崎哲男、藤間勘十郎 補綴・演出)で、海老蔵の魅力の源泉をよく理解している。
海老蔵がなぜ歌舞伎で突出した人気を誇るのか。それは荒事の暴力性と和事の柔らかさのあいだを自在に横断する力がそなわっているからだ。また、その振れ幅が大きく、まるで目くらましにあっているかのような幻を観客にもたらす。
海老蔵は、発端から廓遊びに入れ込んだ玉島幸兵衛を演じたかと思うと、一転して、日本駄右衛門に替わって骨太な悪党振りをみせる。この振幅こそが海老蔵の真骨頂だろう。
二幕目第一場は、大井川の場。巳之助の月本始之助と新悟の傾城花月の道行。富士を望む街道をいく。この色模様を所作事で見せるだけの力をふたりがそなえつつあるのに目を見張る。
第二場のお才茶屋で児太郎お才の名にふさわしく才気走った女の魅力を発散する。「こんな金の亡者は見たことがない」との評言が笑いを誘うだけのしたたかさがあって、底を割らない。
九團次のお才の兄長六が金をせびるときのせこい様子、廣松の寺小姓采女の色気もよい組み合わせとなっている。弘太郎の駄右衛門子分早飛もさまになっている。海老蔵の幸兵衛は、ここで廻国修業の僧となって現れるが、やがて殺し場になって、血が流れ、小判が手水鉢からあふれ出る。人間の欲望が全開となる場で、『伊勢音頭恋寝刃』の貢が二重写しになる。
海老蔵を中心に、若手の力を引き出す台本と演出で、新しい世代の歌舞伎を予感させる舞台となった。
さて、お待ちかねは、海老蔵と勸玄の宙乗り、私が見た日は客席に親しい人を見つけたのか、勸玄が指をさして海老蔵に知らせ、手を振る余裕を見せた。花道の出といい舞台度胸がよく満場の喝采を浴びた。これも歌舞伎なのだ、いやこれが歌舞伎なのだと実感させれらる。
大詰は、東山御殿の場から奥庭に続き、さらに御殿にいってこいとなる構成。焔に包まれるなか、ゾンビのような亡者があふれる演出がおもしろい。
繰り返しになるが、海老蔵という役者を活かし抜いた舞台であった。
七月大歌舞伎は独立した記事を立てて特集する意味のあるもの。六月に海老蔵さんの妻麻央さんががんで亡くなって早々、4歳の勸玄くんが宙乗りデビューしたのだから。

「駄右衛門花御所異聞」は市川海老蔵の集大成「昔ながらの歌舞伎」を「昔ながらの方法」で、かつ新しく
中川右介
二代目市川齋入襲名披露

 7月の歌舞伎座の昼の部は「矢の根」で始まる。これには海老蔵は出演しないが、この演目は、市川家の「家の藝」たる「歌舞伎十八番」のひとつだ。主役の曽我五郎は1月に襲名したばかりの市川右團次がつとめた。

市川海老蔵(右)と市川齊入を襲名する市川右之助
拡大市川海老蔵さん(右)と市川齊入を襲名した市川右之助さん
 次が「加賀鳶(とび)」で、海老蔵は2役。父・十二代目團十郎が何度も演じた役で、海老蔵としては初役だ。この演目は、海老蔵の一門の重鎮で名脇役の市川右之助の二代目市川齋入(さいにゅう)襲名披露でもある。
 市川右之助は、二代目右團次の孫にあたる。祖父が1936年に亡くなった後、父が役者を廃業したこと、女形となったことなどの理由で、右團次を襲名していなかった。その名跡を、市川右近に譲ったのが、今年の1月の右近の三代目右團次襲名だった。これは海老蔵が思いつき、父十二代目が存命中に決めたのだという。

 こうして右團次は復活したが、そうなると右之助がいつまでも右之助というのもおかしい。「右之助」の名は「右團次」より格下だからだ。そこで初代右團次が晩年に名乗った齊入を二代目として襲名することにしたのだ。

 昼の部最後は「連獅子」で、海老蔵が親獅子、坂東巳之助が子獅子。巳之助もまた父・十代目坂東三津五郎を2015年に失くしている。海老蔵は何度か三津五郎とは共演し、新境地を開かせてくれた恩人でもあるので、その恩返しとしての起用だろう。巳之助は夜の部も活躍する。

一門のトップ・海老蔵が推し進めていること

 このように昼の部では、1時間前後の、何の関係もないものを3演目並べるという、ここ100年くらいで作られた伝統的な興行形態をとった。

 しかし、夜の部ではひとつの作品を最初から最後まで見せるという、他の演劇では当たり前だがいまの歌舞伎では珍しく、あえて「通し狂言」と銘打つ興行とした。もっとも、徳川時代にはこれが当たり前だったので、真の伝統へ回帰したとも言える。

「駄右衛門花御所異聞」。海老蔵の日本駄右衛門 (C)松竹
拡大「駄右衛門花御所異聞」より。市川海老蔵の日本駄右衛門 (c)松竹
 夜の部「駄右衛門花御所異聞」は、ここ数年の海老蔵の活動のひとつの集大成となるものだった。
 父を失くしてからの海老蔵は、着々と自分の劇団ともいうべき一座をつくるべく布石を打っている。

 一門のトップ、そして座頭たる者は、自分の藝を磨くだけではだめなのだ。一門や客演してくれる役者の置かれているポジションを見極め、配慮し、盛り立てていかねばならず、いわゆる「役者バカ」ではつとまらない。

 海老蔵が推し進めているひとつは、一門以外の役者を公演ごとに引き入れ、一座として役者の層を厚くしていくことで、右團次、市川中車をはじめとする澤瀉屋一門を組み入れ、今月は巳之助や中村児太郎も入れている。本来は中村獅童も出るはずだったが、病を得て、出られなくなった。

 もうひとつは、歌舞伎以外の演劇人とのコラボで新作をつくることでのレパートリーの拡充である。

 今年に限っても、2月にEXシアター六本木でリリー・フランキー脚本、三池崇史演出で「座頭市」を作り、寺島しのぶが相手役をつとめた。6月には自主公演ABKAIで樹林伸作、松岡亮脚本、藤間勘十郎演出・振付で「石川五右衛門外伝」をつくっている。

 その一方で、3月に歌舞伎座で「助六」をつとめ、5月の歌舞伎座の「伽羅(めいぼく)先代萩」では仁木弾正と、古典の大役もしっかりつとめた。

最大の見せ場、勸玄君の宙乗りを融通無碍に

 こうした布石を打った上での、7月の歌舞伎座に集まった役者の層は、大幹部がいない割には厚い。

 そのメンバーで昼は古典、夜は新作「駄右衛門花御所異聞」をやる。しかも、その新作は、新進気鋭の劇作家に依頼したのではなく、これまでの新作とは別のアプローチで作るものだった。

 タイトルにある駄右衛門は実在した大泥棒、日本駄右衛門のこと。歌舞伎では白浪五人男の「青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)」でもおなじみだ。

 250年前に、それとは別に「秋葉権現廻船語」という駄右衛門を主人公にした芝居があったが、長く上演が途絶えていた。徳川後期に七代目團十郎が演じたことがある。

 この芝居の当時の台本をベースに、まったく新しく書き換えて復活させたのが、今月の「駄右衛門花御所異聞」で、実質的には新作だ。

 歌舞伎はいまも新作が作られている。十八代目勘三郎が野田秀樹や宮藤官九郎と組んでまったく新しいものを作ったり、串田和美の演出で古典を新解釈していたり、市川猿之助が「ワンピース」を歌舞伎にするなどがその代表だ。先代の猿之助のスーパー歌舞伎も新作路線の代表である。

 海老蔵も前述の「座頭市」「石川五右衛門」では歌舞伎外の演劇人と組んでいたが、今回の新作は、歌舞伎専門の補綴・演出家である織田紘二、石川耕士、川崎哲男、と海老蔵の盟友たる藤間勘十郎が協同してつくる。この4人は歌舞伎の熱心なファン以外には、ほとんど知られていないだろう。

 複数の座付き作家が協同で作ることが、まず昔ながらの歌舞伎の作り方だ。

 基本のストーリーは歌舞伎でおなじみのお家乗っ取りの話で、さまざまな古典の名場面を模した場面でつないでいく。

 つまり海老蔵のコンセプトは「昔ながらの歌舞伎」を「昔ながらの方法」で作るというものなのだが、単なる復古調ではない。ストーリーもセリフも古典なのだが、舞台装置や照明には最新技術を使い、テンポもはやくして、飽きさせないようにするというものだ。

 海老蔵は一人3役で、そのうちの2役は早替わりで演じる。

市川海老蔵さん(右)と長男・堀越勸玄君の宙乗り=松竹提供
拡大市川海老蔵さん(右)と長男・堀越勸玄君の宙乗り=松竹提供
 そして最大の見せ場となるのが宙乗りだ。

 勸玄君の出演は当初はなく、チケット発売の直前になって松竹の要請で出ることになったという。だから最初の台本には彼の役はなく、まさに取ってつけたような役なのだ。

 ストーリー上は、勸玄君演じる「白狐」はいなくてもいい。しかしそれが結果的に最大の見せ場となってしまう、この融通無碍なところが、歌舞伎らしいといえば歌舞伎らしく、これもまた「昔ながらの歌舞伎」である。

世代交代期の息吹が凝縮された歌舞伎座

 「駄右衛門花御所異聞」には人生とは何かとか、家とは何かとか、そういう深刻なテーマは何もない。緻密なストーリーもない。その場その場が面白ければいいという作り方だ。

 悪く言えばパッチワークのように、いろいろな歌舞伎の名場面を、つなぎ合わせているので、歌舞伎を見た、という満足感も味わえる。

 前述の巳之助に加え、中村児太郎(彼の父・福助も病に倒れてずっと休んでいる)も重要な役に起用され、見事にこなしている。

 海老蔵は自分よりも若手に、活躍の場を与えてもいるのだ。

 この7月、同世代の市川染五郎(来年、松本幸四郎を襲名)は大阪松竹座、尾上菊之助は国立劇場でそれぞれ主役、大役をつとめている。

 平成から新時代に代わるのにあわせるようにして、歌舞伎界は大きな世代交代期に突入した。

 その息吹が凝縮されているのが、7月の歌舞伎座だ。

市川海老蔵・座頭「七月大歌舞伎」で起きた大事件祖父、十一代目團十郎も果たせなかった「静かなる革命」
中川右介
幸福感に満ちていた舞台

 2017年7月3日、歌舞伎座は「七月大歌舞伎」の初日を迎えた。

舞台の安全を祈願する市川海老蔵さんと長男の堀越勸玄ちゃん=29日午後、東京都中央区20170629
拡大「七月大歌舞伎」の舞台前に、安全を祈願する市川海老蔵さんと長男の堀越勸玄君=2017年6月29日
 私はめったに初日には行かないのだが、この月は「市川海老蔵が歌舞伎座で座頭となり、実質的な新作の通し狂言をやる」記念すべき月なので、初日に行くべきだと思い、6月7日のチケット発売日に、夜の部は初日を買っておいた。
 そうしたら、6月23日のあの悲報となった。

 チケットを買った日とはだいぶ状況が変わり、「市川海老蔵が歌舞伎座で座頭となり、実質的な新作の通し狂言をやる」という歴史的意義よりは、4歳の長男・堀越勸玄君が史上最年少で宙乗りをすることに話題は集中していた。

 勸玄君については、すでに洪水のように報じられている。

 初日に客席にいた者としては、そこには湿っぽさは微塵もなく、人びとは、何か浄化される思いとなり、幸福感に満ちていたと、伝えておく。

海老蔵と猿之助のクールな「盟友関係」――正統と異端、『柳影澤蛍火』の「悪人」から見えた二人の距離
[3]「開拓」を続ける市川海老蔵、九團次の選択
[1]市川海老蔵が座頭を勤めた理由――戦後70年、「孫たちの時代」はどう展開していくのか
海老蔵の祖父の孤独な闘い

 初日が無事におわり、毎日のように公演は続き、12日、日本歌舞伎史上の大事件が起きた。歌舞伎座で「夜の部」がなかったのだ。

 と言っても、役者の誰かが急病で倒れたとか、劇場に事故があったわけではない。

 最初から、12日は昼の部だけの興行で夜の部はなかったのだ。同様に、このあと19日は昼の部が休演となる。

 何かが起こればニュースだが、「何もなかった」のはニュースにはならないので報じられなかったが、これは実は大事件なのだ。

 歌舞伎座は、おそらくこの規模の劇場としては世界で最も稼働率の高い劇場だ。

 毎日11時から3時頃まで「昼の部」、4時か4時半から9時頃まで「夜の部」が上演され、原則として「25日間」、休むことなく昼夜の公演が続く。昼と夜はまったく別の演目だ。

 これは歌舞伎座だけでなく、松竹による歌舞伎公演はみな昼夜・25日間を基本としている。

 なかには昼夜とも出ずっぱりの役者もいるから、体力的にも精神的にも負担はかなり重いだろう。裏方のスタッフも、休みはない。

 松竹としては休演日を設ければ収入減となるので、休みたくない。昼の部か夜の部のどちらかを休めば、チケット代だけで約3000万円の減収となり、弁当や食堂、お土産屋の売上も減る。そのため、ずっと昼夜2部制・25日間興行が伝統となっていた。

 だが半世紀前、この昼夜2部制に異議申し立てをした役者がいた。海老蔵の祖父、十一代目團十郎である。

 しかし、他の役者たちは、松竹に気兼ねしたのか十一代目に同調せず、彼は孤独な闘いを強いられ、結局、この体制は維持され、團十郎は1965年に胃ガンとなり56歳で亡くなった。

海老蔵が座頭となった歴史的な月に

 以後、誰も昼夜2部制・25日間興行に異を唱える者はいなかった。少なくとも、表にはそういう声は出なかった。

 それが十一代目團十郎の死から半世紀が過ぎて、その孫によって、歌舞伎座に休演日を設けるという大改革が実現したのだ。

 これは何かを「する」のではなく、「しない」という改革なのでまったく目立たないが、静かなる革命と言える。

 海老蔵は7月12日のブログに、

 「今日は/歌舞伎座史上初の夜の部お休み。/歴史的快挙と私はおもう。/そして/これが続く事が/未来の歌舞伎役者のためであり/お客様のためでもある。/そうおもいます。」

 と綴った。

 公にはなっていないが、この休演日が海老蔵の強い要請で実現したことは、このことからわかる。

 何よりも、海老蔵が歌舞伎座で座頭となったこの月が最初で、その月で初めて休演日が設けられたのだ。海老蔵の意向以外には考えられない。

 そう――長男・堀越勸玄君の出演が話題になっているが、冒頭に記したように、7月の歌舞伎座は「海老蔵が座頭となった」という点で、記念すべき、歴史的な月なのだ。

「働き方改革」も後押し?

 歌舞伎座は12か月のうち、8月の納涼歌舞伎は若手だけが出て、5月は團菊祭で現在は團十郎がいないので菊五郎が座頭となり、9月の秀山祭は吉右衛門が座頭となるが、それ以外の月は、菊五郎、幸四郎、吉右衛門、仁左衛門、梅玉という大幹部のうち2人か3人が交互に出ている体制が続いている。

 そのなかにあって7月は、長年、猿之助一座が年に一度歌舞伎座に出る月だったが、三代目猿之助(現・猿翁)が病に倒れてからは玉三郎が座頭をつとめ、海老蔵が客演することが多かった。

 昨年(2016年)は猿之助が座頭で海老蔵が客演したが、今年は海老蔵が文字通りの座頭として、昼夜に奮闘(たくさん出演するという意味)する、名実ともに「成田屋の月」となった。

 澤瀉屋(猿之助)とどのように話し合ってこうなったのか、あるいは何も話し合いはなかったのか、その裏の事情は不明だが、松竹は今年の7月の歌舞伎座を海老蔵に預けたのである。それも、「花形歌舞伎」と銘打つのではなく、「大歌舞伎」として。

 座頭となった海老蔵は、公演内容や出演者を決める立場を得ると、昼夜1回の休演を求め、松竹としてもそれを呑まざるをえなかったということだろう。

 世の中全体が「働き方改革」の流れにあるのも、後押ししたのかもしれない。

 噂では、2020年の東京五輪に海老蔵は團十郎として関わるので、その前に襲名披露興行があるようだ。それへ向けての助走が始まっているとも言える。

歌舞伎座の時代転換が始まった

 歌舞伎座は、唯一、1年中、大歌舞伎を上演する劇場であり、歌舞伎役者にとっては、歌舞伎座でその役を演じなければ本当に演じたことにはならないという、絶対的な権威を持つ劇場だ。

 さらにその劇場で座頭となるのは、本当に限られた役者しかできない。海老蔵もこれまで他の劇場では何度も座頭となっていたが、歌舞伎座では7月が初めてだ。

 いよいよ海老蔵が歌舞伎座で座頭となり、自分で一座を組んだことは、時代転換の歯車がまわりだしたことを意味する。

 勸玄君との宙乗りは、それに花を添えるものであり、それは大輪の花ではあるが、興行の芯ではない。

 家庭における悲劇と初の座頭とが重なったのは偶然に過ぎないが、そのおかげもあり、6月の悲劇の日から連日報じられたので、勸玄君の出る夜の部は早々と完売し、昼の部もごく僅かしか残っていない。

 歌舞伎座は新開場直後の賑わいもなくなり、空席が目立つ月もあったので、興行的成功はありがたいだろう。そうなるとますます、興行サイドとしては休演日があるのはうらめしいところかもしれないが、時代はもう前へ進んでいるのだ。 (つづく) 

勸玄くんが天に向かって投げキッス 市川海老蔵も驚いたサプライズ
海老蔵も驚嘆!麻央さん誕生日に勸玄くんが見せたサプライズ

7月19日の昼下がり。自宅近くの公園で虫とりに精を出していたのは市川海老蔵(39)と、麗禾ちゃん(5)、勸玄くん(4)のきょうだい。

元気いっぱい虫取り網を振り回していた子どもたちだったが、35度近い猛暑がこたえたのか、1時間ほどで自宅へ。この日は、小林麻央さんの母親の誕生日だった。姉の小林麻耶(38)ら5人でケーキを囲み、麻央さんのお母さんの誕生日を祝ったという。12日の麻耶の誕生会に続くお祝いに、子どもたちは笑顔が耐えなかったようだ。

そして7月21日。麻央さんが生きていたならば、35歳の誕生日を迎えるはずの日だった。海老蔵は、自身のブログにこう綴っている。

《今日は麻央見てる感じします。なんかあったかい。満席の中、ポツンと席が空いているところが、なんとなく感じます。みんな頑張ってます》

7月3日から「七月大歌舞伎」の舞台に立っている勸玄くん。史上最年少で挑戦し、話題を呼んでいる宙乗りは、闘病を続ける麻央さんを元気づけるためのプレゼントだった。勸玄くんの宙乗りを楽しみに、誕生日まで生き抜こうとしていた麻央さん。その願いはかなわなかった。

夜の部第二幕の幕切れ。海老蔵に抱かれた白狐に扮した勸玄くんが3階席まで昇っていく――。

「勸玄くん! 成田屋!」

これまでにない大向の声が、客席に響き渡った。

初日から物怖じせず、高い虚空から手を振る余裕を見せていた勸玄くん。万雷の拍手のなか、暗幕に消え失せようとするそのとき。客席が揺れたのではないかと錯覚するほど、悲鳴にも近い大きな歓声が上がった。

勸玄くんが天に向かい、投げキッスをしたのだ。それは天国から今まさに見守ってくれている麻央さんへの最大限のお祝いだった。

「これには海老蔵さんも驚いたようです。そして、この投げキッスは『ママに』と麗禾ちゃんと勸玄くんが話し合って決めたことだったそうです」(歌舞伎関係者)

ふたりで考えた、とっておきの誕生日プレゼント。きっと、天国の麻央さんにも届いているはずだ。
海老蔵 勸玄くんとの公演が千秋楽…2000人の観衆に宙から手を振る
 歌舞伎俳優の市川海老蔵(39)と、長男の堀越勸玄くん(4)が共演した東京・歌舞伎座の「七月大歌舞伎」が27日、千秋楽を迎えた。勸玄くんは、母・小林麻央さんを6月22日に亡くしたばかりのなか史上最年少で宙乗りに挑んだ。観劇を楽しみにしながら果たせなかった母に姿を見せるように、華麗に宙を舞った。
 想像を絶する悲しみと不安を乗り越え、4歳の幼子が、父とともに1カ月の長丁場を必死に駆け抜けた。
 母を亡くしてわずか11日後の今月3日、初日は波乱の幕開けだった。勸玄くんは当日の朝に突然、舞台出演を渋った。海老蔵は自宅から歌舞伎座までの車中で「ママが見てるよ」と説得。勇気を振り絞って宙乗りを成功させた勸玄くんを、市川中車(51)ら共演陣も絶賛した。
 この日は千秋楽とあり、勸玄くんは海老蔵に伴われ、羽織姿で関係者にあいさつ回りを行った。最後となった宙乗りでは、父の懐にしっかりと抱かれながら2000人の大観衆に手を振り、母に届けとばかりに、堂々と高さ10メートルの宙を舞って見せた。
 海老蔵はこの日、自身のブログで、歌舞伎座入りする勸玄くんを後ろから撮影した写真とともに「一か月前と比べてみたら デカくなりました 背中」と、たくましさが増した息子の成長を喜んだ。
市川海老蔵と勸玄君出演「七月大歌舞伎」が千秋楽
歌舞伎俳優市川海老蔵(39)と長男勸玄(かんげん)君(4)が出演してきた東京・歌舞伎座「七月大歌舞伎」が27日、千秋楽を迎えた。

 先月22日に海老蔵の妻小林麻央さん(享年34)が乳がんで亡くなり、悲しみ癒えぬまま始まった公演だったが、25日間を走り抜いた。

 夜の部は1日休演日があったため、勸玄君は24日間すべて「駄右衛門花御所異聞」に出演、史上最年少の宙乗りをこなした。この日も花道から出て「勸玄白狐、御前(おんまえ)に」と大きな声でせりふを言うと、海老蔵と一緒に宙乗りを見せ、満員の約2000人の観客に手を振った。
海老蔵から勸玄くんへ「これから君のドラマが始まる」(スポニチ)
 東京・歌舞伎座で上演されていた「七月大歌舞伎」が27日、千秋楽を迎え、歌舞伎俳優の市川海老蔵(39)が長男の勸玄(かんげん)くん(4)とともに25日間を完走した。

 最愛の妻、小林麻央さん(享年34)が6月22日に他界。わずか11日後の7月3日に開幕した公演。夜の部の通し狂言「駄右衛門花御所異聞」では、この日で最後となった父子での宙乗りを精いっぱい務めた。勸玄くんの宙乗りは歌舞伎史上最年少。神の使い・白狐(びゃっこ)を演じた勸玄くんが宙を舞いながら客席に手を振ると、大きな拍手が巻き起こった。海老蔵はこの日、自身のブログを更新。息子に「これから君のドラマが始まるんだよ。千秋楽は終わりではない始まり」とエールを送った。

 終演後は楽屋口に500人近いファンが集まった。海老蔵が車に乗り込む際には、麻央さんが15年11月に歌舞伎座で初お目見えの舞台に立った勸玄くんに送った言葉「えいえいお~」も響いた。海老蔵父子は車の窓を開けて何度もファンに手を振った。

 8月には名古屋と大阪で六本木歌舞伎「座頭市」(2~14日)を上演。その後は11月25日まで地方公演が断続的に組まれている。(スポニチ)
歌舞伎美人サイトより。
一、歌舞伎十八番の内 矢の根(やのね)

曽我五郎
大薩摩文太夫
馬士畑右衛門
曽我十郎

     右團次
     九團次
     弘太郎
     笑也

一、歌舞伎十八番の内 矢の根(やのね)

荒事ならではの豪快で華やかな祝祭劇
 初春を迎え、紅梅白梅が咲き誇るある日。曽我五郎が父の仇工藤祐経を討つために矢の根を研いでいると、大薩摩文太夫が年始の挨拶に訪れます。五郎は縁起の良い初夢を見ようと、文太夫が持参した宝船の絵を枕の下に敷きうたた寝を始めます。しかし、その夢に現れたのは五郎の兄十郎。十郎は、工藤の館で捕らわれの身となったことを告げます。飛び起きた五郎は、兄の窮地を救うべく工藤の館へと急ぐのでした。
 江戸狂言の洒落っ気と豪快さに満ちた荒事の一幕にご期待ください。


河竹黙阿弥 作
盲長屋梅加賀鳶
二、加賀鳶(かがとび)

本郷木戸前勢揃いより
赤門捕物まで
二代目 市川齋入襲名披露
天神町梅吉/竹垣道玄
日蔭町松蔵
春木町巳之助
魁勇次
虎屋竹五郎
昼ッ子尾之吉
磐石石松
お朝
数珠玉房吉
御守殿門次
道玄女房おせつ
金助町兼五郎
妻恋音吉
天狗杉松
伊勢屋与兵衛
御神輿弥太郎
女按摩お兼
雷五郎次
     海老蔵
     中車
     右團次
     男女蔵
     亀鶴
     巳之助
     廣松
     児太郎
     男寅
     九團次
     笑三郎
     市蔵
     権十郎
     秀調
     家橘
     團蔵
右之助改め齊入
     左團次

二、加賀鳶(かがとび)

粋な鳶と小悪党が織り成す江戸世話物の名作
 本郷界隈の家々では、加賀藩お抱えの加賀鳶と旗本配下の定火消しの大喧嘩を恐れ、人々が町木戸を閉め切っています。そこへ血気に逸る加賀鳶が勢揃いしますが、それを止めたのは頭分の天神町梅吉。日蔭町の松蔵が皆の説得にあたり、一同はその場から引き揚げます。
 一方、盲長屋に住む竹垣道玄は、女房おせつと姪のお朝にひどい仕打ちをする小悪党。道玄はお茶の水の土手際で百姓太次右衛門を殺害し、懐中の金を奪います。その場に通りかかった松蔵は、道玄の落とした煙草入れを拾います。その後、お朝の奉公先への強請を思いついた道玄は、言いがかりをつけて金を出させようとしますが、そこへ松蔵が現れ…。
 河竹黙阿弥ならではのせりふ回しで展開する、世話物の名作をご堪能いただきます。

河竹黙阿弥 作
三、連獅子(れんじし)

狂言師右近後に親獅子の精
狂言師左近後に仔獅子の精
僧蓮念
僧遍念
     海老蔵
     巳之助
     男女蔵
     市蔵

三、連獅子(れんじし)

獅子の親子が魅せる迫力のある舞踊
 天竺の霊地、清涼山の麓の石橋では、狂言師の右近と左近が手獅子を携え、石橋の謂れ(いわれ)や、親獅子が仔獅子を谷底へと蹴落とし、それでも這い上がってきた子だけを育てるという故事を踊って見せます。その後、満開の牡丹の中に親獅子と仔獅子の精が現れ、長い毛を振りながら豪放華麗な狂いを見せ、勇壮に舞い納めるのでした。
 能の「石橋」をもとに、獅子親子の厳しくも温かい情愛を描いた、数ある舞踊のなかでも人気の高い作品をお楽しみいただきます。
 矢の根はゆるーりとした江戸の荒事の一幕を楽しむ。
 加賀鳶はいいところで睡魔が……えーと、どんな話だったか、気付いた時には悪党の家に女房おせつがしばられてて、道玄が愛人と飲んでいたわ……そこから捕り物が始まって、後は一件落着。
 連獅子は、親獅子の海老蔵と子獅子の海老蔵のどちらもが踊り上手なので迫力ある美しい踊りが見られた。
千穐楽のひとつ前。

歌舞伎美人より
日本駄右衛門を中心に、宙乗り、大立廻りで
繰り広げる圧倒的スケールの奇想天外な物語
竹田治蔵 作
織田紘二 補綴・演出
石川耕士 補綴・演出
川崎哲男 補綴・演出
藤間勘十郎 補綴・演出
秋葉権現廻船語
通し狂言 駄右衛門花御所異聞(だえもんはなのごしょいぶん)

市川海老蔵 宙乗り相勤め申し候
堀越 勸玄
発 端
序 幕
二幕目

大 詰 遠州月本城下浜辺松原の場
遠州月本館の場
大井川土手の場
遠州無間山お才茶屋の場
同 秋葉大権現の場
都東山御殿の場
同  奥庭の場
元の御殿の場
日本駄右衛門/玉島幸兵衛/秋葉大権現
月本円秋
月本祐明
奴浪平
月本始之助
傾城花月
寺小姓采女
奴のお才/三津姫
白狐
駄右衛門子分早飛
長六
逸当妻松ヶ枝
馬淵十太夫
東山義政
玉島逸当/細川勝元

     海老蔵
     右團次
     男女蔵
     亀鶴
     巳之助
     新悟
     廣松
     児太郎
     堀越勸玄
     弘太郎
     九團次
     笑三郎
     市蔵
右之助改め齊入
     中車
通し狂言 駄右衛門花御所異聞(だえもんはなのごしょいぶん)

大悪党を描く名作を、現代の英知を集結させ堂々の復活
 『弁天娘女男白浪』の白浪五人男の首領として知られる日本駄右衛門。日の本六十余州を股にかけたこの大盗賊は、実在した浪人あがりの盗賊浜島庄兵衛をモデルとしており、その名は人形浄瑠璃『風俗太平記』に登場する賊徒日本左衛門に由来するとされています。この日本駄右衛門を描いた今作は、宝暦11(1761)年に初演された『秋葉権現廻船語』(あきばごんげんかいせんばなし)をもとに、市川海老蔵が現代の息吹を取り入れた復活狂言です。

 遠州月本家を足がかりに天下を狙う日本駄右衛門。月本家城主月本円秋を亡き者にするため、将軍家への献上品である家宝の古今集と、月本家に伝わる火伏の神「秋葉権現」の三尺棒を盗み出します。そこに現れたのは月本家家老玉島逸当。自らの命と引き換えに円秋と月本家の人々の命を救うのでした。駄右衛門の企てにより家を追われ、落ち延びた円秋の弟月本始之助、傾城花月、逸当の妻松ヶ枝は、逸当の弟である玉島幸兵衛と出会い、月本家の再興のため駄右衛門に立ち向かいます。ところが、「秋葉権現」の三尺棒の力により、妖術を手にした駄右衛門の力は強大で、天下奪取の大望成就がいよいよ目前に迫りますが、その前に立ちはだかったのは…。
 海老蔵が日本駄右衛門、玉島幸兵衛、秋葉大権現の3役を早替りにて勤め、大立廻りなどみどころ満載の演出で上演いたします。また、海老蔵の長男、堀越勸玄が、秋葉権現の使わしめである白狐の役で出演。海老蔵・勸玄親子二人での宙乗りも披露します。江戸後期に七世市川團十郎も演じたゆかりの演目にどうぞご期待ください。
 三幕通しは久しぶり。菊之助『子狐礼三』とか、コクーン歌舞伎『四谷怪談』ぐらいかな、見たのですぐに思い出すのは。

 ストーリーは上に引用してあるが、ちょっと入れ子構造になっているのが面白い。たとえば第一幕の月本始之介と傾城花月の道行きの場は心中ものだし、第二幕で月本円修が日本駄右衛門ふんする室町幕府の上使に切腹申しつけられる場面は忠臣蔵の四段目、第三幕で井戸を斬ってお才が貯めた二千九百両を取り出すところは石切平三、などなど、歌舞伎を知っている人ほどいろいろ思い出すよう。

 海老蔵は伸び伸びと演じていると思うけど第一幕の駄右衛門と玉島幸兵衛との早変わり乱闘は切れが悪かった(私が最初に見た早変わりが勘九郎『怪談乳房榎』なのでレベルが高いかも知れない)。後はよかった。特に秋葉権現の人ならぬ神の表現は素晴らしかった。
 中車さんは時代物にも中堅で出られる役者になった。
 今回特に素晴らしかったのは児太郎さん。ついこの間まで赤姫のような可憐な役が多かったのに、悪婆と呼ばれるようなお才を声の色を使い分けて演じていた。しかも性根は夫を一途に思うという。
 カンカンこと堀越勸玄くんは若干四歳ながら、ちゃんと「勸玄白狐、御前に」と台詞をこなし、パパ海老蔵の秋葉大権現と一緒に宙乗りで三階の鳥屋へ。怖がりもせず、時々小さく手を振るのが可愛い。先月に母を亡くしたと思えないほどしっかりと出演していた。これが、成田屋さんに生まれた男子の宿命であるかのように、ごく自然に舞台を楽しんでいるように見えた。
 駄右衛門(大盗賊)、市川右之助改め斎入が扮する将軍東山義政(直垂)、児太郎演じるその娘三津姫'(赤姫)、中車演じる細川勝元(生締め)、巳之助演じる始之助(若衆)が並ぶ大団円は、これこそ特撮戦隊ものに通じる五人組の立ち姿。
志の輔「牡丹灯籠」、2010年に一度見た直後に公演が途絶え、2013年に再演を見に行き、以後2014、2015、2016、2017と今年は6回目です。毎年チケットは大激戦なのですが、今年は前売りで2枚が確保できず1枚だけ買えました。チケットは別口で入手するから同じ公演を見た後に酒を呑もうと誘ってくれた友人がいて、下北沢で志の輔談義をしながら酒を酌み交わしました。

本当に、いつも暑い夏の盛りで、それも猛暑というほどの日で。牡丹灯籠で暑気払い、というのが習慣になってしまいました。

「前説」「さわり」の二段構成はいつもの通り。30時間にも及んだであろう三遊亭圓朝の口演を、プロの速記者ふたりが筆記していた。それが二葉亭四迷の明治の言文一致体運動に結びつき、テクストとして確立した。

今年は、弟と母を続けて亡くして、新盆だったんだけど、東京にいるとあまりその習慣がなくて(実家でも血の繋がってない祖母の新盆の記憶があまりなく、五年前に父が亡くなった時も新盆とてとりたててしなかった)。でも今月前半にお墓詣りには行っているので、八月の旧盆までちょっと待ってもらいましょうか。身近に死者が出ると、「さわり」の後に志の輔さんがオリジナルで付け加えたお盆の夜の場面がすごく心に沁みます。剣の師匠で父とも慕う(が実は実父の仇でもあった)殿様に「幸助、よくやってくれた、これからは幸せに暮らせ」涙する幸助。子供の頃から父の、そして師匠である殿の敵討ちに二十何年も生きてきた幸助は、やっと仇討ちから解放されて自分の人生を生きることができるのですね。師匠もそれを何より望んでいるでしょう。

そして、伴蔵おみね夫婦が悪党に転落していく様が、恋ゆえに萩原新三郎を取り殺すお露とお米の幽霊より怖い。また、もうひとりの悪党、お国もまた大悪女。




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