新選組・土方歳三を中心に取り上げるブログ。2004年大河ドラマ『新選組!』・2006正月時代劇『新選組!! 土方歳三最期の一日』……脚本家・制作演出スタッフ・俳優陣の愛がこもった作品を今でも愛し続けています。幕末関係のニュースと歴史紀行(土方さんに加えて第36代江川太郎左衛門英龍、またの名を坦庵公も好き)、たまにグルメねた。今いちばん好きな言葉は「碧血丹心」です。
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今月は昼の部と夜の部を分けて2日で見て、正解だった。どうしても集中力が途切れて居眠りしてしまうだけでなく、腰への負担が半端ないからだ。
一、江戸花成田面影(えどのはななりたのおもかげ)
二、元禄忠臣蔵(げんろくちゅうしんぐら)◆静けさの中に信念を貫く大石内蔵助の姿
途中うとうとしちゃったんだけど、仁左さまの台詞に望陀の涙。どうやら、私は仁左さまに無条件で惚れているらしい(汗)。
三、歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)◆追い詰められた弁慶が見せる決死の覚悟
四、河内山(こうちやま)◆大胆不敵な河内山が大名を懲らしめる痛快劇
一、江戸花成田面影(えどのはななりたのおもかげ)
◆十一世團十郎をたたえ、初お目見得を祝う一幕豪華キャストも素晴らしかったですが、何と言っても「ほりこしかんげんともうしたてまつる」です。かわいい……(≧∀≦)。
祭り囃子が賑わう中、芸者や鳶頭たちによる華やかな踊りが繰り広げられます。十一世市川團十郎五十年祭の顔見世で、市川海老蔵の長男であり、十一世團十郎の曾孫にあたる堀越勸玄が初お目見得いたします。豪華顔ぶれによる一幕です。
二、元禄忠臣蔵(げんろくちゅうしんぐら)◆静けさの中に信念を貫く大石内蔵助の姿
宿敵吉良上野介の首を討ちとり、本懐を遂げた赤穂浪士たち。浪士大石内蔵助は、家臣を仙石伯耆守(ほうきのかみ)の屋敷へ向かわせ、敵討ちの始末を届け出ます。詳細を聞いた伯耆守はその労をねぎらい、老中たちに討ち入りの一件を報告すべく登城します。その日の夜、仙石屋敷に内蔵助をはじめ、浪士たちが集まり、伯耆守らの尋問に答えます。浪士たちは諸家へのお預けが決まり、内蔵助は別々の屋敷に預けられる息子主税との別れを惜しむのでした。近代的な劇手法だと思いますが、主君の仇を討つという行動において、主君を切腹と決めた幕府の裁定に表立って異を唱えるわけではない(中央政権に刃向かうつもりはない)という意思を示しながら、主君を切腹に追いやった吉良上野介の首を取るという四十七士の理屈を、割と近代的に説明してると思います。
真山青果による歴史劇『元禄忠臣蔵』より、思慮深い内蔵助の姿を描き出す名作をご覧いただきます。
途中うとうとしちゃったんだけど、仁左さまの台詞に望陀の涙。どうやら、私は仁左さまに無条件で惚れているらしい(汗)。
三、歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)◆追い詰められた弁慶が見せる決死の覚悟
兄頼朝と不和になり、都を逃れた源義経は、武蔵坊弁慶ら家来とともに姿を変えて奥州平泉を目指します。その道中、一行は加賀国安宅の関で、関守富樫左衛門の詮議を受けます。窮地に立たされた弁慶は、自分たちが東大寺勧進の山伏である証拠として、白紙の巻物を取り出すと、勧進帳と偽り読み始めます。さらに、主君を命懸けで守るため義経を打擲(ちょうちゃく)する弁慶。富樫はその心情に打たれ、一行が義経たちだと見破りながらも、関所の通行を許すのでした。橋之助の弁慶、勘九郎の富樫で最近見たばかりだけど……さすが、幸四郎の弁慶はハマリ役だし、堂に入っている。豪傑であり、主君思いで涙もろい弁慶が印象深い。また、頼朝の命を受けて義経を自分の守る関所から脱出させてはならないという至上のミッションをわかりすぎるほどわかっていながら、弁慶が主君である義経を思うあまりの行動に心打たれ、後で切腹を迫られることを覚悟しながら弁慶と義経を見逃すと決めた富樫の高潔さが素晴らしい。
歌舞伎十八番の中でも屈指の人気演目です。緊張感みなぎる舞台にご期待ください。
四、河内山(こうちやま)◆大胆不敵な河内山が大名を懲らしめる痛快劇
河内山宗俊は、上野寛永寺からの使僧と身分を偽り、松江出雲守の屋敷へ単身乗り込みます。出雲守は、腰元奉公をする質屋上州屋の娘浪路を我がものにしようとしましたが、なびかないことに立腹し、浪路を手討ちにしようとしていました。悪巧みに長けた河内山は上州屋からこの窮状を聞きつけ、金目当てに奪還を引き受けたのです。渋る出雲守を見事説得し、屋敷を引き揚げようとする河内山でしたが…。化けた高僧の上品さと、地の河内山宗俊の豪放磊落さと江戸っ子ぶりの対比が面白い。
江戸城で茶道を務める坊主ながら、悪事をはたらく大胆不敵な河内山宗俊をいきいきと描いた世話物の舞台です。十一世市川團十郎の当り役の一つで、名せりふも聞きどころです。
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今月も昼席と夜席を見に来ました。仁左さまと海老蔵と染五郎。
一、実盛物語(さねもりものがたり)
白旗を握った腕が斬り落とされて見つかった時点でエグいのだけど、そこは歌舞伎。そこは受け容れられたのだけど、何がポイントだったのかがよくわからなかった(汗)。
二、若き日の信長(わかきひののぶなが)
三、曽我綉俠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)
若い頃にオペラやミュージカルを多少聴き込んだせいか、今は歌舞伎が自然にしみ込んでくる。
一、実盛物語(さねもりものがたり)
◆源氏の白旗をめぐり明かされる武将の本心 琵琶湖のほとりで暮らす百姓の九郎助夫婦の家に、侍の斎藤実盛と瀬尾十郎が詮議のために訪れます。実はこの家には、源氏再興の念願かなわず命を落とした木曽義賢の妻で、懐妊中の葵御前が匿われているのです。産まれてくる子の検分が目的の二人に、九郎助は、最前拾った白旗を掴んだ女の片腕を、葵御前が産んだと言って差し出します。憤った瀬尾が実盛に言いくるめられ去っていくと、残った実盛は、白旗を守るために小万と名のる女の片腕を斬り落としたと語り始め…。 斎藤実盛は、歌舞伎の代表的な捌き役の一つで、知勇を兼ね備えた武将として描かれています。時代物の名作にご期待ください。ひえー、もちょっと調べたら木曽義仲誕生エピソードという話だったことを後で知った。これだけ、事前に知っておけばよかった。
白旗を握った腕が斬り落とされて見つかった時点でエグいのだけど、そこは歌舞伎。そこは受け容れられたのだけど、何がポイントだったのかがよくわからなかった(汗)。
二、若き日の信長(わかきひののぶなが)
◆信長の熱き青年時代を描いた新歌舞伎の傑作 駿河の大名今川義元が隣国尾張への勢力拡大を目指す中、尾張を治める織田信長は、傍若無人なふるまいから、うつけ者と呼ばれています。父の法要に顔を出さず、村の子どもたちと遊ぶ信長。責任を感じたお守り役の平手中務政秀は、死をもって信長を諫めようと自害します。その後、今川勢が尾張への進軍を始めますが、信長は軍議に耳を傾けません。実は今川と戦う機会を狙っていた信長は、家臣の木下藤吉郎を呼び寄せ…。 大佛次郎による新歌舞伎の傑作で、信長の青年時代を鮮やかに描き出しています。十一世市川團十郎が海老蔵を名のっていた昭和27(1952)年に歌舞伎座で初演されました。十一世團十郎から受け継がれた舞台です。途中ちょっと意識なくしたとこがあった(汗)けど、近代的な作品だからか、つかみやすかった。時代に先んじた感覚をもった信長が、数少ない味方である爺の死を持った諫言に情は動かされつつもミッションは変えず、桶狭間の戦いに臨む。海老蔵のちょっとワルな感じがやんちゃな信長のキャラに合ってた。
三、曽我綉俠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)
◆七五調の名せりふで聞かせる男伊達の意地と粋 御所五郎蔵は、もとは奥州の大名浅間家の家臣でしたが、腰元皐月との不義を星影土右衛門に密告され、皐月ともども追放の身となります。俠客になった五郎蔵は、京の五條坂仲之町で土右衛門と再会し、今は廓勤めをしている皐月をめぐり一触即発となりますが、その場を甲屋与五郎が収めます。旧主のための金策で苦心している五郎蔵の様子を見かねた皐月は、金の工面のため、土右衛門になびいたふりをして、偽りの愛想尽かしをしますが、皐月の本心を知らない五郎蔵は激怒し…。 河竹黙阿弥による名せりふのやりとり、歌舞伎の様式美など、みどころあふれる演目をお楽しみください。河竹黙阿弥の七五調とか様式美にはまりつつある。ストーリーはどこかで聞いたことあるような二番煎じ感がつきまとうのだけど、七五調の音階と台詞の巧みさ、オペラのアリアみたい。しかも、掛け合い。
若い頃にオペラやミュージカルを多少聴き込んだせいか、今は歌舞伎が自然にしみ込んでくる。
佐野次郎左衛門に故・勘三郎、八ツ橋に玉三郎、繁山栄之丞に仁左衛門と、孝玉コンビに勘三郎という豪華トリオによる籠釣瓶。2010年の歌舞伎座さよなら公演のひとつ。
花魁はなぜ心変わりを? 『籠釣瓶花街酔醒』
見た目が美しい演目ではあるけど、ストーリー重視の自分にはちょっと単純過ぎるかな。でもまぁ、端整な仁左様、美しい玉様、醜男役もこなす勘三郎さんと楽しませていただきました。
花魁はなぜ心変わりを? 『籠釣瓶花街酔醒』
あらすじ花魁はなぜ心変わりを?『籠釣瓶』 その2
佐野(現在の栃木県)の絹商人・佐野次郎左衛門は下男とともに江戸へ商用で来たが、ついでにうわさの吉原仲ノ町の夜桜見物にやってきた。田舎者と一目でわかる言動のため、客引きにもつかまるが、引手茶屋立花屋・長兵衛に助けられる。
そこへ、吉原でも全盛を誇る花魁・兵庫屋八ツ橋の道中に出会い、その嫣然たる微笑を見て心奪われてしまう。以来、次郎左衛門は吉原の常連となり、きれいな金の使い方で、佐野の大尽とまで呼ばれるようになり、八ツ橋との身請け話が進む。
ならず者・釣鐘権助は八ツ橋とは義理ある関係で、立花屋を通じて何度も金の無心をする。断られた腹いせに、八ツ橋の情人である繁山栄之丞へ、八ツ橋と次郎左衛門の身請け話をたきつけ、栄之丞は八ツ橋を問い詰め責める。その場で八ツ橋は次郎左衛門に愛想尽かしをすることを約束させられる。
身請けの準備に余念のない次郎左衛門は、自分の大尽ぶりを自慢したく、同郷の仲間を吉原へ案内する。だが、八ツ橋は思いのほか冷たい愛想尽かし。満座の中で恥をかかされた次郎左衛門は、怒りをこらえて理由を問うが八ツ橋は間夫がいるためと答えて去っていく。同郷の仲間たちのいやみやあざけりに堪え、次郎左衛門は国許へ帰る。
四ヶ月後、次郎左衛門は再び兵庫屋へ顔を出し、八ツ橋と再会し、恨みに思っていないことを告げ、八ツ橋も心から詫びる。だが座敷に二人きりになったとたんに次郎左衛門は遺恨を述べ、妖刀・籠釣瓶をふりかざし、花魁初め次々に兵庫屋の人々を次々に惨殺していく。
見た目が美しい演目ではあるけど、ストーリー重視の自分にはちょっと単純過ぎるかな。でもまぁ、端整な仁左様、美しい玉様、醜男役もこなす勘三郎さんと楽しませていただきました。
昼の部と夜の部連続は腰がきついんだけど、なんとか。
音羽獄だんまり
松也の夜叉五郎、児太郎の小式部、右近の鬼道丸と若手が見られたのが自分的にはツボ。
矢の根
松緑の曽我五郎。ちょい出で曽我十郎に藤十郎。
一條大蔵譚
仁左さまが今日の眼福。阿呆役もかわゆく、後半の真のお姿は……うっとり。
文七元結
落語でおなじみの文七元結。
壇浦兜軍記 阿古屋
玉三郎にしかできない阿古屋。
髪結新三
裏長屋に住まって廻り髪結いであくせく働いていた新三が大店の娘をかどわかし、店から大金をせしめた上に娘もいただいちゃう(ひでぇ)悪事を働き、ついでに江戸で幅を利かせていたヤクザをコケにして一気に裏社会で成り上がるというピカレスク。でも家主の方が一枚上だったり、笑いやシニカルな要素も入れている。
明治になって薩長らが幅を利かせる東京になって、てやんでぃ、昔は悪党だって意気だったんだってのが白浪ものなんだなぁ。
2016年2月4日追記
大賞に片岡仁左衛門さん 読売演劇大賞
音羽獄だんまり
松也の夜叉五郎、児太郎の小式部、右近の鬼道丸と若手が見られたのが自分的にはツボ。
矢の根
松緑の曽我五郎。ちょい出で曽我十郎に藤十郎。
一條大蔵譚
仁左さまが今日の眼福。阿呆役もかわゆく、後半の真のお姿は……うっとり。
文七元結
落語でおなじみの文七元結。
壇浦兜軍記 阿古屋
玉三郎にしかできない阿古屋。
髪結新三
裏長屋に住まって廻り髪結いであくせく働いていた新三が大店の娘をかどわかし、店から大金をせしめた上に娘もいただいちゃう(ひでぇ)悪事を働き、ついでに江戸で幅を利かせていたヤクザをコケにして一気に裏社会で成り上がるというピカレスク。でも家主の方が一枚上だったり、笑いやシニカルな要素も入れている。
明治になって薩長らが幅を利かせる東京になって、てやんでぃ、昔は悪党だって意気だったんだってのが白浪ものなんだなぁ。
2016年2月4日追記
大賞に片岡仁左衛門さん 読売演劇大賞
第23回読売演劇大賞の各賞が4日付で発表され、大賞と最優秀男優賞に歌舞伎俳優の片岡仁左衛門さん(「菅原伝授手習鑑」「新薄雪物語」「一條大蔵譚」)が選ばれた。贈賞式は29日、東京都千代田区の帝国ホテルで。
ドラフトにいろいろ書いていたのだけどパソ不調で保存できなかった(涙)。もう一度書き直す気力が失せたので、メモ的に書き散らす。
高野聖
女性の聖性と魔性を描く作品として、対比したら面白そうなのは。
ドイツオペラから、モーツァルト『魔笛』夜の女王とワーグナー『タンホイザー』のヴィーナスとエリザベートかな。でもドイツオペラはあまり詳しくない。
ラテンアメリカの小説からは、ガルシア・マルケスの『エレンディラ』『族長の秋』『百年の孤独』。こちらは聖なる処女と娼婦と大地の母の生命力と暴力的な魔性と。
海神別荘
アールヌーボーと和のテイストが混じった舞台装置や小道具、衣装が素敵。奥女中の金魚のような袂のぷっくりしたラインの着物っぽいドレスっぽいデザインに目が惹かれた後、黒潮公子と地上の美女の衣装とビジュアルだけでうっとり。海老蔵と玉三郎の美しさに眼福。
財宝と引き換えに愛娘を泣きながら海に沈める父親や郷里の者たちに対する美女の未練や恋しさは理解できる。そして、海に沈められた自分は実は生きていて、海の底の御殿の女王になったことを知らせたいという見栄も、理解できる。でも同性として共感できない気持ちが、この作品世界に100%浸ることを許さない(苦笑)。この辺が、歌舞伎見てて難しいとこ。
高野聖
女性の聖性と魔性を描く作品として、対比したら面白そうなのは。
ドイツオペラから、モーツァルト『魔笛』夜の女王とワーグナー『タンホイザー』のヴィーナスとエリザベートかな。でもドイツオペラはあまり詳しくない。
ラテンアメリカの小説からは、ガルシア・マルケスの『エレンディラ』『族長の秋』『百年の孤独』。こちらは聖なる処女と娼婦と大地の母の生命力と暴力的な魔性と。
海神別荘
アールヌーボーと和のテイストが混じった舞台装置や小道具、衣装が素敵。奥女中の金魚のような袂のぷっくりしたラインの着物っぽいドレスっぽいデザインに目が惹かれた後、黒潮公子と地上の美女の衣装とビジュアルだけでうっとり。海老蔵と玉三郎の美しさに眼福。
財宝と引き換えに愛娘を泣きながら海に沈める父親や郷里の者たちに対する美女の未練や恋しさは理解できる。そして、海に沈められた自分は実は生きていて、海の底の御殿の女王になったことを知らせたいという見栄も、理解できる。でも同性として共感できない気持ちが、この作品世界に100%浸ることを許さない(苦笑)。この辺が、歌舞伎見てて難しいとこ。
3年連続の志の輔@ACTシアター。本多劇場の「牡丹灯籠」と同じく、ACTでは「忠臣蔵」「中村仲蔵」。4年連続同じ演し物だそうですが、私は3年連続。毎年同じ演目でも飽きないのは、自分の記憶力が悪いせいもあるのだけど、それ以上に一回こっきりのライブでの完成度の高さゆえ。
1300人のキャパを一日一回4日連続公演でフルにする志の輔は、立川談志の「伝統を現代に」を体現する演劇感覚が、落語ファンとは限らない志の輔ファンを引きつけていると思う。
大忠臣蔵/志の輔
初日なので、いつもの「今日のために昨日までリハーサルは万全です」というネタはなし。中秋の名月が旧暦の8月15日になるのは太陰暦がどういうつくりなのか、そして2日後の今年の中秋の名月はいつもより2割増しのスーパームーンであることのご案内。
大序から始まる忠臣蔵の11段解説。広重はじめとする浮世絵を使って歌舞伎の名場面を各段1枚か2枚で紹介し、史実の赤穂事件とフィクションの仮名手本忠臣蔵の違いや仮名手本忠臣蔵ならではのドラマの見どころを解説。また、それは初代中村仲蔵が歌舞伎史上に前例のない稲荷町から名代への出世を果たしての初めての役が名代にはふさわしくない小さな役であったことの壮大な前振り(苦笑)。でも毎回聴いててホント楽しい。
中村仲蔵/志の輔
特に、歌舞伎を見始めた今年、「中村仲蔵」は歌舞伎役者が今までにない役の解釈を世に問うライブ感覚がひりひりする。
稲荷町からスタートした仲蔵が四代目團十郎に見出されて異例の名代出世を遂げる前半、これが歌舞伎界全体からの妬みとなって、名代の初めての役が忠臣蔵五段目の斧定九郎一役となった苦境、新しい貞九郎像を生み出すまでの産みの苦しみとセレンディピティ、斬新な役作りゆえに観客から何の反応も得られない時の落胆、そして観客の無反応の理由を後で知った時の驚き、たぶん志の輔さん自身が新作落語をつくっているからこそできる表現なんだと思う。そして、仲蔵が名も知れない浪人と出会ってインスピレーションを得る場面、そのインスピレーションをもとに工夫した貞九郎を舞台にかけた時のリアルな場面、好きだ。
1300人のキャパを一日一回4日連続公演でフルにする志の輔は、立川談志の「伝統を現代に」を体現する演劇感覚が、落語ファンとは限らない志の輔ファンを引きつけていると思う。
大忠臣蔵/志の輔
初日なので、いつもの「今日のために昨日までリハーサルは万全です」というネタはなし。中秋の名月が旧暦の8月15日になるのは太陰暦がどういうつくりなのか、そして2日後の今年の中秋の名月はいつもより2割増しのスーパームーンであることのご案内。
大序から始まる忠臣蔵の11段解説。広重はじめとする浮世絵を使って歌舞伎の名場面を各段1枚か2枚で紹介し、史実の赤穂事件とフィクションの仮名手本忠臣蔵の違いや仮名手本忠臣蔵ならではのドラマの見どころを解説。また、それは初代中村仲蔵が歌舞伎史上に前例のない稲荷町から名代への出世を果たしての初めての役が名代にはふさわしくない小さな役であったことの壮大な前振り(苦笑)。でも毎回聴いててホント楽しい。
中村仲蔵/志の輔
特に、歌舞伎を見始めた今年、「中村仲蔵」は歌舞伎役者が今までにない役の解釈を世に問うライブ感覚がひりひりする。
稲荷町からスタートした仲蔵が四代目團十郎に見出されて異例の名代出世を遂げる前半、これが歌舞伎界全体からの妬みとなって、名代の初めての役が忠臣蔵五段目の斧定九郎一役となった苦境、新しい貞九郎像を生み出すまでの産みの苦しみとセレンディピティ、斬新な役作りゆえに観客から何の反応も得られない時の落胆、そして観客の無反応の理由を後で知った時の驚き、たぶん志の輔さん自身が新作落語をつくっているからこそできる表現なんだと思う。そして、仲蔵が名も知れない浪人と出会ってインスピレーションを得る場面、そのインスピレーションをもとに工夫した貞九郎を舞台にかけた時のリアルな場面、好きだ。
頑張って昼席と夜席連チャンしました。腰がガタガタ言わされてます(;_:)。
双蝶々曲輪日記 新清水浮無瀬の場
梅玉の与兵衛(「ぴんとこな」、やわらかながらもきりっとした強さのある色男)、錦之助の与五郎(「つっころばし」、へなへなした色男の若旦那)。大阪の新清水寺の裏手にある浮無瀬《うかむせ》という料亭が舞台……今の四天王寺前夕陽ヶ丘の辺りで、昔は浅瀬の海が西側の崖の下に広がっていた。
与兵衛が清水観音の舞台から傘を差して飛び降りる場面に落語の「愛宕山」を重ねて見てしまった(笑)。まぁ、悪党からどろんと姿を消す正義のヒーローなんでいいか。
紅葉狩
竹本と長唄と常磐津の三方掛合が面白い。更科姫または戸隠の鬼女に染五郎、平維茂に尾上松緑、山神に松本金太郎(子役)。途中ちょっと意識抜けちゃったところがあったので更科姫の美しいところをあまり覚えてない。鬼女の迫力はやっぱ女形でない染五郎だから出るのかな。
競伊勢物語
紀有常に吉右衛門、絹売豆四郎と在原業平の二役に染五郎、娘信夫と井筒姫の二役に菊之助、小由に東蔵。
筋が複雑なので新聞記事引用。
「競伊勢物語」に挑む中村吉右衛門
通し狂言 伽羅先代萩
これがまた、「通し狂言」と名はついているのだけど、人形浄瑠璃や義太夫や歌舞伎の複数作品からいいところを抜いて構成しているので、逆に全編通して出てくる主人公がいない。見せ場も趣向も幕毎に違う。
ホームページ「歌舞伎への誘い」より「伽羅先代萩」作品紹介。
〈花水橋〉
足利頼兼に梅玉、相撲取りの絹川谷蔵に又五郎。廓通いの帰りがけ、お家乗っ取りを企む者達がやとった悪漢どもに囲まれるお殿様頼兼、助けにかけつける谷蔵。さすが殿様、立ち居振る舞いに品がある。
<竹の間>
頼兼が遊興に耽ったとされて隠居に追い込まれ、嫡男の鶴千代が世継ぎ候補になるが、執権の仁木弾正が亡き者にしようとさまざまな手を打ってくる。乳母の政岡(玉三郎)は鶴千代を男嫌いの病気と称して、息子千松をお毒味役兼小姓としてつける以外はすべて腰元で周囲を固め、弾正らを近づけない。
病気見舞と称して弾正の妹八汐(歌六)が家臣の妻沖の井(菊之助)をとして連れて来る。沖の井は鶴千代に膳を勧めるが、政岡が自分以外の者が用意する食べ物を口にするなと普段からしつけているので、若殿は「いらない」という。次に八汐は、男医者ではダメなら医者の妻で女医者としても名声を博している小槙(児太郎)の診断を受けろという。小槙は若君の脈を取り、竹の間では絶対死ぬ、廊下では健康体、と不思議な見立てをする。
不審な忍びの者が見つかり、詮議すると政岡の命だという。さらに八汐は政岡が若君を呪詛で殺そうとしていると証拠と称する手紙を出して追い詰めようとする。が、若君はそれでも政岡がいいとかばい、沖の井が八汐の主張に反論して、政岡は助けられる。
〈御殿〉
飯《まま》炊きの場面。毒殺が怖いので、政岡は茶道具を使ってわずかな握り飯をつくり、それを若君と千松に食べさせる。「腹はへってもひもじうない」と、一日一食それもわずかな飯だけで過ごす子供ふたりが哀れで泣けてくる政岡。
そこに、管領山名宗全(江戸幕府でいう老中に相当)の妻である栄御前が鶴千代の見舞いと称してやってきて、菓子を鶴千代に勧める。八汐の差し金っぽいが、管領の名代として乗り込んできた栄御前の勧めを断りきれない。そこへ飛び出てきた千松がお菓子を一口食べ、残りを子供の乱暴に見せかけて蹴散らしてしまう。途端に苦しみ出す千松。毒を仕込んだことを露見させるまいと無礼な振る舞いを咎めて、千松を嬲り殺しにする八汐。
政岡は、我が子が目の前で責め殺されるのを見ながら、顔色ひとつ変えずに若殿の鶴千代を守ろうとする。その姿を見て、栄御前は(あまり頭良くない設定)、自分の息子を世継ぎにするために若君と小姓をすり替えているに違いないと勘違いしただけでなく、お家乗っ取りをはかる仲間と勘違いして血判状を政岡に渡す。
栄御前が去って、ひとり変わり果てた息子と対面した政岡は身も世もなく泣き崩れる。
ひとりになった政岡を狙って八汐が刃をふるうが、政岡は返り討ちにして千松の仇を取る。さらに、沖の井が小槙を連れてやってきて、小槙の夫は弾正に若君を毒殺する毒薬を調合するよう強要されたが拒否して殺されたこと、仕方なく小槙は八汐の一味になったふりをして彼らの悪事を暴くつもりだったことを沖の井に告白したことを宣言。
これで政岡は何とか若君を守り抜いたが、決定的な証拠である血判状を鼠が咥えて持ち出してしまう。
とにかく八汐が憎々しいが、ことが破れて「それでもご名代だ」と言い張るところはユーモラスで、身分は高いけど兄ほど遣り手じゃないんだなーと実感できる何かがあった。
政岡はやはり玉三郎だけあって、茶道具でご飯を炊く様が哀しくもお手前のように優美。でも何だろう、他のお客様は涙涙でこの場を見てるんだけど、私はどうも入り込めてない。沖の井を演じた菊之助は凛々しくて爽やか。小槙の児太郎もよかった。
〈床下〉
御殿の床下で鶴千代を守る荒獅子男之助は、怪しい鼠を捕まえようとする。しかし、この鼠は仁木弾正が妖術で姿を変えたもので、弾正は中空へ姿を消す。
江戸歌舞伎ならではの荒事なんだけど、男之助チープ過ぎる。。対照的に仁木弾正は権力者で男前で実力もある「実悪」、歌舞伎でいうと最高ランクの悪役なんだそうだ。うん、さすが吉右衛門、暗い花道をロウソクで照らし出されて浮かび上がる、幻想的な、品がある悪役姿、花道に残る影ですら素敵でした。『幕末Rock』の井伊直弼みたい(爆)。
〈対決〉
お家騒動は幕府の問注所で裁かれることとなり、仁木弾正ら悪臣たち、渡辺外記左右衛門ら忠臣たちが管領山名宗全の前で対決する。しかし山名はすでに仁木に抱き込まれており、ことごとく仁木らに有利な判決を下す。
忠臣たちが敗訴したところ、間一髪で管領細川勝元が駆けつけ、弾正を持ち上げながら一筆書かせ、今書いたばかりの書状の筆跡と、渡辺外記左右衛門らが持っていた密書の半分、そして自分が持っていた残り半分を付き合わせてこれらが同じ筆跡であることを周囲の面前で証明し、弾正らの企みを退ける。
染五郎が颯爽とやってきて進退窮まる忠臣チームを救い出す感じはいい。話の筋として、最初は完全に余裕こいてた弾正が論破された後に大人しく敗訴されるのは、継ぎ接ぎ作品の弱点だなぁと思う。ここから妖術でしょ、人外に化けて大暴れするとか、人を惑わすお香とか妖術で洗脳するとか、ここで何かやってくれないと。そして、術敗れてから、荒獅子男之助みたいなマッチョと力対決して、ここでも敗れてから次の刃傷の場でないと……せっかく「床下」で素敵な悪役っぷりを予感させておいて、この為体はないんじゃないか(くすん)。
〈刃傷〉
お家乗っ取りどころか執権の座も何もかも奪われてキレた弾正が逆恨みして外記左右衛門に斬りかかる。外記左右衛門手負いとなるも、周囲の力を借りて何とか弾正を討ち果たす。
細川勝元が外記左右衛門を労い、鶴千代の家督相続を許した幕府書状を手渡し、扇を贈って健闘を称える。
外記は八汐との二役で歌六。お疲れ様という感じ。
……しかし、何かここでの細川の殿様はKY(空気読めない)感が漂っている。医者に薬湯を持たせて飲ませたのはいい(でも腹に手傷を受けていたら薬湯も気休めなんじゃないのか?)、自分の駕籠に乗って帰れと外記左右衛門にはとても身分違いで乗れない駕籠を提供するのもまだいいとしよう。
早く駕籠に乗って帰って養生しろと言うでもなく、あっぱれと褒めるために扇を下賜した上に、歌って踊れと命令するのはあんまりだよなぁ……これで命を縮めたという感じだ。せめて、もはや手の尽くしようがないので、誉れを称えて手向けにしてやりたいという意図が見えれば、あっぱれ殿様とも言えるんだけど。ここは染五郎だからなのかしら? KYという印象しか残らなかった(汗)。
全編通して何よりも残念だったのは仁木弾正の活躍が鼠に化けたことと空を飛んだということで、その後妖術使いという設定が何ひとつ活かされなかったのが勿体ない。裁判で負けたところで妖術で抵抗してくれるとか、宙乗りで逃亡してくれるとか、演出のしようでいくらでも盛り上げられるはずなんだけどなー(「幕末Rock」で井伊直弼が妖術使いのくせに自分が魂を売った徳川家代々の亡霊に魂を喰われてあっけなく死んじゃったのも惜しいことをした……あともう一回分尺があれば、もう少し暴れられたのに)。
双蝶々曲輪日記 新清水浮無瀬の場
梅玉の与兵衛(「ぴんとこな」、やわらかながらもきりっとした強さのある色男)、錦之助の与五郎(「つっころばし」、へなへなした色男の若旦那)。大阪の新清水寺の裏手にある浮無瀬《うかむせ》という料亭が舞台……今の四天王寺前夕陽ヶ丘の辺りで、昔は浅瀬の海が西側の崖の下に広がっていた。
与兵衛が清水観音の舞台から傘を差して飛び降りる場面に落語の「愛宕山」を重ねて見てしまった(笑)。まぁ、悪党からどろんと姿を消す正義のヒーローなんでいいか。
紅葉狩
竹本と長唄と常磐津の三方掛合が面白い。更科姫または戸隠の鬼女に染五郎、平維茂に尾上松緑、山神に松本金太郎(子役)。途中ちょっと意識抜けちゃったところがあったので更科姫の美しいところをあまり覚えてない。鬼女の迫力はやっぱ女形でない染五郎だから出るのかな。
競伊勢物語
紀有常に吉右衛門、絹売豆四郎と在原業平の二役に染五郎、娘信夫と井筒姫の二役に菊之助、小由に東蔵。
筋が複雑なので新聞記事引用。
「競伊勢物語」に挑む中村吉右衛門
豆四郎・信夫夫婦と老母の小由こよしが暮らす奈良の田舎に、公家の有常が訪れる。小由は、有常が失脚した時に世話になった相手。訳あって預けた一人娘の信夫を返してほしいと告げる。実は、有常は養女として育てた先帝の娘・井筒姫の身代わりに、信夫を殺そうとしていた。人に養育を頼んで預けた娘と20年ぶりに会ってその日に、主筋を守るために娘と娘婿を殺さなきゃならないという話。近代人の自分にはすぐに受け容れられない展開ではあるのだけど、吉右衛門が雅に悲愴さを演じて陰惨にならない感じ。それでも生首を包んだ布をふたつ取り出したりすると、やっぱ辛い。
通し狂言 伽羅先代萩
これがまた、「通し狂言」と名はついているのだけど、人形浄瑠璃や義太夫や歌舞伎の複数作品からいいところを抜いて構成しているので、逆に全編通して出てくる主人公がいない。見せ場も趣向も幕毎に違う。
ホームページ「歌舞伎への誘い」より「伽羅先代萩」作品紹介。
江戸時代の仙台藩伊達家(だてけ)のお家騒動に取材した作品で、奥州の足利家の執権(しっけん)仁木弾正(にっきだんじょう)や妹八汐(やしお)らが、足利家の乗っ取りを企む物語です。ダイジェスト版というか、名場面集と割り切って見ればいいのだけど、慣れていない私は見た当日の昨日はすごく疲れた。一晩寝て、なるほど仮名手本忠臣蔵のように幕毎にいろいろなご趣向があるからファンがつくんだなと理解。
乳母政岡(まさおか)が自らの子を犠牲にして、悪人一派から幼い主君鶴千代(つるちよ)を守る通称「御殿(ごてん)」、御殿の床下で警護をしていた荒獅子男之助(あらじしおとこのすけ)を鼠の妖術によって出し抜いた弾正が、悠然と去っていく通称「床下(ゆかした)」、弾正が細川勝元(ほそかわかつもと)による裁判に敗れ、抵抗の末に成敗される通称「対決(たいけつ)」・「刃傷(にんじょう)」などの各場面を中心に上演されます。
〈花水橋〉
足利頼兼に梅玉、相撲取りの絹川谷蔵に又五郎。廓通いの帰りがけ、お家乗っ取りを企む者達がやとった悪漢どもに囲まれるお殿様頼兼、助けにかけつける谷蔵。さすが殿様、立ち居振る舞いに品がある。
<竹の間>
頼兼が遊興に耽ったとされて隠居に追い込まれ、嫡男の鶴千代が世継ぎ候補になるが、執権の仁木弾正が亡き者にしようとさまざまな手を打ってくる。乳母の政岡(玉三郎)は鶴千代を男嫌いの病気と称して、息子千松をお毒味役兼小姓としてつける以外はすべて腰元で周囲を固め、弾正らを近づけない。
病気見舞と称して弾正の妹八汐(歌六)が家臣の妻沖の井(菊之助)をとして連れて来る。沖の井は鶴千代に膳を勧めるが、政岡が自分以外の者が用意する食べ物を口にするなと普段からしつけているので、若殿は「いらない」という。次に八汐は、男医者ではダメなら医者の妻で女医者としても名声を博している小槙(児太郎)の診断を受けろという。小槙は若君の脈を取り、竹の間では絶対死ぬ、廊下では健康体、と不思議な見立てをする。
不審な忍びの者が見つかり、詮議すると政岡の命だという。さらに八汐は政岡が若君を呪詛で殺そうとしていると証拠と称する手紙を出して追い詰めようとする。が、若君はそれでも政岡がいいとかばい、沖の井が八汐の主張に反論して、政岡は助けられる。
〈御殿〉
飯《まま》炊きの場面。毒殺が怖いので、政岡は茶道具を使ってわずかな握り飯をつくり、それを若君と千松に食べさせる。「腹はへってもひもじうない」と、一日一食それもわずかな飯だけで過ごす子供ふたりが哀れで泣けてくる政岡。
そこに、管領山名宗全(江戸幕府でいう老中に相当)の妻である栄御前が鶴千代の見舞いと称してやってきて、菓子を鶴千代に勧める。八汐の差し金っぽいが、管領の名代として乗り込んできた栄御前の勧めを断りきれない。そこへ飛び出てきた千松がお菓子を一口食べ、残りを子供の乱暴に見せかけて蹴散らしてしまう。途端に苦しみ出す千松。毒を仕込んだことを露見させるまいと無礼な振る舞いを咎めて、千松を嬲り殺しにする八汐。
政岡は、我が子が目の前で責め殺されるのを見ながら、顔色ひとつ変えずに若殿の鶴千代を守ろうとする。その姿を見て、栄御前は(あまり頭良くない設定)、自分の息子を世継ぎにするために若君と小姓をすり替えているに違いないと勘違いしただけでなく、お家乗っ取りをはかる仲間と勘違いして血判状を政岡に渡す。
栄御前が去って、ひとり変わり果てた息子と対面した政岡は身も世もなく泣き崩れる。
ひとりになった政岡を狙って八汐が刃をふるうが、政岡は返り討ちにして千松の仇を取る。さらに、沖の井が小槙を連れてやってきて、小槙の夫は弾正に若君を毒殺する毒薬を調合するよう強要されたが拒否して殺されたこと、仕方なく小槙は八汐の一味になったふりをして彼らの悪事を暴くつもりだったことを沖の井に告白したことを宣言。
これで政岡は何とか若君を守り抜いたが、決定的な証拠である血判状を鼠が咥えて持ち出してしまう。
とにかく八汐が憎々しいが、ことが破れて「それでもご名代だ」と言い張るところはユーモラスで、身分は高いけど兄ほど遣り手じゃないんだなーと実感できる何かがあった。
政岡はやはり玉三郎だけあって、茶道具でご飯を炊く様が哀しくもお手前のように優美。でも何だろう、他のお客様は涙涙でこの場を見てるんだけど、私はどうも入り込めてない。沖の井を演じた菊之助は凛々しくて爽やか。小槙の児太郎もよかった。
〈床下〉
御殿の床下で鶴千代を守る荒獅子男之助は、怪しい鼠を捕まえようとする。しかし、この鼠は仁木弾正が妖術で姿を変えたもので、弾正は中空へ姿を消す。
江戸歌舞伎ならではの荒事なんだけど、男之助チープ過ぎる。。対照的に仁木弾正は権力者で男前で実力もある「実悪」、歌舞伎でいうと最高ランクの悪役なんだそうだ。うん、さすが吉右衛門、暗い花道をロウソクで照らし出されて浮かび上がる、幻想的な、品がある悪役姿、花道に残る影ですら素敵でした。『幕末Rock』の井伊直弼みたい(爆)。
〈対決〉
お家騒動は幕府の問注所で裁かれることとなり、仁木弾正ら悪臣たち、渡辺外記左右衛門ら忠臣たちが管領山名宗全の前で対決する。しかし山名はすでに仁木に抱き込まれており、ことごとく仁木らに有利な判決を下す。
忠臣たちが敗訴したところ、間一髪で管領細川勝元が駆けつけ、弾正を持ち上げながら一筆書かせ、今書いたばかりの書状の筆跡と、渡辺外記左右衛門らが持っていた密書の半分、そして自分が持っていた残り半分を付き合わせてこれらが同じ筆跡であることを周囲の面前で証明し、弾正らの企みを退ける。
染五郎が颯爽とやってきて進退窮まる忠臣チームを救い出す感じはいい。話の筋として、最初は完全に余裕こいてた弾正が論破された後に大人しく敗訴されるのは、継ぎ接ぎ作品の弱点だなぁと思う。ここから妖術でしょ、人外に化けて大暴れするとか、人を惑わすお香とか妖術で洗脳するとか、ここで何かやってくれないと。そして、術敗れてから、荒獅子男之助みたいなマッチョと力対決して、ここでも敗れてから次の刃傷の場でないと……せっかく「床下」で素敵な悪役っぷりを予感させておいて、この為体はないんじゃないか(くすん)。
〈刃傷〉
お家乗っ取りどころか執権の座も何もかも奪われてキレた弾正が逆恨みして外記左右衛門に斬りかかる。外記左右衛門手負いとなるも、周囲の力を借りて何とか弾正を討ち果たす。
細川勝元が外記左右衛門を労い、鶴千代の家督相続を許した幕府書状を手渡し、扇を贈って健闘を称える。
外記は八汐との二役で歌六。お疲れ様という感じ。
……しかし、何かここでの細川の殿様はKY(空気読めない)感が漂っている。医者に薬湯を持たせて飲ませたのはいい(でも腹に手傷を受けていたら薬湯も気休めなんじゃないのか?)、自分の駕籠に乗って帰れと外記左右衛門にはとても身分違いで乗れない駕籠を提供するのもまだいいとしよう。
早く駕籠に乗って帰って養生しろと言うでもなく、あっぱれと褒めるために扇を下賜した上に、歌って踊れと命令するのはあんまりだよなぁ……これで命を縮めたという感じだ。せめて、もはや手の尽くしようがないので、誉れを称えて手向けにしてやりたいという意図が見えれば、あっぱれ殿様とも言えるんだけど。ここは染五郎だからなのかしら? KYという印象しか残らなかった(汗)。
全編通して何よりも残念だったのは仁木弾正の活躍が鼠に化けたことと空を飛んだということで、その後妖術使いという設定が何ひとつ活かされなかったのが勿体ない。裁判で負けたところで妖術で抵抗してくれるとか、宙乗りで逃亡してくれるとか、演出のしようでいくらでも盛り上げられるはずなんだけどなー(「幕末Rock」で井伊直弼が妖術使いのくせに自分が魂を売った徳川家代々の亡霊に魂を喰われてあっけなく死んじゃったのも惜しいことをした……あともう一回分尺があれば、もう少し暴れられたのに)。
ぴあから劇評が来ました。
青木崇高が軽やかな佐平次に! 『幕末太陽傳』開幕
青木崇高が軽やかな佐平次に! 『幕末太陽傳』開幕
9月4日、本多劇場で『幕末太陽傳』が開幕した。元となるのは1957年、川島雄三監督によってつくられた名作映画『幕末太陽傳』。落語「居残り佐平次」を軸に、ある遊郭を舞台にした物語が展開する喜劇だ。劇中のエピソードも「三枚起請」や「品川心中」など落語の演目からとられたもの。今回、この作品が初めて舞台化されることとなった。演出を手掛けるのは江本純子。そして主人公の佐平次を演じるのは青木崇高だ。
劇場に入り幕が上がると、ステージ上はたくさんの衣装やら小道具やらで埋め尽くされている。その間を人々がバタバタと通り抜ける。隅にひょいっと青木が登場したかと思うと、着替えが始まる。ざわざわした楽しさに心を奪われていると、そこはいつしか江戸の遊郭に――。具体的な美術はほとんどなく、いくつもの段差によって空間が区切られ、シーンによってそれらはくるくると様々な場所に変化する。同じシーンでもしゃべっている者が周りの者に運ばれたり、はたまた自分で回転したりして、舞台でありながらそこに“カット割り”が生まれる。舞台全体を覆うにぎやかさに引っ張られて、観客は気が付けば物語の中に入り込んでゆく。
青木演じる佐平次は、時間が経つにつれてどんどん軽やかに、伸びやかになる。適当なことを言って相手を丸め込んでは、どんなトラブルもなんとか解決してしまう佐平次を青木はじつに魅力的に演じている。連続テレビ小説「ちりとてちん」で落語家を演じてブレイクした、もともと落語にゆかりの深い彼だからこそこの軽さが出せるのだろう。また、女郎おそめを田畑智子が、もうひとりの女郎こはるをMEGUMIが演じるが、ともに佐平次にぞっこんになり、いがみあう二人のバランスが絶妙で、観ていて気持ちいい。ほかにも小林且弥や矢田悠裕ら若手実力派もそれぞれ活躍している。今作はやはり全員がざわざわと動き回るその空気が大きな魅力のひとつであり、そこをいくつもの役柄で盛り上げた加藤啓の存在がとりわけ印象に残る。
時代が大きく変化するなか、飄々と駆け抜ける佐平次の行く末は、そしてこのにぎやかさの行きつく先は……。映画ならではの魅力に満ち溢れた原作をステージに乗せた結果現れたのは、舞台でしか表せない楽しさが詰まった作品だ。
シネマ歌舞伎シリーズの予告動画を見て、ちょっと興味を持った。元来、ホラーものとかサイコサスペンスものとかは好きではない。ましてや、スプラッタものとかは嫌い。
でも、ゾンビを笑い倒せる設定なら、私でも見られるかな。
結論的には、恐怖とか嫌悪感は感じずに見られた。でも、ゾンビ=らくだ衆=はけんとして、死なないから安い賃金で使い倒しても大丈夫な労働力として使われ、生きている普通の人間の職場を奪うという悪貨は良貨を駆逐する絵図はいいとしても……永代橋の崩落による大事故を、派遣労働による手抜きが原因と思わせるような描き方には不満が残った。実際には、明石の花火大会の歩道橋事故のように、運用する人たちの責任の方が橋をかけた人たちの責任より大きいと思われたので。
もうひとつは、新島でくさや名人の夫である新助とラブラブだったところを夫を亡くして江戸に出てきたヒロインお葉の描かれ方かなぁ。新島でくさやづくりは半人前で口先ばっかりの半助が江戸についてきて、ゾンビをまとめて口入れ屋で成功し、一緒に世帯を持とうと言われてわりと簡単になびいてしまうのは、後半で新助と半助の関係に新たな視点が入ることを考えると、何か表面的だなぁと。だから、永代橋の崩落事故にもかかわらず、りびんぐでっどである半助と崩落した橋を越えて再開する意味がわからない。
ありがたいことには、川島雄三監督『幕末太陽傳』へのオマージュと感じられる設定だった。もちろん佐平次も登場するし、お染や喜瀬川の意地の張り合いも出てくる。居続けする浪人、四十郎が高杉晋作の都々逸をうたい、あの作品では裕次郎だったなぁとか。
それだけでなく、『幕末太陽傳』がそもそも落語作品へのオマージュなので、落語好きにはいろいろツボ。「居残り佐平次」「品川心中」「五人廻し」「らくだ」あたりが感じられた。「三枚起請」「お見立て」は出て来なかったかな。
とりあえず、永代橋の崩落事故の最中に、自分がゾンビであると知った半助が、別れたお葉と抱き合うラストシーンについての説得力をどうにかして欲しい……。すべての被害者(ゾンビ含む)を犠牲にしても、たったひとりの生きた女を守りたいって思いを際立たせるためには、もっと違う演出があったはずだ。
でも、ゾンビを笑い倒せる設定なら、私でも見られるかな。
結論的には、恐怖とか嫌悪感は感じずに見られた。でも、ゾンビ=らくだ衆=はけんとして、死なないから安い賃金で使い倒しても大丈夫な労働力として使われ、生きている普通の人間の職場を奪うという悪貨は良貨を駆逐する絵図はいいとしても……永代橋の崩落による大事故を、派遣労働による手抜きが原因と思わせるような描き方には不満が残った。実際には、明石の花火大会の歩道橋事故のように、運用する人たちの責任の方が橋をかけた人たちの責任より大きいと思われたので。
もうひとつは、新島でくさや名人の夫である新助とラブラブだったところを夫を亡くして江戸に出てきたヒロインお葉の描かれ方かなぁ。新島でくさやづくりは半人前で口先ばっかりの半助が江戸についてきて、ゾンビをまとめて口入れ屋で成功し、一緒に世帯を持とうと言われてわりと簡単になびいてしまうのは、後半で新助と半助の関係に新たな視点が入ることを考えると、何か表面的だなぁと。だから、永代橋の崩落事故にもかかわらず、りびんぐでっどである半助と崩落した橋を越えて再開する意味がわからない。
ありがたいことには、川島雄三監督『幕末太陽傳』へのオマージュと感じられる設定だった。もちろん佐平次も登場するし、お染や喜瀬川の意地の張り合いも出てくる。居続けする浪人、四十郎が高杉晋作の都々逸をうたい、あの作品では裕次郎だったなぁとか。
それだけでなく、『幕末太陽傳』がそもそも落語作品へのオマージュなので、落語好きにはいろいろツボ。「居残り佐平次」「品川心中」「五人廻し」「らくだ」あたりが感じられた。「三枚起請」「お見立て」は出て来なかったかな。
とりあえず、永代橋の崩落事故の最中に、自分がゾンビであると知った半助が、別れたお葉と抱き合うラストシーンについての説得力をどうにかして欲しい……。すべての被害者(ゾンビ含む)を犠牲にしても、たったひとりの生きた女を守りたいって思いを際立たせるためには、もっと違う演出があったはずだ。
思えば、去年初めて八月に歌舞伎見て、ぼちぼち通うようになったのだった。今日は三階席だが、外国人の姿がいつもより目についた。わかりやすい演目なので、私も今回は音声ガイドなし。
芋掘長者
歌舞伎美人より、解説。
祇園恋づくし
おなじく歌舞伎美人より、解説。
とりあえず、勘九郎さんの江戸前の喋りが嬉しい。声の張り方が、ますますお父ちゃんに似てきた……といっても私は生身の勘三郎さんを見ることはなかったのだけど(;_:)。七之助さんも、京都の芸妓のはんなりした雰囲気を表現しつつ(そして、京女の本音と建て前の違いを表現しつつ)コミカルな場面もこなして、面白かったです。
芋掘長者
歌舞伎美人より、解説。
◆踊りが苦手な男の困った末の大一番やっぱり七之助は美しいわぁ。橋之助さんのユーモアたっぷりの芋掘り踊りも楽しい。
松ヶ枝家では、息女緑御前の婿選びの舞の会を催します。そこへ友達の治六郎とともに現れたのは、緑御前に思いを寄せる芋掘藤五郎。舞ができない藤五郎のために、面をつけた舞上手の治六郎が途中で入れ替り、藤五郎のふりをして見事な踊りを披露します。感心した緑御前から、藤五郎は面をとって踊るよう所望され…。
藤五郎が困った末に見せる芋掘踊りなど面白味のある舞踊です。平成17年歌舞伎座で十世坂東三津五郎が新たに振りをつけて45年ぶりに復活させた十世の思いがこもった作品です。
祇園恋づくし
おなじく歌舞伎美人より、解説。
◆祇園祭でからみあう意地と粋と恋落語の「祇園祭」に馴染みがあるので、江戸者が京都に来て、京都の自慢を聞かされて癇癪を起こすという展開は関西暮らしも経験した東京出身の自分が同調できる設定なわけで。祇園祭りの頃の京都なんて気候的には観光に一番お勧めできない時期なんだけど、京都の商人たちは祭りに自分の存在をかけているのね。
京都三条で茶道具屋を営む大津屋に、江戸の指物師留五郎が泊まっています。主人次郎八が若い頃、江戸で世話になった人の息子で、祇園祭が近いので滞在していましたが、京になじめず江戸へ帰ろうとします。ところが、次郎八の妻おつぎの妹おそのに一目ぼれをした留五郎は、そのおそのから江戸へ連れて行ってほしいと言われ有頂天。実はおそのは、手代文吉と深い仲で、駆け落ちの手助けを頼まれたのです。そんな中、おつぎからは次郎八が浮気をしているかもしれないので調べてほしいと頼まれ、結局留五郎は京にとどまることにします。一方の次郎八は、ひいきの芸妓染香に熱を上げていますが、どうにもうまくいかない様子。山鉾巡行の当日、次郎八と留五郎は持丸屋太兵衛に鴨川の床へ招かれ…。
祇園祭を背景に、京と江戸の意地の張り合い、恋愛模様を明るく描いた作品です。
とりあえず、勘九郎さんの江戸前の喋りが嬉しい。声の張り方が、ますますお父ちゃんに似てきた……といっても私は生身の勘三郎さんを見ることはなかったのだけど(;_:)。七之助さんも、京都の芸妓のはんなりした雰囲気を表現しつつ(そして、京女の本音と建て前の違いを表現しつつ)コミカルな場面もこなして、面白かったです。
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