志の輔らくご in ACT
……すっかり忘れてますし、落語というのはその時その時の観客ひとりひとりの受信状態も含めて、落語ではないかと思うのです。同じ演目を同じように演じても観客は同じように答えませんから……。
下北沢での志の輔さんが「牡丹灯籠」をわかりやすく解説した上で触りを落語で演じてくれているのを毎年聴いているように、前半は『仮名手本忠臣蔵』全12段を浮世絵付きでわかりやすく解説してくれた上、後半は『仮名手本忠臣蔵』五段目に登場する斧定九郎の役しか与えられなかった不世出の名代(家柄血統が重きを置く歌舞伎界では、稲荷町から出世して名代にまで上り詰めた)初代中村仲蔵が芸の工夫をして歌舞伎史に残る色悪を確立するという趣向、
去年の記憶があいまいなのですが、ACTシアターでの『中村仲蔵』は限りなくひとり芝居に近く、地の言葉が入らず、会話と仕草で続いていく感じ。
去年のメモを参照する限り、基本パターンは同じかな。ほかの演者の作品より仲蔵の生まれ育ちや下積み時代に時間をかけて演出を入れ、血筋がないものにはあり得ない名代をいただいた後に斧定九郎一役に悩むところ、妙見様の二十一日詣りの直後に雨に降られて飛び込んだ蕎麦屋で出会った浪人者にインスピレーションを得るところ。革新的な斧定九郎を演じたはいいが、ご見物からまったく反応がなくて江戸を出奔して死のうと思い詰める仲蔵。江戸の芝居好きのご見物たちが口々にかたる評判を知って、出奔を諦めて師匠に挨拶に行く仲蔵。
3日連日の興行の最終日、今日もまた18時30分開演で、終演は21時30分廻ってました。こってりたっぷり、満足です。
1. 太田姫稲荷神社
御茶ノ水駅前で集合して、池田坂を下りて太田姫稲荷神社へ。今は小さな神社だが、もとは太田道灌が娘の天然痘の快癒を祈って京都の一口稲荷神社(いもあらいいなり)に願をかけて通じたことにより、江戸時代には天然痘よけの神社として大いに信仰を集めたそうだ。
日本でも天然痘は30年ほどの周期で大流行しており、古くは「もがさ」と呼ばれた。天然痘は飛沫感染する伝染病で死亡率は20~50%で、特効薬はない。運良く快癒できたとしても顔にあばたが残った(「痘瘡は器量定め はしかは命定め」と呼ばれた。幕末から明治にかけてあばたが残る有名人は吉田松陰、夏目漱石)。一口稲荷神社の「いもあらい」も、顔にできる瘡「いも」を洗う=快癒する、という祈りが語源らしい。
平安時代には藤原不比等の息子達で栄華を極めた四兄弟(武智麻呂・房前・宇合・麻呂)が天然痘でバタバタと亡くなっている(伝染病の知識がなかった当時、藤原家と対立したために一族ともども自死に追い込まれた長屋王の祟りとも囁かれた)。
太田姫稲荷神社は徳川時代を通じて痘瘡よけの神社として信仰を集めた(逆にいえば、疫学の知識がなかった当時は願掛け・祈願する以外に感染発病を防ぐことができなかった)。
2. 神田お玉が池・初代種痘所跡
江戸時代、西洋の学問知識は「蛮学」とされ、18世紀後半にイギリスでジェンナーが開発した種痘法は安政5年(1858)伊藤玄朴や大槻俊斎ら江戸の蘭学者たち82名が資金を出し合って「種痘所」を開設することでやっと認められた。初代種痘所は洋楽に理解のある幕臣川路聖謨《かわじよしあきら》(最後には勘定奉行、江戸無血開城の折に拳銃自殺した)。
ただ種痘所は半年後に火事で焼失。
種痘所は日本の近代医学の研究治療センターのはじまりで後に東大医学部に発展した医学所のルーツでもあるのだけど、私有地のビルの一角にはめられたプレートと碑にその姿を残すだけで、見つけにくいこともあり、ちょっと寂しい。
3. 三井記念病院
神田和泉町、幕末には津藩藤堂家の下屋敷があったところ。明治42年に三井財閥が下谷和泉橋通り(現・東京都千代田区神田和泉町)の東京帝国大学医科大学附属第二医院跡地に開院した。
4. 神田和泉町 種痘所跡
神田和泉町、三井病院のそばにある二代目種痘所、後に幕府医学所。伊東玄朴の後は大槻俊齊、緒方洪庵、松本良順が頭取を務めた。
種痘とは関係ないが、鳥羽伏見の戦いで敗れた旧幕府軍に加わっていた新選組の近藤勇と沖田総司が、船で品川に入港した後に神田泉町の医学所で治療を受けたことになっているので、ここで近藤は銃創の、沖田は結核の治療を受けたのだろう。神田川にほど近く、近藤たちは品川から舟でこちらに移動してきたと思われるし、近藤が幕臣として初めて登城したのもここから舟か馬で移動したのだろうな。
種痘所の開設には箕作阮甫はじめ82人の医学洋学者が関わった。私の好きな幕臣にして代官江川太郎左衛門(第36代英龍)は種痘普及のために自分の子供達に積極的に接種させた。岩本町の隣は小伝馬町で、小伝馬町の牢には蛮社の獄に連座した高野長英が入牢し、牢獄の火災に乗じて脱走し、全国を逃亡した。
……大河歴史マンガ『風雲児たち』ファンにはおなじみの面々の名前を挙げた。疱瘡のあばたの残る吉田松陰はじめ、みなもとキャラが脳内を駆け巡った楽しい半日ツアーでした。
八王子から見る幕末 市郷土資料館で特別展
黒船来航により江戸幕府の体制が揺らいだ幕末、八王子の人たちが国内外の情報を積極的に集め、激動の時代を乗り切ろうとした足跡をたどる特別展「幕末の八王子-西洋との接触」が、八王子市郷土資料館(上野町)で開かれている。展示された古文書など約百点の資料は、大きく変わろうとしていた時代や社会を物語る。十一月二十四日まで。 (村松権主麿)時間があったらいきたいと呟いたら、歴友の野間みつねさんが提案してくれたので、台風19号の影響で交通機関が止まらないうちに……という半日観光コース、絶妙のタイミングでした。
「鎖国をしていた江戸時代は閉鎖的なイメージが強いが、幕末の八王子の人たちはさまざまな情報を集め、恐怖を感じると同時に興味を持って学び、どう対処するべきかを考えていた」と説明するのは、郷土資料館の加藤典子学芸員(26)。
情報収集などで重要な役割を果たしたのが、八王子を拠点に徳川家に仕えた半士半農の集団「千人同心(せんにんどうしん)」だ。日光東照宮を警備する「火の番」を務め、幕末の混乱期には各地に派遣されて国防や治安を担った。
特別展は、中国でのアヘン戦争(一八四〇年)を機に国防の意識が高まった幕末直前から、明治維新までの時代が対象。八王子に伝わる古文書や絵図、千人同心が使った近代的な「ミニエー銃」などを展示する。
幕府作成の世界地図を写した「両半球世界図」は、貿易で主導権を握る国防論を唱えた千人同心の松本斗機蔵(ときぞう)がつくった。やはり千人同心で、高野長英らと交流した秋山佐蔵(さぞう)が活版印刷で出版したドイツの医学書や、西洋の軍事研究をした河野仲次郎(なかじろう)が残した大砲の絵や縮尺図も並ぶ。
このほか、黒船を描いた絵やペリーの似顔絵、大阪湾にロシア船が来航した際の海岸警備図、桜田門外の変の状況を詳しく知らせる手紙もあり、各地の情報が集まっていたことをうかがわせる。維新期の資料は、新政府軍に兵士や食料を差し出すよう命じた「大急達状(おおいそぎたっしじょう)」、新政府への恭順を誓った千人同心の「血判誓詞(せいし)」もある。
加藤学芸員は「初公開の資料も交え、幕末の八王子の様子を網羅的に紹介する初めての試み。地域史の観点から幕末を考えてほしい」と話す。古文書などを解説した図録は五百円で販売している。入館無料。休館日は月曜だが、祝日の月曜は開館し、翌日休館。問い合わせは郷土資料館=電042(622)8939=へ。
自ブログで検索すると、私が八王子市郷土資料館を訪れたのは大河ドラマ『新選組!』放映翌年の2005年9月。当時は開発途上でぽっかり開いていた南口ロータリーにビルが建っていて驚きました。
展示は、松本斗機蔵と秋山佐蔵を忠臣とした幕末の八王子千人同心メインの人物たちが、江川太郎左衛門(「目玉」こと英龍だけでなく、英敏や英武とも?)とのやりとり、日野の佐藤非小五郎や小野の小島鹿之助とかとのやりとりも……。
『武術英名録』のコピーに「土方歳蔵」の名前があるだけでも、もう嬉しくて。
入場無料だけど常設展もけっこう楽しくて、特別展の資料がカラー図版で500円というのは素晴らしい。
大河ドラマ『新選組!』関連というよりは朝ドラ『ちりとてちん』関連。だって、草原兄さんが草若師匠がいまわの際にかけた『地獄八景亡者戯』を東京でかけるんですよ(すでにドラマと現実が混じり合って収拾つかず……)。しかも私には吉弥さんを落語家としては初めて生で聴く機会(と断るのは、大河ドラマ『新選組!』トークショーで見ていたような記憶があるので……えーと、あやふやながら、京都の伊勢丹ではなかったかしら・汗)。
……はぁ、大河ドラマ『新選組!』から丸十年経ってしまいましたねぇ。その間に、勘ちゃんはお父さんの勘三郎さんが亡くなって勘九郎七之助兄弟として歌舞伎界での存在感が大きくなりましたね。そして、吉弥さんは亡き吉朝師匠と息災されている大師匠の米朝師匠が得意ネタとされている『地獄八景亡者戯』をかけるほど精進されてるのですね。
二人ぐせ/鯛蔵
『ちりとてちん』ファンには、くすっとするネタでした。
高津の富/吉弥
直近で聴いたのが白鳥師匠の『富Q』(苦笑)。同じネタでも上方落語と江戸落語の違いを楽しむにはいいネタなんでしょうね。
ハンバーグができるまで/喬太郎
諸般の事情でロビーで聴きました(涙)。でも、喬太郎さんのネタですっごく聴きたかった(
CD化されているので買えばいいのだけど、気がついたら落語CDとDVDのコレクションの多さに、ちょっと自粛せねばと思っている)ので、嬉しい。まさか国立劇場小劇場の、TBS落語研究会でも使われる会場で聴けるとは思ってなかった。ゲストだから責任ないからって思う存分なキョン師でした。
地獄八景亡者戯/吉弥
ずっぽりはまって楽しめたのは、自分が10年以上関西に暮らしていたせいでしょうか。御堂筋じゃなくて冥堂筋だとか、大阪のキタとミナミがわかっているから余計に笑えるところがありました。
でも何といっても、やしきたかじん「やっぱ好きやねん」に続けて替え歌『やっぱ落語好きやねん』を熱唱した場面がクライマックスと言えましょう。
帰宅して米朝大師匠と吉朝師匠の『地獄八景』を動画で見ました。吉弥さん、めざせ人間国宝です。
広瀬和生さんプロデュースなのでトークがあるかなと思ったが、それはなかった……というより、白鳥さん熱演で終演が30分以上押していたからなぁ、よみうりホールだったらアウトでしたね。
今回3作一挙口演なので作品間で目立つ矛盾は修正したけど細かいところは粗があるかも知れないという口上つき。まぁ『黄金餅』でQ蔵くん隣人の北朝鮮のオモニが亡くなる設定の次に『富Q』で出てくる訳にはいかんわな(苦笑)。
聖橋/白鳥
売れない落語家のQ蔵くん、池袋の貧乏長屋(地理的には芸術劇場に近い辺り……今はずいぶんきれいだけど)でくすぶっている。彼を買っている池袋演芸場の進藤さんが何と立川談志師匠(形態模写はおそろしく似ていない……まぁ白鳥さんですから(^_^;))と『文七元結』をリレー口演できる機会を与えてくれた。
しかし、『文七元結』作中、本所吾妻橋で身投げしようとする文七を演じるQ蔵の泥臭さにうんざりした談志師匠、身投げを止める左官屋長兵衛として出てこない。それが2日続く。
自分の芸のまずさに絶望して、御茶ノ水の聖橋で身投げしようとするQ蔵……しかし、そこで、自殺しようとする人間の心理のヒダに気づいて開眼。それを高座で活かしたQ蔵の最終日に、談志師匠は長兵衛として高座に上がるのだった。
……うふふ、『文七元結』を作中に使いつつ、芸事の開眼には『淀五郎』をモチーフにした入れ子づくりがよくできている。
今回の高座ではオチがうまく決まらず、即興で付け足してオチたところが見事。
黄金餅池袋編/白鳥
池袋演芸場周辺の地理がわかっていると何倍か楽しめる作品。
隣人の北朝鮮のオモニが亡くなる際に大量の金粒をトッポギに包んで呑み込むのを見たQ蔵、同じ長屋に住む中国人の楊さんの互助会組織を通じてオモニの火葬をしようとするのだが……その暗黒コネクションの火葬の釜を取り仕切るのは、何と池袋演芸場の進藤さんだった。
オモニの遺体を焼いて黄金を取り出して自分のものにしてしまえば、落語家としては堕落してしまうと説得する進藤さんの言葉を受け容れて、黄金より自分の落語を取るQ蔵くん。でも自分の体験を落語にしたくて、舞台を江戸時代にしてしまえば……って、元ネタ『黄金餅』になるのか(汗)。
富Q/白鳥
売れないQ蔵くん、アルバイトにうんちゃら銀行池袋支店の宝くじの売り子をしている。残りくじ一枚を吉村さんに売りつけられる。そして、その富くじが一等に。
えーと、前作で死んだオモニそっくりの妹が出てくるんだけど、どういう経緯だっけ? そうそう、Q蔵が富くじを貧乏長屋の神棚に飾った提灯に納めるんだけど、アパートが火事で全焼するんだっけ。で、一攫千金ならずで絶望したQ蔵が首を吊って死のうと思ったところに、オモニそっくりの妹が、Q蔵の化繊の紋付きと一緒に提灯を避難させていたことがわかって一件落着って噺だった。
……えーと、元ネタの『富久』と『高津の富』のオチは思い出せるのだけど、どういうオチだったっけな。ともかくも、3作たっぷりで楽しかった〜。
ビッグコミックオリジナルで連載されている尾瀬あきら『どうらく息子』が連載100回&単行本第10集ということで記念落語会となりました。
冒頭のトークによると、尾瀬あきらさんは友人知人を20人ぐらい集めてらくごカフェで開催する当初構想だったようですが、監修の柳家三三さん、慣習に声をかけられていたけど実現しなかったらしい談春さんのビックネームが収容千人規模のよみうりホールを満員御礼にしました。
初めて落語会にお誘いした友人、前日に『どうらく息子』10巻を読んで予習してきたとのこと。素晴らしい、そのパッションがあれば今日の落語会は十分に楽しんでいただけるでしょう。
鼎談
当初20分の予定が50分に伸びるほどトーク炸裂。大ネタ2本を抱えている上、かの小三治師匠も超えられなかった「8時50分」終演の壁(延長できない)がよみうりホールに。トーク内容はあと1時間でも飽きなかったくらい弾けてました。
鰍沢/三三
難易度の高い屈指の大ネタ、すでに三三師匠が何箇所かで口演していたのは知っていましたので、とても楽しみにしていました。四十代で『鰍沢』を聴かせる落語家さんは限られてます。
突然の雪が旅人を深い山中に迷わせる情景の描写、旅人に一夜の宿を提供する苫屋の女主人がいろりの火に浮かび上がる様子、女主人が勧める玉子酒で暖を取った旅人が疲労と眠気に襲われて床をとる中で展開する、旅人に手持ちの酒を飲ませてしまったので近所に酒を買いに行くお熊→お熊とすれ違いに帰宅した亭主がお熊の不在と飲み残しの玉子酒に悪態をつきながら飲み干す→帰宅したお熊、迎え入れようとして倒れ、痙攣する亭主→お熊が旅人の旅銀を奪おうと玉子酒にしびれ薬を盛っていたことを告白、こときれる亭主→逃げ出す旅人、しびれ薬に苦労しながらも見延参りのため盛っていた毒消しでことなきを得る→しかし道に迷って鰍沢の川にそそり立つ断崖絶壁へ→亭主の仇討ちと口封じのために鉄砲を持ったお熊が旅人に照準を向ける、という火サスなみのサスペンス展開。そして、三三さん演じるところの「月輪のお熊」「鉄砲のお熊」の妖艶な悪女ぶりが際立ちます。いやー、はらはらどきどき。
紺屋高尾/談春
談春版のマクラはおなじみ「日本に"I love you"という言葉が入った時、二葉亭四迷という作家は「あなたとならば死んでもいいわ」と訳したそうでございます」。
そこまで言って突然「業務連絡」のアナウンス。トークタイムに行った抽選で案内した当選者の座席番号は実在しないものでした……(汗)。
大爆笑させて、そこから「紺屋高尾」の世界に全員を戻してくれる談春師、いつも以上に久蔵と親方のやりとりは軽妙で、時々出てくる女将さんも久蔵の縁談を進めたがる取り持ち婆ぁで亭主に知恵をつける(でもダメだと白を切る)強烈なキャラクター。実直で働き者の紺屋の職人久蔵が、兄弟子に連れられて入った吉原で見た花魁道中で、最後に登場した当時全盛の花魁高尾に一目惚れ。現実的にあきらめさせようとする親方に失意で生きる気力をなくす久蔵。しかたなく親方は一生懸命に三年働いて金を貯めろと励ます(そのうちに忘れたりあきらめたりしてくれることを願いつつ)。しかし久蔵は三年経ったら高尾に会えるという思いだけで働きづめになり、三年で十八両二分を貯めてしまう。親方は、あと一両八分貯めたら、親元にいったん帰して晴れ姿を見せろ、それで千葉湊に住むのもいいが江戸に戻りたかったら久蔵に嫁を取らせて夫婦養子とし、店を継がせてやるという。しかし、久蔵はいまだ忘れられない高尾太夫に一目でも会えることを願って十五両を使うことを選ぶ。親方は長屋の裏手で医者としての腕は藪中の藪だが贔屓筋の付き合いで吉原は裏も表も知り尽くしているという藪井竹庵に相談する。竹庵の入れ知恵で、まげや着物を若旦那風にあらため、野田の醤油問屋の若旦那というふれこみで茶屋にあがろうということに。紺屋職人の証である藍色に染まった爪や指先は決して一目にださないこと。運よく、先客の突然のキャンセルで身が開いた高尾太夫は、いつも気の張るお客様ばかり相手をしているので「たまにはそのような初心な若旦那はんのお相手をしとおす」と久蔵に遭ってくれた上、初会は口もきかないというのが普通の作法であるにも関わらず、床をともに過ごすことに。高尾に身も心も惚れてしまった久蔵は、「今度はいつ来てくれるんざます」との問いかけに嘘がいえず、自分の身分を明かし、身を偽ったことを詫び、また働いて金を貯めて会いに来ますと頭を下げる。高尾は、嘘偽りの多い吉原に稀な純情さや一途さに心を打たれ、「来年三月十五日に年季《ねん》が明けたらぬしのもとにいきとうおざんすが、わちきのようなものでも女房はんにしてくんなますか?」と。そして年明けて三月十五日、眉を落として鉄漿《かね》で歯を染め、島田髷と質素な着物と職人の女房にふさわしい姿に身を変えた高尾が、吉原から引き手駕籠に乗って、神田お玉が池の久蔵のもとへやってくる。親方から暖簾分けしてもらい、高尾と夫婦になって紺屋をはじめた久蔵。吉原で全盛の花魁だった高尾が紺屋のおかみさんになって接客や染め物の手伝いをするという江戸中の男たちの噂になり、紺屋は大繁盛。久蔵と高尾は子宝にも恵まれ、末永く幸せに暮らしたそうです……。
今日の談春さんはところどころに時事ネタのくすぐりを入れたり、三三「鰍沢」の出来を褒めてちょっと悔しがったり、いつもより軽めで笑いの多い仕上がりで聴かせてくれました。
今年はまだ26席しか聴いていないのですが、トーク、両師匠の大ネタ、すべて今年一番の高座でした。会場との一体感も素晴らしく、落語の神様がどこかから下りてきたような一夜。
アニメ『幕末Rock』公式
「絶叫《クライ》!熱狂《マックス》!超絶頂《エクスタシー》! 」というアオリ文句のルビにセンスがあらわれてます。
アニメ版のオフィシャルプレリュードブックより。
時はのちに幕末と呼ばれた時代。
徳川幕府の天歌《ヘブンズソング》によって国と民は支配され、
天歌《ヘブンズソング》以外の歌を歌うことは
許されない時代——。
そんな世の中に一石を投じるべく、
志士《ロッカー》たちが立ち上がる。
坂本龍馬ら志士《ロッカー》は、
魂《ソウル》と情熱《パッション》の音楽であるRockによって
幕府へと対抗することとなる。
一方、徳川幕府もまた
最高愛獲《トップアイドル》・新選組を率いて
志士《ロッカー》たちに立ち向かう。
ここに、自由を求める
熱い志士《ロッカー》たちの戦いが幕を開ける!
アニメ版で印象に残る場面をいくつか思い出すと……
第2話では、イケダヤンという雷舞小屋《ライブハウス》でコンサートをしている新選組。その舞台に坂本龍馬が「お前たちの音は間違っているぜよ!」と異議を唱え、土方歳三・沖田総司にロックで話しかける。龍馬に加わった桂小五郎・高杉晋作のロック勢と、新選組のふたりの愛獲《アイドル》ソング勢が音楽で掛け合う。ロックを取り締まる幕府の捕方が騒ぎ出したところを、新選組局長で現在はプロデューサーとなっている近藤勇が龍馬たちを舞台裏から逃がしてやる。
……えーと、史実の池田屋事件とはまったく関係がありません(苦笑)。歌で張り合う感じが面白かったです。
第4話では、幕府のロック統制が京都に及んで雷舞《ライブ》できなくなった龍馬たちが風呂屋でロック雷舞を開く話。たまたま屯所の風呂が使えなくて風呂屋に来ていた土方・沖田が、彼らを弾圧するというよりは挑発するような言動をとったせいか、龍馬たちの風呂屋雷舞は盛り上がる。
第6話では、近藤勇・土方歳三に内緒で井伊直弼に通じていた沖田総司の歌声にかかった呪いが最高潮に達して人々をどんどん泰平化(この作品独特の用語で、幕府側に洗脳されることを称する)していってしまう。その呪いを一身に受けて浄化した近藤勇は命を落とす。
第7話では、近藤勇を失った土方歳三と沖田総司が新選組を離れる(残りの新選組メンバーは、幕府によって近藤勇が土方・沖田と坂本龍馬らに暗殺されたと信じ込まされている)。高杉・桂の恩師であり、行方不明だった吉田松陰が雷舞を開くという布告がなされ、坂本たちが駆けつけると、かつてロックの先駆者だった松陰先生(この回で登場した勝海舟によれば、かつてはShowとKaiと呼ばれ、共にロックを追求する仲だった)は、天歌をまき散らす存在に。松陰先生はこの世のものではなく、井伊に魂を操られた悪霊になっていたことがわかり、坂本・高杉・桂は先生の魂を浄化させるためにロックを演奏する。ロックを聴くと「泰平化」された新選組隊士たちが「泰平化を解かれる」ことに気づいた土方が、沖田とともに坂本たちに加わり、ロックを演奏することでロック勢のパワーが高まり、松陰先生は成仏。新選組はじめ会場の人々は「泰平化を解かれた」状態に。
なんと、土方歳三・沖田総司が、坂本龍馬・高杉晋作・桂小五郎と一緒にロックしちゃうという展開に。第7話では、沖田総司が白馬に乗って羽根を背負って飛んでくる(馬を吊っているワイヤーが描かれているんだけど、どんな仕掛けで飛んでいるのかは不明・汗)とか、超展開で爆笑。この辺りから、アニメ編独自らしいノリがパワーアップ。
第10話と第11話では、バンドの方向性をめぐって分裂……じゃなくて、井伊暗殺を思い詰めるまでに過激化した高杉が超魂団《ウルトラソウルズ》を脱退し、井伊と対峙し、あえなく井伊の術中にはまって天歌《ヘブンズソング》側の一員としてバンドデビュー(ユニット名が「ザ・晋作&奇兵隊)」……ださっ)。高杉に「もうお前とはやれねぇ!」と言われてふぬけとなった龍馬が、幕府側に取り締まられる少年たちが自分のロックを口ずさんで抵抗する姿に自分を取り戻し、高杉と桂・土方・沖田が対峙する江戸の大江戸ヘブンズソングフェスティバル会場に、京都から桂小五郎発明のロケットで襲来するとか……そして最終回では、井伊直弼が心を売った徳川代々の天歌の呪術がこもった霊の塊から徳川慶喜を救うために、ロックのソウルを発動して闘う桂・土方・沖田・高杉が順に散っていくのは幕末版「リンかけ」方式……坂本龍馬がソウルを振り絞って慶喜の心を解放すると共に、仲間達のソウルは回復して生き返り、民衆がロックを歌い出して超魂《ウルトラソウルズ》が発現されて大団円……って、作品見たことのない人には私の要約ではきっとわからないだろうなぁ、私も何度かアニメ見返したけど、何度見てもぶっ飛んだ作品としかいいようがない。
ゲーム版では、この続きとして、マシュー・カルブレイス・ペリーJrが日本に開国を求めて来襲(ただし彼の言う「開国」とは女性がシルクのすけすけドレスを着ること)し、本場のロックで日本の民衆を圧倒するところに、超魂団《ウルトラソウルズ》5人が対峙するという展開があるのだが……アニメ2期は無理としてもOVAでいいから、見たい。
作中で使用されるロック・天歌とも音楽がいい。声優さん達みずからが歌っているのだけど、本格的に音楽活動している声優さんたちが起用されているので、プロ級。作曲・作詞も作品世界によく合っていて、聴き応えがある。
遊び心を持ちましょう/歌之介
「遊び心を持ちましょう」のキーワードが入れば、ネタとしては一応そう記録しているけど……漫談なので、二日前のものと今日のものは内容が違う。小ネタの集積なのだが、ほんと毎回爆笑してしまう。
ジャッキー・チェンの息子/彦いち
今日は天どんさんと入れ替わって、中入り後の食いつきに彦いち師があがる。
若旦那の噺はこれしか持ってないとか。二世として生まれた者のそれなりの悩み、というのが若旦那ねたにつながる。ついでに二世落語家、○○は応援するけど××は応援しない、とか(^_^;)。
彦いちさんの噺に出てくるアジア人はタイでも香港でも同じような喋りになるんだとか。
蔵前駕籠/正朝
新作落語ばかりでやりにくいとこぼす正朝師も中席最終日でほっとしたご様子。
久しぶりに聴いた「女郎買いの決死隊」。慶応四年の春先、鳥羽伏見の戦いで負けた徳川方がまだ江戸城明け渡しを決めていない頃の騒然とした江戸を舞台にした噺。
奇術/アサダ二世
最終日でちょっと喋りすぎてカード奇術で4分押しちゃった……(^^)。
金比羅ワンニャン獣の花道/白鳥
雌猫マリーや虎雄が率いる千匹の野良犬が待ち受ける中、象の政五郎じいさんの牙と丹頂鶴の鶴瓶親分のくちばしを金比羅様(の近くのゴリラの次郎長親分が祀られた祠)に奉納する豚次。「雨のベルサイユ」に出てきた浜松のうさ吉親分が「寿司食いねえ」「神田の生まれよ」の代わりに「黒はんぺん食いねぇ」「ベランダ生まれよ」。
危うし豚次、そこへ鳴戸海峡で命を救われたチワワのお菊が一言。
豚次が虎雄との対決でギャラクティカ豚足を炸裂させ、座布団が吹っ飛ぶ(笑)。この一撃で、白鳥師は痛めていた右肩をもっと痛めたようで、ちょっと心配です。
性悪の雌猫マリーに一目惚れしていた牛太郎の命乞いで、マリーは助けられる。ギャラクティカ豚足で牙を折られた虎雄と気を失っていたマリーは、気がついたら流山動物園の檻の中。
「任侠流山動物園」で動物を見に来ていたお祖父ちゃんと孫が、虎とペルシャ猫が増えた動物園に大喜び。人の言葉を喋る豚次・牛太郎・チャボ子に加えて虎とペルシャ猫が増えた流山動物園、めでたしめでたしの大団円。
圓朝落語のようにどこまで語り継がれるか、「流れの豚次」……白鳥公式ホームページによれば、来年は「任侠流山動物園」シリーズを他の落語家さんたちとかける企画が進行中のようで(喬太郎さん・三三さんと? 個人的には、白酒さんも加わって欲しいなー)楽しみ。
勘定板/歌之介
たっぷりマクラで漫談しているところにお邪魔。全国でさまざまに呼ばれるトイレの別称。便所、雪隠、はばかり……女子高生は「ワシントンクラブ(wcから)」、働く女性は「レコーディング(音入れ→おトイレ)」だそうな。
そこから「勘定板」。歌之介さんたら田舎者を楽しそうに演じるなぁ。
特別研修(?)/天どん
中入り後の「食いつき」という言葉の由来を説明して、このネタはすごく人をいらつかせるという事前説明。
役所の窓口で愛想もサービス精神もない職員が送り出された特別研修は、とんでもなくいらつかせる人々を特に収容した施設。
笑いがほとんどない……そしてオチは「オチはありません」(汗)。
長短/才賀
新作ばかりの演者なんで唯一古典枠の正朝さんが逃げ出しちゃった、というマクラから。
長さんのタバコの呑み方がとんでもなく百面相。
奇術/アサダ二世
才賀さんがあっさり演じて下りてしまい、また白鳥さんからは時間長めでと言われていたアサダ二世さん、思い出話でつなぐ。マルセ太郎さん……パントマイム芸人として記憶がある。
マルセ太郎さんと永六輔さんとの交友にアサダ二世さんも関わっていた、ということでした。
トランプ当てなんだけど、木枠に入れるとカードがじわじわせり上がってくる趣向、面白かった。
人生鳴戸劇場/白鳥
流れの豚次、街道筋を敵対する親分衆(メスネコのマリーとか、チワワのお菊とか……)に押さえられていて四国に渡れない。名古屋で世話になったアシカの文太郎に紹介され、和歌山でイルカの我太郎に援助を頼むが我太郎親分は船を貸すだけ。モグラのモグ爺さん(実はアライグマのオスカル)、流山から豚次を追いかけて合流した牛太郎とチャボ子と力を合わせて瀬戸内海を渡ろうとする豚次。
チワワのお菊を鳴戸の渦潮から救ったのに、恩を売らずに逃がしてやる豚次、漢《おとこ》だねぇ。
昨日が公開初日で、感想を書くとネタバレになるので畳んでおく。ご容赦。
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