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新選組・土方歳三を中心に取り上げるブログ。2004年大河ドラマ『新選組!』・2006正月時代劇『新選組!! 土方歳三最期の一日』……脚本家・制作演出スタッフ・俳優陣の愛がこもった作品を今でも愛し続けています。幕末関係のニュースと歴史紀行(土方さんに加えて第36代江川太郎左衛門英龍、またの名を坦庵公も好き)、たまにグルメねた。今いちばん好きな言葉は「碧血丹心」です。
 年1回の刊行ペースなもんだから、3ヶ月ぐらい前から単行本化を待ちわびていた、というのは『大奥』ぐらいなもんだろう。一番好きな『風雲児たち 幕末編』だって3~4ヶ月に1冊刊行されるから、そこまで焦らされないもの(爆)。



 ぶっちゃけBLが苦手な(オタクなのに……^_^;)白牡丹、よしながふみ作品の大半が読めない。『モーニング』連載の「きのう何食べた?」はホモセクシャルのカップルが主人公だけど、それっぽい場面がほとんどないのでかろうじて読める。『西洋骨董菓子店』はヒューマンドラマの側面が好きで読めたが、アニメはBL嫌いセンサーが振り切れてしまって(汗)第1回で挫折。でも『愛すべき娘たち』と『大奥』は大傑作だと思う……という、ややこしいマンガ読みだ(爆)。

 待望の第4巻、わくわくしながら、そして、うーむと唸りながら、読み切った。ちょっとだけネタばれ、でもなるべく少なめに感想。

☆★☆★

 男女逆転大奥という大風呂敷を敷いた上で、この歴史のアレンジの仕方と、人間模様の描き方は、やはり凄いと思う。

 男女逆転という舞台設定を貫きつつ、微妙なところで男女逆転しないアレンジを配したのには唸った。将軍家綱時代の一大事件をこう消化したか……むむー、にゃるほど。

 『風雲児たち』大ファンには、第三代将軍家光の異母弟にして第四代将軍の大叔父となる保科肥後守正之公がこういうアレンジで出てくることが嬉しく、「うわー♪」と声をあげて喜んだ。

 そして、大きな歴史のうねりの中で、幕府と大奥という表舞台と表裏一体で一農村や遊郭の模様を描いている立体感もさりながら、大きな時代の流れと幕閣・大奥における微妙な(かつ強烈な)権力闘争も生々しい。

 また同時に、男女のまっすぐな恋心の切なさと、その残酷さ。

 加えて、初代のカップルの一途な恋心と心身の葛藤をまず描いておいて、世代を経た男女の恋心と肉欲と権力欲がぐちゃぐちゃに絡んだパロディというかディフォルメを「いやっ」てほど見せつけられるのも、凄いと思う。恋愛模様の描き方に関してだけ言えば、ガルシア・マルケスとか、ラテンアメリカの虚実混じったというか伝奇的な要素の入った小説に似たテーストがある。ストーリー全体の運び方はきわめてリアリストなんだけど。

 女将軍家光、女将軍家綱、女将軍綱吉のそれぞれの個性と、世代を過ぎるほどに俗っぽく退廃的になっていくのが、よしながふみ描くところの女性の生々しさ、バタークリームでこってりしたケーキ並みに濃い。

 クリスマスイブということで、ケーキと鶏もも焼きを食べる合間に、堪能させていただきました……ご馳走様でした、来年の第5巻発売が待ち遠しいです(苦笑)。この記事を読む皆様にも、メリークリスマス。
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 この手の大江戸歴史雑学モノは結構読んでいるが、ビジネスという観点でまとめてくれているのはありがたい。



 江戸時代後期の江戸の人口は推計で100万人を超えていたとか(ただし、各藩から派遣されていた武家人口を正確に把握しきれていないので推計)、上下水道が完備されていて下肥や各種不要品のリサイクルシステムも確立されていたので上水と下水が一緒だった当時のロンドンやパリに比べても衛生的な都市だったとか、消費都市として確立されてからの江戸の街と文化は面白いと思う。雑学知識はいろいろ持っているつもりだが、「ビジネス」という観点で整理してくれると、現代の人間には理解しやすくてありがたい。

 小見出しレベルで並べてみる。

・江戸の公共事業(町づくり・水道・新田開発)
・江戸への動脈・海運業
・江戸のアパート・マンション経営
・江戸のマイニング
・江戸のビッグビジネス――大店の舞台裏
・江戸のコンビニ――町中を行く振売
・江戸のファーストフード――庶民の味方は屋台
・江戸の近郊農業――大消費地を目指した名産野菜
・江戸のリサイクル業
・江戸の出版業
・江戸のジャーナリズム
・江戸の広告業
・江戸の人材派遣業
・江戸のエンターテインメント・ビジネス
・江戸の旅行業者――庶民を旅に誘った人々
・江戸の風俗産業
・江戸の教育産業
・江戸の医療産業
・江戸の金融界
・江戸の通信業

 産業とかビジネスという観点で、経済活動をわかりやすく解説してくれるのはありがたい。風俗業界とか出版・文化関係だけとか、各論の本はいくつかざっと読んでいるのだけど、江戸近郊の農業といった近代では第一次産業にカテゴライズされる産業から、土木関係の公共事業・サービス事業といった第二次・第三次産業までざっと網羅されている点がありがたい。

 ただし、江戸の長屋では稼ぎ頭だった職人が担った住宅建築とか工芸とかはカバーされていないので、その点は何らか補足する必要があるだろう。あと、醸造業など、最初は京都・大阪など上方からの輸送でやってきた商品経済が、江戸近郊で地場産業が確立されるに従って自給自足に近くなっていった地場産業の発達史も。

 さらっと江戸のビジネスを概観するには面白かった。
 ここ数日で、榎本武揚と大鳥圭介の評伝の新作を見つけて購入した。



 没後100年だから何か出るとは思ったが、かなり本格的な評論集のようだ。榎本武揚は専門分野が国際法・外交・移民政策から造船・航海・化学・農業と多岐に渡る(しかも漢文はもちろんオランダ語・英語にも堪能)ので一分野の専門家ではとても太刀打ちできない上に、箱館戦争での敗軍の将という経歴もあって歴史上できちんと評価されていない気がしていたので、目次を見る限り、この本にはかなり期待できそう。

☆★☆★

 そして「ケースケ」こと大鳥圭介にも評伝の新作が。



 表紙の晩年の写真(もみあげと口ひげが真っ白なのでバックに消えてる^_^;)、裏表紙の幕末歩兵奉行時代の写真(この人には珍しい、髷で和装の写真の一枚……確かwikipediaで見かけたような気がする)、『風雲児たち』で「官軍と最後まで戦った男」として出生年を紹介された時に「ポテチン」と台詞入りだった写真(そのギャグがわかる世代は何歳ぐらいまで? 自分は知ってるけど^_^;)、そして故郷の上郡町役場の銅像写真、写真見てるだけでツッコミたくなるのは同じ牡羊座だからでしょうか(そして、たぶん血液型も同じO型だという気がします^_^;……ちなみに血液型で性格占いは科学的には立証されてません、我が家4人は全員O型ですが、私以外の誰もO型とは思えない性格です、でも唯一私だけかなりステレオタイプなO型性格なのです^_^;)。

 箱館戦争でケースケの人生が終わったような評価(by河上徹太郎、妻は大鳥圭介の孫)はあんまりだ、明治期の大鳥圭介の仕事をちゃんと評価したいという趣旨のあとがきを見る限り、なかなか楽しそうだ。でも、箱館戦争までの記述で3分の2ぐらいは遣っている気もする(爆)ので、箱館戦争までの大鳥圭介についても味わいたい読者には親切だと思う(^^)。

 まずはケースケの評伝から取りかかっている。
 北条政子を主人公に描いた歴史マンガ『華の王』市川ジュンが文庫化されていたので、即購入しました。



 発表当時に読んでコミックスも持っていたのですが、何度か行ったコミックスの入れ替えの時に手放してしまいました。

 でも市川ジュンさんの作品は結構好きで、『燁輝妃(ようきひ)』は手元に残しています……大河ドラマ『義経』で夏木マリさんが怪演した(汗)後白河法皇の寵姫にして女性政治家の丹後局を主人公にした作品です。



あと『陽の末裔』と『懐古的洋食事情』シリーズも好きでした。

 『陽の末裔』の咲久子とか、『華の王』の北条政子とか、自分はスカーレット・オハラみたいなヒロインが大好きなもので……(自分が、どっちかといえば卯乃ちゃんタイプに近いものだから、咲久子ちゃんタイプに憧れるでしょうね^_^;)。
『幕末不戦派軍記』野口武彦(講談社)



 『幕末気分』に出てきた「業平組」と称する幕臣の下っ端4人組(元は実在の人物たち)が、長州、上野、日光、会津から仙台、箱館と幕府方の戦地を巡る小説。ただ、戦意はまるでなくて、楽をしようとしたり、儲け話に乗ろうとしたりして、戦いの中に取り残されてしまうという冴えない連中で、その連中から見た幕末維新の戦争の実見記という体裁。

 個人的に一番面白かったのは日光編。なぜに、大鳥圭介の戦いがこれほどわかりやすく、面白いのか(爆)。

 今市争奪の戦闘は、二回とも惜しいところで敗退した。負け方には一つのパターンがあるようだ。いつも「機」を逸するのである。


 ……とか(苦笑)。

 兵学の「機」とは、いわば《動体幾何学》の感覚だ。絶えず流動する兵勢の先行きに《予知像》が閃き、頭というより脊髄反射で反応する能力といってよい。大鳥圭介はどうもその辺が鈍かったようだ。作戦の名人で、机上で立案した戦術はみごと図に当たるのだが、現場で指揮を執るとなぜか必ず失敗する。


 ……とか(滝汗)。

 そもそも大鳥隊が緒戦段階で勇名を馳せたのには、フランス製の新鋭シャスポー銃の力が大きかった。ところが宇都宮攻城戦で弾丸を気前よく使いすぎた。大鳥圭介は播州生まれのくせに江戸っ子の真似をして「宵越しのゼニは持たねえ」といった感じで射ちまくったものだから、すっかり手持ちが尽きてしまったのである。


 ……とか。いやいやもう、爆笑してしまった。

 奥羽朝廷編も、奥羽越列藩同盟の成立と崩壊がとてもわかりやすく解説されている。そして箱館編は、特に海戦の模様が生き生きと描かれている。

 二股口の守備に配置されたのは土方歳三だった。四月十日に伝習四番小隊・衝鋒隊・新選組残党を引き連れて現場に急行し、昼夜兼行で防御陣地を構築する。この男は、新選組副長時代に何度も敵と斬り合って身体で覚えた《間合》のカンを用兵でも生かすことができた稀有の才能の持ち主である。


 うるうるうる……全体にはずっこけ四人組の情けない戦記ではあるのだけど、土方さんと中島親子が出てくると、そこだけ目がうるんでしまう。
『なぜ、江戸の庶民は時間に正確だったのか? 時代考証でみる江戸モノ65の謎』山田順子(実業之日本社 じっぴコンパクト)



 著者はテレビ番組などで時代考証をするのが本業の方。

 時代劇には、「時代考証」の入っている作品と入っていない作品があります。たとえば、NHKの大河ドラマには入っていますが、TBSの『水戸黄門』には入っていません。大河ドラマには、作品ごとに描く時代をなるべくリアルに表現したいという制作意図があります。一方の『水戸黄門』は、日本映画の創世期から時代劇を制作し続けている京都の撮影所で創り上げた独自の"江戸時代"に則って制作されるため、新たな時代考証は必要ないのです。この撮影所では、どんな作品を制作しても、すべて江戸時代後期の文化文政になってしまいます。


 薄々は「時代劇」は史実にもとづいていないと知ってましたが、文化文政なんですね。でも、居酒屋にテーブルと椅子があったり、文化文政とはいいながら、妙に混じっているのは確かですね。

 この本で一番参考になったのは、武士の刀の差し方です。「落とし差し」(剣の達人・粋な武士が差した)という言葉は知っていたのですが、どのように差していたのかを図解してくれて、ありがたいです。他に「閂差し」(新選組出動など臨戦態勢用)と「鶺鴒差し」(一般的な武士の差し方)もあり、参考になりました。

 他にもいろいろ……うんちく語りができそうです(笑)。
週刊『日本の100人』番外編 リンク先はディアゴスティーニ『日本の100人』番外編

 今日は小栗忠順様と松平容保様の巻を買ってしまいました。

 以下続刊の中では、高野長英の巻はついつい買ってしまいそうな気がします。華岡青洲とか緒方洪庵とかも、興味あります。

☆★☆★

 小栗忠順は、写真で見る限り、もし次にドラマ化されるとしたら堺雅人さんに演じてもらいたい感じです……眉と目鼻の感じが似てます(超なで肩なところも似てる!)。堺さんの甲高い声が似合うとどうかと思えるほど、ずけずけものを言うだけでなく、弓術でも一流だったという結構剛毅な殿様(大身の旗本ですから)ですが、堺さんならきっと見事に演じて下さるでしょう。

☆★☆★

 松平容保様については既にいろいろ知っているつもりでしたが、明治の世になってのエピソードを新たにいくつか知り、至誠の方であったなぁという思いをますます強めました。

 たとえば、戊辰戦争のある慰霊祭の折に、旧家臣たちは慰霊祭恒例のお膳(赤飯、ニシンの煮付け3切れ、コンニャク煮付け3切れ、香のもの2切れ)では失礼になるので別にお膳を用意して出したところ、箸をつけず、旧家臣が尋ねたところ、「私のお膳は皆と同じものか」と確認したそうです。違うという返事を聞いて「私はこの慰霊祭に美酒佳肴を得るためにではなく、参列した人々と旧を語り古《いにしえ》を偲び
亡霊を弔うためである。したがって参会した人と同じものを出して欲しい」と答えられ、同じものを出されて初めて手を付けられたとか。

 また、明治8年頃、謹慎処分が解けた頃、実兄である元尾張藩主の松平慶勝から、尾張徳川家を相続して欲しいという話があったのを「たいへんかたじけない話ですが、このことだけはお許しください」と固持したエピソード。後年、元会津藩家老である山川浩がその理由を尋ねたところ、源治元年以降、自分の家臣で自分のために命を落とした者や、その家族たちのことを思うと自分ひとりだけが栄華の暮らしをしようなどと思いもよらないことだと答えたといいます。

 今回の号には、幕末会津藩に対する歴史的評価が変わりつつあることや、戦時の会津藩が行った好ましくない行為についても会津の研究者が検証しようとしていることなど、従来の「会津」=「朝敵」史観を脱却しようとする動きが伝えられており、ちょっと嬉しく思いました。
 『天涯の武士』全4巻が出そろったところで、第1巻から一気読みして感想を書こうとしたが、これが難しい。

 小栗上野介忠順の業績と、幕末維新の歴史の展開にいろいろな思いが湧いて、一気読みなんてできないのだ。一冊読んでは休憩、一冊読んでは休憩、マンガ速読の得意な自分が朝から読み始めてまだ3巻しか読めていない(涙)。

 第3巻の巻末に寄せられた日本大学藝術学部文芸学科教授、清水正教授の「木村直巳を読め」という推薦文が素晴らしい。一部だけ引用する。

(略)小栗の理想を実現しようとする情熱と無私の行動力にさわやかな感動を覚える。が、この劇画は新国家建設に命を賭けた幕末の獅子たちの活躍だけを描いているのではない。西郷や勝海舟の小栗に対する嫉妬や憎悪をも巧みに描いた人間劇としても秀逸である。


 推薦文といえば、第1巻では森義朗元内閣総理大臣の推薦文が掲載されているのだが、私は、大久保利通の血を引く政治家でマンガ読み、かつ『新選組!』放映時に逆賊を主人公にした大河ドラマなんかやっていいのかと国会で質問した山口県(長州)選出の議員に対して「当時は薩長の方がテロリストだと思ってますが何か?」と開き直ってくれた麻生太郎氏(リンク先は拙ブログ2005年6月3日記事「新選組!@国会」)は、この本を読むことがあるのだろうか、と思う。麻生さんがこの本を読んで感想を述べてくれるのだったら、金払ってでも聴きたいなぁ(爆)。

☆★☆★

 さて、改めて、拙ブログでどんな感想を書いてきたか、まず振り返りたい。

 驚いたことに、一番最初の記事はちょうど2年前だった。

2006年2月28日記事 『天涯の武士―幕臣小栗上野介』木村直巳
 主人公は小栗上野介。そして、幕府内の最大のライバルが勝海舟。この勝海舟、胡散臭いわ、貧乏御家人の出身で苦労して出世してきただけに、大身の旗本出身の小栗上野介に向けるライバル心が暑苦しいわ(笑)で、むっちゃ受けまくった。さらに、薩摩の西郷隆盛が、黒い(爆)。いやー、ますます受けた。もっとも、その親友、大久保一蔵どんは、黒い上に真っ暗(汗)……でも小栗に才を認められていたりする。

 出てくる人物たちも多彩だし、写真が残っている人物はすごく特徴を捉えていて、見ていて楽しい。幕府側も各藩士も沢山出てくる……秋月様もご出演(笑)。そして、点景のように京都大阪で新選組が出てきて、芹沢鴨や近藤勇に混じって、和装の土方さんもちっちゃく何コマかに出てきて、木村さん、『ダークキャット』で描いたバラガキが混じった土方歳三を思い出しながら描いていたんだろうなぁと、にやにやしてしまった。


 まだこの頃は、余裕こいた感想だったなぁ……(嘆息)。

2006年8月23日記事 『天涯の武士』にも永倉新八っつぁんが登場
 大坂から京都入りした小栗上野介らご一行を、京都守護職の会津公のはからいで新選組が警備するというエピソードが。その新選組の警備を受けながら、主人公の小栗さんが西郷吉之助と一瞬の邂逅をするというのが今回のクライマックスでした。
 永倉新八っつぁん、大柄で割と恰幅がよくて、聞き書きで伝えられるような雰囲気で描かれてました。
 史実かどうかわかりませんが、『ダークキャット』で土方歳三・沖田総司を登場させた木村先生がちょい役で新選組を登場させたかったのかも知れません。
 ストーリーの方も、だんだん時代が押し詰まってきて、小栗さんと西郷・大久保コンビの暗闘がますます楽しみになってきています。


 永倉新八が出てきて、しかも小栗上野介と西郷どん・大久保どんが一瞬の邂逅を果たすという本作のクライマックス場面は、昨日発売の第3巻に収録された。

 史実で小栗上野介がこの時に上方に出張していたかどうか、私はまだ調べていないが、本当に一瞬かすめたかかすめないかという交錯の場面をつくることによって、この後に続く歴史の非情さが際だつ演出だった。


2008年2月12日記事 『天涯の武士』やっとコミックス完結!
 個人的には、他の作品では見られないほど真っ黒い(汗)西郷どんが魅力的だと思う……ほとんど大魔神状態(大苦笑)。大久保どんはすごーく陰々滅々(苦笑)。勝海舟も、ちょっと悪党が入ってる……でも、時代の変わり目で活躍できるのはそんな人物だろうと思う。
 一方、めっさ有能ではあるけど、真っ正直にずばずばと物言いがきつく、気にくわないとすぐに辞任カードを切るサラブレッドな小栗上野介は、組織のしがらみがない関係として見たら魅力的ではあるけど、上司にも同僚にも部下にも持ちたくないタイプだ(爆)。


 完結まで読んでしまったらどーんと重いものを抱えてしまうのがわかっているので、あえて軽めなコメントで済ましているなぁ。

2008年2月27日記事 『天涯の武士』第3巻・第4巻 木村直巳
 明治維新が日本の夜明けであり、それ以前の時代は暗黒の封建時代であったと信じる方には、ちょっと受け容れがたいかも知れない(特に、維新の元勲である3人のうち薩摩出身の西郷隆盛・大久保利通は、この作品ではとってもダークな役柄……)。でも、処刑された河原に「罪なくして斬らる」と碑を建てられた小栗上野介忠順の視点からすると、幕末維新の激動の歴史は、幕府の側から進められたかも知れない近代国家日本の骨格を示すと同時に、もし幕府が崩壊したとしても次代の政府に土蔵付きの家を譲ることになると予見する近代化の土台をつくる時代でもあった。
 幕末の歴史を新選組や会津藩などを軸に見てきた自分には、それを補完する歴史を幕府の中央政局から見ることができた。でも第3巻・第4巻には、小栗上野介とその周辺人物だけでなく、新たに家茂公・慶喜公・松平容保様・榎本武揚・大鳥圭介・ブリュネといったお馴染みの人物も登場して、親しみが湧く。
 そして、なぜ小栗上野介忠順が裁判もなしに斬首されなければならないのか(比較する対象かどうかは微妙だが、少なくとも近藤勇は投降した時に詮議は受けた……拷問もあったようではあるが……汗)、フィクションではあるもののかなーり説得力のある展開。激動の時代にあっては、嫉妬や羨望や脅威といった感情が平時以上にたやすく憎悪や敵意に転換することを感じさせられる展開だ。


☆★☆★

 ふっと思う。『新選組!』でもって明治新政府に抵抗する旧幕府方に汲みする者たちを主人公にして大河ドラマをつくったNHKは、小栗上野介忠順を主人公にして大河ドラマをつくることはできないだろうか、と。もしその夢がかなうならば、『新選組!』の製作スタッフをなるべく揃えて、やって欲しい。脚本は三谷さんでキャストは『新選組!』からというのは無理としても、NHK大河ドラマで小栗上野介を主人公にできたら、それは『新選組!』より遙かにえらいことになると思う。たぶん、山口県出身の議員が国会でボケた質問するぐらいじゃ済まないだろう(苦笑)。

 ……というぐらい、小栗上野介というのは幕末維新の歴史を取り扱う上でややこしい人物だと思う。この作品においては、唯一といっていい架空の人物である、元薩摩藩の郷士で西郷の間諜として小栗の元に派遣され、小栗に私淑してしまった浪士・宮里団十郎が、明治5年の東京で車夫として西郷の前に現れて西郷をなじる言葉に、小栗上野介の功績を凝縮されている。
「政府は廃藩置県ば断行されたそうでごわすな
郵政制度 鉄道 銀行《バンク》に株式会社《カンパニー》…
奇怪なことに
明治の文明開化とか
申すものは
おいが以前 ある幕臣から
聞いた話と同じもの
ばかりでごわす」

 幕府の中にあって近代化の青写真を持ち、それを実現できそうな人物と見なされたからこそ、小栗上野介は西軍(この時点で白牡丹が薩長土肥ら明治新政府軍を形容する時に使用する名称)に裁判もなしに断罪され、処刑されたのだ。

 視点をストーリーの最初に戻そう。1860年、ペリー来航から7年後、アメリカを目指して太平洋を渡った「ポーハタン号」には日米修好条約批准書交換のための遣米使節団が乗り込み、その中に幕臣・小栗豊後守忠順がいた。サンフランシスコまで同道した「咸臨丸」には、勝海舟が乗り込んでいた。徳川家康の直臣・小栗又一の子孫で2500石取りの直参旗本・小栗豊後守忠順は、使節団のナンバー3という立場で、アメリカ大陸を横断し、ワシントンで日本にとって不利になっていた金貨の交換レートを是正するための分析を行うなど実務的なリーダーとしての実績を積み、アメリカの政治や経済や産業や社会を実見して帰国する。一方の、貧乏御家人出身で若い時に蘭学を学んだことによって出世の糸口を築いた勝海舟は、使節団がワシントンに向けて出発するのを見届けたら日本に報告のために帰るという使命ゆえに、アメリカをじっくり観察する機会は小栗ほどではなく、帰国する(咸臨丸の中でも何かと毀誉褒貶の多い言動をかましているが^_^;)。

 小栗自身は勝に含むところは何もなく、勝を癖はあるが今後の日本にとって欠くべからざる人材と見ている。しかし、勝にとっては、出自といい、同じアメリカ通でありながら目のつけどころに差があることといい、小栗の存在はライバル心と劣等感を刺激する。

 言いにくいことを直言してはばからず、地位に恋々としない小栗は、日本の近代化に向けていろいろと着手するが、たびたび入る横やりに何度も辞職し、また登用されるの繰り返し。それでも、横須賀ドックやら、日本発の民間カンパニー兵庫商社の設立やら、陸軍の創設やら、浮き沈みしながらも手がけてしまう。あくまでも幕臣として日本の近代化を進めていくのだが、横須賀ドック建設に当たっては「例え…幕府が滅びて新しい持ち主に熨斗をつけてそっくり渡すことになっても、造船所《ドック》が完成していれば"土蔵つき売り家"ってことになって、この国のためにもなるだろうさ」「この国が滅びさえしなけりゃ俺達がやっていることはいつか必ず意味を持つだろうさ!」と剛毅なビジョンを持っている。

 一方、勝も、その放言癖や他藩の様々な人材との交流ゆえに周囲から疎まれて何度も閑職に追いやられ、有能な自分を評価しない幕府に対する不満を募らせ、薩長同盟を弟子の坂本龍馬に吹き込むという獅子心中の虫に転じる。ただ、若くして亡くなった徳川家茂公が自分を取り立ててくれたことには感激し、幕府の死に水を取るに当たっては徳川家を滅亡させないという一線を守ろうとする。

 これに対抗する倒幕勢力は西郷隆盛と大久保利通に集約されてしまっている分だけ、余計にふたりの黒いこと黒いこと(苦笑)。こんなに黒くて怖い西郷どんは他の作品では見たことがない……自分が読んでいる範囲では、これに匹敵するのは北方謙三『黒龍の棺』に出てくる西郷ぐらいだと思う^_^;。要は、幕府をぶっ潰してから新しい近代国家をつくるという路線を選んだ以上は、幕府にあって先に近代化を手がけてしまう可能性のある小栗が邪魔なので、フランスと提携を結ぶ小栗にイギリスをつかって圧力をかけたり、いろいろ妨害するわけ。で、最後には……。

 という大きな歴史の中で、様々な登場人物が出てくるのだが、これがまた、面白い。小栗の盟友でフランス語に通じた栗本鋤雲、もとは小栗家の仲間で明治時代には三井財閥に発展する三井組中興の祖となった紀伊國屋利八(三野村利左衛門)、遣米使節団でアメリカ女性のアイドルとなる通訳見習いの立石斧次郎、ご存じ坂本龍馬に高杉晋作、会津藩公用方の秋月悌次郎、破戒僧(苦笑)メルメ・ド・カション、フランス公使ロッシュ、清水組二代目喜助(後の清水建設になる)、横須賀造船所をつくったフランス人技師ヴェルニー、イギリス公使パークス(これが薩摩のふたり以上に黒い^_^;)、福地源一郎(後の桜痴)、幕閣としては松前和泉守や大久保一翁など、家茂公、慶喜公、松平容保様、天領小布施の豪農にして豪商で文化人の高井鴻山、大鳥圭介、榎本武揚、ジュール・ブリュネ、など。ちょっとだけ出てくる中には、新選組からは近藤勇、土方歳三、沖田総司(この顔は私のイメージする沖田君っぽい)、芹沢鴨、永倉新八など。薩摩藩では中村半次郎もちらっと出てくる。でも桂小五郎とか岩倉公は直接出てこない。

☆★☆★

 はぁ、大河でなくても、これをドラマ化しようという剛毅なテレビ局はないものでしょうかねぇ……(嘆息)。

 あ、『またも辞めたか亭主殿~幕末の名奉行・小栗上野介~(リンク先はwiki)』は軽く見てますが、当時はそれほど関心がなかったんで、あまり記憶に残ってなかったんですよ(汗)。まずは、

 それに『天涯の武士』ほどに小栗の存在を薩摩の大久保や西郷が脅威に感じたという設定ではないと思うので。

 だから、この『天涯の武士』をドラマで見たい気持ちに変わりはありません。署名活動でも始めようかしら(苦笑)。

☆★☆★

2/29追記。大鳥圭介の顔は和装の写真に似せて割と男前。それはいいのだが、ん~、背丈が普通にあるのがなぁ……南京カボチャにして欲しかった(爆)。もう少しやかましい奴にして欲しかったし(爆×2)。
『江戸の歴史は大正時代にねじ曲げられた サムライと庶民365日の真実』古川愛哲(講談社+α新書)



 著者は元放送作家で雑学家。大正から昭和にかけて確立した時代小説や時代劇は、史実の江戸時代を反映していないとして、史実の江戸の暮らしがどのようなものだったかウンチクを語るという趣向。

 まえがきより引用。

 結果、額に三日月の傷を持ち「退屈じゃ」を連発する大旗本の殿様が、やたら力を振り回しても、閉門、逼塞にもなりません。
 白昼かぶりものは禁止の上に「市中乗馬禁止」でも、鞍馬天狗は平気で馬を駆け回ります。それを新撰組も町奉行も、見廻組も咎めるようすはありません。
 右目から頰に大きな傷がある仙台伊達家の丹下左膳は、白い着流しで髑髏《しゃれこうべ》の紋など付けていますが、その異装を咎める与力、同心もいませんし、橋の下に蓆《むしろ》で家を作って住んでいる浪人なのに、「無宿狩り」で石川島人足寄場《にんそくよせば》に送られる身の危険を感じた様子はありません。
 「武士の一分」は、たかが女を巡る「女仇討ち《めがたきうち》」にまで矮小化されることになりました。


 なかなか辛口ですね(笑)。

 「時代劇とは違う江戸の町景色」「時代劇の切腹は不作法?」「困窮を極めた鬼平の生活」「悪代官はどれくらいいたのか?」辺りが時代劇ファンにはちょっと気になるところではないでしょうか。

 なかなか面白かったです。尾籠な話ではありますが、排泄物のリサイクルがどういう仕組みになっていたかがすごくリアルで(汗)江戸の庶民が一日に何回も銭湯に行っていたのがなぜかわかったような気がします。
『幕末バトル・ロワイヤル 井伊直弼の首』野口武彦(新潮新書)



 前作『幕末バトル・ロワイヤル』の感想記事はこちら

 前回は水野忠邦の天保改革前後の政治史の裏面を中心に描かれたが、今回は阿部正弘から井伊直弼の時代を中心に「安政内憂録」「安政血風録」の2部からなる歴史エッセイ。

 『風雲児たち 幕末編』では阿部正弘の政権運営を丁寧に描いていたので、こちらはちょっと物足りないかも知れない。でも、阿部正弘や水戸の列公や井伊直弼が出てくると私の頭ではみなもとキャラになっている(笑)し、小栗上野介が出てくると木村キャラになっている(汗)。

 私が贔屓にしている江川坦庵公はちょっとしか出てこない(涙……伊豆の大津波とプチャーチン率いるロシアの軍艦ディアナ号の座礁とヘダ号の建設が紹介されているのに坦庵公がほとんど出てこないってどうよ。親友の川路聖謨さんはよく出てくる^_^;)が、井伊直弼のもとで結ばれた日米修好条約の波紋が日本国中にどのように起こったか、安政の大獄がいかに神経症的な政敵狩りだったか、よくわかる。

 そうそう、『風雲児たち』ファンには、阿部正弘の後に政権を継いだ堀田正睦の風采についての紹介が面白いと思う。

 堀田備中守正睦は風采の上がらない男だったらしい。
 ハリスの印象では「背が低く、感じのいい知的な顔立ち」だったとあるが、同時代の日本人の眼はもっと意地悪だ。肥満体で丸顔、唇が厚く、眼は小さくて丸い上に団子鼻ときていて、とても殿様には見えなかったそうだ。歩く姿も狂言の太郎冠者のようだったと辛口に語られている(幸田露伴『幕末の政治家』)。露伴の生家は代々江戸城の表坊主だったから、この話はかなり信用できる。


 まさしく、あのみなもとキャラはそのまんまじゃないか(笑)。

 榎本武揚が若い頃に従って蝦夷地探査を行った堀織部正利熙《ほりおりべのしょうとしひろ》が外国奉行になり、上司にあたる老中の安藤対馬守信睦と意見が対立して、割腹して憤死を遂げたというのも初めて知った。「腹を十分切った上、喉を口の奥まで貫き、その脇差を引き抜いて前に置き、正座して絶命した」という壮絶な割腹の模様……(汗)。

 雑誌連載では文久の時代も続いて書かれているそうなので、また新書に出るのを楽しみにしている。
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幕末、特に新選組や旧幕府関係者の歴史を追っかけています。連絡先はmariachi*dream.com(*印を@に置き換えてください)にて。
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